そんな、ある日。 季節の巡りが何度も過ぎて、久しく開けていなかった戸口を、突然叩く音が響いた。 戸を開けると、夜這いの管理をしているの男が、久しぶりに家の戸を叩いて、事務的な口調で告げた。 「‥‥お前に、夜這いの権利が回ってきた」 一瞬、何を言われたのか分からなかった。 「ほら、レラの時は、妊娠で順番が飛ばされたからな。その分、次の対象の時は“最初”になる、知ってるだろ?」 そういえば、そんなシステムだったか。 何年も、家から出ずに、村との繋がりを断っていた自分に、 まだ“順番”だの“権利”だのが、残っているなんて、正直、現実感がなかった。 「相手は‥‥ピリカだ」 その名前を聞いた瞬間、胸の奥が、少しだけざわついた。 (‥‥ピリカ、か) 頭に浮かぶのは、レラの後ろをちょろちょろ付いて回っていた二人組の、あの明るい方の少女の姿。 元気で、よく笑って、よく喋って、村の空気をそのまま形にしたみたいな子。 (‥‥あいつも、もう) 言われてみれば、時間は確かに、ちゃんと流れていた。 自分が部屋の中で止まっている間にも、外の世界は進んでいた。 記憶の中の彼女は、まだ、子供のままだ。 レラに甘えて、笑って、怒られて、また笑って。 (‥‥会ってない、何年ぶりだ) 今の彼女が、どんな顔をしているのかも、知らない。 どんな声で話すのかも、どんな風に大人になったのかも。 ずっと止まったままだったはずの胸の奥が、少しだけざわついていた。 その日、戸を叩く音で、久しぶりに現実に引き戻された。 「‥‥あ、あの‥‥来ました、よ」 扉を開けると、そこにいたのはピリカだった。 最初は、はっきり分かるくらい緊張した声で、きちんと背筋を伸ばして、敬語だった。 背丈は、確かに伸びている。肩の線も、昔よりずっと大人びている。 それでもどこか、記憶の中の彼女のままの気配が残っていて、胸の奥が少しだけ、ちくりとした。 「久しぶり、だね」 そう声をかけると、ピリカは少しだけ安心したように、肩の力を抜いた。 「はい‥‥あ、その‥‥お久しぶりです」 部屋に入ってもらって、ぎこちなく向かい合う。 最初は、こちらを警戒しているのが、はっきり分かった。 何年も引きこもっていた男の家に、夜這いの相手として来る――それは、無理もない。 「‥‥緊張、してるか?」 そう聞くと、ピリカは一瞬だけ目を泳がせてから、苦笑した。 「そりゃ、しますよ。初めてですし‥‥」 少し沈黙が落ちる。 (‥‥このままじゃ、まずいな) 緊張をほぐそうとして、昔の話を振る。 「昔、レラの後ろくっついて回ってたよな。畑までついてきて泥だらけになってさ」 レラの名前を出すと、胸が掻きまわされる気がしてたまらない。 その瞬間、ピリカの表情が、ふっと緩んだ。 「あー!それ言います?だって、レラお姉ちゃんがどこ行くか気になってたんだもん!」 敬語が、消えた。 「怒られても、すぐ忘れてさ。で、また同じことしてた」 「もう、昔の事は無し無し!」 その笑顔は、昔と変わらない。 明るくて、快活で、場の空気を軽くする。 そして、夜が深まり、そろそろ夜這いの本番が始まろうとして。 「‥‥あ、そうだ。言っといた方がいいかなって事があるんですけど」 一瞬、また敬語に戻ってから、照れたように続ける。 「実は‥‥私、彼氏、いるんだよね」 その言葉が、胸に落ちた瞬間。 (‥‥あ) 理由は、すぐには分からなかった。 嫉妬なのか、安心なのか、それとも―― “レラの時と同じ構図”を、無意識に重ねてしまったのか。 頭では、冷静なはずなのに、 体が、勝手に反応してしまうのが、はっきり分かった。 (‥‥まずい) 自分で分かるくらい、意識がそちらに引っ張られる。 引きこもっていた時間、溜め込んでいたもの、そして、“夜這いの一番最初”という立場。 全部が、一気に結び付いてしまった感覚。 ピリカは、そんなこちらの内心なんて知らずに、少し困ったように笑う。 「だから、その‥‥一応しきたりだから、ちゃんと来たっていうか‥‥」 その無邪気さが、余計に、胸の奥をざわつかせる。 俺が寝室の扉を開けた瞬間、空気が少しだけ変わった。 ‥‥夜這いの権利を放棄して、彼女を返す選択肢は、頭に無かった。 ピリカは、はっきり分かるくらい緊張していて、肩が強張り、指先も落ち着きなく動いている。 さっきまでの明るさは影をひそめて、深呼吸をひとつしてから、こちらを見た。 「‥‥その、行きますね‥‥だいじょうぶ、です。ちゃんと‥‥覚悟は、してきたので」 そう言ってから、少しだけ間を置いて、彼女は視線を落とした。 指先が震えているのが分かる。 それでも、逃げずに一歩前へ出て、ぎこちない動きで上着に手をかける。 そう言って、覚悟を決めたみたいに、ぎこちない手つきで服を脱ぎ捨てていく。 一枚、また一枚と外していくたびに、頬が赤くなっていくのが分かる。 (‥‥大きく、なったな) 背丈だけじゃない。 線の細さは残っているのに、丸みのあるところはちゃんと丸みがあって、 もう“子供の頃のピリカ”の体じゃない。 誰かに抱かれる前提で、ちゃんと“そういう年齢の体”になっている。 「あのぉ‥‥」 ピリカは、視線を逸らしながら、少しだけ遠慮がちに言った。 「お兄さんとは、知り合い、ですし‥‥その‥‥優しく、してくださいね?」 その言い方は、 まるで――俺が“レラの恋人だった頃の俺”のままだと、思い込んでいるみたいだった。 (‥‥勘違い、してる) 彼女の中では、 「知っている人」「昔からの知り合い」「だから、きっと大丈夫」 そういう安心感が、どこかにあるんだろう。 「まあ、決まりですし‥‥変な人と当たるよりはまあ良かったというか‥‥」 そう付け足して、無理に笑うけど。 でも、その笑顔は、どこか頼るみたいで、“怖いけど、信じている”という色が、はっきり混じっていた。 (‥‥俺は) 何年も、何年も、止まっていた俺は、レラの恋人だった時の俺のままなんかじゃ、ない。 あの頃の自分と、長い間、閉じこもって、拗れて、歪んでしまった今の自分。 その差を、ピリカは、きっと、知らない。 ピリカは、恥ずかしそうに腕で胸元を隠しながら、こちらを見上げる。 「‥‥へ、変じゃない、ですよね?」 その姿は、もう完全に、“守られる前提の子供”じゃなくて、“抱かれる側として、食べ頃の雌”の体だった。 それでも、表情は、昔のままの、少し不安で、少し無邪気なピリカで。 この状況そのものが、ひどく、歪んでいる気がした。 彼女は、俺を“知っている人”だと思っている。 だから、きっと、優しくされると、疑っていない。 俺は、その期待の上に立っている。 ――彼女は、何も知らないまま、 “昔の俺”に身を委ねるつもりで、ここに立っている。 だけど、俺の中には、もう、昔の俺はいなかった。 (‥‥どこまで、汚せる。‥‥どこまで、俺の物に出来る) 彼女を、“昔の知り合いの女の子”のままじゃなく、“自分のもの”にしてしまいたい。 その欲望が、自分でも分かるくらい、ひどく膨らんで、止め方がもう、分からない。 レラの時に、何も出来なかった自分。 奪われて、置いていかれて、その鬱屈した感情の矛先が―― 今、目の前のピリカに向いている。 (‥‥奪われたなら、今度は、奪う側に立てばいい) そんな理屈にもならない理屈が、するりと心の中に入り込んでくる。 恋人を失った時の、あのどうしようもない虚しさ。 何も出来ずに、外側で見ているしかなかった、あの時間。 最低だと、そう思うのに。 同時に、胸のどこかで、ひどく甘い感覚が広がっていくのも、否定出来ない。 あの時、レラを奪っていった彼らも、きっと、同じ感覚を味わっていたのだろう。 相手の事情も、気持ちも、未来も。 全部わかった上で、それでも踏み込めてしまう位置にいるという、この感覚。 そう思った瞬間、胸の奥に残っていた躊躇が、静かにほどけていく。 後戻り出来ない場所に、もう、足は踏み出しているのだと、 どこか冷えた頭で理解しながら。 (どうせ――俺が何もしなくたって、この村の決まりは変わらない) 今夜が終われば、ピリカの“次の相手”が決まる。 その次も、その次も。 結局、彼女は、どこかで“経験”する。 どこかで、誰かに、全部教え込まれる。 なら、多少俺が役得を得ても、良いじゃないか。 乱暴にはしなかった。 少なくとも、表向きは。 ピリカの前に立って、まず、そっと声をかける。 「大丈夫だ。怖がらなくていい」 肩に触れる手つきも、ゆっくりで、必要以上に力は込めない。 抱き寄せるのではなく、距離を確かめるように、ほんの少しだけ近づく。 彼女は、緊張したまま、小さく息を吸って、目を閉じる。 (‥‥ああ、まだ、こんな顔をするんだな) 大人になったはずなのに、どこか幼さの残る、その表情。 俺は、まず、頬を優しく掴み、視線を合わせて、 それから、唇に、そっと触れるだけのキスを落とす。 深くも、荒くもない。 “優しい人”がするみたいな、静かな触れ方。 ピリカは、少し驚いたように目を瞬かせてから、 「‥‥えっと、その、ありがとうございます」と、小さく言う。 その反応が、胸の奥を、くすぐるようにざわつかせる。 (‥‥紳士だと、思ってるんだな) なら、その通りに振る舞えばいい。 手は、ただ、安心させるように、背中や肩に触れて、 「大丈夫だ」と、何度か、静かに繰り返す。 彼女は、少しずつ、体の力を抜いていく。 乱暴な仕草は見せない。 あくまで、丁寧に、ゆっくりと、彼女の不安を解くように。 安心させるみたいに、なだめるように、背中に触れていた手を、肩に触れていた手を、ゆっくりと下へ移っていく。 ピリカは、びくっと小さく身体を揺らしたけれど、 逃げることはしなかった。 代わりに、ぎゅっと目を閉じて、唇を結ぶ。 「‥‥大丈夫?」と小さく聞くと、 彼女は一瞬だけ視線をさまよわせてから、こくりと頷いた。 「‥‥だいじょうぶ、です」 そう言う声は、少しだけ震えている。 (‥‥この子は俺を、信じてる) その事実が、胸の奥に、ひどく重く、でも甘く落ちる。 背を撫でていた手は、ほんの少しずつ、位置を変える。 背中の中心から、腰の方へ。 線をなぞるみたいに、ゆっくり、ゆっくり。 ピリカは、びくっと小さく身を震わせてから、 「ひゃ‥‥」と、息を漏らす。 でも、俺の手を拒むことはしない。 もう片方の手は、最初は肩に置いたまま。 安心させるための“支え”みたいに。 でもそこから、少しずつ、少しずつ、位置を変えていく。 肩から、鎖骨のあたりへ、そこから、胸元へ。 触れ方は、あくまで、ゆっくりで、確かめるように。 “触れていいかどうか”を、何度も確認するみたいに。 「‥‥くすぐったい、です」 笑おうとしているけれど、やっぱり緊張は隠せていない。 背は変わってるけど、胸は、小さいまま。 レラと比べれば、全然膨らみなんてなくて。 尻も、昔から少し大きめで、走ると揺れるのを本人が気にしていた、あの頃の印象と変わらない。 (‥‥見た目だけなら、ほんとに、昔のままだな) そう思いかけて――でも、すぐに、違和感に気付く。 ただ触れられているだけなのに、ピリカの肩が、びくっと小さく跳ねた。 尻を優しく撫でると、息が詰まったのに気が付く。 「‥‥あの‥‥なんか‥‥変、です‥‥♡」 少しだけ、力の入り方が変わった。 醜い本性が、漏れ出たような触り方。 指先の動きも、遠慮が消えて、ためらいなく、彼女の体を愉しむ。 一度心を許してしまったから、ピリカは甘く受け入れる。 触れているうちに、ピリカの様子が、はっきり変わっていった。 最初は、ただ緊張で強張っているだけだった体が、次第に、息の仕方そのものが変わっていく。 呼吸が浅くなって、胸が大きく上下して、言葉にならない声が喉の奥で詰まる。 思わず自分の腕で体を抱くみたいな仕草をする。 逃げるためじゃなく、むしろ、何かに耐えるみたいに。 「ぁ‥‥♡あぁ♡んっ‥‥♡」 足元が少しふらついて、俺の腕に、無意識に体を預けてくる。 「ごめんなさい‥‥なんか‥‥頭、真っ白になって、ぼーっとして‥‥♡」 その声には、さっきまでの緊張が抜けて、甘い響きが入り混じっている。 女の子を絶頂させたという、初めての経験に。 良くない自信が付いて行くのを感じる。 そのまま、自然な流れで、手は下へと伸びていった。 ほんの一瞬、ピリカの体が、ぴくりと小さく強張る。 でも、拒むように押し返されることはなかった。 視線は逸らされたままで、頬は赤い。 でも、腕を掴まれる事も、体を引くこともない。 あっけなく、下腹部を超えて、彼女のそこに触れる。 そこは、もうしっとりと湿っていて、軽く撫で上げただけで、とろりと蜜が溢れる。 「ひぁっ♡♡」 ピリカはぎゅっと目を瞑って、俺の腕にしがみついたまま、声を漏らす。 この子の体は、まだ“男”を知らないんだ。 その事実に、ひどく興奮する。 そのまま指を滑らせると、小さな水音がした。 そして彼女は、人生で初めて“自分の中に入ってくる異物”を受け入れる。 その瞬間、はっきりと分かるくらい、体が強張る。 びくっと小さく跳ねて、息が一瞬、止まる。 ピリカは、思わず、俺の腕を掴む。 指先に、力がこもっているのが伝わってくる。 最初の強張りが、ゆっくりほどけて、体がその“知らない感覚”を、受け入れようとし始めているのが分かる。 指で感じる、ピリカの膣内。 内側から力が抜けていて、それなのに、こちらを離すまいとするみたいに、無意識にきゅっと力を込めてくる。 強くぎゅっと締め付ける感覚があるのに、同時に、蕩けきっていて、指の動きに合わせて、素直に形を変えてしまう。 正直、心臓の音がうるさいくらいに鳴っている。 自分の指が彼女の中に出入りするたびに、 頭の中が、妙に熱く、ぼうっとする。 はっきりとした“区切り”の瞬間を、彼女は言葉にしないけれど、 体の反応だけで、十分すぎるほど分かる。 一度だけじゃない、二度でもない。 ピリカはさっきから、何度も、体の力が抜けては戻って、 そのたびに、力が一瞬抜けて、腰ががくんと落ちそうになり、慌ててこちらを掴んで来る。 その間、膣内はぎゅっと締まる。 「‥‥あ、あの♡なんかっ♡んっ♡♡へんっ♡変だよぉ♡」 指を動かすたびに、 ぎゅっと、逃がさないみたいに締まりつく感覚と、 それでも、するりと通してしまう、妙な“やわらかさ”。 足元がふらつくのを見て、俺は、そっと抱き寄せて、布団の上に横にさせる。 乱暴に押し倒すんじゃなくて、あくまで、支えるみたいに。 ピリカは、布団に背中を預けた瞬間、ほっとしたように、でも同時に、さらに息が乱れる。 「‥‥はぁ‥‥はぁ‥‥っ‥‥♡」 胸が、大きく上下している。 目は、少し潤んでいて、焦点が、どこか曖昧。 だけど、指の動きを再開する。 ピリカの体は、さっきから何度も、小さく跳ねる。 そのたびに、息が詰まって、声にならない声が漏れる。 「‥‥っ♡‥‥ぁ‥‥♡だ、だめ‥‥っ♡なんか‥‥っ‥‥♡」 腰が弓なりに浮いて、背中が反り、 次の瞬間、彼女の慌てたようにシーツを掴んだ指先が、きゅうっと締め付けられる。 「‥‥っ♡あっ♡ああっ♡ううぅうう~~♡♡」 ただ、身体の奥から込み上げてくる感覚に耐えきれず、 ぷしゅ、というはっきりした音と一緒に、温かい液体が勢いよく溢れ出した。 顔を真っ赤にして、必死に脚を閉じようとする。 だけど意味無く、布団にびちゃびちゃと音を立てて、染みを作っていく。 「え‥‥?え‥‥?ち、ちが‥‥♡これ‥‥♡お、漏らし‥‥?」 不意に、思い出してしまう。 レラが、 「力も抜けて、イクのと一緒に、気付いたらお漏らしまでしちゃったんだよね。」と、 恥ずかしそうに、でもどこか他人事みたいに語っていた、 あの話。 あの時、俺は、ただ、惨めで、悔しくて、 自分は“外側”の人間なんだと思い知らされただけだった。 (‥‥でも、今は) 今、自分は――“奪っている側”だ。 ピリカの身体を、自分の指だけで、こうして、何度もおかしくして、腰を跳ねさせて、恥ずかしいくらい、ぐちゃぐちゃにしている。 (あいつらと同じ側に‥‥) レラを奪っていった雄たちと同じ場所に、同じ立場に、今、自分は立っている。 その自覚が胸の奥で、ぞくっとした熱に変わる。 悔しさと、歪んだ優越感と、そして、どうしようもない興奮。 布団の上で、ピリカはまだ顔を真っ赤にして、 小さな声で「ごめんなさい‥‥」とつぶやいていた。 恥ずかしさと混乱でいっぱいで、自分の身体に何が起きたのかもうまく整理できていない様子で。 指先で、そっと、彼女の陰核に触れる。 「‥‥っ♡」 最初は驚きの声だったけれど、指でやさしく、くるくると撫でるように触れていくと、 次第に、その声の質が変わっていく。 「あっ♡ふぁぁ♡うぅぅぅ♡」 謝ろうとしていた口が、言葉の代わりに、蕩けた声を出す。 俺は、あくまで強くしない。 ただ、指の腹で、やさしく、やさしく、捏ねるように。 「いいんだよ、気にしなくて」 そう、耳元で小さく囁く。 気持ちよさで罪悪感を押し流して、優しく許してあげる言葉を囁く。 「気持ちよくなるのは、悪いことじゃないからね。」 そう囁いてから、また指先で、そっとクリを撫でる。 ピリカは、ぎゅっと目を閉じて、体を強張らせる。 でも、今度は逃げない。 それどころか―― 「‥‥っ♡あ♡あっ♡あぁ♡」 彼女の口から漏れる声はどんどん甘くなっていき、腰も小さく跳ねて、もっととねだるように動く。 さっきまでの恥ずかしさや混乱は、もうほとんど残っていない。 ピリカの中を満たすのは、安心と、身体の奥に残る放尿後の確かな余韻と、 そして、ふわふわした幸福感。 「‥‥ありがとう‥‥ございましゅ‥‥♡」 蕩けた顔で、ピリカはそう言った。 「‥‥っ♡あ♡あぁ♡」 ピリカの口から漏れる声は、もうすっかり甘い。 俺は、ただクリを指先で撫で続ける。 もう、ピリカは逃げようとしないし、脚を閉じる事もない。 むしろ、自分から腰を浮かせて、もっととねだるように押し付けてくる。 「ん♡んぅ♡あっ♡あぁっ♡」 その反応に満足しながら、指の動きを変える。 今度は、少し強めに押すようにする。 「あっ♡ああっ♡」 ピリカの体が跳ねる。 そのまま、さらに強く押し込みながら、指先で転がすようにする動きも加える。 「あぅ♡あっ♡あっ♡♡ああ♡♡」 ピリカの声がどんどん甘くなる。 もう、その声が“気持ちいい”と訴えているのは明らかだった。 そして、自分の物を見せると、ピリカの視線は釘付けになって。 ほんの少しだけ息を飲む音を立てた。 けれど次の瞬間、その瞳の奥に、ふわりと甘い期待の色が浮かぶ。 顔を真っ赤にしながらも、 どこか無邪気に、柔らかな声でおねだりしてくる。 「それ‥‥もっと、見せてほしい‥‥です‥‥♡」 恥ずかしそうに身を寄せて、ちらちらと視線を逸らしながらも。 「ずっと、すごく、気持ちいんだから‥‥ きっと‥‥セックスも‥‥気持ちいいんだよね‥‥?」 そう言って、ピリカは、期待と恥じらいが入り混じった表情で、 じっと俺のものを見つめながら、新しい体験を心から欲しがり、自然とおねだりしてくる。 布団の上で、ピリカは頬を赤くしながら、でもはっきりとした目でこちらを見ていた。 さっきまでの混乱や恥ずかしさは、もうほとんど残っていない。 雌としての、期待を込めた目。 俺は、喉がひどく渇いていることに気付いた。 胸の奥は熱くて、心臓はうるさいくらいに鳴っている。 ――レラとは、結局、ここまで来ることができなかった。 手を繋いで、話して、笑って、未来の話をして。 でも、こうして「男として」彼女を抱く日だけは、永遠に来なかった。 「ゆっくり、お願いします」 その言葉を守りながら、ゆっくりと腰を下ろす。 俺がゆっくりと腰を沈めるたび、 ピリカの身体は蕩けたように受け止め、 その甘い喘ぎ声が夜の静寂にふわりと溶けていく。 「んっ‥‥あぁっ‥‥♡」 彼女の呼吸は乱れ、目は半分閉じられている。 小さな手で俺の背中を引き寄せて必死に絡ませ、 熱っぽい吐息、潤んだ瞳、何度も絶頂に達してはふわふわと余韻に身を預けている。 脚を俺の腰に絡めて、夢中で受け入れ、まるで“貴方だけのものにして”とでも言うように、骨の髄まで求めてくる。 けれど、脳裏にはどうしても消せない一つの事実が浮かぶ。 ピリカには、確かに――彼氏がいる。 さっき、無邪気に話していた「好きな人」が、 今頃は、耐え難い思いで彼女のことを想っているはずだ。 その事実が、胸の奥で火を点ける。 嫉妬でもなく、罪悪感でもなく、むしろ“奪い取っているんだ”という実感が、 今まで感じたことのない興奮を膨れ上がらせていく。 「もっと‥‥もっとして‥‥っ♡」 ピリカは潤んだ瞳で俺を見つめ、その細い声でおねだりを続ける。 彼氏から引き剥がして、俺だけの快楽を教え込む―― その背徳感が、逆に俺を昂らせ、腰を動かす力がどんどん強くなっていく。 ピリカは快楽に蕩けた目で、半ば放心したように目を閉じている。 だが、その身体は、俺にすべてを委ねている。 その証に、ぎゅっとシーツを握りしめ、腰を沈めると、腰を跳ね上げて浮かせ返そうとするくらいに力を込めている。 「あっ♡ああっ♡んぁっ♡」 彼女の声は、もうすっかり甘く蕩けきっていた。 その声と、俺のものが彼女の中で擦れる水音、そして、時折聞こえる小さな嬌声だけが、夜の静寂に響いている。 「みんな、“初めては痛い”って言ってるけど、嘘だぁ♡だって、すっごく気持ちいいもん♡」 腰を打ち込むたびに、ピリカの身体がぴくんと跳ね上がり、中で深く引き込まれる感触が指の先まで伝わってくる。 ピリカの身体を貫いて、奥へ、奥へと腰を沈めるたび、 彼女はびくびくと甘い声を漏らして、脚を震わせてくる。 一番奥に、俺のものの先端がぶつかる。 それが錯覚でないのは、まだ根本が入り切ってないのに、ぐっと、奥へ押し込めなくなるから。 確かな“終着点”を、先端で感じている。 満足出来ず、さらに体重を乗せるように腰を沈める俺は、今はもう理性のブレーキを完全に解放している。 腰を強く落としながら、先端が膣の奥深く、子宮口を押し上げる感触を確かめる。 ピリカはぎゅっと歯を食いしばるけど、その苦痛を越えるだけの快楽を感じているのは確か。 だって、何度も何度も、強く締め付けて絶頂をアピールしているから。 ピリカが、まるで身体をバネのように弾かせて絶頂する。 その瞬間、俺も大きく腰を沈め、跳ねあがったピリカの身体を無理矢理布団に圧し潰す。 そして、子宮口を押し上げた先端から、思いっきり“本気”の射精をする。 「あっ♡あぁっ♡♡ああぁ~~っ♡♡♡」 ピリカが甘い絶叫を上げながら絶頂する。 (どうなってもいい――どうなっても、かまわない) ピリカの膣は、俺のものをぎゅうぎゅうに締めつけて、根元まで咥え込もうとしてくる。 その小さな体を布団に押さえつけたまま、俺は彼女の一番奥で、何度も精液を吐き出す。 ドクドクと子宮口に注ぎ込むたびに、俺の全神経は「射精」に集中していく。 亀頭と幹が、全力でポンプのように脈動し、 一瞬の休止もなく、断続的に精液を子宮に満たしていく感触が伝わってくる。 誰のものでもなかったその場所に、惜しげもなく無責任に、自分のすべてを放っていく。 それでも、動きを止めることはできなかった。 一度目の激烈な射精のあと、俺の脳はまるで電流に打たれたように鋭く冴え渡り、 「まだ、足りない」という渇望だけが全身を駆け巡っていた。 それでも膣は、何度目かの刺激にも力強く締まり返し、弾力を増した内壁が俺の陰茎をぎゅうぎゅうと包み込む。 そして――すぐに、二度目の頂点がやってきた。 根元から張り裂けるような衝動と共に、再び猛烈な射精が子宮を目指して噴き上がる。 膣の奥で洪水のように拡がる白濁に、ピリカは甘く鳴く事しか出来ない。 「あっ♡あっ♡♡だずげっ♡んあっ♡だめっ♡んああああああぁ~~っ♡♡」 俺はもう、“一度射精したから終わり”という理性を手放していた。 (レラは、あの村の男たちに、何度も、何度も、奥に注がれてきた。だから、俺も他人の彼女に、いくらでも出す権利がある) そんな、歪んだ理屈で、ピリカに何度も何度も注ぎ込む。 理性も、罪悪感も吹き飛ぶ。ただ、自分のすべてをぶちまけることだけに集中する。 数年間ずっと、ひきこもって。 どうしようもない劣等感や孤独、悔しさ、自分が何者でもないという惨めさ、 胸の奥に蓄積していった全ての「雄の衝動」を、ただ押し殺して生きてきた。 それが今、一気に決壊するように溢れ出していく。 ――そして、夜が明けた。 朝の光が窓ガラスを通り抜け、 静かな部屋に淡い橙色のグラデーションを描く。 ピリカの頬は、昨夜の残り香と熱でいまだ紅潮し、 目を閉じたまま、ゆっくりと呼吸を整えている。 俺は、まだその場から動けずにいた。 頭の芯はぼんやりとしつつも、腰から下にはっきりとした重みと温もりが残り、 それが、まだ完全に分離できていないことを教えてくれる。 そう、挿入されたまま。 夜這いの時間が終わった事を残念に思いながら、抜こうとすると、思わず射精してしまい、ピリカの子宮に追い打ちしてしまう。 「ん‥‥」 ピリカがゆっくりと目を開き、俺の顔をじっと見つめる。 その瞳は、まだとろりとしていて、昨夜の余韻を残している。 腰は重く痺れているが、そろそろ動けそうだった。 ゆっくりと抜いていくと、ピリカの口から熱い息が漏れる。 夜這いの時間が終わったことを伝えると、ピリカはまだその余韻に浸りたげに、こちらをうるうるした目で見上げてきた。 「もう終わり‥‥ですか?」 と、小さく呟き。 体液でぐちゃぐちゃになってひんやりとした布団の上で身体を起こす。 「じゃあ、最後にこれだけ良いですか?」 そう言うと、ピリカは陰茎にキスをして、そのまま咥える。精液の残滓がこびりついたそれを、愛おしげに舌で舐め取っていき。 ゆっくりと口腔内で転がしながら、甘い吐息を漏らす。 その後、一緒に風呂に入り、全身の汚れを洗い流す。 「えっと、洗ってくれませんか?」 そう催促するピリカに従い、彼女の全身を素手で洗う。 石鹸を泡立てて、彼女の背中や首筋、手足をひとつずつ丁寧に洗い流していく。 ピリカは少しくすぐったそうに身を寄せてきて、 時おり振り返りながら、俺の腕や胸にもそっと手を伸ばす。 「そこ、くすぐったいです‥‥♡」 胸の辺りを洗おうとすると、ピリカの口から甘い声が漏れる。 「あ、お股はあんまり洗わなくても大丈夫ですからね?」 なんて言われて、触れようとしていたのを我慢する。 「これって‥‥彼氏には言うのか?」 ゆっくりと顔を上げると、彼女の頬はまだ紅潮していて、目に揺れる迷いが見て取れた。 「‥‥うーん‥‥どうかな。夜這いの仕組み上、お兄さんが私に夜這いするのは村の決まりだから、 彼も、私が誰に抱かれてるかは知ってるはずなんだよね。」 淡く笑いながら、ピリカは膝の上で両手を重ねる。 「まあだから、一々全部言わなくても良いかな、って。その方が気楽だし。」 そういう考え方もあるのかと考える。 もしそうなら、レラは‥‥そう考えて、結局彼女が孕むのは変わらなかったのだから、そう雑念を払う。 そして、ふと気になって。 「ねえ、ピリカ、‥‥君の彼氏の番は、いつ来るんだ?」 自分みたいに、遅かったらご愁傷様、なんて思いながら。 思わず訊ねると、ピリカは泡をすくう手を止め、小さく顔を上げた。 「えっとね‥‥次、つまり今夜だよ?」 その瞬間、血の気が引くように心臓が凍りついた。 『どうせ後で誰かに抱かれるんだから、俺が役得したって良いだろう。』 そんな事を思っていたけれど、もし俺が昨日、夜這いの権利を放棄していれば。 ピリカは初めてを、彼氏と行う事ができたはずなのだ、と。 「気にしなくていいよ。ほんとに」 ピリカはそう言って、いつもの明るい笑顔を作ろうとする。 「‥‥彼ね、抽選で“一番目”を引いたって、すごく喜んでたんだよ。 “やった、俺が最初だ!”って。 でも、あとから、前回枠でお兄さんがいたって知って、すっごく凹んでた」 ピリカは、少し困ったように笑って、続ける。 「‥‥それでも、十分早い方だしさ。 お兄さんの時とかからしたら、すごく恵まれてる方だよ、って。 だから‥‥ま、そんなに、深刻にならなくていいと思うけどね」 そう言われても、 「気にしなくていい」で済ませられるほど、俺の中は軽くなかった。 ピリカは、小さく肩をすくめる。 「そんな“もしも”の話をし始めたら、 夜這いなんて、恋人がいるって分かってるなら、みんな棄権しなきゃいけなくなるよ」 脚をプラプラと揺らしながら、ぼんやりと語るピリカ。 「でも、現実はそうじゃない。 誰も棄権してないし、この村のやり方は、ずっとこうだった。 レラお姉ちゃんの時も、そうだったでしょ? だから‥‥お兄さんが“自分が悪いことした”なんて、思わなくていいんだよ」 そう言って、少しだけ照れたように笑う。 「お兄さんの番は、ちゃんと“順番”だったんだから」 そうして、お風呂から上がって、身支度を整えたピリカは、少しだけ名残惜しそうにしながら、玄関へ。 髪はまだ少しだけ湿っていて、頬は湯上がりのせいか、ほんのり赤い。 濡れた髪をそっと指でかき上げながら、挨拶を。 「今日は、ありがとうございました」 そう言って、ぺこりと丁寧に頭を下げる。 それから、少しだけ言い淀んで、照れたように視線を逸らしながら、 「多分、また‥‥来ますね?」 その言葉を聞いた瞬間、胸の奥がきゅっと締まった。 夜這いでも無ければ、彼女がここに来る理由なんて、何もない。 扉が閉まる音がして、足音が遠ざかっていく。 その音が完全に消えるまで、俺はその場から動けなかった。 一晩だけの関係だったのに、まるで長い夢を見ていたようだ。 現実感のない、でも確かに胸に残る時間。 俺はしばらく、閉まった扉を見つめたまま、何もせずに立ち尽くしていた。 さっきまで確かに誰かがここにいて、笑って、話して、同じ湯気の中にいたはずなのに。 あまりにも急に、ひきこもっていた日常に戻ってしまって、頭のどこかで「全部、夢だったんじゃないか」という感覚が離れなかった。 だけど。 寝室の方を見ると、何も片付いて無い事に気が付く。 足を踏み入れた瞬間、むわっとした、甘くて生々しい匂いが鼻をつく。 生々しく、淫靡で、身体の奥にまで届くような匂い。 昨夜から今朝にかけて、ここで交尾が行われたのだという痕跡が、はっきりと残っている匂いだった。 布団に目をやると、しわくちゃになったあちこちに、はっきりとした染みが残っている。 慌ただしく動いた形跡、愛液や潮の跡、そして――彼女のお漏らしの痕。 既に冷え切っているけれど、女の子の匂いが余りにも濃くて、頭がくらくらとする。 俺は布団に手を伸ばし、染みに指先を当てる。 湿り気はまだ残り、少し指先を押し付けただけで、ねっとりとした感触がじんわりと伝わってくる。 思わずその指を鼻に近づけると、ピリカの匂い。 甘さと酸味が混ざり合った、どこか幼さすら感じさせる雌の香りが、ダイレクトに脳天を突き抜けた。 それだけで、昨夜のピリカの声や、表情や、体温が、 一気に頭の中によみがえって来て、胸の奥が、じわっと熱くなる。 気がつけば俺は無意識のうちに、自分のものに手を伸ばしていた。 昨夜は、あれほど何度も果てたはずなのに、 ピリカの残した匂いと染みを前にすると、また、身体が正直に反応してしまう。 布団に残る染みに顔を近づけて、その甘い匂いを胸いっぱいに吸い込みながら、頭の中では昨夜の光景を何度もなぞる。 ピリカの声。 震える身体。 とろけた表情。 やがて、こみ上げてくる感覚に抗えなくなって、低く息を詰めながら、そのまま果てる。 夜這いの快感を知ってしまった今は、もう何か諦めのような、さっぱりとした気持ちになる。 溜まりに溜まっていた鬱憤や悔しさ、孤独や未練、そんなものを全部一気にピリカの中に吐き出したから、胸の中は不思議と軽くなっていた。 それはそれとして、 まず目の前の現実――寝室の掃除が待っている。 敷布団に染み込んだ愛液や潮や失禁の痕、 空気に混じる甘い女の匂い、枕元に絡みついた髪の毛や小さな爪の欠片。 昨夜の激しさが、現実として目の前に突き付けられている。 何日かが過ぎた。 あの夜から、寝室の掃除も、家の片付けも、ずっと手を付けられなかった場所にようやく手を伸ばすようになった。 積み上がった古い荷物、何年も読まなかった本、壊れたまま放っていた家具や食器―― 引きこもっていた時間の長さだけ、部屋の中にもいろんな“澱”がたまっていた。 それを一つひとつ片付けていくたび、心の中の重たい何かが、少しずつ溶けていくようだった。 寝室の布団も干して、窓を大きく開けて新しい風を通す。 自分で自分のために何かをする、その感覚が久しぶりで、どこかくすぐったいような、不思議な気持ちになる。 そうして、朝も昼も夜も、 ほんの少しずつ生活のリズムが整いはじめ、 「そろそろ、外に出てみようかな」と思いはじめた、 ちょうどそんな時、トントン、とはっきりとした音が家の戸を叩いた。 戸を開くと、ピリカの夜這いの順番を告げに来た、村の係の男だった。 日常が少しずつ戻り始めた矢先の再会に、胸がざわつく。 彼は特に何の前触れもなく、ただ静かに、けれどどこか重い表情で、しっかりと封のされた書類を俺に差し出した。 見ると、村役場や組合などでよく使われていたタイプの書類だった。 宛名には、きちんと俺の名が書かれている。 なぜ今、何の用事で届けに来たのか、俺は少し身構えてしまう。 (今さら夜這いの件で、何かあるのか?) それとも、別の用事か‥‥胸の奥に微かな不安が走る。 「村役場からのお届けです。それでは。」 短くそう言うと、彼は軽く頭を下げて立ち去った。 手のひらに残る書類の重み。 封をされた厚い紙の束には、何か重要な事が記されている気配があった。 それもそうか。 夜這いの係だけをやっている訳じゃないのだろうし、きっと何か役場の用事なのだろう。 封筒を手に取って慎重に糊付け部分を指でなぞりながら、 ゆっくりと封を切ろうとしたその時、突然。 「ドンドンドンドン!」 という勢いのある音が、玄関の戸を激しく叩く。 戸を開けると、そこに立っていたのはピリカだった。 いつもの明るさとは少し違って、頬をほんのり赤らめ、視線を宙に泳がせながら、どこか落ち着きのない様子。 まるで、夜這いのあの日の前のような。 「えっと、封筒、届きませんでした?」 言いながら、ちらりと俺の手元を覗き込む。 「‥‥これのこと?」 ピリカは、こくんと小さくうなずいた。 「はい、それ‥‥私にも関係あるんです‥‥」 俺はピリカを家に上げ、封筒を手渡した。 「中、入る?」 そう声をかけると、ピリカはまた顔を赤くしながらも、 「お邪魔します」 と小さく頭を下げて家に入ってきた。 ピリカを座らせてお茶を出してから、俺も腰を下ろす。 「‥‥それで、この封筒、何?」 と、俺から口火を切る。 するとピリカは恥ずかしそうにしながら、ぽりぽりと指先で頬をかく。 「そのぉ‥‥」 軽く視線が泳ぐが、やがて観念したように俺の目を見つめて、口を開く。 封筒を開くと、中から出てきたのは、分厚い紙束―― 村役場の厳めしい印や署名、そして幾つもの項目が並んだ小難しそうな書類。 テーブルの上にそれらを並べていると、ピリカは椅子の上で小さく身体を縮めて、 顔を真っ赤にして、指先でそっと自分のお腹を撫でる。 「えっと、その‥‥妊娠‥‥しちゃったんです♡村の決まり、知ってますよね? 夜這いで妊娠した場合、魔法でお腹の子の父親を調べて、その相手と――」 俺は慌てて書類をめくり、魔法の札を確認する。 紙の上には、魔法で調べた“胎内の子の父親”を示す証明が、 淡い金色のインクで鮮明に記されていた。 そこに書かれていた名前――それは間違いなく、俺のものだった。 夜這いで子を孕んだ場合、その父親と結婚する。 この村に昔から伝わる、絶対のルール。 (レラも、あのルールで奪われて‥‥そして今度は、俺が――) ピリカは、恥ずかしそうにお腹を撫でながら、それでもどこか安心したように微笑んでいる。 俺の胸の中は複雑な感情でぐちゃぐちゃになっていた。 (レラを奪われたあの夜から、何度も何度も悔しさや怒りを噛みしめてきた。 ピリカと交わったのは。あの時、村の決まりの理不尽さに抗えなかった怒りや鬱屈を、 今度は自分が“奪う側”になってぶつけてやろう、そんな歪んだ衝動があったからだった。) 彼氏がいるのを知っていて、 それでも「どうせ誰かが抱くなら、役得だ」なんて心の奥で思いながら、 ピリカの初めてを、全部奪い尽くすように抱き続けた。 けれど、こうして現実に、妊娠を証明する書類と、 村の絶対的なルールが目の前に置かれると、その重さが心にどんと落ちてきた。 (本当に、これでよかったのか。結局、同じ穴の貉じゃないか。) ピリカには、彼氏がいた。 あの夜這いの前夜、彼女がぽつりと話してくれた。 なのに俺は、レラを村の風習で“奪われた”悔しさと怒りを、 どこかでピリカにぶつけるように、「どうせ誰かが彼女を抱くなら、自分が役得してしまえ」と思っていた。 その勢いのまま、彼氏がいる彼女の純潔を、容赦なく奪い尽くしてしまった。 あの夜、ピリカが自分の膣で初めて味わう快楽に身体を震わせ、子宮の奥で、何度も何度も自分の精を受け止めてくれた―― その時は、ただ昂る衝動と、本能のままの悦びしかなかった。 でも今、彼女の少し不安そうな微笑みと、この重すぎる村の決まりの現実を前に。 俺の胸の奥には、今まで感じたことのないような不安がじわじわと広がっていく。 「‥‥結婚、しますよね?」 ピリカは、テーブルの上の書類を眺めてから、俺を見上げる。 「えっと‥‥」 そんなピリカにどう答えていいかわからないまま、思わず視線を逸らす。 (レラを失った日からずっと燻っていた怒りや悔しさを、あの時発散した事で俺はもう充分だと思っていた。 だけど、責任がズシリと圧し掛かって。) 俺の内心を見透かすように、指先でテーブルをトントンと叩いて、 小さく息をついたピリカが。言葉を続ける。 「‥‥あのね、彼とは、正直言うとうまくいかなかったの。 夜這いの日‥‥その、彼も……きっと本気だったと思うよ。 でも、私の方が‥‥さ。うまく反応できなくて。 全部全部、前の日にすっごい衝動ぶつけた誰かさんのせい、なんだけど」 そう言って、少し恥ずかしそうに俺を見る。 「彼も、途中で‥‥なんとなく分かっちゃったみたい。 私の反応とかで、たぶん、“前の日に、すごい夜這いされたんだな”って‥‥分かっちゃったんじゃないかな、って。 だからきっと、諦めちゃったんだと思う。私が、もう別の誰かのものになっちゃったって分かっちゃったから、別の娘を探すって、あっさり別れちゃって‥‥」 ピリカの指先は、何かを思い出すように微かに震え。 彼女の言葉の端々には、恋人を失った寂しさも、 自分が変えられてしまった戸惑いも混ざっている。 でも同時に“染められてしまった”という、 どこか甘く、静かな幸福もあった。 ピリカの話を聞きながら、胸の奥に妙な感情がわき上がる。 ――俺は、あれほど長く、レラを奪われたことに囚われて、 幾度も思い返し、悔しさや執着をぐつぐつと煮詰めて生きてきた。 けれど、ピリカの彼氏は――夜這いの順番を抜かされ、自分の恋人の「初めて」を奪われた現実にぶつかった時、 驚くほどあっさりと諦めてしまったらしい。 「‥‥そういうもの、なのかねえ」 俺は思わず、そんな独り言が漏れた。 ピリカの彼氏だけが特別淡泊なわけじゃない。 きっと、この村では―― 夜這いで誰かが結ばれるのが当たり前。 だから、いざその時が来れば、皆、どこかで「そういうものだ」と心のどこかで納得して、きっぱりと諦め、また新しい日常に溶け込んでいくのかもしれない。 そう思っていると、ピリカが、少し圧をかけて。 「それで、私のこと滅茶苦茶にして、子供まで孕ませて‥‥責任、取ってくれますか?」 本当は選択肢なんてない。 だって、孕ませた場合、当然その女性と結婚する必要があるのだから。 だけど、聞いて来るという事は、そういう事だ。 「分かった、責任、取るよ」 そう口にした瞬間、 ピリカは、それまでの緊張と不安の影を一気に溶かすように、 すっと立ち上がり、こちらを押し倒して来た。 唇の端が、わずかに吊り上がる。 その表情は、普段の天真爛漫な笑顔ではない。 嬉しさもある、安堵もある、 でも、それ以上に。 暗く濃い、何か底知れぬ情念がにじんでいる。 「‥‥ねぇ、お兄さん♡」 低く、甘く、そしてどこか脅すような声。 「私はさ、めちゃくちゃにされたし―― お兄さん色に染められたんだけどさ」 自分の身体を抱きしめるように、 そして俺にしがみつくように。 「でもさ――お兄さんが、あの夜ぶつけてきたもの。 レラお姉ちゃんへの想い、きっと、すごくたくさん入ってたんだよね?」 指先が、胸から首、頬へと優しく、けれど支配的に滑っていく。 「寂しかったんだよね。 悔しかったよね?惨めだったよね?――私、全部分かってるんだよ。 レラお姉ちゃんの恋人だったの、知ってるし‥‥引きこもってたのも、レラお姉ちゃんが結婚してからだし。 鈍感でも、さすがにそこは気付くよ?」 彼女は少しだけ微笑んで、 そのまま俺の顔を両手で包み込む。 「私のことだけ見て、私のことだけ求めたわけじゃないっての、分かってるよ? さっき夜這い婚のこと話してた時も‥‥やっぱり、レラお姉ちゃんのこと、思い出してたよね?」 一度、ぐっと俺の顔を覗き込んで、逃げ場のない視線を絡めてくる。 「でもね?」 声が少し甘く、でも確かな強さを帯びて、耳に響く。 ぐっと、手に力が入り、顔に痛みが走る。 「正直、あれだけ私にしておいて、 まだ元恋人のこと思ってるのは、ちょっと嫌だなー……って思っちゃった」 ピリカは微かに拗ねたように口元を歪める。 「まあ、それは仕方ないとは思う。 だって、お兄さんもいっぱい我慢して、いっぱい苦しかったんだもんね。 でも――さっき、責任取るって言ったんだから、これからは、私の旦那さんなんだから。 全部、全部、全部。 “責任取る”って言ったんだから、これからは、ちゃんと“私だけ”を見るようにしないと、ダメだよ?」 もし、彼女の手が今。 首筋に向かえば、そのまま窒息してしまいそう、そんな事すら考えてしまう。 「責任取ってね?お兄さんは私を選んだんだよね?全部全部、私に全部ぶつけるんだよね? ――レラお姉ちゃんの影なんて、もう一切残さないくらい、全部塗り潰してあげるから」 彼女は、一言ずつ言葉を区切りながらそう言うと。 唇が、耳元にそっと寄ってくる。 「だから‥‥覚悟、してね?」 その声音には甘さと、ぞくりとするほどの独占欲が、濃く、鮮やかに混ざっていた。 まるで、獲物を絡めとり、根こそぎ奪い尽くすような、そんな。 「――逃げさせたりなんか、しないからね?」 囁く声は甘く、けれど芯に鋼のような固さがあった。 彼女は、俺の顔を自分の両手の間に閉じ込めると、 ぴたりと唇を重ねてきた。 浅く何度も啄むようなキス――じゃなく、奥まで舌を差し入れて、呼吸も許さないほど深く、貪るような口づけ。 そのまま、唇を離さずに俺の舌を強引に絡め取っては、 何度も何度も自分の唾液で満たし、自分の匂いや味を、俺の中に刻みつけてくる。 「‥‥ふふ、これで‥‥もう“私の味”しか分かんなくなるでしょ?」 見つめて来る瞳には、甘い独占欲が強く燃えている。 「ねぇ‥‥お兄さん、レラお姉ちゃんとは恋人だったんだよね?」 一拍、俺の反応をじっと見つめてから、 さらに距離を詰め、声を低く甘く囁く。 「でも、忘れないでね?」 小さな指先が俺の頬や胸、肩を順々になぞっていく。 「お兄さんのファーストキスは、私だよね? お兄さんが最初に触れた女の子の胸は、私のものだよね? お兄さんが最初に触れた膣も、私のものだよね?」 一つ一つ、確かめるように指を折りながら、 そのたびに顔を近付け、額をこつんとぶつけてくる。 「お兄さんが初めて絶頂させた女の子も、私。 挙句の果てに、お漏らしまでさせたのも私。 お兄さんの童貞を捧げたのも、私だよ?」 ピリカの手が、俺の指と絡まる。 「お兄さんが無責任に、何度も、何度も射精して、 孕ませたのは、私――だよね?」 さらに膝で俺の脇をしっかり挟み込み、動けないようにしたまま、 顔を覗き込みながら、最後の一言を重ねる。 「お兄さんが夜這いした相手は、私だよ?」 「分かるよね、忘れないでね? お兄さんの“初めて”全部受け取ったのは、私なんだよ?」 その声は優しさと独占欲の入り混じった響きで、 絶対に揺るがせない、確かな自信に満ちていた。 ピリカはさらに顔を寄せ、俺の唇に自分の唇を重ねて、そのまま、深く、激しく舌を絡める。 そして、口付けを終えると。 「そっか、逆、なのかも?」 その声は、ささやくように低く、けれど確かな響きを持っていた。 「私が――お兄さんの人生、責任取っちゃいます♡」