荒れた王城。 魔物の死体と打ち倒された魔王軍の旗が散らばる玉座で、アコレードが行われていた。 ヨシタカの村正を持ったストロベリーが、膝まづいて座るヨシタカの肩を村正の腹で叩く。 「はい、これでヨシタカ君は私の騎士…じゃなかった侍です」 ※ヨシタカはサムライにクラスチェンジした!※ 「わあい」 ヨシタカが喜ぶ。 ここはストロベリーの国。 魔族に滅ぼされ、占領されていた国をストロベリー、アストレッド、ヨシタカが取り戻したのだ。 「ストロベリーお姉ちゃんはこれからどうするの?」 「旅を続けようと思います。私一人だけここにいたところで、どうしようもありませんから」 「えへへ、これからもよろしくね!」 「はい!…アストレッドさんも、いいですか?」 「うん、よろしく」 3人の旅が再び始まった。 「それで?おめおめと逃げ帰った挙句拙者の部下を寄こせと言うのか?」 「へえ。よく考えたら、カースブレイド様が手を焼いた連中に、あっし一人で挑んだら負けて当然かと。何しろあっしとカースブレイド様の実力には天と地ほどの差がありますから」 「むう。それもそうだな」 カースブレイドも一度彼らを相手にして逃げ帰っている。ブライが一人で倒してしまうと、カースブレイドよりもブライの方が強いという事になってしまう。 「では、拙者の配下をいくつかやろう」 「ははっ。大事に使わせてもらいます」 ある時、モンスターが現れた。 「任せてよ!サムライの僕が倒す!!」 「あっこら!! 一人突出して3段斬りで倒すヨシタカ。 またある時は、 「モンスターが居る。迂回して進もう」 「やあやあ!我こそは!」 名乗りを上げて戦闘を始めるヨシタカ。 ヨシタカは侍になってから調子に乗りまくっていた。 「ヨシタカ!ちょっと調子に乗りすぎ!」 「もう、主君の私の言う事を聞いてください!」 「ぶう」 「君はまだサムライになったばかり!スタート地点なの!」 「ちぇっ、アストレッドお姉ちゃんは勇者だからって。僕だってさ…」 「もう…」 調子に乗った子供ほど手に負えない物はない。 「随分調子がいいようだな、ヨシタカ」 すると、ブライが現れた。 「あ、師匠!僕も侍になったよ!」 「そうか。…おい、お前達」 ブライが合図すると、魔物がゾロゾロと現れた。 「我らカースブレイド四天王!!」 「四天王!?…いっぱいいるけど?」 「四天王の一人の部下にまた四天王がいるんですか?ややこしい」 四天王に突っ込むアストレッドとストロベリー。 「我ら四天王!しかしお前たちは3人!我らの方が多いので、減らしてやる!」 「違うぞ。奴らは3分割なのに対して、お前達は4分割しなきゃいけないからお前たちの方が不利なんだ」 「そ、そうなのか?だまされる所だった…!」 「さすがはブライどの!」 ブライに諭され、四天王(?)達は納得する。 「す、筋金入りのバカだ…!」 アストレッドが驚愕する。 「え?そうなの?僕たち卑怯なの?」 ヨシタカが動揺する。 「こっちも馬鹿だった!」 「なんだい、馬鹿じゃないやい!」 「…私もよくわからなくなってきました」 「ストロベリーちゃんまで!いい?単純に考えて!あっちは4人いるのよ?いや4人より多いけど!こっちの方が不利!」 「そ、そうなんですか?」 「そうなのか?ブライどの!!」 「チッ…全軍突撃ー!!」 ブライの掛け声とともに魔物達が雄たけびを上げてかかってくる。 「待ってください!」 ストロベリーの声に耳を傾ける魔物達。 「よくわからなくなったので、代表者を出して1対1で戦いましょう」 「うむ、わかりやすい!では、俺様が出る!!」 「いや、俺だ!」 「俺だ!」 「(…ほっとくと殴り合いになるな)デビルブラスト、行け」 言い争っていた魔物達だが、ブライの鶴の一声でデビルブラストと呼ばれた魔物が出てくる。 仮面の様な顔面に筋骨隆々な身体、特に右腕が大きく盛り上がっている。 「グヒャヒャヒャヒャ~!!俺様が木っ端みじんにしてやるぜ~!!」 「じゃあ、こっちからは私が」 「僕が行く!!侍の僕が!!」 と、出ようとしたアストレッドを遮ってヨシタカが出た。 「行くぞ!斬て…」 「ふん!」 「ぎゃん!!」 斬鉄を打とうとしたが、大ぶりな技を構えている間にワンパンもらうヨシタカ。 「くっそ~!今度こそ斬鉄!!」 今度こそ当てたが、あまり効いていない!! 「どうした~?その程度か?こちらから行くぞ!ブラストパンチ!」 「ぎゃあああああ!!」 デビルブラストの巨大な右手の一撃で倒れるヨシタカ。 「ヨシタカ君!!もういい下がって!!次は私が相手だ!!」 その時、魔物達の腹が鳴った。 「俺達、腹減った」 「チッ、燃費の悪い連中だ。おい、帰るぞ」 そう言って引き下がるブライ達。 「ヨシタカ君、大丈夫?」 「今回復魔法をかけますから」 回復魔法をかけられた後も、ヨシタカはしばらく起きようとしなかった。 負けてから数日。 英雄譚を読みふけるヨシタカの部屋に、アストレッドが入ってきた。 「……」 「ヨシタカ君、まだショック?」 「……」 「私、故郷では力がない方でね」 「……」 「華奢で頼りない見た目だってよく言われてたんだ」 「あんな馬鹿力なのに?」 「馬鹿力って…それで、強くなるために剣とかいっぱい練習して、魔法にまで手を出しちゃった。多分、私が族長の娘だからシャーマンのオババも魔法の師匠も教えてくれたんだろうと思うけど、魔法なんて覚えようとするの私だけで、笑われて、男の子に会うたびにセクハラされて、多分族長の娘じゃなかったら力づくで物にされてたと思うけど、それでも頑張って、一族最強の戦士と戦って勝って、それでもそんな戦い方は卑怯だって認めてもらえなくて、お父さんもお母さんもやっつけて無理矢理旅に出たんだ」 「その自慢話続く?」 「ここから先は自慢じゃないよ。私、盗賊の罠だとか、詐欺だとか、ジーコランドのモンスターだとかにあって、いっぱいエッチな事されたんだ。ドラゴンだって倒せる私がさ。なんでこんな奴らに犯されなきゃならないんだって思いながらエッチされてたの。ヨシタカ君も見てきたでしょ?」 「うん」 「結局、私って殴って解決できる事しか学んでこなかったんだと思う。戦いって、いつも万全の状態で出来るわけじゃない。お腹が空いて力が出ないかもしれないし、病気になってるかもしれないし、罠にかかってるかもしれないし、私より強い人が相手に味方してるしれないし、…生理が来てるかもしれない。相手だってそんな所を付いてくるんだよ」 「僕に卑怯になれって事?」 「そういう言い方は良くないな…まだわかんないかあ、一度スッキリする?色んな事がわかるようになるよ」 そう言ってアストレッドはヨシタカの手を取る。 「や、やめて…やめて!!」 ヨシタカは激しく拒絶した。アストレッドの怪力から逃れるために忍者の体術を使って逃げた。 「…ほら、そう言う事、できるじゃん」 ヨシタカの背中を見て、アストレッドは呟いた。 ヨシタカは近くの森に出て、剣を振るっていた。 今までは斬鉄を鋭くする為の素振りしかしていなかったが、色んな太刀筋を試していた。 「えい!やあ!とう!」 「剣の稽古か、少年」 見ると、デカイ兎が服を着て立っていた。 「可愛いウサちゃん!」 ヨシタカは兎を抱っこしようとしたが、ゴンと鎖分銅で頭を叩かれた。 「あ痛!」 「私の名はウサフリード。ウサビット族だ。ウサビット族を知らないのか?」 「知らない。獣人?」 「獣人だ。非力故このような武器を使っている。許せよ」 そう言ってウサフリードは鎖鎌を出す。 「鎖鎌だ!はす向かいの兄ちゃん以外で使ってる人初めて見た」 「君の剣が見ていられなくてな。腰は据わっているのに、太刀筋が滅茶苦茶だ。本来の型に限界を感じたという所か」 「わかるの?」 「うむ。我らは体格に恵まれぬ故、戦士となる者は常に自分の戦い方を模索している。この様にな!」 そう言って、ウサフリードは鎖分銅をヨシタカの刀に巻き付ける。 「うわわっ何するの!?」 手に持った鎌を振り回して襲ってくるウサフリードに、ヨシタカは焦った。 「早くその鎖をどうにかしないと、綺麗な顔に傷が付くぞ!手足の腱を切ってもいいな!不具になったら弟として可愛がってやる!うんそれがいい!弟にしてやる!なれ!」 ウサフリードは半分本気だ。 「くっ!」 「どうする?鎖をどうにかするか、鎖が巻き付いたまま戦うか?君はどうしたい?」 (僕の、僕の理想は) ヨシタカは自分の戦闘スタイルに付いて考えていた。こんな時、自分の理想とする侍は…… 「罠ごと叩き斬る!」 そうして閃いた太刀をぶつける。 斬鉄という技は、その名の通り鉄の鎖を断ち切った。 「ふふ、獲物が無くなってはどうしようもないな、では私は退散するとしよう!」 ウサフリードはピョンピョンと跳ねて去っていく。 「また会おうね、ウサちゃん!」 去っていくウサフリードの背中に、ヨシタカは約束した。 「今日は2人か!襲い甲斐があるな!」 アストレッドとストロベリーの前にブライ達が現れる。 デビルブラストが前に出る。 「今日俺に倒されたいのはどっちだ~?」 「お前を倒すのは僕だ!」 デビルブラストの前にヨシタカが現れた。 「お前はダメだあ。この前倒したからなあ」 「倒し返されるのが怖いの~?ヘタレなんだあ」 「なんだと!今度は殺してやる!いいよなブライ殿!」 「ああ、構わん。…というか、なんで一人ずつかかって行ってるんだお前ら?」 「うおおー!殺してやる!」 デビルブラストがヨシタカに殴りかかる。 ヨシタカはそれを切り払って、3段斬りを見舞う。 「ぐあっ!!やるようになってるじゃねえか!ブラストパンチ!!」 デビルブラストが巨大な右腕を力いっぱい振るう。 流石にこれは切り払えない。 ヨシタカはよく見切って避ける。 「何!?」 デビルブラストが大きく体勢を崩す。 その隙をヨシタカは見逃さなかった。 「斬鉄!!」 ヨシタカの斬鉄はデビルブラストの右腕を切り落とした。 「ぐああああ!!」 「デビルブラスト!下がれ!お前ら、今度こそ全軍突撃だ!!今度は敵の言う事に惑わされるなよ、行け、行け!!」 魔物達が雄たけびを上げてかかる。 剣を構えるアストレッドの隣に、ヨシタカは構えた。 二人の後ろでストロベリーが召喚獣を呼ぶ。 その時、鎖分銅が飛んできて魔物達の足を絡め取った。 足を絡めとられた魔物は倒れ、何匹かの魔物がそれに巻き込まれる。 「ウサちゃん!」 「ウサちゃんではない、ウサフリードだ!助太刀する!」 「勇者ウサフリードか。おいお前ら、帰って飯食うぞ!!」 「飯!!」 何匹かの魔物はそれに従い、聞かずに突っ込んできた魔物はヨシタカ達の集中砲火を受けて倒された。 「ありがとうウサちゃん!」 「何この子かわいい~」 ヨシタカ達がウサフリードに抱き着こうとするが。ウサフリードは逃げた。 「……私はこれでも21歳だ」 「21歳!?」 「私達よりも年上……」 「私を愛でようと思うその気持ちは嬉しいが、できれば年長として扱って欲しい」 「じゃあウサフリードお姉ちゃんだね!」 「お、お姉ちゃん……」 ウサフリードが感慨深げにしていると、他の2人も「お姉ちゃん!」「お姉ちゃん!」と呼びかけた。 「ふ、ふむ…」 ウサフリードはにやけてヨシタカの顔に飛び込み、頭をなでなでした。 「いやーん私もー」 「ヨシタカ君ばっかりずるいー」 「ウサフリードお姉ちゃんも、僕たちと一緒に旅しようよ」 「ふ、ふむ、悪いが私には百獣王のベルトを探すという目的が……」 「僕たちも探す!丁度ストロベリーお姉ちゃんの国取り戻して目的が無くなってたんだ!ねえ!僕たちのPTに入ろうよ!」 ヨシタカがスリスリナデナデしながらウサフリードを勧誘する。 「あっあっあっわかったっわかったから放してくれっ」 「やったあ」 宿屋の夜。 「なっ何をしているんだ君達は!」 「何って…」 「ねえ?」 ヨシタカが成長したご褒美を与えているストロベリーとアストレッドを見て、ウサフリードは憤慨した。 「ウサフリードお姉ちゃんも入る?ウサフリードお姉ちゃんに僕の入るかなあ」 「こんないたいけな少年相手に恥ずかしくないのか君達は!」 「恥ずかしいけど、今日はご褒美だから…あんっ」 「この子最初からやり慣れてましたよ。全然いたいけじゃありません。ケダモノです。あっそこいいっ」 「こんなふしだらな所にいられるか!!やはり私は一人で旅をする!」 「お姉ちゃん……」 「お姉ちゃんと呼ぶな!君がこんな清楚ビッチだったなんて!私は本当に清楚な妹を探す!」 「百獣王のベルトじゃなくて?」 「う、うるさいうるさい!ではさらばだ!」 そう言ってウサフリードは去って行った。 「ウサフリードお姉ちゃんは行ってしまいました。ヨシタカ君のチンポが節操ないせいです。あーあ」 旅出会いは一期一会である。 縁が有ればまた会えるであろう。