①漆黒の勇者イザベラ×聖盾のクリスト イザベラは陶然と自分の恋人をベッドの中から眺めていた。情事で渇いた喉をコップの水で癒している、月明かりに照らされたクリストの裸体が、なぜこんなにも神々しく見えるのだろうか。 (そっか…髪だ) クリストの金糸のような金髪が、月光に照らされて輝いている。もし神というものがあるのなら、クリストが自分に遣わされた神様なのかもしれない。比喩ではなく本心でイザベラはそう思った。 「イザベラ?」 イザベラの視線に気づいたクリストがベッドに腰を掛ける。「起こしてしまいましたか」と小声で囁くと、イザベラは首を横に振り、上半身を起こしてクリストの髪を撫でた。 「クリストの髪、綺麗だなって思ったの」 「僕の髪が?」 クリストは驚く。彼からすれば、イザベラの黒髪こそ真の美と思えたからだ。 クリストはイザベラの髪を撫でる。夜の闇がますます黒く染めあげた、漆黒のような黒髪を。 「綺麗ですよイザベラ」 「私の髪が?」 「髪も、貴女も」 クスッと笑ったイザベラが、クリストの意外と厚い胸板に寄りかかり、彼の胸に口付けをする。 「もういちど、しよ?」 そう囁く恋人に優しくクリストは頷くと、そっとイザベラを押し倒した。 ******************** ②サーヴァイン・ヴァーズギルト×戦士メイド ハナコ 腰の痛みと共にハナコは目を覚ました。ベッドについた赤い染みに気づき、笑みが浮かぶ。 「あいたた…、ギルのやつやってくれたじゃない」 憎まれ口を叩きながらも、ハナコはにやける口元を抑えきれない。 昨晩、ハナコとギルは愛し合った。ただの仲間から、兄と妹のような関係から、とうとう男女の仲に関係を進められたのだ。 ふとハナコはベッドに落ちてる自分の黒髪と、ギルのホワイトブロンドの髪がベッドに散らばってるのに気づく。 自分の長い黒髪が蛇のようにギルの髪に絡みついている。髪にまで己の情念が宿ったのかと、ハナコから苦笑が漏れる。 (5年) ギルへの想いに気づいてから、この日を迎えるまで5年もかかったのだ。所詮叶わぬ恋かと諦めかけたのも1度や2度じゃない。 王妃様には色々助言も頂いた。聖都に戻らない彼をレンハートに招く作戦、引き留める作戦。あの人なしだったら今この朝は迎えられなかったろう。 「どうした」 気づくと、コーヒーカップを手にしたギルが部屋に戻っていた。 ハナコはクスクス笑うとギルに抱き着いた。驚いた表情のギルが片手でハナコを抱きとめる。 「なんでもないわ。ベッドに髪が落ちてるって思っただけ」 ******************** ③偽勇者ユイリア×魔術師マーリン 「ん?どした?」 風呂場で体を洗いながら見上げるマーリンに構わず、ユイリアは彼の頭上に顎を乗せ、マーリンの髪を弄り続ける。 「いえ、気にしないでください」 とは言われても、マーリンの髪を引っ張って遊ぶユイリアに、マーリンの居心地の悪さは深まるばかり。それに、一糸まとわぬ彼女の巨乳が後頭部に当たってて、また情欲が沸き上がりそうになる。 「やめい」 とうとうユイリアの手を掴んで彼女に向き直ると、むぅ、とユイリアが不満げな顔をする。 「貴方の茶色の可愛い髪を触ってたのに」 「可愛い?」 なんだそりゃ、とマーリンは呆れかえった。桃色や黄色ならともかく、茶色の髪を可愛いとは。 そう言うとユイリアは露骨にユイリアの声が不機嫌そうに低くなった。 「こんなに美しい茶髪なのに勿体ない」 「勿体ないねえ…」 ユイリアが色々理由を並び立てるのを、ふんふんとマーリンは話半分に聞く。曰く、親しみが湧く、アグレッシブそう、フレンドリーそう…。 「俺からすると白髪の方が神秘的な気がするけどよぉ」 マーリンはユイリアのアホ毛を掴んで伸ばす。パッと放すと自分の存在を誇示するかのように、アホ毛はまた元の位置に戻った。 ******************** ④ギャン・スブツグ×新米刑事 サトー 「あ~だる…。せっかくの休日になんでこんなこと…」 ギャンは何とも気だるげにベッドにコロコロをかけていた。 『ベッド汚れてますよ!コロコロかけてください!』 そう言うサトーにあれこれギャンが反論するも叶わず、「はい!」とサトーから勢いよくコロコロを渡されたギャンは、他に選択肢がないことを悟った。 「アイツ後輩だよな?もう少し俺への敬いをよぉ…」 ブツブツ言いながらギャンがコロコロをかける。仕事では相変わらず素直で真面目な刑事なのに、プライベートともなると何故かギャンはサトーに逆らえなくなる。ギャンはそれが不思議だった。 「ん?」 紙の粘着が弱まってきたので紙を取り換えようとしたギャンは、ある事に気づく。 「サトー!これ見てみろ!」 ギャンの叫び声に掃除機を手にしたサトーが、慌ててギャンの所にやってくる。部屋に入ったサトーに、ギャンがコロコロを突き付ける。 「これを見ろ。コロコロについた髪、黒髪が多いな。つまりベッドについた髪はお前のってことだ!」 「えっ…あ…」 一矢報いたとギャンはほくそ笑む。顔を真っ赤にして俯くサトーの内心には気づかずに。 (一体なにで落ちた髪だと思ってんですか!) ******************** ⑤ヤン・デホム×スパーデ・ディ・レンハート 裸体のスパーデが己の金髪の長い髪を手ですく姿を見た時、ヤン・デホムは美しいと思い、直後に自身を恥じた。 「…すまん、不用心だった」 背を向けて立ち去ろうとするヤンに、背後からスパーデの声がかかる。 「ヤンよ、そう急いで戻ることはない」 スパーデが川岸に上がる。滴り落ちる水滴と、濡れた足跡を跡に残しながら、裸体のスパーデはヤンの所に向かう。 「既に、互いの裸を知る間柄ではないか」 仏頂面で後ろを振り向くヤンに、好まし気にスパーデは笑う。既に男女の仲になっているというのに、変に固い男だ。 「一瞬奇妙な顔をしていたな、ヤンよ」 ヤンの背中をなぞりながらスパーデが囁きかける。 「どんな感想を抱いたか教えてくれ」 ヤンは素早く振り向くと、己の背をなぞっていたスパーデの腕を掴む。 「女とは不思議な生き物だと思った」 正解ではないが、彼にとっては間違いでもない。ヤンに追いつこうとする優れた剣士であるスパーデ。第3王女としての相応しい気品を保つスパーデ。そして今ヤンに見せる女の顔をするスパーデ。どれが本物の彼女の顔なのか。 「なら、確かめてみろヤンよ」 婉然と微笑むと、スパーデはヤンの首に腕を回した。 ******************** ⑥ラーバル・ディ・レンハート×サンク・マスグラードの訓練兵 ジーニャ 「紅白は縁起の良い色同士の組合せとしてよく用いられるが、この国もそうなのか?」 激しい浅瀬を終えた後、小休憩中にラーバルがジーニャの髪をすきながら訊ねた。 「縁起、ねえ」 ジーニャが皮肉気に笑う。縁起とかサンク・マスグラード帝国にとって、これほど縁のない言葉はない。 「まあ、確かに紅白の色はよく使われてるぜ」 「サンタクロースも紅白だしな」と言いながら、起き上がったジーニャはラーバルに抱き着く。 「…アタシとお前の髪が紅白だからそんなこと考えたのか?」 ぐっ、と言葉に詰まるラーバルにジーニャが盛大にため息をつく。 「これまではそうかも知れないけど、これからもそうだとは限らないだろ!俺はジーニャを」 続きをラーバルが発することはできなかった。ジーニャが即座に己の唇でラーバルの口を封じたから。 「…そういうのはいいだろ別に。アタシにはこれでも十分だ」 (アタシがラーバルと結ばれるなんて周囲が認めるわけないんだ) 己の頭に浮かんだ後ろ向きな思考を振り払い、ジーニャはなおもラーバルを欲する。 …ジーニャが知らない。明日、覚悟を決めた漢の顔をしたラーバルが、レストロイカに直談判を決行することを。