無機質な壁には、止まることのない水音と叫び声とが響いていた。 嬌声――というにはあまりに悲鳴に近いそれは、水音の激しさと比例するように高くなり、 そして時折、息の詰まるような沈黙の音と共に、ふつりと、中断され、また始まる。 それがしばらく続いたのちに、ぺた、ぺた、と硬い床に柔らかなものが接しては、 剥がれていく音が鳴る――そんなことが、終わることなく繰り返されている。 長い長い通路の中程、曲がり角はいまだ見えず。ただでさえ四つん這いでのろのろと、 歩いては止まり、歩いては止まりの繰り返しなのだ――女の両腕は、疲労に震えていた。 膝をついた両脚についてもそうである。彼女の白い肌には、ぽつぽつと汗の粒が輝く。 運動のつもり、ではないだろう。表情は苦悶にも近い悲痛さを纏っていた。 そしてそれに反して、女の股間からは、性的興奮を証明する体液が、止むことなく噴いていた。 そのたびに、両腕が一層がくつき、今にも倒れそうな風になるのだ。 しかし、彼女が倒れ込むことは許されない。主を背に載せた馬が、そうできないのと同じように。 その背には、一体の――出身星系からして大きく違う、異星人が跨っている。 いや、跨る、というよりは、しがみついている――そう評する方が正しいか。 彼の尻は女の背の上に置かれているわけではなく、彼女の尻の斜め上にある。 馬の尻にしがみつく猿――そんな牧歌的な光景を想像させもする彼の小さな体格は、 緑色の生々しく血管の浮く肌、上背に比して妙に長い手足、大きく発達した性器、睾丸、 そんなものとの不均衡によって、一層、歪で醜く見えるのだった。 女の側が、すらりとした高身長と長い金髪、青い瞳、白い肌―― そんな、地球人種の雌としての最高水準にあるからこそ、その対比は強く働く。 女の一存で振り落とせそうなその小柄な異星人は、彼女の反応など度外視して、 ひたすら、がつんがつんと腰を打ちつけ――明らかに大きく太い性器で、中を穿つ。 乱暴にも見えるほどの勢いと頻度ながら、一突きごとに結合部からは愛液が噴き、 時に、潮もびちゃびちゃと勢いよく垂れては床を、ふくらはぎを汚す。 それはつまり、彼が極めて意識的に――挿入の速度と角度とを操って、 巧みに、交尾相手の弱点を刺激し続けているのに違いなかった。 彼女の声は、我慢に我慢を重ね――なおそれでも抑えきれない甘さを滲ませている。 そしてまた、彼の四肢は彼女の胴を背中側から抱え込んでいるのだった。 両者の頭部は、およそ頭一つ分の空間を隔てているぐらいに遠く離れており、 ゆえに、激しい抽挿を経ても、頭同士がぶつかってりすることはない。 限りなく、地球人種の――殊に高身長の――雌との交尾だけに、特化したような身体構造。 そんなものが、常に背に張り付いて、性器を突き立てて来ているのだから、 彼女がまともに歩けない――立っていることすら困難なのは、言うまでもないことだろう。 常に交尾させられている、という関係上、当然女は全裸体である。 ただ、黒い無骨な首輪の他に、一糸をも纏う権利を与えられてはいない。 それを命じているのは、背に跨る彼――ではなく、その所属する組織、宇宙海賊の上役だ。 銀河最強の賞金稼ぎ――だった――彼女は、仕事柄、悪党からの恨みを買う。 そんな女が捕らえられ、武装解除されたなら――辿るべき道は一つだ。 だが、武装の中から取り出された彼女の“中身”は、外骨格の種族にとっては、 不必要に柔らかな体表を持った、不気味な外見の存在とも映る。 見せしめのために、女に生まれたことを後悔させてやれ――では誰が? 腰が引ける同僚たちの中から抜擢されたのが、つまり彼なのである。 結果的に言えば、それは適材適所、の言葉がぴったりと合うだろう。 知能が発達した反面、肉体的な強度に劣る彼は、暴力至上主義の荒くれ組織において、 常にどこか、見下される側であった――もとより、知と暴が揃わなければ上には上がれない。 鬱屈した感情をぶつける相手として、名声だけは稼いでいたこの女はちょうどよかった。 影で、負け犬同士の交尾だと嗤われていることは知っている――だが自分は、 お前たちのやらないことを、喜んでやれているのだ――むしろ彼の方から、愚かな連中め、と、 内心に同僚達を嘲笑う材料ともなったのであった。それに、思ったより、具合がいい。 少し工夫して突き入れてやるだけで、面白いぐらいに反応が変わり――効果が見られるのだ。 生来の探究心が疼き、あっという間に、彼女の弱点と性感帯を調べ上げた彼は、 今や腰の使い方一つで、女の歩く先を操れるまでになっていた―― 目標は――この女を、孕ませること。出身星系が違いすぎ、生態や繁殖形態が離れていれば、 交雑の難易度が極めて高くなることは、彼も、愚かな同僚達も知っている。 しかし彼には勝算があった――この女の肉体に、多くの生物の遺伝子が取り込まれていて、 外見に表れている、地球人種以外との交配可能性は決して低くないだろう、と。 現に、何度も何度も突き回され、子宮内への射精を受け続けている女は、 何度も、膣内に出すなと――妊娠が決して絵空事ではないかのような台詞を吐く。 異星人同士の交配など起こり得ぬと思っているなら――そんなに怯えることはないはずだ。 馬に乗る彼を、同僚たちは軽蔑半分、畏敬半分の目で見た。 彼にはそれが心地よく――わざとらしく咳払いの一つでもしてみせるのだった。 女の胎は、床に擦れそうなぐらいに大きく膨れ、重たくゆさゆさと前後に揺れる。 乳房もそれに押され、たぱん、たぱん、と跳ね上がるように勢いよく躍る。 それは彼女の雌性を、ただ下卑た玩具として消費する、最も下劣な行為である。 黒く染まった乳首からは、ぽたぽたと母乳が垂れ――それを肘で拭きながら歩く姿は、 あまりに不格好であり、尊厳の欠片も残っていない。 不意に彼は、ひょい、と馬乗りの状態から――大きくなって、しがみつきやすくなったた腹に、 両手両脚を絡めて、挿入の体勢を取る――女も、その動きの意味は知っている。 やめろ、と言う彼女の陰唇に、弄ぶように鈴口が口付ける。 交尾漬けの毎日で色素が沈着し、乳首に負けず劣らず黒く染まってしまったその入り口は、 あてがわれた雄の性器を拒む力を、とっくに失ってしまっている。 そして彼は――周りの同僚に見せつけるように、女自身に思い知らせるように、 ぬぷぬぷと肉を割り開いて――奥の奥へと、あっさりと全体を沈めてしまう。 そこから一気に引き抜き、突き立て、抉り、ほじくり―― 既に調べきった性感帯を、絶妙な速度と頻度とで、的確に刺激し続けるのである。 女はその大きな腹の上に自ら覆い被さるような格好で肘との間に乳房を挟み込んで、 できる限り己の醜態を小さく見せようとする――だが雄は巧みに、 挿入の角度と速度を調整して、彼女の顔を床から引き出し、間抜けな絶頂顔を衆目に晒させる。 母乳も絶頂と共にぶびぶびと、肘にこもった力によって絞り出され、 観衆の鼻に――既に一匹の雌牛と成り果てた哀れな女の姿を描くのであった。 そして何度か、彼女の甘ったるい声を引き出した彼は、また馬を歩かせ、去っていく。 専属の種付け屋としての地位を得た彼は――女の胎に、何人もの子を仕込んだ。 彼からしてみれば、雌に腰を振っているだけで、一定の地位と称賛とを得られるのだから、 こんなに美味い話はないと言えた――そして彼女に産ませた子は、 その体内に有する多くの生物の遺伝子によって、優秀な兵隊となることが約束されている。 父に忠実な、高い知能と高い身体能力を有する私兵を密かに教練し―― 彼は着実に、組織内での地盤を堅固なものとしていった。 彼が宇宙海賊の実権を握った頃には、私兵の数は既に数十にも登り―― それだけの数をひり出させられた女は、もうまともに生活を送れる身体ではなくなっていた。