石造りの円卓、周囲には幾つものモニターが張り付けられている。 「では、始めましょう」 その真ん中にデラーシュとリベラリストの二人は立っている。 「頼んだ」 リベラリストの足元に魔法陣が浮かび上がる。リベラリストは手を魔法陣に触れさせ、詠唱を唱える。 「"我が主よ、我の糸の繋がりを、影の繋がり辿り、今ここに───”」 「仰々しい呼び出しはいらねェって言っただろがよ」 リベラリストの言葉を遮る様に魔法陣から二対の糸が飛び出し、それぞれが人型を取る。 「排影を得たお前たちは一種の神に近しいんだ、ある程度複雑な召喚方じゃなきゃ気軽に呼び出されて面倒だぞ」 デラーシュが頭を抱えながら言う中、糸の人型は方や短い黒髪のサングラスを掛けた好青年に、方や長く白い髪をした長身の美人に纏まりあがる。 「相変わらず分からねェ。なんで神様に近づく程簡単に出てこれるんだ?」 「信仰は声となるのですよ…、和正さん…」 ”リアリスト”柊和正と”イデアリスト”柊レイラ、デラーシュは二人を現れたのを見ると奇妙な響き方をする声で喋る。 「”二人が来たぞ、お前たちも来い”」 リベラリストはちらりと横の椅子を見ると、そこには既に一人座っていた。 「遅いな、吹雪も過ぎ掛けだ」 「色々あったのよ、ねぇ?」 更にその隣には、黒い布で顔も体も隠した一人が。 そしてデラーシュの影から一人の大男が引きずり出される。 「おい!これで呼び出すのはやめろつってんだろ!」 「直ぐに来ないのが悪いな」 「急に呼び出す方が悪いだろうがよ!」 リベラリストを除いた四人は各々席に座り、 「では私はこれで。終わりましたらお呼びください」 リベラリストは円卓から立ち去った。 そして最初から座っていた一人の男…ロム・デレストこと東行 辿西が口を開く。 「カッサーノと沙紀は相変わらず居ない、か…」 「二つですら寂しいってェのに、四つも空いてちゃァな…」 「仕方ねぇよ、カッサーノは引きこもったまま出てこねぇし、沙紀はそれに付きっ切りだ。何をしてるのかは知らねぇが…」 「あの人の事だ、必要だからこそ居ないのだろうな」 円卓が暫く静まり、再び東行が口を開く。 「ここは"ハーツオブヘイブン”ではないが石の円卓だ、我々全員の命題がここにはある。さてセーマ、始めるとしよう」 東行に呼ばれた”ペリギティス”…セーマ・フラワーズは立ち上がり宣言する。 「──はい、では只今よりM.S.T.十頭会議を始めます。先道総室長、説明を」 「今回の件、全員承知の事ではあるが敢えて開かせてもらった。まあ簡単に言えばこれからやる事のまとめと意思統一だ」 デラーシュ…先道 界明は続けて語る。 「今の私の身体は相当に不味い状況だ。暴走の間隔が明らかに短くなり、その被害想定規模も高まりつつある。魂の必要数も比例して増加し、このままではデイクヤードの人口増加量を上回るのも時間の問題だ」 先道はエルマー目配せするとエルマーは面倒そうに立ち上がり、大きく咳込み語り始める。 「先道の呪い。これは抑え込めず、呪解出来ず、封印も出来ない。全員知っているな。そして呪いについて現状確実視されてるのが二つ。一つは影星との統計的関係性、二つ目は神学部門の調査により、奇跡論の類の呪いである事。そして影星は特徴的な神性波動を放出している、それは総室長の呪痕波線に非常に似通っている。偶然性は可能な限り排除したが結果は変わらない、影星と呪いの関係性はおおよそ間違いねぇ。で、東行総帥殿、カヴァッツァはなんつってたか」 エルマーが椅子に倒れ込むと東行は立ち上がる。 「…カヴァッツァ博士率いる影星観測チームは今この1年が最も接近し、今後300年は接近する事はないと予想している。そして先道の呪いによる暴走と理性維持、これらは後200年均衡すれば御の字という予想だ。つまり」 「今しかないって事だな」 エルマーの言葉と同時に東行は座る。 「影星の接近の重要性だが、影星と神性実体に対し、デイクヤードの”結界”を破り、2つ先の次元に、攻撃を行うには影星が十分に接近してなければならない。つまりこの最接近を逃せば後はない、という事だ。以上、質問は」 レイラは手を挙げる。 「結局…結界と2つの次元を超える方法…あれ以外にはないのですか…?」 「あるならば採用しない。そういう事だ」 和正は先道に続いて口を開く。 「クロスリーグの決勝。時期も人の数も位置も最適だ。楽しみにしてた奴らにゃァ申し訳ねェがな…」 セーマも続けて話す。 「揮発Sol-FaNによる連鎖的魂結晶化、その時に発生するエネルギーは膨大です。これと同等の瞬間エネルギーを生み出す方法は現状存在しないわ」 「それは…あの時の惨劇を繰り返す事…」 レイラの言葉に東行は淡々と返す。 「例え100万死のうと、無限に犠牲者が増え続けるよりかは遥かにマシだ」 その言葉に部屋はしんと静まる。 「知った事だな」 「ええ…例え…虐殺者として…名を残そうとも…」 「この世界の未来を考えりゃァ、些細だ」 「そもそも名声も汚名もどうでもいいですもの」 「俺は既に何十万と殺してるんだ、今更桁が一つ増えた位で変わらん」 「お前一人の罪じゃない、先道。俺たち全員が背負う罪だ。そして、もう一つの目的もある」 「影星の魂碇の地平線に囚われたかつての同胞を救い出す事。さらに、影星の破壊を行えるのであれば」 「次元移動計画最大の障害の排除、それも達せられる。一石三鳥、って事だな」 「神殺しに…魂を吸う大穴の破壊…。それが…達せられるので…あればですが…」 「はっ無理難題だなァ?」 「だからこうして再び集まった…。先道、昔らしく行こう」 「ああ、昔らしく…楽しく無茶をしよう、東行」 その言葉に、全員が覚悟の笑みを浮かべた。