アーランドが王国から共和国へと変わっても依然として貴族の定例会は残っていた。 シュヴァルツラング家の代表として今やただ世間話の場となっている定例会へ出席した私はそこで見知った顔に出くわした。 ──クーデリア・フォン・フォイエルバッハ。かつてアーランドの冒険者ギルドで受付嬢をしていた女性だ。初めて会った時は意見の違いで衝突したこともあったが、トトリと自分とクーデリアの3人でパーティを組んでた時期もあり、話してみるとついつい昔話に花が咲く。 ふと、私はクーデリアが着けている美しいペンダントが気になり、どこの物か聞いてみた。 すると、クーデリアは少し恥ずかしそうにそのペンダントにまつわる話を聞かせてくれた。 ──その美しい翡翠色の石のペンダントは『友情のペンダント』といい、幼馴染で親友のロロナにもらったが二つに割れてしまった石をケンカした際に仲直りのしるしとして錬金術士のアストリッドに頼んでふたつのペンダントに作り替えてもらい、贈ったものだという。 「普段は身に着けないけど、この定例会の後に久々にロロナとふたりきりで会うのよ」と照れながら、でもうれしそうに話すクーデリアの胸でペンダントが揺れる。 どうやら彼女は親友と会う時は必ずこのペンダントを身に着けているようだ。 本来、私は誰かとおそろいの物を身に着けるのは恥ずかしいと思っている。しかし、とある女性の笑顔が頭にすぐ浮かび、おそろいのアクセサリーを身に着けている姿を想像する。 悪くない。むしろうれしい。こうして、私とトトリのおそろいアクセサリープレゼント計画は静かに始まった。 とは言え、おそろいのアクセサリーと言っても私は冒険者。錬金術士のように調合で生み出すことはできないので、市販品を購入するか錬金術士に依頼するしかない。 せっかくなら量産品である市販のものより一点ものを贈りたい。錬金術士が拠点とする街の量販店はなぜか同じ品質、同じ特性のものが定期的に売られる現象が見受けられるのでなんか怖いし。 となると、錬金術士に依頼するしかないのだが、アーランドに錬金術士は多くない。クーデリアのペンダントを作った行方不明の天才錬金術士を除いてもトトリの先生、トトリの弟子、トトリの妹、トトリの妹の弟子、トトリくらいしか思い当たらない。全員トトリの知り合いだ。サプライズで渡したいと思っていたが、錬金術士は錬金術士同士でパーティを組んだり、各アトリエの出入りが頻繁なので絶対に漏れるだろう。特にフリクセル姓。 どうせバレて囃し立てられるくらいなら最初からトトリに頼んでしまおう。一緒に意見交換しながら作るのもきっと楽しいし。 「おそろいのペンダント...?ミミちゃん、おそろいのペンダント欲しいの...?」 思い切ってトトリに伝えてみるとなぜかトトリは歯切れが悪い。開口一番、お得意の毒舌が飛び出すかと思いきやなんだか煮え切らない。うっすら照れてるようにも自分を恥じてるようにも見える。 「ミミちゃん、ごめんね」 「実はもう、わたしとミミちゃんはおそろいのペンダントしてるの」 「わたしと一緒に探索に出るときにいつも装備してって言ってるエンゼルチャームあるでしょ?」 「あれってわたしとミミちゃんの2個分しか作ってないの」 「あと、裏側にミミちゃんとの記念日をわたしの手彫りで入れてるの」 「束縛が強い感じしてこれまで言えなかったけど、どんな時もミミちゃんを近くに感じたくてやっちゃってた」 「ごめんね、ミミちゃん。」 私は黙ってトトリを抱きしめる。トトリは抱きしめ返してくれる。これだけで何もいらない。 形があろうとなかろうとトトリと私はパートナー。このぬくもりが教えてくれる。いつでも。