※「俺の弟がかわいすぎて辛い」 「なんだアタル急に?そりゃトウジは俺達の息子だからかわいいが……」 そういうレベルじゃないんだよ父さん。あいつさ、自分が世界で一番カッコよくて強くなりたいって言ってさ…… 「あの年頃の子は人間でもデジモンでも言うことは変わらないな。」 だからいつか兄ちゃんよりもカッコよくて強くなるから、一緒に修行しようよ、って……もうそれがかわいくてかわいくて! 「ははは、かわいがるのはいいけどあまり甘やかすなよ?」 それはもう、あいつが一人前としてデジタルワールドで生きていけるよう、兄としてしっかり厳しく鍛えてるつもりだよ。 「そんなこと言って、この前も練習で作ったチョコあげてたろ。」 うっ!……そ、それは、捨てるのももったいないし、だったら少しでもトウジのエネルギーになってくれたほうがいいかなー、って…… 「あら、あなただってこの前トウジと二人で街に出かけた時にオモチャ買ってあげてたじゃないの。知ってるのよ?」 「げえっ!……ち、違うんだカメリア、あれはトウジに細工物の仕組みを勉強させようと思ってだな……内緒にしろって言ったのに。」 なんだ、父さんも俺と同じようなことしてたんじゃないか。 「全部ダメなんて言ってないわよ。ただ、やりすぎるとトウジのためにならないから、ちゃんとバランスを考えてね、って言ってるの。」 「そうだな、トウジのことを甘やかすのも、厳しく鍛えるのも、俺達家族の義務で、特権だ。」 特権で、義務…… 「俺もカメリアもアタルも、トウジのことを心から愛してる。だから、俺達がトウジにしてやれることはできる限りしてやりたい。」 「そうよね、私達の子供には、幸せになってほしいもの。そのためには、まずは生きていけるようにしなくちゃね。」 ……父さん、母さん。そうだね、俺もトウジのためにできる限りのことを…… 「何言ってるんだアタル、お前だってそうだぞ?」 へっ? 「お前だって俺とカメリアの大事な息子なんだ。お前のことだってトウジと同じぐらい愛してるし、幸せになってほしいんだぞ。」 「そうよ、あなたたち子供の幸せが、親である私達にとって何よりの幸せなのよ。」 父さん、母さん……俺、二人の子供になれて、本当によかった! 「よせやい、そう面と向かって言われるとさすがに恥ずかしいな。」 ※「俺の里親が立派すぎてつらい」 「はい?いきなり何を言ってるのアタル?そりゃリンドウさんとカメリアさんは立派な人……デジモンだけど。」 そうなんだけどさ……この前、二人にトウジのことを愛してるからちゃんと幸せにしなきゃな、って話してたんだよ。 「うん、それで?」 そしたらさ、トウジだけじゃなくって俺も二人の子供なんだから幸せになってほしいしそれが親としての幸せだって。 「よかったじゃない。あなた、あの二人を幸せにしたくて養子に入ったんでしょ?」 それはそうなんだけど……俺、すごく幸せすぎて、あの二人に返しきれるのかなって。 「返すとか返さないとか、幸せってそういうものではないでしょう?」 分かってる、それは分かってるんだけど…… 「なら、あなたにできることは立派な大人に成長して一人前になることでしょ、アタル。」 ミコ…… 「私もあなたもまだまだ未熟で、子供なんだから。親のためにできる一番のことはそれに決まってるじゃない。」 ……うん、そう言われるとちょっと不安になってくるな。俺、ちゃんと立派な大人になれるのかなって。 父さんや母さん、それから父ちゃんみたいな、尊敬できる大人に。……母ちゃんのほうはちょっと、アレだけど。 「何を言ってるの?しっかりなさいアタル!」 ミコ? 「あなたは、私が簡単には挟まりきれなかったリンカメカップルに自分から覚悟を持って挟まりに行った勇者でしょう?それが何を怖気づくことがあるのよ。」 いや、その表現はちょっとどうなのミコ?……でも、うん、そうだな。 「不安だと言うなら、私と一緒に成長して行きましょう。大丈夫、きっとうまくわよ。」 ミコ…… 「な、何呆けた顔で私を見てるのよ?」 お前、かわいいだけじゃなくって、すごく大人でカッコいいんだな。 「……っ!?そ、そんなバカなこと本人に面と向かって言うものじゃないわよ!」 ああっ、ごめんミコ!いや、本当にそう思ってそれが口に出ちゃっただけで、その、えっと、ゴメン! 「だから、なんでそういうことを素直に口に出しちゃうのよあなたは!」 ※「俺の好きな子がカッコよすぎて辛い」 「なに?ミコ姉ちゃんがそんなにかっこよかったの?」 それは内緒って言っただろトウジ!……うん、すごくかっこよかった。あいつ、俺なんかよりずっと大人で、本当に、カッコよくて、かわいくて…… 「ぼくのほうがカッコよくなるから!今はまだだけど、いつか!」 はは、そりゃ楽しみだな。 「ついでに強さも!オトナになったら、世界でいちばんカッコよくて強いデジモンに、なっちゃうから!」 ああ、トウジならなれるな。そりゃ間違いない。 「なれる!?兄ちゃんもそう思う!?」 当然だろ、だってトウジ、お前は勇者リンドウとカメリアの息子、そしてこの俺アタルの弟だぞ?お前がちゃんと正しい道を進む限り、一番カッコいいも一番強いも、お前のものだ。 「正しい道……ってなに?」 ちゃんと父さんや母さんのお手伝いをして、つまみ食いもしない、悪いことしたらちゃんと謝る。あとそれから、職人の修行も、戦いの修行も怠けずに続けて……だけど大事なことはな、トウジ? 「だいじなことは?」 もしかしたら自分が間違ってるかもしれない、ってことを忘れないことだ。 「……どういうこと?」 誰かや自分の正しさを信じることは大事だ。だけど、正しさを貫くことで、他の誰かを傷つけたり悲しませるかもしれない。 だから自分がやってることの正しさを何度でも何度でも確かめるんだ。それで本当に正しいって思ったら、それを最後までやり遂げるんだ。 「……よくわかんない。」 いいんだ、今のお前にはまだちょっと難しい話だからな。でもいつか、お前がどうしたらいいか分からなくなったら、兄ちゃんの今の言葉を思い出してほしい。 「……うん、わかった。じゃあさ兄ちゃん、さっそく修行いこうよ修行!」 いきなりか?っていうかお前が最強になるための修行に俺が一緒でいいのか? 「とーぜんだよ!だってぼく、兄ちゃんぐらい強くなって、それから兄ちゃんより強くなるんだから!」 ……ッ!……言ったな、このぉ!じゃあ行くか、いちばん強くなるためと、ニ番目に強くなるための修行に! 「うん!いこういこう!」 あっそうだ、俺が練習で作ったチョコも持ってって休憩時のおやつにしよう。そして、いっしょに強くなろうなトウジ! 「兄ちゃんのチョコ!?やったー!」 ※最初に戻る