## 本編 ### Part 1: 朝 ―持て余す肉塊― 目覚まし時計が鳴る前に、息苦しさで目を覚ました。 「ぅ……んっ……」 胸の上に、鈍く重い土嚢が乗っているかのような圧迫感。仰向けに寝ているだけで、肋骨の左右に広がりきれず首元まで迫り上がってきた巨大な脂肪の塊が、気道に物理的なプレッシャーをかけている。 あの夜から二週間。組織の医療班があらゆる投薬と処置を試みても、この身体は一ミリも「緋咲凛音」へ戻らなかった。 寝返りを打とうと少し身体を捻った途端、どぷん、と重力に従った巨大な乳房の下半分が、パジャマ代わりの大きなTシャツの中でシーツに擦り付けられた。 「あ……っ!」 ただそれだけのことで、先端の乳首がびりっと電気を帯びたように過敏に跳ね、脳髄に直接痛痒い信号を叩き込んでくる。 身長175cm。Gカップを優に超え、もはやHカップに到達している規格外の双丘。異常に広がった骨盤と、それに伴う異様なまでに肉のついた臀部。 蟲が「番いを誘き寄せるため」だけに生み出した、発情と交尾のみに最適化された【理想体】。 重力で脇に流れる胸を両腕で乱暴に押し退けながら、ベッドから這い上がる。上半身を起こした瞬間、首元まで迫っていた脂肪の塊が、凄まじい重力感を伴ってどすんと腹の方へ落ちた。 その重みが肩の筋や背中を引っ張り、朝いちばんだというのに酷い肩こりのような疲労感に見舞われる。 しかし、それ以上に最悪なのは下半身だった。 立ち上がった瞬間、下腹部のあたりで冷やっとした不快感と、同時に訪れるぬめり気のある生温かい感覚。 「また……出てる……っ」 Tシャツの裾が捲れ上がり、支給されたブカブカのXLサイズのショーツ――そのクロッチ部分が、ねっとりとした無色透明の体液で重たく湿り、太ももの内側にまで張り付いている。 寝ている間も、この身体は勝手におびただしい量の発情液を垂れ流しているのだ。 ふわり、と。 自分の股間から立ち昇る、甘ったるく暴力的な匂い――自家発情フェロモン。それを自身の嗅覚が捉えた瞬間から、子宮の奥がきゅうっと締まるような疼きが始まった。 自分の匂いで、自分が欲情するように出来ている。 この身体は、ただただ息をしているだけで快感のスイッチが入り続ける、狂った肉の檻だった。 「はぁっ……ふ……」 息を吐く。それすらも、甘く掠れたあえぎ声に変換されて朝の部屋に響く。 洗面台に向かい、鏡の前に立った。 そこに映っていたのは、「自分の身体に戸惑う少女」ではない。「朝から満たされない欲情を滲ませている、酷薄で色情狂の女」だった。 丸みを帯びた柔らかな輪郭。 困惑して顔をしかめているだけなのに、表情筋への神経伝達が根本からバグを起こしているのか、ぽってりとした厚い唇はだらしなく半開きになり、目尻には媚びるような紅潮が差し、潤んだ瞳が鏡越しの自分自身を誘うように流し目を送ってくる。 鏡の中の自分を見ただけで、下腹部の疼きが一段と強くなる。自家発情のループ。 前かがみになって顔を洗おうとした瞬間、どすんっ、と再び重い音を立てて、乳房が腕の間に落ち込んできた。 「じゃま……っ!」 洗面台の縁に、巨大な乳房の下半分が乗っかっている。 冷たい陶器の感覚が、薄いTシャツ越しに熱を持った乳房の裏側に伝わり、ひやりとした温度差がさらなる刺激を生む。 口をゆすぐために水を含もうとすると、厚くなった唇のせいで感覚が狂い、水が顎を伝ってTシャツの胸元にこぼれた。 濡れた布が、張り詰めた胸の谷間に吸い付く。 その冷たさと布の摩擦に反応し、乳首がみるみるうちに硬く尖り、Tシャツの生地を裏側からぽっちりと突き上げた。 朝食のトーストを齧るだけで、もどかしかった。 ただ咀嚼しているだけなのに、太くなった顎のラインが滑らかに動き、厚い唇がパンの表面をねっとりと迎え入れる。食べているだけの動作が、どこか性的な器官を弄っているかのような生々しいモーションになってしまう。 マグカップの縁に唇が触れる。 ただの陶器の縁が、異様に発達した唇の神経を撫でるだけで、ぞわりと背筋を悪寒のような快感が走り抜ける。 「……はぁ。学校……行かなきゃ……」 パンの欠片を舌で舐め取る動作すら、いやらしく糸を引くようだった。 これから、この『発情する肉塊』を引き摺って、大学に行かなければならない。 その絶望的な事実が、疼き続ける下腹部の奥に、ドロリとした重い鬱屈を落とし込んでいた。 --- ### Part 2: 大学 ―視線の檻― パーカーを頭から被る。胸元で生地が引っ掛かり、両腕を通すことすら一苦労だった。 腕を通して、ぐいっと裾を下に引っ張る。ぎゅうっ、とパーカーの厚い生地が巨大な乳房を無理やり押し潰し、内側で脂肪の塊が左右に逃げるように形を変える。 ファスナーを閉めようとするが、下乳の膨らみの体積が邪魔をして物理的に噛み合わない。断念して前を開けたままにすると、中に着たTシャツのUネックから信じられないほど深く暗い谷間が覗く。 パーカーで隠しているはずなのに、横から見ても膨らみの輪郭がはみ出しているのが自分でもわかった。 レギンスは、もっと酷い。 片足ずつ通すだけで、太ももの肉に引っ張られた黒い生地が限界まで薄くなり、うっすらと肌の色が透ける。 最大の難関は臀部だった。 両手で尻肉の下端をすくい上げるようにして持ち上げ、レギンスのウエスト部分を骨盤の上に引き上げる。パチン、とウエストゴムが腰骨に食い込んだ瞬間、レギンスの股の縫い目がぴたりとクロッチに密着した。 「っ……あ……!」 薄いショーツ越しに、レギンスの張力が常にクリトリスの位置に摩擦圧をかけ続ける構造のできあがり。 一歩動くたびに、縫い目がずれ、押し、擦る。歩行そのものが、強制的な自慰行為に変わる仕組み。 玄関を出る。 冬の冷気が火照った頬に触れた――が、この身体は異常なほど体温が高く、寒さよりも自分の皮膚から放出される熱気の方がはるかに勝っている。 パーカー一枚でも汗ばむほどだった。 通学路。 一歩踏み出すたびに、Hカップの質量が上下に、左右に、どぷん、ばるん、と無遠慮に揺れ動く。 サイズの合わないブラでは支え切れず、乳房がブラのカップから半分はみ出した状態で激しく跳ねている。その反動のすべてが、硬く尖った乳首の先端をTシャツの内側に擦り付ける。 「あ……んっ……ふ……」 歩行という、ただそれだけの動作。 それなのに、五歩歩くごとに乳首がちりちりと立ち始め、十歩歩く頃には乳首がTシャツの生地を裏側から完全に突き上げ、パーカーの隙間からでも分かるほどの突起を作っていた。 歩くたびに揺れ、揺れるたびに擦れ、擦れるたびに硬度を増す。止まらない悪循環。 太ももの内側も酷い。 むちむちに膨らんだ太もも同士が、一歩ごとに押し合い、こすれ合う。レギンスの生地同士がしゃりっと擦れる微かな音が自分の耳に届くたびに、股間に食い込んだ縫い目がぐりっと秘所に圧をかける。 十分も歩かないうちに、レギンスのクロッチ部分がじわりと湿り始めていた。 歩行の振動と摩擦だけで、この身体は愛液を滲ませるのだ。 大学のキャンパスに入ると、視線が暴力として降り注いだ。 すれ違う男子学生たちの目が、揺れる胸の谷間に、パツパツのレギンス越しの太ももと巨大な尻に、あからさまに吸い寄せられている。 「緋咲凛音がおかしくなった」という噂はとうに広まっていて、整形だの病気だのと騒がれた最初の一週間は過ぎた。 だが「事情がある」ということで態度は落ち着いても、視線は変わらない。 目の前を通り過ぎていく「歩く扇情の塊」から――揺れるたびに跳ねる巨大な胸から――目を逸らせる健全な男子学生など、いなかった。 (見ないで……気持ちわるい……っ) 心の中で叫ぶ。そう思っているのに。 この身体は、浴びせられる粘着質な視線を「交尾の合図」として受信してしまう。 視線を感じるたびに、下腹部の奥がずくん、ずくんと脈打つ。自家発情フェロモンが活性化し、頬が赤くなり、目が潤み、唇が微かに開く。 「恥ずかしい」という感情が表情筋を通過すると「嬉しそう」に変換される。恥じらっているのに、まるで視線を受け入れて喜んでいる淫らな女にしか見えない。 教室に入り、椅子に座った。 広がった骨盤と膨らんだ臀部には、大学の椅子は明らかに狭すぎた。尻肉が座面の左右からはみ出しそうになり、太ももがレギンスの中で横に押し広がって隣の席の領域に食い込みかける。 座った姿勢を維持するだけで、臀部の肉がレギンスに圧迫され、縫い目がさらに深く食い込む。 試験が始まった。 問題用紙に集中しようとする。 しかし前かがみになった途端、巨大な乳房が机の上に「乗っかった」。 左右に広がった脂肪の塊が、机の角に押されてじわりと変形する。ブラの中で行き場を失った乳房の肉が押し上げられ、谷間から溢れそうになる。 消しゴムを使おうとペンを持ち替えるだけで、腕が胸の側面をこすり、その振動が乳首まで伝わる。 「……集中……集中……」 心の中で必死に唱えるが、身体が発する快感のノイズが思考を侵食する。 乳首が硬いまま机の天板に押し付けられ、ブラの内側で潰されるたびに、じわりとした疼きが下腹部に溜まっていく。 問題文を読んでいるのに、意識の半分はずっと「胸が重たくて机で擦れている」という事実に占領されていた。 試験が終わり、教室を出ると、友人の美咲が声をかけてきた。 「凛音、帰り?」 「うん。ちょっと服を買いに行こうかと思って」 「あ、いいね! 私も付き合うよ。ていうか凛音、毎日同じパーカーだもんね……」 「……否定できない」 「サイズ合う服、なかなかないんでしょ?」 美咲は事情を知っている数少ない友人だ。蟲のことは知らないが、「体質が急変した」ということは受け入れてくれている。 「ネットでも買えるけど、試着しないとサイズ感が分からなくて」 「だよね。行こう行こう。私が選んであげるから!」 美咲に腕を引っ張られるようにして歩き出すと、また胸が激しく揺れた。 並んで歩く美咲(158cm)と私(175cm)。 身長差だけではない。上半身の体積が根本的に違う。美咲の目線の高さに、私の胸がある。 美咲がちらりと横目で私の揺れる胸を見て、すぐに視線を前に戻したのが分かった。 友人ですら、この身体からは目を逸らせない。 ショッピングモールに入った瞬間、建物の暖房が身体を包み込んだ。 もともと体温が異常に高いこの身体に暖房は致命的だった。 パーカーの中で汗がじわりと噴き出し、Tシャツが肌に貼り付く。ブラの内側に汗が溜まり、巨大な乳房の裏側――下乳と胴体の間――がぬるぬると蒸れ始める。 そして蒸れた体温がフェロモンを活性化させ、甘ったるい自分の匂いが、パーカーの襟元から立ち昇ってくる。 自分の匂いに自分で反応する身体。 ショッピングモールの雑踏の中で、私は既に下腹部がじくじくと疼いていた。 嘘だった。 新しい服に包まれ、正しい下着を着けた自分の身体に、少しだけ興奮していた。 この肉体に飼い慣らされていく自分が、何より、怖い。 --- ### Part 4: 夜 ―自己発情と崩壊― アパートに帰り着く。 紙袋を全部ベッドの上に広げた。 ジーンズ二本、ワイドパンツ一本、スウェット二枚、シャツ一枚、ニット一枚、ニットワンピース一着、フレアスカート一着。ブラ三枚、ショーツ三枚、そして、黒いレースのブラとTバックのセットが一組。 こうしてベッドの上に広げて見下ろすと、まぎれもなく「この異常な肉体の持ち主」としてのワードローブが完成しつつある。それは「緋咲凛音」ではなく、蟲が「番いを呼ぶため」に創造したメスとしての新しい人格の準備のように思えた。 バスルームに向かい、シャワーを浴びる。 Tシャツを脱ぎ、窮屈だった支給品のブラのホックを外した瞬間、解放されたHカップの暴力的な脂肪の塊が、どすんっ、と強烈な重力に従って落ちた。 今日一日、合わないブラの小さなカップに無理やり押し込められていた肉が本来の体積を取り戻し、乳房の裏側――下乳と胴体が密着して深い谷間を作っていた部分に溜まっていた汗が、解放されたことでじわっと肌を滑り落ちる。 シャワーの温かい湯を浴びる。 蟲の体液が全身の細胞を作り変えた肌は、異常なまでにきめ細かく滑らかで、お湯が皮膚の上を滑る水圧の感触すら、微弱な快感として神経が拾い上げてしまう。 ボディソープを手に取り、泡立てて身体を洗い始める。 首すじ、鎖骨。ここまではまだよかった。 問題は、胸だ。 「っ……」 手のひらで泡をまぶした乳房の表面を撫でるだけで、神経の芯を細い針で突かれたような、ぴりっとした電気的な刺激が走った。 巨大な乳房を下からすくい上げるように持ち上げると、片手では到底支えきれないほどの恐ろしい質量が手首にのしかかる。下乳の粘着いた汗を洗い流すために、指が薄く敏感な皮膚を這う。そのたびに、ぞくぞく、と甘い痺れが胸郭の奥で弾け、思わず指の動きが止まってしまう。 そして、乳首に触れた。 「ん……っ、あ……」 シャワーの温度と手で触れた刺激だけで、巨大化した乳輪の中心にある乳首が、すでに硬く充血して立ち上がっていた。 以前の倍はある面積の乳首。触れる面積が広がった分、入力される快感の総量も馬鹿みたいに跳ね上がっている。指先で意図せず先端をこすってしまった瞬間、きゅんっ、と子宮の奥底が直接掴まれたように締め付けられた。 「やめ……洗ってる、だけなのに……」 自分に言い聞かせながら、泡だらけの手を太ももへと移す。 むちむちに膨張した太ももの内側を洗い、指がうっかり、股間の割れ目の近くを掠めた瞬間――。 「ひっ……!」 腰がビクンと跳ねた。 蟲によって交尾と出産のためだけに「最適化」された膣口周辺の粘膜は、ただ指が触れただけで全身の筋肉を硬直させるほどの狂った感度を持っていた。 急いでシャワーを終わらせ、タオルで身体を拭く。 しかし、タオルで胸の水分を拭き取ろうとすれば、ざらついたパイル地が勃起した乳首を乱暴に擦り上げ、太ももを拭けばどうしても内腿の敏感な皮膚を撫でてしまう。 この身体は、息をして生活する日常のすべての動作に「快感」という罠を仕掛けてくる。 バスローブを羽織ってベッドに戻り、買ってきた服をタンスにしまおうとして――不意に、黒いレースの下着セットが目に留まった。 「……」 着けてみようか。 サイズが本当に合っているか、確認するためだ。試着室では急いでいたし、落ち着いて鏡で見たいだけ。 声に出さない言い訳だった。 そうと分かっているのに、手が勝手に動いていた。 バスローブの帯を解き、黒いレースブラを着ける。 するりと、Hカップの重い脂肪が極薄のレースに包み込まれる。シースルーの素材は肌を隠すという機能を完全に放棄しており、滑らかな白い肌の色も、硬く尖ったままの乳首の淫らな薔薇色も、薄い網目の向こうにくっきりと透けている。 Tバックのショーツを履く。 後ろは細い紐一本。広大な臀部が完全に露出したまま、その紐が深い谷間へと容赦なくするりと食い込んで消える。前の微細なレースの三角形は、風呂上がりで異常な熱を帯びた秘所のふくらみのど真ん中に、張り付くように密着した。 部屋の姿見の前に立つ。 知らない、淫蕩な女がそこに立っていた。 長身に不釣り合いなHカップの胸が黒いレースから透け、くびれた腰から暴力的に張り出した臀部を、ただの一本の紐が割っている。 そして何より、顔だ。 潤んだ大きな瞳。熱い呼気を常に漏らしている反開きの厚い唇。少し上気した頬。 表情筋がバグを起こし、「自分自身の身体に完全に発情している」という顔しか作れなくなっている。 風呂上がりの温まった血液が全身を巡り、身体中から立ち昇る「自家発情フェロモン」の甘い香りが、密室の寝室に急速に充満していく。 自分の匂いを嗅ぐたびに、下腹部がじわり、じわりと重い熱を持ち始める。 「……っ」 無意識に脚を閉じた。 むっちりとした太ももの内側がべったりと擦れ合い、その圧力でTバックの細い紐が、股間のクリトリスに真っ直ぐに押し付けられ、深く食い込んだ。 「あ……」 もう、限界だった。 今日一日、ずっと我慢してきたのだ。 朝のシャツが胸に擦れる不快な快感、歩くたびに跳ねる巨大な乳房の痛み、試着室でのニットの残酷な摩擦、レース下着を着けた時の全身を舐め回されるような刺激。 全ての性的負荷がキャパシティを超え、ダムが決壊するように、理性のストッパーが吹き飛んだ。 ベッドの縁にへたり込むように座った。黒いレースの下着姿のまま。 「……ダメ……我慢、しなきゃ……こんなの……」 口では拒否しながらも、右手がゆっくりと、抗いようのない引力に引かれるように、レースのブラの上から自分の胸へと向かっていた。 「ん……っ」 薄いレースの素材越しに、指先が乳房の恐ろしいほどの柔らかさを受け止める。 指で圧をかけると、たぷん、と凄まじい弾力を持った脂肪が指を押し返してくる。Hカップの肉塊は片手では到底覆いきれず、指の間からあふれ、こぼれ、レースの内側で行き場を失って形を変える。 親指の腹で、レースの奥にある乳首の位置を探り当てた。 探すまでもなかった。硬く隆起した突起が、レースの繊維を突き上げて自己主張している。 親指で、その突起をくるりと円を描くようになぞった。 「んんっ……!」 脳天を直撃するような甘い刺激。 レースの微細な繊維が乳首の粘膜に絡みつくように摩擦を生み、指の直接的な圧力と布のざらつきが混ざり合った、手マンよりも遥かに過激な複合的な快感。 もう片方の手も、たまらず胸に添えられた。 両手で、レースのブラ越しに、熱を持った両方の巨大な乳房を乱暴に揉みしだく。 押し潰せば勃起した乳首がカップに強く押し付けられて擦れ、力を抜けば重力で胸がどすんと落ちてレースが引っ張られる。 着衣のままの方がよかった。直接肌を触るより、レースの繊維が間に挟まることで、もどかしく焦らされるような間接的で意地悪な刺激になって、発情をさらに加速させる。 「はぁ……はぁ……ん、あ……ぁっ」 いつの間にか、腰が勝手に動いていた。 Tバックの紐が股間に食い込んだまま、ベッドのマットレスの端に腰を押し付けるようにして、前後にグラインドしている。 食い込んだ紐が、すでに愛液で濡れ始めてぬるぬるになった秘裂の間に深く入り込み、柔らかい粘膜を直接ノコギリのように擦り上げていた。 「あ……やだ……勝手に……腰が、動く……」 肉体が理性を置き去りにして暴走している。 腰が前後に揺れ、Tバックの紐で自分自身の最も敏感な場所を擦り、押し当てている。細い紐が、ピンポイントで肥大したクリトリスの上を通過するたびに、弾かれたように腰がビクンと高く跳ね上がった。 横目で、鏡に映った自分の姿を見てしまった。 黒いレースの下着一つで、ベッドの端に腰を擦りつけながら、狂ったように自分の巨大な乳房を揉みしだいている豊満な女。 完全に目がトんでいる。 自分のその異常なほどエロい姿を見て、視覚からの刺激でフェロモンが爆発的に増加した。 自分の姿を見て興奮し、その興奮がさらにフェロモンを生み出し、身体を次の次元の快感へと強制的に引き上げる。自家発情の無限ループ。 「あ……あ、あっ……こんなの……おかしいよッ……」 右手が胸から離れ、レースのショーツの上から、たまらず自分の股間を鷲掴みにした。 「ひっ……!」 ぐちゃぐちゃだった。 Tバックの紐の周囲、薄いレースの布地が、とめどなく溢れ出た透明な愛液で完全に水没し、肌にべったりと張り付いている。 指で軽く押さえつけると、レース越しに、蒸れた極上の熱とぬめりが指の腹に伝わってきた。 レースの上から、中指で秘裂を縦になぞった。 布地の向こうで、ぐちゅり、と卑猥な水音が鳴った。 レースの繊維の網目が、指の圧力を不規則で暴力的で鋭い刺激に変換して、直接触るよりもはるかに脳を焼くような焦燥感を与えてくる。 指先でクリトリスを探る。 レース越しでも、パンパンに充血して肥大した突起が、布地を内側からテントのように押し上げているのがすぐにわかった。 人差し指と中指で、クリトリスの上のレースの布地ごと、その突起を強く挟み込んだ。 「ひぎあっ!」 腰が雷に打たれたように跳ねた。 レースの繊維がクリトリスの敏感な粘膜に食い込むように密着し、指の微細な震えすらもダイレクトな快感として子宮に叩き込む。 「あっ、あっ、あっ……ダメッ……!」 指を前後左右に激しく動かす。クリトリスの上で水没したレースをこすりつける。 布地が過剰に発達した粘膜を撫でるたびに、快感のマグマが下腹部の奥に溜まっていく。 左手はまだ狂ったように胸を揉み続けている。レースのブラ越しに乳首を摘み上げ、強く引っ張る。硬い突起がレースの中でちぎれるように抵抗し、指を離すとぷるんと弾けて胸郭全体が震える。 上と下から、レース越しの異常な刺激。 「あ……やだ、もう、来る……こんなに早く……イクッ……」 Tバックの紐をずらすことすら待ちきれなかった。 レースの上から押さえつけたまま、指のストロークを限界まで速める。 ぐぢゅっ、ぐちゅぐちゅっ! と、レースの向こうで水がこすれる激しい音が鳴り響き、あふれ出た愛液がレースの隙間を突き抜けて、指の間を伝って手首まで垂れてきた。 「ひっ、あっ、ああっ……イクゥッ!!」 絶頂。 腰がびくびくと激しく痙攣し、膣の最奥が何度も何度も真空ポンプのように強く収縮する。 Tバックの紐が股間に深く食い込んだ状態のまま絶頂を迎えたことで、収縮するたびに紐がクリトリスを削り、快感の波を致死量まで増幅させていた。 胸が激しく弾み、レースのブラの中で巨大な乳房が暴れ狂う。 「あー……っ、あああぁっ……」 だが、一度で、終わるはずがなかった。 「あっ、あッ、まだ……やだっ、まだ来るッ……!」 蟲が作り上げた「交尾のための理想体」は、一度絶頂したところで機能停止などしない。無限に連鎖する連続絶頂のための設計。 一度目の余韻が引く前に、波の底から、さらに高く巨大な第二波が襲いかかってきた。 「っ、んぁぁぁぁっ――!!」 大声が出てしまった。 甘く、甲高く、脳を直接揺さぶるような媚薬のような嬌声。以前の私の声ではない。この身体の構造が強制的に発声させる、オスを呼び寄せるための交尾の鳴き声。 二度目の絶頂が波引いてからも、子宮の奥にはまだチリチリとした火種のような疼きが残っていた。 無理やり指を止めることができたのは、心臓が破裂しそうなほど早鐘を打ち、全身が汗でぐしょ濡れになって水没してからだった。 シーツの上に仰向けに倒れ込み、肩で荒い息をつく。 黒いレースの下着は、汗と分泌された愛液でぐしょぐしょに濡れそぼり、肌にぴたりと張り付いている。汗で脂ぎって光るHカップの巨大な身体が、目が焦点の合わない蕩けた表情と共に、無防備にベッドの上に投げ出されていた。 「……最悪」 吐き捨てるようにつぶやいた声は、絶望するほどしっとりと色っぽかった。 水没したレースの下着を引き剥がすように脱ぎ、洗面所で呆然と手洗いをしながら、私はどん底の絶望を味わっていた。 今日買ったばかりの、初めての自分の下着で、初日の夜にこれだ。 自分の身体の異常なエロさに発情し、服の上から狂ったように自慰をして、下着をドロドロに汚した。 シンプルなコットンのショーツに着替え直して、冬の冷たい空気を入れるために窓を開けた。 しかし、部屋の空気は重かった。 換気してもなお、自分が放出したフェロモンの甘ったるい残り香がシーツや壁から漂い、呼吸するたびにそれを吸い込み、また奥がうずき始める。 「……こんな生活が、ずっと続くのかな」 誰にも聞こえない、震える声の独り言。 答えは明白だった。組織が私を元に戻す奇跡を起こさない限り、ずっと。 この身体の重みで朝を迎え、この身体を服に捩じ込み、この身体のまま他人の視線を浴び、この身体で夜を迎える。 そして、この発情する肉体に負けて――自分を慰め、絶頂を貪ってしまう夜が、これから何十回、何百回と繰り返されるのだ。 --- ### Part 5: 数日後 ―底なしの飢えと機巧(からくり)― それから数日が経った。 絶望しながらも、人間は恐ろしいほど環境に適応する生き物らしい。 少しずつだが、この異常な身体と新しいワードローブで生活するリズムが出来てきてしまっていた。 大学には、あの日に買ったワイドパンツとオーバーサイズのスウェットという「隠す」系のコーディネートで通っている。 それでも、歩くたびにパーカーの下で跳ね回るHカップの巨大な質量は完全には隠せないし、むちむちに張った太腿の太さはパンツ越しでもはっきりと分かる。背が高く、腰が異常にくびれていて、胸と尻だけが暴力的に大きい「突然変異のスタイル」であるという事実は、もうどうしようもなかった。 だが、少なくともタイトな服を着て体型を過剰に「強調」することだけは避けている。 でも、あの日以来――私には、狂った習慣ができてしまっていた。 毎晩、シャワーの後に。 買ったばかりの服を、誰にも見られない密室で一人、こっそりと試着するのだ。 今夜は、黒のニットワンピース。 あの日、美咲と一緒に買ってしまったやつ。大学に着ていく勇気など到底ないが、鍵を閉めた自分の部屋の、全身鏡の前でなら誰にも見られない。 黒いニットワンピースを頭から被る。 ざっくりとした、でも柔らかい生地が肌を滑るように落ちてくる。 Hカップの巨大な胸のところで一瞬引っかかり、ぐいっと裾を下に引っ張ると、伸縮性のあるニットが胸の形に沿って、これ見よがしにぴったりと吸い付いた。 乳房の下側のくびれ、いわゆる下乳のラインに合わせて生地が入り込み、胸の巨大さを残酷なまでに浮き彫りにする。 ウエストの付属ベルトをきゅっと締める。 細い腰が過剰に絞られ、その反動で、上部の胸と下部の大きな骨盤から張り出す臀部の落差が、まるで誇張されたイラストのように際立った。 今夜は、下半身に29インチのスキニージーンズも合わせてみた。 ワンピースの膝上丈の裾から、デニムに締め上げられた異常な太腿が覗くレイヤードスタイル。太腿に吸盤のように張り付く硬いデニムと、上半身の暴力的な体型を可視化する柔らかいニット。 鏡の前で、ゆっくりと、くるりと回ってみた。 「……」 ニットの裾が遠心力でふわりと広がり、回転が止まると、再びむっちりとした太腿にべったりと張り付く。布地が引っ張られ、巨大な尻の丸いラインがニットの下にはっきりと見て取れた。 似合っている。 何度見ても、恐ろしいほどに似合ってしまう。 この身体の構造が「ファッション」という装飾を、自分の異常性を際立たせるための武器として楽しんでしまっている。より自分をエロく見せるコーディネートを考えて、鏡の前でわざわざポーズまで取っている。 それは「緋咲凛音」がやることではない。 蟲に造られた「理想体」のメスが、自らの身体をオスに向けて飾っているという、本能的な求愛行動そのものだ。 でも、着るのを止められなかった。 ニットの粗い繊維が、Hカップの重い胸を包み込んでいる感触。 薄いレースのブラ越しに、呼吸で胸が上下するたびにニットが擦れる、あの微かでいやらしい刺激。 ベルトで締め上げられたウエストの、内臓が押し上げられるような圧迫感。 スキニージーンズが太腿の肉を圧縮し、締め付ける息苦しい密着感。 身につけている服の圧力と摩擦の感触が、全部、発情の入り口(トリガー)になっている。 「……また、こうなる」 分かっていた。 一人でこの着替え遊びを始めると、必ずこうなるのだと。 フェロモンが噴き出し始めている。 風呂上がりの温まった血液が急激に熱を帯び、毛穴という毛穴から甘ったるい媚薬のような自分の香りを放ち、密室に充満していく。 鼻腔いっぱいに自分の匂いを吸い込むたびに、下腹部の奥、子宮の入り口あたりが、じわり、じんわりと甘く痺れるように熱くなる。 黒いニットワンピースを着たまま、ベッドの縁にへたり込むように座った。 スキニージーンズの硬いデニムに包まれた太腿が、ベッドの端でだらしなく左右に開かれた。 姿勢を崩したことで、ニットの生地が胸の上でさらに強く引き伸ばされ、レースの下着越しに、充血して硬く勃起した乳首の突起が、布地の表面にくっきりと浮き出ている。 「今日は……絶対に、我慢する」 声に出して自分に言い聞かせた。 だが、たった三秒後に、それが無意味な嘘だと分かった。 理性を裏切り、手が、もう動いていたのだ。 ニットの上から、右手が巨大な乳房を下からすくい上げるように包み込んだ。 「はっ……ぁ……」 柔らかいニットの繊維越しに、さらにその下のレースのブラ越しに、乳房の恐ろしいほどの弾力と重みを手の中に感じる。直接肌に触れるよりも、二枚の布という障害物を隔てた間接的な感触が、逆にもどかしさを煽り、脳の報酬系をひりひりと焦らしてくる。 「ん……っ、あ……」 左手が、ニットの裾の下から入り込んだ。 硬いデニムの上のウエストを這い上がり、直に直接お腹の素肌を通って、上へ。 レースブラの薄いカップの上辺から指を滑り込ませて、Hカップの谷間に指を沈める。レースの薄い布地の上から、パンパンに勃起した乳首を親指と人差し指で挟み込み、くるくると円を描くように撫で回した。 「はぁ……っ、んっ……」 服を着たまま、自分の胸を狂ったように弄っている。 着衣のままの、堕落した自慰。 胸を弄っていない方の右手が、今度はスキニージーンズの上から、自分の股間に押し当てられた。 硬いデニム生地越しだと、直接的な感覚は鈍い。布地が分厚すぎるからだ。 でも、この蟲に造られた異常な身体の感度は、その「鈍さ」でさえも充分すぎる刺激に変換してしまう。 デニムの中央の縫い目――硬く分厚い布が交差する股の縫い目が、ちょうど肥大したクリトリスの真上に食い込むように当たっている。 その硬い縫い目の上から、手のひらの付け根を当てて、体重をかけるようにぐりぐりと押し込んだ。 「ひっ……あ……っ!」 腰がビクンと跳ねた。 デニムの硬い縫い目が、下着のレースと、分泌された愛液という薄い層を通して、過敏なクリトリスを間接的に強烈に圧迫する。 直接粘膜を擦るような鋭い快感ではない。何層もの布という遠い場所を通して、重い暴力のように伝わってくる、じれったくもどかしい鈍痛に近い刺激。 でも、発情しきったこの身体には、その「乱暴に押し潰されるような圧迫感」が、たまらなく効く。 ニットの裾の下で直接胸を揉みしだきながら、右手はジーンズの上から狂ったように股間を擦り、押し付ける。 「あっ……んっ……服、着たまんま、なのにっ……こんなのでっ……」 激しい自己嫌悪に襲われる。 こんな硬いデニム越しの、ただ股ぐらを押し潰しているだけの乱暴で間接的な刺激で、声を出して感じてしまっている自分が心底悔しい。 以前の身体なら、擦れて痛いだけで何も感じないはずの行為だ。 でも、交尾のために「最適化」されたこの肉体は、与えられるあらゆる圧迫や摩擦、痛覚すらも、強制的に極上の快感へと変換してしまう。 いつの間にか、腰が自然に激しく動いていた。 ベッドの端に座ったまま、腰を前後に、そして円を描くようにグラインドさせて、ジーンズの股の縫い目で自分自身の最も敏感な部分をゴリゴリと擦り上げている。 激しい腰の動きに合わせて、ニットワンピの細いベルトがきしきし、ぎゅうっ、と革の擦れる生々しい音を立てる。 「あ、あ、あっ……やだ……服着たままなのにっ、イっちゃう……っ」 むしろ、服を着ている方が異常に興奮するのだ。 布が熱を持った肌に触れる面積が増えるから。ニットが重い胸を、レースブラが勃起した乳首を、硬いジーンズが太腿を、ショーツのTバックの紐が股間の奥深い粘膜を。 全方位から布地の拘束と密着感に包み込まれ逃げ場を失い、全身が巨大な性感帯へと変貌した身体が、快感の供給過多で悲鳴を上げている。 「ひ、あっ――! イクッ!!」 デニムの硬い縫い目を股間に体重をかけて強く押し付けたまま、私は絶頂に達した。 ジーンズに締め付けられた狭い空間の中で、膣の奥が何度も何度も真空を吸い込むように激しく収縮し、パツパツの太腿の筋肉がぴくぴくと痙攣した。 ニットに包まれたHカップの胸が大きく揺れ、レースのブラが擦り切れるほど強く乳首を挟み込んで、波打つような追加の刺激を脳髄に送り込んでくる。 身につけた服のすべてが、全身を拘束し、締め付けたまま、致死量の快感を体内に閉じ込めて増幅させている。 「あ……ああ……ぁぁ……」 長い絶頂の余韻の中で、焦点の合わない目を落とし、自分のニットワンピースの前面を見た。 胸の部分の黒いニットが、大量にかいた汗で広範囲に湿り、色が濃くなっている。 そして、股間に強く押し当てて手のひらで擦っていた、ジーンズの股間部分の硬いデニム生地にも――どろりと溢れ出た愛液が布地を貫通し、うっすらと、だがはっきりと分かるほどのエグい濡れ染みが出来ていた。 「……最悪……ジーンズの表まで、染みて……」 洗濯しなければ。まただ。 この異常な身体は、粘膜から分泌される体液の量まで、通常の何倍にも増強されている。 汗ばんで肌に張り付いたスキニージーンズを苦労して脱ぎ捨てる。黒のニットワンピースを脱ぐ。レースのブラも、Tバックのショーツも、ぐしょぐしょに湿って重くなっている。 全てを丸めたまま、洗濯機の中に放り込んだ。 そして、ただのコットンの下着姿だけでベッドに潜り込み、激しい自己嫌悪の底なし沼に沈んでいった。 --- 更に数日後。 夜中、ベッドの中で一人、スマートフォンでネット通販のサイトを見ていた。 最初はごく普通の、日常の買い物のつもりだった。洗濯用洗剤のストックが切れていたし、消費の激しいボディソープも買い足しておきたかったから。 でも――画面をスクロールする指が、ぴたりと止まった。 サイドバーのアルゴリズムが弾き出した「あなたへの関連商品」の一覧に、そのリンクはあった。 『大人のおもちゃ』 バイブレーター、ローター、ローション、各種のアダルトグッズがずらりと並んでいる。 ピンクややわらかな紫色の、流線型の小さなプラスチックの機械。可愛らしいコスメのようなパッケージに見せかけたものから、リアルで露骨な形状をしたものまで。 「……」 気づけば、私の指は、無意識のうちにそのリンクをタップしてしまっていた。 画面いっぱいに商品一覧が表示される。 レビュー評価が高い商品の詳細ページを、食い入るように見る。 完全防水仕様。強力静音設計。USBマグネット充電。振動パターン10種類搭載。 こんなもの、以前の私なら見向きもしなかった。 そもそも性欲自体が薄く、たまに発散する時も、自分の指の軽い刺激だけで充分だったし、何より自分の身体に機械を入れるなんて発想自体が嫌悪感の対象だった。 でも、今の、狂わされたこの身体は違う。 毎晩のように、自分の手で自分を執拗に慰め、絶頂を貪っている。 着衣のままで。直接粘膜を擦って。あの手この手で方法を変えても、結局行き着く結末は同じだ。 この身体が本能レベルで求め、渇望してくる快感の「量と質」に、人間のただの『手と指』程度の刺激では、もはや全く追いつけなくなっているのだ。 一度果てて絶頂を処理しても、身体は余韻すら飛ばしてすぐに次の波を要求してくる。 二度、三度とクリトリスを擦り上げて絶頂を重ねても、子宮の奥が『まだ足りない』『深さが足りない』『刺激の速度が遅い』と、けたたましく飢餓感を訴えかけてくる。 蟲が「番いを受け入れて種付けされるため」だけに完成させたこの理想体は、オスの激しいピストンを想定しており、快感に対して文字通り『底なし』の受容力と耐久性を持っている。 私の手の指二本の動きや体力だけでは、この化物じみた身体を完全に満足させることは不可能なのだ。 「……ぽちっ」 真っ暗な部屋の中で、誰にも聞こえないほど小さくつぶやきながら。 私は、画面の中の『カートに入れる』ボタンを押した。 買ったのは二つ。 一つは、小型のバイブレーター。淡いピンク色の、自分の指二本分くらいの太さの滑らかなもの。完全防水で、モーターが強力で振動パターンが複数あるらしい。 そしてもう一つが本命だ。 吸引式のクリトリスバイブ。最新の空気圧制御による非接触刺激。口コミ欄には「手や振動とは別次元」「数秒で脳が飛ぶ」と書き込まれていた。 翌々日、宅配便でその箱は届いた。 差出人は通販サイトの品名なし、無地の段ボールという、プライバシーに配慮された梱包。 自分の部屋の鍵をかけ、そっと箱を開けて中身を取り出す。 想像していたよりはるかに小さい。 ピンクのバイブレーターは掌にすっぽり収まるサイズで、凹凸のないシリコンの滑らかな表面が不気味なほど肌に馴染む。 クリトリスバイブは、先端が小さな丸い吸盤のような形状をしており、この穴の中の空気圧を高速で変動させる仕組みらしい。 USBケーブルを繋ぎ、フル充電になるまで数時間待った。 夜が来た。 シャワーを念入りに浴びて、ベッドの上に仰向けに横たわった。 今夜は、下着すら着けていない。薄手のビッグサイズTシャツを一枚被っているだけ。下半身は完全に無防備だ。 枕元に置いた、充電完了のランプが緑に光るピンクのバイブレーターを手に取る。 親指で、電源スイッチを長押しした。 『……ぶぅんっ』 静かな夜の部屋に、耳鳴りのような低い振動音がわずかに響いた。 手に伝わってくる、細かく、しかし芯のある強力な振動。モーターの物理的な震えが、掌全体の骨にまで伝わって神経をくすぐる。 試しに、手首の脈を打つ部分や、首筋に軽く当ててみた。 「ひゃっ」 想像以上の強烈な刺激だった。 小さなシリコンの塊が皮膚の上で小刻みに震え、その波紋のような振動が筋肉の奥深くにまで容易く伝播していく。 普通の肌ですらダイレクトに感じるのだ。なら、蟲に改造されたこの過敏な全身性感帯の身体なら――。 バイブを、Tシャツをめくり上げて露出したHカップの胸に直接当てる。 乳房の恐ろしく分厚く柔らかい脂肪が、バイブの振動をスポンジのように吸い込み、肉の内側で振動を乱反射させ、増幅して拡散する。 巨大な肉の塊全体が、強力な低周波マッサージ機を取り付けられたように、自分では制御できないリズムでぶるぶると激しく脈動し始めた。 「んんっ……はぁ……っ」 振動させたまま、乳首へと慢慢と近づけていく。 まだ、いきなり核心には当てない。大きく広がった赤い乳輪の周囲、ぷっくりと膨らんだ乳房の急な斜面に沿うように、肌の上を這わせるように滑らせていく。 振動の震源地が乳首に近づくたびに、胸の奥がきゅうっ、きゅうっ、と締め付けられ、息が詰まる。 『予感』だ。 もうすぐそこに届く、あの過敏な突起をモーターが直撃する、という期待感と恐怖が、純粋な快感とは別の種類の異常な興奮を強制的に生み出している。 そして。 震えるシリコンの先端を、勃起して硬く尖った乳首に、完全に押し当てた。 「ひっ、あ、あぁぁあっ――!」 瞬間的に、背柱が反り返り、腰がベッドから浮き上がった。 硬く立ち上がった乳首の根本から先端まで、モーターの暴力的な振動が直撃する。 それはまるで電撃だった。稲妻のような圧倒的な情報量の快感が、胸から背骨の神経束を一直線に駆け抜け、子宮から下腹部までを一瞬で貫いた。 指先でこするのとは、情報処理の次元が違う。 機械的な振動は、『人間の指なら数秒で疲労して速度が落ちる』という物理限界を無視し、秒間数十回という人間には不可能な速度と正確さで、狂ったように乳首の神経を叩き続けているのだ。 「やっ、やだっ、強……っ、強いぃ……っ!」 信じられないことに、振動レベルはまだ10段階中の最低の『1』だ。 これで「強い」と悲鳴を上げている自分が信じられない。 左目の端に涙を浮かべ、左の乳首にバイブを強く押し当てたまま、空いた右手を大きく開いた股の下へと伸ばした。 指先を秘裂の間に差し入れると、自分の体液で指がズルリと滑った。 ひたひたに濡れていた。胸へのバイブの刺激だけで、子宮が狂喜し、大量の愛液を溢れ出させて、受け入れ態勢を完全に整えてしまっている。 指二本で、ぬるぬるとした膣口の肉を左右に軽く押し広げた。 温かく、粘り気のある透明な粘液が、とろりと指に絡みつき、太腿の付け根へと糸を引いて垂れた。 「ひぃっ……あ、あ……」 胸に当てていたバイブを皮膚から離し、そのままお腹の上を滑らせて、濡れそぼった股間へと移動させた。 太腿の内側。 そこに軽くバイブを当てただけで、強力な振動が股関節の敏感な肌に響き渡り、太腿の筋肉が自分の意志とは無関係に小刻みに痙攣する。 股関節の付け根。鼠蹊部の深い窪みに沿って、ゆっくりと、わざとじらしながら下へと進めていく。 「ん……んんっ……あぅ……」 焦らされている。 機械を使っているのは自分自身なのに、圧倒的な性能の前に、完全に焦らされ、支配されている。 バイブの震える先端が、ついにぐちゃぐちゃに濡れた秘裂の縁に触れた。 「ひああっ!」 愛液で濡れた粘膜は抵抗がゼロで、バイブの振動をダイレクトに、減衰なしで受信した。 外陰部の複雑なひだ全体が、モーターの震えに共鳴してびりびりと震え上がり、快感が一気に閾値(いきち)を超えて膨れ上がる。 そのまま、最大の急所である、肥大化したクリトリスの上に、バイブの先端を強く押し当てた。 「あっ、あぁぁあっ、ああぁああっ――!」 叫び声が出た。 脳髄が溶け出すような、甘く、だらしのない嬌声。隣の住人に聞こえていないかという恐怖が一瞬だけ頭をよぎったが、発情しきった脳はすでに身体の制御権を失っていた。 バイブがクリトリスの上で、狂気のような速度で震え続けている。 一定の、規則正しい、強烈な振動。 ブレることもなく。疲労で力が抜けることもなく。 人間の指であれば、必ずリズムが崩れ、速度が落ちて休む瞬間がある。だが機械は違う。機械は無慈悲に、容赦なく、同じ強さの凶悪な刺激を延々と粘膜に叩き込み続ける。 「やっ、やだ、止まらなっ、止まらないのぉ……っ」 バイブを持った手を離せば止まる。そんな単純な論理すら、もう脳が処理できない。 快感のメーターが完全に振り切れ、臨界点を突破した瞬間、全身が弓なりに反り返って、びくんっ、と大きく空中で跳ねた。 「ひぁーーっ、あ、あああぁぁあっ――!!」 絶頂。 腰がベッドから浮き上がり落ちてこない。背骨が極限までアーチを描き、巨大なHカップの胸が天井に向かって突き出され、硬直する。 最適化された膣の最奥が、きゅうっ、きゅうきゅうっ! と何度も空気を吸い込むように激しく収縮し、大量の透明な分泌液がシャワーのように太腿を伝ってシーツに大きな染みを作った。 それでも、バイブはまだクリトリスに強烈に当たったままだ。 「やっ、んっ! もう、もういやっ、抜けるぅっ――!」 絶頂の真っ最中、脳がショートしている状態で、さらにクリトリスへの機械的振動が容赦なく続いている。 余韻の中で与えられる、悪魔のような追い打ちの強制オーバーロード。 神経が処理できる限度を超えた過剰な刺激が、快感と痛みの境界線をぐちゃぐちゃに踏み荒らしながら行き来し、全身の筋肉を何度も痙攣させた。 ガクン、と右手の力が抜け、ようやく手が離れた。 バイブが濡れたシーツの上に転がり落ちて、それでもなお、ヴゥゥゥン、と虚しく振動音を立てて回り続けている。 「はぁっ……はぁっ……はぁっ……」 天井を見上げたまま、酸欠の金魚のように荒い息を吐き続ける。 これだけ強烈な刺激を浴びて、激しく絶頂したのだ。もう満足だろう。もう限界だろう。 だが。 身体の奥底から、信じられない信号が脳に送られてきた。 『——まだ、足りない』 子宮が、はっきりとそう言っている。 もう一回。もっと深く。もっと強く。もっと。 「……嘘、でしょ」 嘘ではなかった。 子宮口が、じくじくと、焼けるように疼いて開いているのを感じる。 あんなに強烈な一度目の絶頂は、蟲の理想体にとっては、ただの「入り口」の扉を開いただけの準備運動に過ぎなかったのだ。 「奥」はまだ、全く到達されておらず、満たされていない。 私は震える手を伸ばし、枕元のもう一つの箱に触れた。 クリトリスバイブ。 先端の小さな丸い吸盤状のシリコン部分を、ビクビクと脈打って腫れ上がったクリトリスに直接かぶせるように当てて、スイッチを入れた。 『シュゴォォォォ……』 空気圧を操る、吸引のポンプが起動した。 「ッ……!!!!」 文字通り、呼吸が肺の途中で停止した。 空気圧による非接触の吸引が、クリトリスの敏感な先端を丸ごと優しく吸い上げ、そしてパルス波のような規則的な圧を送り込んでくる。 バイブレーターの直接的なモーターの激打とは全く違うアプローチ。直接擦ってはいないのに、空気の力で的確に、クリトリスの最も神経が集中している部分だけを、内側から引きずり出すように刺激する悪魔のような感覚。 「あ……あ、あぁ……なに、これ……ああっ、なにこれっ……!」 全く知らない快感のベクトルだった。 自分自身の指の手マンでも、さっきの強力なバイブレーターでも到達できなかった、未踏の領域の刺激。 空気の脈動がクリトリス全体をすっぽりと包み込み、内側から風船のように膨らませるような、魂ごと吸い出されるような、言語化を拒絶する恐ろしい感覚。 「ひぃっ、ああっ、あっ……」 気が狂いそうになりながら、私は無意識のうちに、先ほどシーツに転がしたピンクのバイブレーターを、左手で拾い上げていた。 ボタンを押し、振動レベルを『3』に上げる。 モーターの回る音が一段高く、凶暴になった。 そしてそれを、愛液でドロドロになった膣口に真っ直ぐに当てた。 中には入れない。まだ入れる勇気はない。ただ、入り口の肉のひだの周囲を、撫でるように、押し付けるように振動させる。 上ではクリトリスバイブが神経の塊を狂ったように吸い上げ。 下では強力なバイブレーターが膣口の粘膜を叩き潰すように振動する。 「ああぁっ、はっ、あっ、あっ、あぁっ――!」 身体が完全に、二つの異なる方向からの絶望的な快感に挟まれ、逃げ場を失って圧殺された。 上からの吸引による引き抜かれるような快感と、下からの振動による叩き込まれるような快感が合流する場所。 下腹部の最奥、子宮のど真ん中で、快感の巨大な渦が竜巻のように巻いている。 子宮が「最適化」された膣の構造と共鳴するように連動して、自らの意志を持った内臓のように、内側からずくんっ、ずくんっ、と激しく脈動した。 中には何も挿入されていないのに。ただの表面からの機械の刺激だけなのに。 子宮が、オスを受け入れるための収縮と弛緩の運動を、勝手に繰り返している。蟲に造り変えられた生殖器という器官が、今まさに精液を注ぎ込まれると錯覚し、歓喜して受け入れる準備を完了させているのだ。 「いやっ、奥が……奥が、勝手に動くぅっ……っ」 理性が完全に崩壊した。 膣口に当てていたバイブレーターを、ほんの少しだけ、抵抗する入り口の肉を押し広げて、膣の中に挿入してしまった。 先端の、ほんの2センチだけ。 たったそれだけの侵入。 だが、それだけで、最適化されたグロテスクな機能を持つ膣壁の筋肉が、侵入してきたシリコンのバイブに生き物のように絡みつき、蠢縮(しゅんしゅく)して吸い付いた。 無数に連なる内壁のひだの一つ一つが、機械の振動を直接受信し、内壁全体が反響して激しく震え上がる。 「あー――ぁあぁっ――ああぁぁぁぁっっ――――!!」 二度目の絶頂は、一度目のそれとは比較のしようがない、致死レベルの規模だった。 全身の筋肉が限界まで弓なりに反り返り、腹筋が痙攣を引き起こす。 声帯が限界を超え、声にならない空気の漏れる音だけが喉から絞り出され、視界がフラッシュを焚かれたように真っ白に飛び飛散した。 子宮がぐにゃりと、まるで裏返るような錯覚を覚えるほど強く収縮し、膣内のすべての筋肉が侵入者であるバイブに吸い付いて、絶対に逃さないとばかりに締め付けた。 そして。 息継ぎをする間もなく、連続して三度目の波が――間髪を入れずに、津波のように襲ってきた。 「ひぎっ、やっ、連続で、くるぅッ――!」 二つの機械の道具は、私の意志に関係なく、まだ同じ出力で動き続けている。 絶頂の崩壊した余韻のど真ん中で、機械は慈悲を持たず、容赦なく100%の刺激を神経に注ぎ込み続ける。 人間の手なら、自分の指なら、脳が「もう無理だ、死んでしまう」と判断して強制的に動きを止める。 だが、機械はバッテリーが切れるまで相手を休ませてはくれない。 自分自身の親指を動かして、スイッチを切ればいいだけだ。ただそれだけの動作。 痛いほど分かっている。 でも、発情しきった脳と身体の神経が、まだ繋がっている。 『もう少し、もう少しだけ……機械を止めないで』と、狂った細胞が私に哀願してくるのだ。 「ああっ! あああっ……イクッ、また、イクゥゥゥッ!!」 連続した四度目の絶頂が子宮を破壊するように襲いかかってきた時、私はついに命の危険を感じ、錯乱した状態でようやく手が動いた。 両方の機巧のスイッチを乱暴に叩いて引き抜き、電源を切り、身体から引き剥がして遠くの床へと放り投げた。 「はぁっ……! はぁっ……、あーっ……はぁっ……」 ベッドの上で、大の字に手足を投げ出したまま、痙攣する肺に酸素を送り込む。 全身が、まるでプールに落ちたように汗でずぶ濡れだった。 背中の下のシーツも、汗と大量の愛液でぐっしょりと水たまりのように濡れている。Tシャツが汗で腹の肉にべったりと張り付き、その上で限界まで膨張した巨大なHカップの胸が、激しい呼吸に合わせてゆっくりと、ぐらぐらと上下に揺れていた。 バイブを持っていた指先が、振動の麻痺でまだジリジリと痺れている。 太腿の内側の筋肉が、自力では止められないほど震えている。 何より、膣の奥深く、子宮の入り口が、じくじくと、焼火箸を当てられたような熱を帯びた余韻を色濃く残していた。 「……四回」 かすれた声に出して数えてみると、自分が完全に人間として終わったような気がして、余計に惨めで、涙がこぼれた。 以前の身体なら、不器用な指の一回の絶頂で充分満足して終わっていた。 しかしこの身体は、強力な機械を使って強制的に四回も連続で絶頂させられたというのに、子宮はまだ『奥が満たされていない、本物じゃない』と、飢餓感の幻聴を囁いている。 道具を使って、たった数分でこれだ。 手だけの時よりも遥かに深く、意識が飛ぶほどの絶頂だったのに、身体はまだ完全には満たされきっていない。 蟲が造り上げた、交尾のための「理想体」。 その快感を受信する回路には、初めから『底』という概念が存在しないのだ。 本物のオスが種を注ぎ込むまで、永遠に飢え続けるように設計された呪い。 「……もう、寝る」 私は泣きながら立ち上がり、床に転がった道具をアルコールティッシュで綺麗に拭き上げ、引き出しの最も奥の、見えない暗がりに隠すようにしまった。 だが、しまった瞬間。 これを使えばあそこまでの気持ちよさに到達できると知ってしまった以上、この機巧を使った底なしの着衣自慰は――これからの私の夜の、絶望的な『定番』になってしまうのだろうと、予感してしまっていた。 --- ### Part 6: エピローグ ―折り合いと侵食― あの夜。 私が無残に蟲に組み敷かれ、体内に未知の体液を注ぎ込まれてから、一ヶ月という月日が流れた。 組織からは「要警戒の経過観察」として、厳しい月一の精密検査が続いている。 だが、身体に新たな変化の兆候はない。 良くもならないが、悪くもなっていない。蟲の粘液はその凶悪な効果を発揮し終え、私の細胞と完全に同化し定着し、私の身体を構成する一部として安定してしまった。 元の私。以前の「緋咲凛音」の細く平坦な身体に戻る見込みは、今のところ、絶望的なくらいにない。 でも――。 嫌なことに、人間という生き物は。 私は、少しずつ、この異常な身体との「付き合い方」を覚え始めてしまっていた。 朝。 洗面台の鏡の前で、Hカップの重すぎる胸を支えるための、専用の大きなレースブラを着ける。 色は、あの日買ったピンクの方。ホックを三つ留めて、肩紐を調整し、溢れる肉をカップに収める。 ちゃんとしたサイズの、正しい立体構造のブラを着けた時のあの感動と安心感は、今でも鮮明に覚えている。サイズの合った下着がもたらす物理的な圧倒的な「楽さ」は、精神的な屈辱を容易く凌駕してしまった。 大学へ向かう。 基本はワイドパンツに、少しゆったりめのオーバーサイズシャツという「肉のラインを隠す」コーディネート。 でも。 本当に気分次第で、ごくたまにだが、あの身体に吸い付く黒いニットワンピースを着て出かけることもある。 体型は嫌というほど暴力的に出るし、視線も突き刺さる。でも、似合っているから。あの服を着た自分が最も綺麗に見えることを、この身体の本能が知ってしまっているから。 似合っていると、自分自身で思えるようになってしまった。 それが自分でも何よりも恐ろしい変化だ。 この造り変えられた異形の肉体を、「自分の身体」として、無意識のうちに受け入れ始めているという証拠だからだ。 大学に着く。 「緋咲凛音は、ある日突然、見違えるようにスタイルが変わって色気が出た」 という事実は、もう学内ではとっくに既知の噂話になり、消費され尽くしていた。 最初こそ、すれ違うたびに奇異の目や下品な好奇の目に晒されてパニックになりかけたが、人間は大抵の異常な事態にもいずれ慣れて飽きる。 今では、良くも悪くも「やけにスタイルが良くてエロい凛音」という、謎めいたブランドが定着しつつある。 男子学生からの、胸や尻を舐め回すようなねっとりとした視線は、相変わらず日常的に突き刺さってくる。 でも、最初ほどは心臓が跳ね上がるほど気にならなくなった。 オスの視線に反応して、勝手に媚びるような表情を浮かべてしまう「自家発情の表情筋のバグ」にも、少しずつだが対処法を覚えた。 見られて恥ずかしい、熱を感じると思った時は、意識的に口をきゅっと強く結ぶ。目を下に逸らさずに、あえて真っ直ぐ前を見据えて歩く。 そうして気を張ることで、蕩けるような媚態の表情への移行を、ある程度は和らげることができるようになった。 完璧じゃない。発情を完全にコントロールすることは不可能だ。 でも、最初の一週間のパニック状態よりは、はるかにましになっている。 そして、夜。 自室の机の一番下の引き出し。 その奥に、綺麗に拭き上げられたピンクのバイブレーターと、空気圧式のクリトリスバイブが静かに並んでいる。 もう、見て見ぬふりをして現実逃避をするのはやめた。 この身体は、そういう風に創られた身体なのだ。 常に感度が高くて、隙あらばフェロモンを出し、自分の胸や尻を見て自家発情し、人間の指では到達できない、一人では決して満たしきれないほどの巨大な快感を、毎夜のように求めてくる狂った器。 戦うのをやめたわけではない。 組織の人間として、あの醜悪な蟲と戦うという使命の炎までは、消えていない。 専用の戦闘服である「ソーラ・スキン」は、この巨大化した「理想体」用に組織の技術部が急ピッチでサイズと弾性を再調整してくれ、今のHカップの胸や広い骨盤にも完璧にフィットするようになった。 戦闘での機動力や支障は――飛び跳ねるたびに胸が暴れて痛み、尻の重さでバランスが変わったこと以外は――慣れてしまえば以前とほぼ変わらないレベルにまで戻せている。 ただ、日常が。 決して戻らない、元の自分とは決定的に違う「新しい日常」が始まってしまっただけだ。 自分を美しく見せる服を選ぶ楽しさという、女としての欲求を知ってしまった。 休日に美咲と買い物に行くと、以前は見向きもしなかったようなフェミニンで体のラインが出る服に、自然と目が行く。試着室の鏡の前で、今まで知らなかった「綺麗でエロい自分」に出会うあの背徳的な感覚は、悔しいけれど、どうしようもなく甘美で、悪くなかった。 金曜の夜。 シャワーの後、また全身鏡の前に立つ。 今日は、あの日買った勝負下着のような、黒いシースルーのレースブラとTバックを着けた。 鏡に映る、自分の姿をじっと見つめる。 「……」 やはり、知らない女だ。 私の記憶にある緋咲凛音ではない。 でも、一ヶ月前よりは――少しだけ、見慣れた。 この狂った肉体の曲線美に、自分の目が慣らされてしまった。 この身体の構造や細胞は、間違いなく蟲が造り上げた悍ましいものだ。 でも、この身体の皮膚を洗い、服を選んで着せて、食事を作って栄養を与え、大学で授業を受け、友人と笑い合って話しているのは。 そして、夜には一人で部屋にこもり、発情する肉体を持て余して自分自身を慰めて――絶望しながらも朝を迎えるのは。 それを全て繰り返し、生きているのは、「私」だ。 蟲の理想体の器。 でも、その中で泣きながら生きているのは、緋咲凛音という人間なのだ。 一つ溜息をついて、ベッドの端に座り、机の一番下の引き出しをゆっくりと開けた。 ピンク色のシリコンが、暗がりの中で怪しく光る。 今夜も、私はこの身体の欲望に敗北する。 分かっている。 でも、「負ける」という表現を使うのは――もう、やめてもいいのかもしれない。 これは諦めではない。 この狂暴で淫らな身体との、私なりの「折り合い」の付け方だ。 これからの私の人生を、この身体と共にどう生きていくか。 その関係性に対する名前は、今はまだつけられないけれど。 「……おやすみ、なさい」 暗い部屋の中で。 自分自身への、あるいは自分の中に巣食うもう一つの人格への、誰にとも知れない挨拶を小さくつぶやいて。 私は、引き出しの中に並ぶ淫らな機巧へと、静かに手を伸ばした。 --- *文字数: 約7,500字(Part 5-6)* *総文字数: 約21,000字(Part 1-6合計)*