奪われた愛の波動（ウェーブ）



緑豊かな公園に、似つかわしくない不穏な紫色の光が明滅していた。

「どうだ！ 身動きが取れないだろう！」

黄色い通園帽子に水色のスモックという、まるで幼稚園児のような可愛らしい出で立ちの小悪魔が、甲高い声で得意げに笑い声を上げる。
その視線の先には、紫色のエネルギーフィールドに囚われ、身悶えする二人の戦士――エンジェルデイジーとエンジェルリリィの姿があった。

小悪魔が背負っているリュックサック型の装置。それが二人の力を奪う元凶だった。
「あんたたちの愛のウェーブ、全部吸い尽くしてやる！」

その言葉通り、リュックサックから放たれる光の波は愛のウェーブを吸収する力を持っていた。デイジーとリリィの体内から、変身を維持するための愛のウェーブが、目に見える光の粒子となって次々とリュックサックへと吸い込まれていく。

「くっ……力が……抜けていく……」
「このままじゃ……やられてしまうわ……」

二人の顔から血の気が引き、その表情は苦痛に歪んでいた。



二人が絶体絶命のピンチに陥ったその時、上空から凛とした声が響き渡った。

「おやめなさい！」

澄んだ鐘の音と共に、眩い光の階段が空から一直線に降りてくる。
光の中から現れたのは、ピンク色の髪をなびかせる戦士、愛天使ウェディングピーチだった。

「秋風爽やかなこの佳き日に、友情という愛のウェーブを奪うなんて絶対に許せない！ 愛天使ウェディングピーチは、とってもご機嫌ななめだわ！」

仲間を救うため、堂々と名乗りを上げるピーチ。
小悪魔は舌打ちをすると、「お黙り！」と叫びながら『とまれ』と書かれた標識型のシールを手裏剣のように投げつけた。
しかし、ピーチはそれを華麗なステップでかわすと、自身の武器であるクリスタルの杖、聖サムシング・オールドを天高く掲げる。いざ、反撃の時――。



「この時を待ってたわ！ これでもくらえ！」

小悪魔はニヤリと笑うと、背中からさらに数枚の『とまれ』のシールを取り出し、聖サムシング・オールドを掲げて隙だらけになったピーチに向けて連続で投擲した。

「えっ！？」

勢いよく飛んできた一枚のシールが、ウェディングピーチの額にピタリと張り付く。
その瞬間、ピーチの体の動きが完全に停止してしまった。瞬きすらできない状態のままフリーズしてしまう。

「いいザマだわ！ あんたも一緒に吸い尽くしてあげる！」

小悪魔がリュックサックの出力を最大に引き上げると、紫色のエネルギーフィールドが大きく広がり、動けないピーチをも飲み込んだ。

「きゃあああああっ！！」


「いけぇっ！ りゅっくりゅっく！！」

小悪魔の号令と共に、三人を取り囲むエネルギーフィールドが禍々しい光を放ち始める。
それは先ほどまでの比ではない、圧倒的な吸引力を持っていた。

ピーチ、リリィ、デイジーの三人から、純粋な愛のウェーブが濁流のように吸い出されていく。彼女たちの体を包んでいた神聖なオーラが徐々に薄れ、変身を維持する力さえも削ぎ落とされていく。

「ああっ……体が、重い……」
「愛のウェーブが……全部、持っていかれる……！」

ピーチは必死に聖サムシング・オールドを握りしめようとするが、指先から力が抜け落ち、聖サムシング・オールドはカランと甲高い音を立てて地面に転がり落ちた。

「どうすればいいんだ〜！ ピーチちゃま！ リリィちゃま！ デイジーちゃま！」
草葉の陰で様子を見ていたじゃ魔ピーは、ただ涙を流してオロオロと飛び回ることしかできない。

「アハハハハ！ その調子だ、もっともっと苦しめ！」

小悪魔の笑い声が響く中、ついに限界が訪れた。
三人の愛天使たちを包んでいた光が弾け飛び、彼女たちの意識は完全に深い闇へと沈んでいった。

エネルギーフィールドが消滅すると同時に、力を完全に吸い尽くされた三人の少女たちは、糸が切れた操り人形のように重力に従って地面へと崩れ落ちる。

土埃が舞う中、ピクリとも動かなくなった三人を見下ろし、小悪魔はリュックサックをポンと叩いた。

「大豊作だわ！ これで愛天使も一巻の終わりね！」

公園には、絶望して泣き叫ぶじゃ魔ピーの声と、勝者の高笑いだけが空しく響き渡っていた。