生徒会長の秘密!?  その日は、夕方からずっと雨が降り続けていた。  雨音がうっすらと聞こえる薄暗い生徒会室で、窓際に置かれた執務机にもたれるようにして、二人の青年が絡み合っていた。  ひとりは大きな体格の牛獣人で、もう一人は人間だった。  牛獣人は全身の筋肉をなまめかしく脈動させながら、人間の青年の上に覆い被さっている。 「ふく、かいちょう……はやく……ぅ!」 喘ぐ牛獣人に対して、のしかかられている青年は、その細腕を使って、全力で相手を押し返していた。 「牛田会長、これ以上は!」  しかし牛田と呼ばれた獣人は、青年に向かってとろんとした目を向ける。 「ふくかわくん……ふくかわくんっ!」  彼の声はもう我慢できないと言った様子で、その巨躯も欲望をこらえるかのようにぷるぷると震えている。  牛田は福川と呼ばれた青年の耳元に囁いた。 「もう……駄目……っ!」 「わかってます! けど!」  福川は体をこすりつけてくる牛田を思い切り押しのけると、限界まで張り詰めた彼のワイシャツのボタンに手をかけた。  瞬間、  ――バツン!  牛田の胸元のボタンがはじけ、隠されていた豊満な乳房が露わになる。  そこに向かって福川は手を伸ばし、相手の胸をわしづかみにした。  彼が胸を掴むと、牛田の黒毛に覆われた双丘の、その頂点にある桜色のつぼみから、初々しい白色が吹き出した。  同時に外で雷が落ち、光がふたりの背後にある窓から生徒会室に飛び込んできた。  光が、二人の姿を照らし出す。 「ぶもぉおおおっ!!!」  快感にのけぞる牛田は、雷に対抗するかのように声を張り上げた。福川は彼を下から支えながら、自分を汚す白濁に顔をしかめた。  そして眉間にしわを寄せ、牛田の双丘から雄乳を絞り出しながら、心の中で叫んだ。 (ああもう! どうしてこんなことに!)  福川は苦々しい気持ちを隠しながら、過去に思いを馳せた。  私立化ノ皮学園、人間と獣人が共に学び、交流することを目的とした学校。  そこに通う人間である福川護は、生徒会副会長の腕章をつけ、校門に立った。  小柄で童顔な彼は、それを補うために、きりっと表情を引き締めた。 「みんなおはよう!」  そして、挨拶を始めて数分後に、もう一人の生徒会メンバーもやってきた。  彼は福川とは対照的な、包み込むような柔らかい声色で言った。 「ごめん、おくれちゃった」  その声を聞いて、福川は振り向く。  彼の後ろには、厳しげな雰囲気の福川とは正反対の印象を受ける牛獣人、牛田仁見の姿があった。  牛田は少し恥ずかしそうに、福川の隣に並んだ。彼の肩には、『あいさつ強化週間』と書かれたたすきが掛かっている。 「おはよう!」 「会長、遅れるなんて」 「ちょっと学園長に捕まって」  彼の腕には、生徒会長を示す腕章がついている。  牛田仁見、彼は2mはあろうかという筋骨隆々の体格を持つ牛獣人で、この学校の生徒会長でもある。  彼はその厳ついながらも甘いマスクを花のようにほころばせ、周りに温かな笑みを振りまいている。  当然、そんな牛田には自然と笑顔と尊敬のまなざしが向けられる。  福川は隣でぐっと拳を握る。 (やはり会長はすごい)  成績優秀、眉目秀麗。全国模試では一桁台の常連で、スポーツでは新記録を次々と打ち立てている。かといっておごり高ぶることなく、誰に対しても感謝と笑顔を忘れない。 (漫画みたいな人だ)  自然とまなざしに熱が籠もる。  尊敬のまなざしを向けていると、気づいた牛田と目が合った。  彼は目を泳がせながら頬をかく。 「もしかして……何か、ついてる?」  覗き込もうとしてきた牛田からさっと距離を取る。するとちょうど前を、改造制服を着た生徒が通り過ぎていった。  福川は意識を切り替えて、相手を呼び止める。 「おい君、制服の改造は校則違反だぞ」  生徒は狼の獣人で、言われてすぐに立ち止まった。  彼は、気まずそうに視線を逸らす。 「替えがなかったんだよ。いいだろ?」 「……なんで?」 「好きなバンドの新譜出てテンション上がってさぁ。こうなったわ」 「は?」  しかし、混乱するのもつかの間、 「危ないっ!」  緊迫した牛田の声が、耳に飛び込んできた。  瞬間、なにかに包まれる。感じたのは確かな浮遊感と、柔らかながらに確かな力強さもある、肉の感触。  その状態で、衝撃を感じる。例えるなら、柔らかいクッションに包まれた状態で転んだときのように。  驚きで目を瞑っていた福川が、恐る恐る目を開けると、 「怪我、してない?」 「会長!? どうして」  牛田が福川をバックハグし、後ろから顔を覗き込んでいた。 「空から、ほら」  牛田が顎をしゃくった方向に目を向けると、空から着地してきた鷹獣人が、狼獣人に罵声を浴びせられていた。 「てめーぶつかったらどうしてくれんだよコラァ!」 「ごめ〜ん、すっごくねむ……!」 「もたれかかってくんあー!?」 「レベルが低すぎる……!」  呆然とする福川に対し、牛田は嬉しそうに呟く。 「怪我がなくてよかったぁ〜」  そして無意識なのか、ぎゅっと福川のことを抱きしめた。  福川は体中に感じる会長のぬくもりに、胸を乱される。 「よくない! クッソ! 時間には余裕を持って登校――」  しかし、言葉は途中で止まる。後頭部に当たるぽよんぽよんした感触に気づいてしまったからだ。 (こ、この感触は……!)  そう、福川の頭は、牛田の豊満な大胸筋に挟まれていた。  やってくる教師や、周りに集まる生徒のことも構わず、福川は叫んだ。 「離せ! 離して! は、離してくださいっ! はなしてぇえええっ!」  生徒指導室から牛田と共に出た福川は、廊下を歩きながら大きなため息をついた。  それをみた牛田が、微笑を漏らす。 「怒られちゃったね」 「恥ずかしいです。とても」 「怪我した子がいなくてよかったよ」 「それは会長が、強かったから」  扉の向こうから、半泣きになったフクロウ、狼の鳴き声が聞こえてくる。  扉に恨めしげな視線を送りながら、福川が呟く。 「俺は……」  生徒指導室の中で言われたことを思い出し、自然と唇を噛んでいた。 「人間なんだから危ないことはするなって、何なんだよ。獣人が丈夫だからって」  言いかけて、はっと横を見る。  隣にいた牛田が、驚いたように目を見開いて立ち止まっていた。 「……失言でした」 「ううん、事実だから。いつもごめん」  気遣われたことに、福川の心がズキリと痛んだ。そしてつい、彼は本音をこぼす。 「俺も獣人だったら……」  しかし、それは大声で遮られた。 「駄目だ!!!」 「えっ」 「あっ」  牛田の大声に、福川の体がびくりと反応する。驚いた顔で見られた牛田は、顔の前で両手を振った。 「ほら” やっぱり、二種族でやった方が効率的だし!」 「そりゃあそうですけど」 「だからね――」  しかし、次の言葉がいつまで経ってもやってこない。牛田は体を縮こまらせながら、チラチラと視線を向けてくる。  その煮え切らない態度に、福川は拳を握った。 (いきなりなにを……)  口を開こうとしたとき、HRを告げるチャイムが鳴った。  福川は天井を見上げてから、牛田に向き直る。 「戻ろう。教室」 「そう、だね。うん」  うつむいた牛田に引っかかりを覚えながらも、福川は自分のクラスに戻った。 「獣人連合の首長、桜坂大門が――」  歴史のの教師が、黒板に板書しながら教科書を解説している。  窓際の席に座った福川は、机に頬杖をつきながら、手に持ったシャーペンから芯を出している。  彼の脳内では、今朝の出来事が絶えず再放送されていた。  ――君は人間なんだから  生徒指導の獣人に言われた言葉、そして  ――駄目だ!!!  牛田に言われた言葉。  カチカチとシャー芯を伸ばしながら、福川は眉間にしわを寄せた。 (俺だって……っ!)  胸を苛む敗北感から逃げるように窓の外をみると、外の運動場で体育をする牛田が見えた。  おそらく200メートル走。  牛田が人間の生徒と並び、走り出す。彼がかっ飛ばし、目にも止まらぬ早さでゴールに 到達した。  彼の周りに、人間獣人問わず人が集まっていく。その中心には、いつも牛田が居る。  それをみた瞬間、どうしようもなく胸の中が重くなった。 (勝てない)  しかし唇が無意識にそう動いた次の瞬間、教師が福川を当てた。 「おい福川、これを答えてみろ」  言われて福川はさっと立ち上がり返答する。簡単な穴埋め問題。 「シーズ10世です」  淡々と答え終わると、教師が感心して言った。 「相変わらず早いな」  わざとらしく人間の生徒を褒める教師を無視し席に着こうとした。しかし、その途中で窓の外を見た福川は、ピタリと動きを止める。 「……福川?」  目を見開いた福川は、持っていたシャーペンを机の上に放り投げ、出口に向かった。  シャーペンの伸びた芯が机の天板に当たり、砕け散る。  小走りで教室を後にしようとする福川に、教師が訊ねた。 「どこに!?」 「うんこです!」 「うん!?」  ドキドキする胸を押さえながら、福川は先ほどの光景を思い出す。 (会長……?)  グラウンドに倒れ込む、大きな黒い影。見間違えるはずもない、会長の姿。  気がつくと、福川は走り出していた。  教員棟は職員室や各種教科の準備室などが配置された3階建ての建物で、一階に保健室がある。  教員棟にたどり着いた福川はドキドキする胸を抑えながら保健室に向かっていた。 (会長がもし怪我をしていたらどうしよう。もしかしたら今朝のアレのせいで?)  それを考えると、息が苦しくなる。  保健室に近づくと、そこから出てくる牛田のクラスの生徒達とすれちがった。おそらく中に生徒会長がいるとアタリをつけた福川は、ドアノブに手をかけ、そこで一旦止まった。 (どうやって入るんだ?)  ノブに手をかけたまま、空いている手で口元を押さえる。  会長が心配で見に来ました! と元気よく入っていく自分の姿を想像してみる。が、 (アホか!)  頭をぶんぶんと振って空想をかき消し、改めてドアノブを握る。 (これは業務確認、生徒会の業務ができるかの確認確認確認確認……ああ、ヨシ!)  へりくつを捏ねた福川は、小さく咳払いをしてからノブを回そうとした。  しかしその時、 「――って、本当に」 「――分かって」  部屋の中から、保健医と牛田の会話が聞こえてきた。  扉の向こうで、牛田が申し訳なさそうに話している。 「アレはただの事故で」 「分かってます。でも、時間が無いから早く横になって」 (時間が無い?)  入るタイミングを見失った福川は、中の会話に怪訝な表情を浮かべる。  扉の向こうで、保健医が言った。 「今朝のあれから、調子悪いって」 「……はい」 (まさか……)  会話を聞いている福川の胸が、わしづかみにされたみたいに苦しくなる。  そして保健医が、彼の不安を裏付けるように言った。 「もう、自分を大事にして。体のこと、知られたくないんでしょ」 「!?」  福川は体をさっと扉から離すと、さっと顔を青くした。 (異変、異常が、会長の体に?)  苦しむ会長の姿が脳裏に浮かぶ。瞬時にそれをどう助けるか考え始めるが、それを否定するかのように、さっきの言葉が浮上した。  ――今朝ってまさか……。  思い出すのは、福川を抱えて地面に倒れ込んだ牛田の姿。それを思い出した瞬間、彼に衝撃が走る。  福川は震える手で口元を覆い、よろよろとその場を後にした。 「水泳部の予算稟議書、処理しておきました」 「えっ。あ、ありがとう」 「会長、飲み物は?」 「えっと……」 「疲れてませんか?」 「福川くん?」 「会長はそこで休んで――」 「福川くんっ!」 「……何ですか?」  放課後、夕暮れ時の生徒会室で業務に励んでいた福川は、焦った牛田の声を聞いて机から顔を上げた。  仏頂面の福川に向けて、赤面した牛田がぶんぶんと腕を振った。 「仕事、取り過ぎ!」 「は?」  牛田は窓を背にした執務机から立ち上がると、部屋中央にある長机まで数歩歩いた。そして、書類に埋もれている福川に訴える。 「手伝ってくれるのは嬉しいけどっ!」 「会長のサポートが自分の仕事です」 「だからってこんなに取らないで!」  牛田の執務机には小さな山、対して福川の机には大きな書類の山ができていた。 「赤ちゃんじゃないんだから!」  顔を赤くして鼻息荒くまくしたてる牛田に対し、つい福川は微笑みそうになる。が、 (かわい……って何考えてるんだ)  気を取り直した福川は目を伏せて考え、結局書類を渡した。  渋々書類を渡していくと、最終的に山の高さは同程度になった。  牛田はそれをみてほっとした様子で胸をなで下ろすと、執務机に就いて作業を始めた。  すると、彼の雰囲気が変わる。  怜悧な瞳で書類の上から下までを一瞬で読み込むと、さらさらとペンを走らせ、処理を終わらせる。  いつもの柔らかくて愛らしい彼とは違う、生徒を先導するリーダーの顔。  福川は作業をしながら、彼の表情に釘付けになっていた。 (会長、あなたは……)  その視線に、つい熱がこもる。  テキパキと仕事をこなす牛田の姿は、まさに福川の理想とする姿だ。  だからこそ、 (許せない……っ!) 「……?」  福川のペンの動きが止まる。紙をめくる音とペンの走る音だけが響く室内で、福川は 唇をかんだ。  だからこそ、それを手助けできない自分が許せない。牛田に起こった何らかの異変にも気づけない自分が。  しかし、ペンを強く握りしめ、考え込んでいた福川の体に、大きな影がかかった。  気づいて見上げると、そこには不思議そうにこちらを覗き込む牛田の姿が。 「どうしたの? おなか痛い?」 「あっ! えっ会長!? なんでもありません!」  反射的に目をそらし髪を触る福川に、牛田はおずおずと言った。 「もしかして、怒ってる?」 「違! そんなことは……」  立ち上がって否定しようと立ち上がったとき、 「あっ……」  彼の顔が超至近距離にあることに気づいた。  吐息がふれあうほどに近づいた二人は見つめ合う。牛田の優しさを湛えた漆黒の瞳、頑強そうな太いマズル、興奮混じりの甘い吐息、困惑気味の口元。甘い体臭。  高鳴る胸に導かれるまま、福川は言った。 「かい、ちょう」  牛田も、瞳に熱を込めながら応えた。 「な、なに、かな?」  お互いの呼吸がだんだん早くなっていく。  震える福川の手が、牛田に近づく。 「俺、本当は会長のことを……」 「うん……」  牛田の頬に、指先で触れる。彼はくすぐったそうにして目を細めると、体を屈ませて福川に近づいていく。  そして、二人の唇が近づいて、触れそうになったとき、 「が……っ!」  牛田が大きく目を見開いて、福川から体を離した。 「! 牛田!」  突然苦悶の表情を浮かべ、胸を抑えた牛田に福川は近づこうとしたが、本人がそれを止めた。 「ごめ、ん。保健室の……」 「呼んでくる! 待ってろ!」  そのまま福川は、走って生徒会室から出て行く。部屋に、大粒の汗を流しながらうずくまる牛田を残して。  廊下を走る福川の耳には、苦しげな牛田の呼吸音が、いつまでもこびりついていた。 「どうしよう……」  制服の胸元を握りしめながら、牛田は呻いた。胸部を苛む痛みは、段々強くなっている。「はやく、終わらせないと……っ」  顔をゆがめながらよろよろと自分の机まで歩いて行った牛田は、その下に隠していた者を取り出した。  大きな音を立てて机に置かれたそれは、ミルク缶型の搾乳機だった。  銀色のタンクの蓋から二股のゴムホースが伸びていて、それぞれの先端には牛乳を牛の乳房から搾り出すための透明なカップが付いている。  牛田は制服のブレザーを脱ぎ捨てて力任せにワイシャツのボタンを引きちぎると、周りにむわっとした重く甘い香りが立ちこめた。 牛田はシャツに覆われた大胸筋部分の布地が濡れ、桜色の乳頭を透かしているのを確認すると、表情を強ばらせた。 (もうこんなに……)  豊満な乳房からあふれ出した乳白色の液体、雄乳がシャツに大きなシミを作り出していた。 体に張り付く不快なそれを脱ぎ捨てると、はち切れんばかりに豊満な大胸筋が露わになる。 (前は違ったのに、どうして)  柔らかな脂肪に包まれ大きくせり上がった乳房、その先端にあるいきり勃った巨大な乳頭から絶え間なく雄乳があふれ出し、牛田の体を覆う黒毛に白い筋を作っていた。  我慢の限界とでも言うように呼吸のたびにぷるぷると震える乳房、牛田は片腕で胸を抱きながら呟いた。 「二回も絞ったのに……」  体育の授業で倒れたときに絞ったのが一回目、追加で昼にもう一回。  いつもはこれで大丈夫なはず。なのにそうではないと言うことは、 「福川くん……」  牛田はかみしめるように、彼の名を呼んだ。 彼を抱きしめたときのふわりとした感触、獣人とは違う華奢で繊細な体、驚いた表情、柔らかな香り、こちらを見つめる透き通るような瞳。  だが、それを脳内でリフレインしたとき、体に甘い電流が走り、グズグズに濡れた大胸筋の先端から、雄乳がほとばしった。 「いっ!?」  執務机の天板に、二つの白線が描かれる。  それは今まで感じたことのない強い快感だった。  歯を食いしばった牛田は両方の乳房に搾乳用のカップを装着し、ボタンを押した。  装置が動き出し、牛田の乳房がカップ内に設置されたヒダ状の回転する機械によって刺激される。 「んっ……」  乳頭を愛撫され、同時に吸引される。ぞくぞくとした快感が胸の先端から牛田の全身に回っていき、彼は目を閉じる。  そして次の瞬間には、カップの中が大量の雄乳によって満たされる――はずだった。 「えっ!? あれ?」  牛田ははっとなって目を開けると、機械の調子を確かめるように何回か電源を入れ直した。  そして、機械に何も問題が無いことを悟ると、唇をわなわなと戦慄かせた。 「なんで、出ないの……!?」  牛田が視線を胸元に落とす。そこにある搾乳機は乳房を刺激し吸い上げてはいるが、一切雄乳を絞れていなかった。  いつもはびゅくびゅくとミルクを吸い出し、真っ白に染まるはずの搾乳機のノズルは、未だ透明なまま。  装置を作動させる前の安心した表情から一転、青ざめた表情になった牛田に、さらなる試練が訪れる。  勢いよく扉が開き、中に福川が入ってくる。 「先生居なかったので救急車――!」  そして彼は、牛田の姿を見て、呆然とした表情になる。 「かい、ちょう……?」  信じられないものを見るような目でこちらを見つめてくる福川と目が合う。  彼が一瞬顔をしかめた後に視線を逸らしたとき、牛田の心に砕けそうなくらい強い衝撃が走る。 「ちが、これは……」 「何を……?」 「違うんだこれは、違う!」 「……ごめん」  福川の体が勢いよく翻される。  しかし牛田は彼の後ろ姿に向かって、手を伸ばし、 「お願い!」  次に、消え入りそうな声で言った。 「ひとりに、しないで……!」  福川が、動きを止めた。 「雄乳症?」  二人きり、鍵を閉めた生徒会室で牛田の前に立った福川は、彼から伝えられた病名を反芻した。 「それで、この……牛乳? が?」  福川は相手の胸元についた機械にぎょっとした視線を向ける。  牛田から聞いた話は、人間からすると到底信じられないものだった。  雄乳症、第二次性徴を終えた若い雄牛獣人がごくごく稀に発症することがある病気らしい。  症状はその名の通り、胸から通常雌牛獣人からしか出ない牛乳が出るというもの。  それだけだが、排出せずにいると胸に痛みが走り、日常生活に支障が出る。そのため、発症者は定期的な搾乳をしなければならないらしい。  福川は牛田の胸に付いたカップに手を伸ばしかけて止めた。 「え、じゃあ会長が体育の授業で倒れたのは」 「えっ!? 知ってたの!?」 「いえ風の噂で聞いただけで!」  顔の前で両手のひらを振る福川に、顔を赤くした牛田は言った。 「うん……言え、なくて」  うつむき、左右の人差し指を突き合わせていた彼は、やがて瞳に大粒の涙をため始めた。 「ちょ! 牛田!」 「ごめん……こんな生徒会長でごめん……!」  彼の肩に触れようとしたが、福川の動きが止まる。  困惑しているうちに、せきを切ったように、牛田が話し出した。 「君には迷惑かけちゃうし、授業には集中できないし! こんなんじゃ――」 「いやそんなに深刻な」 「会長なんて無理だ!」 「は?」  声を漏らした瞬間、福川の頭のどこかの血管がぶち切れる。  ゆらりと体を揺らした福川は、歯をぎりっとかみしめてから、牛田の肩を掴んだ。 「この――」 「え?」 「バカ会長!」  言うと同時に、福川は牛田の搾乳機がついた乳房をわしづかみにし、怒りのままにつねりあげた。 「ひ、ひぁああああっ!」  すると、あれだけ沈黙を保っていた牛田の豊満な胸は、福川が触れた瞬間から期待に震え、  ――びゅるるるるるっ!!!  勢いよくカップの中に噴乳した。  他人の手で搾られるという未知の感覚に、牛田は嬌声を上げる。 「やめ……っ! 出しちゃあああああっ!」  しかし憤慨する福川は相手のことなど無視して乱暴に言った。 「貴方がこんなことで!」  張り詰めた乳肉を上から下に扱き上げると、動きに応えるように何度も雄乳が噴出する。  ――ぷしゃぁあああっ!!! 「だめっ!」 「誰よりも一生懸命で!」  瓶に送り込まれるスピードが間に合わないほどの量により、搾乳用のカップが真っ白になる。  雄乳はカップから染み出し、快感にのけぞる牛田とその周りを白く淫靡に染め上げていく。 「だけど抜けてるところがあって! 俺みたいなのにも優しくて! ってああもう引っかかるなぁ!」 「!?」  福川はあふれ出したミルクを手ですくい、牛田の胸元に塗りたくった。それは相手の体温で暖められ蒸発し、立ちこめる匂いをさらに濃厚にしていく。  自身の濃い発情臭を嗅がされた牛田が、よだれを垂らしながら悲鳴を上げた。 「や、ヤバヤバヤバヤバ! それだめっ! やっ!」  体をよじって逃れようとするが、福川に押し倒され馬乗りで胸を搾られ続ける。  手足をバタバタさせるが、もはや手遅れだった。 「そんなっ! アンタがっ! 生徒会長にっ!」 「やだ! やだぁ! ふくかわくん! やぁあっ!」 「相応しくないわけないだろオラァああああ!!!!」  一心不乱に巨乳を揉みしだく福川の手が、全力で牛田のそれを握りつぶす。  すると限界を迎えた牛田の大胸筋から、今日一番の噴出が起こった。  ――ぷしゅっ! ぷしゅっ! ぶしゃぁああああああああ!!!! 「はぁああああああんっっ!!!」  先端を潰したホースのごとき勢いで噴出した雄乳は搾乳用のカップを吹き飛ばし、二人の全身を乳白色に染めていく。  牛田は足をピンと張り、海老反りに絶頂する。しばらくして絶頂が治まり始めると、連動して体から力が抜けていった。  そして彼がだらしなく舌を伸ばして痙攣する姿を見て、ようやく福川は正気を取り戻した。 「あっ! がっ! 会長!?」  彼は自分と会長の体、周りの惨状を目の当たりにして、顔を真っ青にした。 「会長すみません! 俺、なんてことを……!」  しかし、離れようとした福川の制服の裾が、弱い力で引っ張られる。  見ると、牛田は期待に満ちた瞳で福川を見上げていた。  慄く福川の腕を掴みながら牛田は言った。  「会長でいて、いいんでしょ……?」  福川はゆっくりとつばを飲みこむ。  普段の朗らかさとは全く違う、か細いながらも淫らな誘惑に満ちた甘い声。初めて見る牛田の姿。  これを引き出したのが自分だというのなら。 福川は覚悟を決めて、強い意志を込めて相手を見かえした。 「男に……男に二言はありません!」  牛田が再び生徒会室の机の下で嬌声を上げるのに、時間はかからなかった。  数日後、生徒会室にて。 「ありがとうございました!」  予算を承認された部員が生徒会室から出て行くのを、福川は牛田と共に見送った。  部員達は生徒会室の外で楽しそうにしゃべり出す。 「ねえ聞いた? 幽霊出るんだって!」 「死んだ牛獣人の?」 「夜ここら辺にいると」 「ぶもぉーってやつね!」  遠ざかっていく話し声を冷や汗をかきながら聞いていた福川は、それが完全に聞こえなくなってから言った。 「噂になってる……」  執務机に座る牛田を見ると、彼は顔を赤らめた。 「だって、気持ちよくて……」 「はぁ……」  ため息をついた福川は持っている書類を牛田の席に置き、背ろの窓から外の天気を見る。  空には鈍い色の雲がかかり、薄暗くなっている。 「かなり降るみたいですよ。今日は早く――」  しかし振り返ると、そこには搾乳機を机の上に置く牛田の姿が。  彼は制服のシャツをたくし上げ、熱を帯びた視線で福川を見つめる。  彼の胸元から、じわりと雄乳が染み出し、甘い匂いが鼻腔をくすぐり始める。 「遅くまで、いいよね?」 「いや、あの……」  その様子に後ずさりしかけるが、相手の目をもう一度見て、止める。 (俺はずっと、お前のことを助けたかった。助けられるヤツになりたかった)  福川は深呼吸し、シャツの第一ボタンを空ける。 「少しだけだからな!」 「! うんっ!」  外ではすでに、強い雨が降り始めていた。  その日、雨の音に紛れ、牛の鳴き声が校舎に響き渡ったという。