サカエトル王都警察怪文書  サカエトル王都警察、ウァリトヒロイが誇る王都サカエトルの治安維持のために組織された機関である。  クルマに乗る人、ひたすらに反社を狩る人、暗躍している人、ロボなど様々な面々により今日も平安な日常が保たれている。  今日は暗躍してる人とロボのお話。    サカエトルというよりウァリトヒロイそのものが人口のるつぼと化しており、労働者、技術者、難民などが多くの人種を掛け算して流入してくる。  多種多様な人間の隙間に入り込むように犯罪が跋扈し、警察組織の仕事が増える。  さて、それらと渡り合うために必要なのは確かな情報なのだが、この酒場で昼間からカウンターに腰掛け新聞を斜め読みするこの男に正義という行動理念があるとは思えない。  ダテイワ・クシテル、王都警察の刑事でありながら情報屋としてサカエトルに暗躍する男。  マフィアやギャングとの癒着も噂されている。 「マスター、もう一杯くれよ」  特に弱みを握られているわけではないが、仕込みに店に来てみたらいつもいるので下手に敵に回すのもよろしくないと酒を提供している。  昼間に発生し、開店時間が迫るといつの間にか消えていることも多いので、半ばあきらめつついる。  静かにグラスにロックを用意してダテイワの前に差し出す。 「ありがとよ」  新聞に載っている内容などは実のところ全て頭に入っている。  ここで確認することがあるとすれば公表された情報と自身の持つそれとの齟齬。  表向きそのように発表するしかなかった事情や報道機関に発されている規制レベルだろう。 「まぁこんなもんか…ん?」  今日のところは引き上げようと席を立ったところに通信術式が反応する。  どうやら何者かからの秘密通信のようだ。 「悪いがマスター、ちょっと外してくれ」  自分の店なのに?という顔をしながらマスターが店の奥へ引っ込む。 「はい、もしもし。うちは出前なんぞしてないぜ?」 「やぁどうもダテイワくん。元気にしているかね」 「おやおや、大臣様じゃないですか。一国の要人が悪徳警官のワタクシめにどんな御用で?」  通信先はイーンボウ、ウァリトヒロイの大臣であり、黒い噂は絶えないがそれはそれとして有能な人物である。 「私がキミに連絡することなんて限られているだろう」 「ランチのお誘いですかい?」 「抜かせ。仕事だ」 「そりゃどうも」 「最近、巷を騒がせている機甲強盗は知っているかな?」 「もちろん、存じておりますとも」  機甲強盗事件、所属不明の外骨格を纏った人物が金融機関を強襲し金品を奪い逃走する事件である。 「しかし、あれは…」 「そう、あの犯人と思しき人物は3件目の逃走途中に鎧をパージして姿を消した」 「物取りにしては稚拙でしょう。金品は残りっぱなし、あれじゃまるで」  技術のデモンストレーションのようだ、と。 「我が国を実験場にしている輩いるのは看過できん」 「一人であの立ち回りができるやつですよ。あんなハイパワーなブツをそう何体も用意できるもんですかね?」 「私がキミに調べてほしいところはそこなのだよ、ダテイワくん。  ここ最近、他国より何かが運び込まれているのは確かだ。誰が、どこで、何をしでかしているのか捜査せよ」 「…お代は高くつきますぜ?」 「構わん、情報でも金でもくれてやろう」  あまりに段取り良く進む会を不信に感じ、少し思案する。 「当方、荒事は得意ではないのですが。アレと遭遇した際の護衛やら装備やらをお願いしても良いですか」 「いや、こちらから支給はできない」 「…それならこちらも考えさせてもらいたい」 「いるじゃないか、キミのところに。最近やってきた娘が」 「それって…あっ」  通信が切れる。  言い値で報酬は出すが拒否権は与えない。  国の機密情報もいくつか握っているが、それのみ対等に立ち回ることはできない。  知っていることを知られている以上、暴露に関係なく力を行使できる権力には抗うより柳のように受けつつ流すことが肝要だ。 「タヌキ親父が…。あのロボット娘に?俺が?なんて頼めばいいんだよ」  ぶつくさ言いながら読み終えた新聞と酒の代金を置いてダテイワは酒場を後にした。