カタリナ・イーネはちやほやされるためだけに聖女を演じる病的な承認欲求の持ち主である。 この本性を知った人間はこう考えるかもしれない。 「彼女は、たとえば聖盾のクリストやS級冒険者ネーサ・マオのような自分よりも人気で人々に持て囃される存在を、 腹の底では腸が煮えくり返る程憎んでいて…出来ることなら彼らのような存在を潰したいと思っているのではないか」と。 しかし、結論から言えばその懸念は的外れである。 「人気者の足を引っ張ろうとするのは聖女としてイメージが悪い」というのも勿論あるが、本質はそこではない。 そもそも、自分より人気な存在を潰して、消したことで得られる暫定一位の、相対的な一番人気で満足できるほど無欲ではないのだ。もっと絶対的に、際限なくちやほやされたいのである。 たとえばここに「どんな願いも叶える魔人」がいたとしよう。この魔人にある男はこう願った。 「世界一の金持ちになりたい」 魔人は願いを聞き入れると煙のように消えた…そして次の日。 世界中の、その男より金持ちな人間が全員突然死して――その遺産は誰に継がれることもなく消え去った。 こうして男は願い通り「世界一の金持ち」になったのだ――悪意を持って願いを叶える系の物語の典型だが、 実際にこんな風に「世界一の金持ちになりたい」という願いを叶えられたら誰も納得しないだろう。 カタリナ・イーネにとって自分よりも人気な存在を潰すというのは、すなわちこれと同じようなことなのである。 自分より人気で持て囃される存在が居たら、肖りたい。利用したい。参考にしたい――そう考えるのが彼女なのだ。