辺境星系エルナト・プライムの大気は、常に微かな硫黄の香りを帯びている。 「クソッタレが」 ギャラクシー・プロレスリング・エンターテインメントの興行部長、ハースト・ヘルムスリーは、端末に表示された出場選手リストを睨みつけながら悪態をついた。二十五名いたはずのスターは、今や九名にまで減っている。『エルナト熱』と呼ばれる風土病が、巡業中の選手たちを次々と倒していた。 「だから渡航前にワクチン打てって勧告出てたでしょうに」 「うちにそんな金あったらもっとデカい箱押さえるに決まってんだろ」 「ごもっともで」 薄く笑い合うスタッフには諦観が浮かんでいる。 「それで、今夜のメインイベントはどうするんです、部長」 若手スタッフの問いかけに、ハーストは薄くなった頭を掻きむしる。 「知るか。チャンピオンのアングル・Kの相手が見つからなきゃこの団体もおしまい。俺たちゃ仲良く鉱山送りだ」 親指で首を掻き切るジェスチャーは、彼が現役時代によくしていた仕草ではあった。しかし目の前に突きつけられた興行の失敗と、その後の運命を考えればあまりにも重い。 幸いにもチャンピオン本人は壮健だった。だが対戦相手がいない。プロレスバカのアングルならば、箒相手にも試合を成立させるだろうが、誰が団体が誇る絶対王者と箒のメインイベントを観たいというのか。 「……ジムに行くぞ」 嘆息を隠して、ハーストは唐突に立ち上がった。 「はい?」 「地元のジムだ。使える奴がいるかもしれん。素人でもいい、見栄えのするガタイがあれば、後はアングルが何とかしてくれる」 ――― そのジムは、工業地区の片隅にひっそりと佇んでいた。 錆びついた看板には『ヒアデス・フィットネス』と書かれている。扉を開けると、鉄と汗の匂いが鼻腔を突いた。古めかしいマシンが並び、数人のトレーニーが黙々とメニューをこなしている。 ハーストの目は、奥のフリーウェイトエリアに釘付けになった。 そこにいたのは、一体の岩山だ。 いや、生きている。確かに呼吸をし、汗を流している。だがその肉体は、人間の域を優に超えていた。 纏う毛皮は磨き上げられた黒曜石のように艶めき、隆起した筋肉は一つひとつが独立した生命を持っているかのように脈動していた。三百キロはあろうかというバーベルを、まるで小枝を持ち上げるかのように軽々と上下させている。 「……あれは、何だ」 ハーストは傍らのスタッフに訊いた。声が震える。 「さ、さあ……この前から飛び入りで来てるんですが」 男がバーベルをラックに戻した。重い残響を残して振り返ったその顔を見て、ハーストは息を呑む。 紅く輝く角と鋭い眼光。だがそこには深い知性が宿っている。筋肉という概念を練り込んだ黒毛の雄牛。野放図に肉体を苛め抜いた野蛮さと、理性が同居する奇妙なバランス。年齢は……三十代半ばだろうか。 「何か用か」 低く、腹の底に響くような声だった。 ハーストは一瞬たじろいだが、すぐに商売人の顔を取り戻した。満面の笑みを浮かべ、両手を広げて近づいていく。 「いやあ、素晴らしい! 実に素晴らしい肉体だ!」 「……おう」 黒牛は困惑したように眉を顰めた。 「私はハンター・ハースト。ギャラクシー・プロレスリング・エンターテインメントの興行部長だ。あんた、プロレスに興味はないかね?」 「プロレス?」 男は首を傾げた。愛嬌のある仕草だが、その太い首が動くだけで、僧帽筋が地鳴りのようにうねる。 「ああ、リングの上で戦うショーだよ。あんたの身体なら即戦力だ。今夜の興行に出てくれないか?」 「いや、プロレスの意味を聞いた訳ではなく…おい、今夜?」 男は呆れたように笑った。白い歯が褐色の毛皮に映える。 「素人に何ができるってんだ? 俺はただの……」 言いかけて、男は口を噤んだ。 「ただの?」 「……いや、何でもない。とにかく、無理だろ。プロレスなんかガキの頃に観たくらいだ」 「見たことがなくても構わん! あんたはリングに立つだけでいい。後は我々の看板レスラー、アングル・Kが全て引き受ける。一流のレスラーは相手が箒でも梯子でもダッチワイフでも試合を組み立てられるんだ」 予期せぬ闖入者の話を、半身を引いて聞いていた雄牛ではあったが、男は黙って首を横に振った。 「悪いが、興味ねぇな」 ハーストは引き下がらなかった。 男の名前がオブシディウスであること、この星系には一時的に滞在していること、それ以上の素性は頑なに明かさないことを知った。 そして、ハーストはカードを切る。 アングル・K本人を連れてきたのだ。 アングルは身長百九十センチ、体重百キロ。オブシディウスほどの巨躯ではないが、均整の取れた肉体と、カリスマ性に満ちた風貌を持つ。GPEのチャンピオンベルトが、その腰で黄金に輝いていた。 「あんたがオブシディウスか」 アングルは真っ直ぐにオブシディウスの目を見つめた。 「そうだ」 「俺はアングル・K。プロレスバカだ」 「知ってる。あんたのとこの部長から聞かされたよ」 「じゃあ、俺の話も聞いてくれ」 アングルはジムのベンチに腰を下ろした。オブシディウスも、何故か目を止める。 「俺がプロレスを始めたのは、ガキの頃に見た一人のレスラーのせいだ。『獣神』知ってるか?」 思わず首を縦に振るオブシディウス。 獣神ライガーマスク――かつてリングを縦横無尽に駆け、子供に夢を魅せたプロレスラー。 「伝説のレスラーだ。プロレスだけじゃない。あの人は、全財産を孤児院の運営に注ぎ込んだ。銀河中を回って、恵まれない子供たちに夢を届けた」 アングルの目が遠くを見つめた。 「俺は孤児だった。両親の顔も知らない。だけどライガーが孤児院に来た日、俺の人生は変わった。あの人は俺を抱き上げて言ったんだ。『お前には可能性がある。諦めるな』って」 オブシディウスの表情が微かに変わった。 「俺はいつか、あの人のようになりたい。プロレスで稼いだ金で、子供たちを支援したい。あいつらに夢を届けたい。……だから、GPEを続けている」 アングルは立ち上がり、オブシディウスの前に進み出た。 「頼む。一度だけでいい。リングに上がってくれ。あんたの肉体には、人を魅了する力がある。それを子供たちのために使ってくれないか」 オブシディウスは黙っていた。 長い沈黙の後、その太い首が、ゆっくりと縦に動いた。 ――― 早速リハーサルだと連れてこられた試合会場は、既に設営を終えていた。特設のリングが鎮座したホテルの宴会場は、普段の落ち着いた空気から、これから始まる戦いの興奮をたたえている。 リングを前にしたオブシディウスは腕を組み、低く唸る。 「プロレスのルールは最低限しか知らねえぜ。派手にやるってのは構わないが、怪我でもされたらかなわん」 「安心しろ。素人の攻撃で怪我してたらプロが勤まるかよ。試合は全部俺が回す。受け身だけは教えてやるから、後はあんたの運動神経に任せる」 リハーサルが始まった。最初は受け身の練習。アングルの投げ技に対して、オブシディウスは床に叩きつけられるたびに微妙な顔をした。 「……結構痛ぇんだな。俺の体重でリングが凹まなきゃいいんだが」 軽口をたたくオブシディウス。しかし三度目、四度目と繰り返すうちに、雄牛はすぐにコツを掴んだ。常人離れした身体能力とバランス感覚で、マットへの衝突を柔らかな着地に変えていく。 アングルの目が次第に見開かれていった。 「なんだよあんた……てっきり素人かと思ったが」 「……まぁな」 次に基本的な動きと観客アピール。 「リングの中央で仁王立ちして、角を振りながら両腕を上げろ。観客に向かって吼えろ。『来い! 俺を見ろ!』って感じでな」 オブシディウスは最初、ぎこちなく腕を上げたが、すぐにヒーローとしての存在感をフルに発揮した。 低く響く声で観客席に向かって吠えると、アリーナ全体が震える。 チャンピオンが満足げに頷く。 「いいぞ、その調子だ。あんたは派手に振るまえばいい。全部受け止めてぶち返せ。観客はそれが欲しいんだ」 リハーサルが進むにつれ、オブシディウスの動きは驚異的な速さで洗練されていった。角を輝かせながらのジャンプ、巨体を活かしたパワースラム。どれも素人とは思えないキレと重厚感があった。 控室に戻った二人の間に、わずかな緊張と昂ぶりが残っていた。雄牛は巨体をベンチに預け、肩を軽く回しながら息を整えていた。チャンピオンがその向かいに腰を下ろし、ニヤリと笑う。 「いい試合にしようぜ、赤い角」 「あぁ、よろしくな」 オブシディウスが右手を差し出した。 大きな、節くれだった手。研究者でありながら、戦士としての荒々しさを隠しきれない掌だった。 アングルはその手を見下ろし、ふと頬を緩めた。体育会系の悪ふざけが顔に出る。ルーキーの緊張を解すための、いつもの挨拶だ。差し出された手を無視し、彼はストレートにオブシディウスの股間へ手を伸ばした。 「……っ!?」 握り込んだ瞬間、アングルの顔から表情が消えた。 ふてぶてしいまでの質量。 生々しく熱を帯びた温かさ。 布地越しでもはっきりと伝わる、張り詰めた存在感。 それは単なる大きさではなく、他のオスを本能的に平伏させる、圧倒的なアルファの威圧感を孕んでいた。余力すら感じさせる重厚さと脈動。 チャンピオンの目が驚愕に見開かれる。 「な……っ、なんだこれ……」 呆気にとられたのはオブシディウスも同じだ。 しかし次の瞬間、雄牛の唇がゆっくりと好色な笑みに吊り上がる。 「へっ……随分と挨拶が豪快じゃねえか」 低く笑いながら、オブシディウスは腰をずいと前に突き出した。 アングルの手に、自分の長大なイチモツをより強く押し当てるように。 布越しに伝わる熱と質量が、さらに強調される。 「緊張をほぐしてくれてるつもりか? だったら遠慮なく握ってくれていいぜ。……俺のムスコも、チャンピオンに挨拶する必要があるかもな」 アングルは一瞬言葉を失い、手を離そうとしたが、逆にオブシディウスの大きな手が彼の肩を掴んで引き寄せた。 兄貴肌の威圧感と、雄としての余裕が混じり合った視線が、アングルを射抜く。控室の空気が、熱を帯びて重くなった。アングルはようやく手を離し、苦笑しながら後ろに下がった。 「……おいおい、化け物かよ。本番でこれをリング上で見せられたら、俺のチャンピオンベルトどころじゃねえな」 オブシディウスは満足げに鼻を鳴らし、角を輝かせながら立ち上がった。 「頼まれたからには、試合は本気でやってやるよ……ただし、下手な真似して、俺にブチ抜かれても文句言うんじゃねえぞ?」 「フン。威勢のいいルーキーは嫌いじゃない。プロレスの楽しさ、教えてやるよ」 改めて、がっちりと握手を交わす。 二人の間には、奇妙な信頼と雄同士の競争心が芽生えていた。 ――― 「これを被れ」 営業部長ハーストが差し出したのは、異様なマスクだった。 黒いゴム製のガスマスク。両眼の部分には赤いレンズが嵌め込まれ、口元には金属製のフィルターが取り付けられている。まるで、終末戦争を生き延びた兵士の装備のようだ。 「……何だよ、これは」 「あんたのギミックだ。オブシディウス……いい名前だが、このままじゃ使えん。あんたには『ブラック・ブル』としてリングに上がってもらう。極悪プロモーターこと俺に改造された怪人レスラー、という設定だ」 オブシディウスはマスクを手に取り、しげしげと眺める。 「素性を隠したいんだろう?」 ハーストの言葉に、雄牛は顔を上げる。 「……どういう意味だ」 「勘繰らなくてもいい。あんたが何者かなんて、俺達には関係ない。ただ、顔を出したくないなら好都合だってだけだ。このマスクを被れば、誰もあんたの正体は分からん」 オブシディウスは暫く考え込んでいたが、やがて頷いた。 「分かった」 「よし。それから、これも着てくれ」 ハーストが次に渡したのは、オブシディウスの前面を大きく覆うゴムエプロン。そして赤と黒のレザーボンデージ衣装だった。革のハーネスが複雑に絡み合い、金属のバックルが所々で光っている。胸元は大きく開き、背中は完全に露出するデザインだった。 「なんだこれ。本気かよ」 「本気だ。悪役ってのはな、見た目のインパクトが命なんだよ。あんたの肉体に、この衣装。完璧だ」 「……そんなもんかね」 「コンセプトは変態肉屋だ。チャンピオンを付け狙うプロモーターのシナリオは組んであるからギミックとしてレフェリーを人質に取った2vs1マッチにしてもいいがチェーンやケージマッチ肉剥ぎルールや血煙にも展開しやすい、ここまでコスにコンセプトを注いでおけばこいつが居なくなってもうちの若手へスイッチしやす…」 オブシディウスは衣装を広げながら、目の前で自分の世界に入りこんだ元祖プロレスバカに向かい溜息をついた。 「やれやれ……」 ――― 今夜だけのアリーナと化した宴会場は、既に熱気で満ちていた。 収容人数は三百人ほど。巡業サイズとしては標準的だが、流行病の影響で観客数は落ち込んでいた。それでも、チャンピオン・アングルの名を目当てに集まった二百人ほどの観客が、リングを取り囲んで歓声を上げている。 宴会場の中央に設置されたリングは、四方から強烈なスポットライトに照らされていた。ロープは赤と青、マットは白。 『メインイベントの時間だぁーッ!』 リングアナウンサーの声が会場に響き渡った。 『まずは挑戦者から! 悪のプロモーター、ドクター・デビルに改造された禁断の怪人! その名も……ブラック・ブルーッ!』 入場曲が流れ始めた。重低音が腹に響くヘヴィメタルだ。 花道の奥から、巨大な影が現れる。 観客の誰もが息を呑んだ。 ガスマスクの赤い眼が、スポットライトを反射して不気味に光る。レザーボンデージに包まれた黒い肉体は、歩くたびに筋肉の一つひとつが独立して波打った。その威圧感は、まさに怪物そのものだった。 「でかい……」 「何だあの体は……」 「本当に人間か?」 ざわめきが会場を支配した。 オブシディウス――いや、ブラック・ブルは、ゆっくりとリングに向かって歩を進めた。一歩ごとに床が軋む。その足音さえもが、観客の恐怖を煽った。 リングの前で立ち止まると、ブラック・ブルは最上段のロープを掴む。そして、まるで柵を跨ぐように、一息でリングに上がった。 「おおおおッ!」 観客から驚嘆の声が上がる。 リングの上で仁王立ちになったブラック・ブルは、ゆっくりと首を回した。マスクの奥から覗く赤い光が、会場を睥睨する。その姿は、暗黒神が降臨したかのようだ。 「そして王者! ギャラクシー・プロレスリング・エンターテインメント、不動のチャンピオン! 『メダリスト』アングル・Kーーーッ!」 観客の声援が爆発した。 「アングル! アングル!」 華やかな入場曲とともに、アングルが姿を現した。金色のガウンを翻し、自信に満ちた笑顔で観客に応える。腰のチャンピオンベルトが、スポットライトを受けて眩く輝いた。 リングに上がったチャンピオンは、ブラック・ブルと対峙する。身長差は優に二十センチ以上。体格差は言うまでもない。まるで大人と子供だ。 だがチャンピオンは怯まなかった。むしろ、その口元には不敵な笑みが浮かんでいる。 「いい格好してるじゃねえか」 マイクを通さない小声で、アングルが言った。 (お前らがやらせてんだろが……) オブシディウスの唸り声が観客席にまで響く。 (いいか、約束は覚えてるな? 俺に全部任せろ。お前はただ、思い切り暴れればいい) (……分かった) 高らかにゴングが鳴る。 ――― アングルの動きは、芸術だった。 軽やかなフットワークでリングを縦横無尽に駆け巡り、ブラック・ブルの周囲を旋回する。まるで猛牛を翻弄する闘牛士のようだった。 「来いよ、怪物!」 アングルが挑発的に手招きした。 オブシディウスは一瞬だけ躊躇する。素人、と言って、ヒーローライセンスを持つ自分が、本当にやっていいのか。 だがアングルの目は真剣だった。来い、と言っている。 ブラック・ブルは踏み込んだ。 ドスンッ! リングが揺れた。その一歩だけで、会場の空気が変わった。 アングルがジャブを放った。的確にブラック・ブルの顔面を捉える。 バチンッ! 鋭い音が響いた。だがブラック・ブルは微動だにしない。 「効いてねえのかよ……!」 踏み込んだ掌底は雄牛の顎を的確に捉えたはずだ。 観客が沸いた。 チャンピオンは畳みかけるように連打を放つ。顔面、胸、脇腹。拳が次々とブラック・ブルの体に叩き込まれる。だが巨体は揺るがない。まるで岩壁を殴っているようだった。 「すげえ……」 「あの化け物、全然効いてないぞ……!」 オブシディウスの中で、何かが目覚め始めていく。 観客の興奮が伝わってくる。アングルの拳の感触が心地いい。 (これは……面白えな) 異形のカイブツと渡り合い、宇宙の果てで命を賭けた戦いを幾度も経験してきた。だがこれは違う。殺し合いではない。観客を魅了するための、演出された闘争だ。 そして雄牛は理解し始めていた。プロレスとは何か。観客が何を求めているか。 「……来いよ」 ブラック・ブルが初めて声を発した。 マスク越しでも、その声は会場に響いた。観客がざわめく。 アングルの目が輝いた。分かってきたな、と言わんばかりに。 「上等だ!」 チャンピオンが跳躍した。ロープを蹴り、空中で回転しながら強烈なキックを放つ。 ドゴッ! ブラック・ブルの側頭部を正確に捉える。初めて巨体がぐらりと傾き、膝をついた。 「おおおおおッ!」 観客が爆発した。 「アングル! アングル!」 会場がチャンピオンのコールで揺れた。だがその声を無視して、ブラック・ブルが立ち上がる。 ゴゴゴゴゴ…… 空気が震えた。 ブラック・ブルがゆっくりと首を回した。マスクの奥の赤い光が、危険な色を帯びる。 「……今のは、効いた」 その言葉と同時に、ブラック・ブルが動いた。 ドンッ! チャンピオンの脇腹に巨大な拳が炸裂した。 「がはっ……!」 アングルの体が宙を舞った。ロープに激突し、跳ね返されてマットに転がる。 会場が静まり返った。 「嘘だろ……」 「チャンピオンが……」 ブラック・ブルは追撃をしなかった。ゆっくりとヴィクターに近づき、見下ろす。 「立て」 その言葉には、不思議な威厳があった。 アングルは脇腹を押さえながら、ゆっくりと立ち上がった。顔には苦悶の色が浮かんでいたが、その目は楽しそうに細められている。 (……やるじゃねえか) (お前もな) 二人の視線が交錯した。 そこから先は、互いに譲らぬ死闘だった。 チャンピオンはスピードと技術で翻弄し、挑戦者は圧倒的なパワーで押し潰す。攻守が入れ替わるたびに、観客の声援が波のように押し寄せた。 「すげえ試合だ……!」 「こんなの、見たことねえ……!」 リングの上では、汗と熱気が飛沫のように舞っていた。スポットライトがその飛沫を照らし、まるで無数の宝石が散っているようだった。 二人の間には、奇妙な空気が生まれていた。激しい攻撃を食らわせた直後、互いの目が合う。 そこにあるのは、憎悪ではなく、共感。 力の限界まで暴力をぶつけ合うことでしか分かり合えない、稚気じみた意地と、雄としての誇り。 殴り合い、投げ合い、締め合いの中で、徐々に生まれる奇妙な連帯感。それは戦う者同士だけが理解できる、荒々しくも尊い、愛情のようなものだった。 ドゴッ! 巨体がぶつかるたびに、リングが悲鳴を上げた。交通事故もかくやといった激突音。荒い吐息。 「これで……終わりだ!」 ブラック・ブルの拳が振りかぶられる。 チャンピオンが蹴りで迎え撃つ。 バゴォンッ! 汗で極端に滑りやすくなっていたリング。衝突音は予想外の所で鳴った。 チャンピオンの強烈なローキックが、バランスを崩した瞬間、狙いが大きく外れる。挑戦者の太もも付近に当たるはずの蹴りが、わずかに内側へ。鈍い音が響き、ブラック・ブルは一瞬、体を硬直させた。 雄牛の股間に深々と突き刺さった蹴りは、ショートタイツの前部分に突き出た強固な膨らみを捉える。逃げ場を失った衝撃によって、オブシディウスの睾丸がぐにゃりと内側にへしゃげた。 脳の奥を直接かき回されるような、耐えがたい鈍痛が全身を駆け巡る。 巨体が前屈みになり、片膝を突く。 そのままゆっくりと四つん這いになり、オブシディウスは苦悶の表情を浮かべながら腹部を押さえた。 額から脂汗が大量に流れ落ち、息が荒く、肩が大きく上下する。チャンピオンも自分のミスに気づき、動きを止めた。 会場が異様な静寂に包まれる。そのさなか、実況アナウンサーが慌てて声を張り上げた。 『これは……これは想定外の展開です! チャンピオンまさかのロー・ブロー! ブルがダウン! 回復できるかどうか!』 解説者も間を持たせるように続ける。 『ルール上、反則には該当しませんが……チャンピオンとしても、決して望んだ形ではないでしょう。試合の流れが完全に止まってしまいました!』 リングサイドに控えていたハンターがゆっくりと立ち上がった。マイクを手に取り、観客に向かって胴間声を飛ばす。 「ふざけるな! チャンピオンよ、お前はそんなラフファイトで勝つつもりか!? お前が汚え手段を使うなら、こっちも……こいつの出番だ!」 ハンターこと悪のプロモーターは、懐から怪しげな小型スイッチを取り出し、迷わずボタンを押し込んだ。 カチリ。 一瞬、会場内の照明がわずかに乱れ、リングの四隅に設置されたスピーカーから低周波の音が流れる。同時に、雄牛の全身を紫の煙が包んだ。 それは単なる時間稼ぎ――挑戦者が回復するまで、観客の注意を逸らすための小細工に過ぎなかった。はずだった。 効果は予想外の形で現れる。ブラック・ブルの巨体が、ビクンッと大きく痙攣した。 四つん這いのまま、背中の筋肉が波打ち、角が照明を反射して異様に輝く。 低く、獣のような唸り声が喉の奥から漏れ始めた。 「……ぐ……おおお……!?」 プロモーターの顔色が変わる。 「待て……これは……おい……!?」 ブルの瞳が、赤く光り始めた。 何か、別のスイッチが入ってしまったかのように、巨体から溢れ出す狂暴な闘気が、会場全体を圧倒し始める。チャンピオンは警戒を強め、後ずさった。 観客の間に、再び緊張と恐怖が走る。ハンターは自身のミスに気づき、青ざめながら挽回の手段を模索するが――、 もう遅かった。獣が、ゆっくりと立ち上がろうとしていた。 ――― シュウウウウ…… 異様な音が、ブラック・ブルのマスクの中から聞こえた。瞬間、視界が紫に染まる。 (……なんだ?) 下腹部から沸き上がる不快感に喘ぐことしか出来なかったオブシディウス。一瞬の判断の遅れは致命的だった。 脳をシェイクされるような振動。同時に漂う甘い香り。マスクの内側に、何かが充満し始めている。 それは古代を残した辺境航宙船に遺されたという、理性を溶かす特殊な音波。 それは数百年を生きた錬金術師から授かったという、生命力を増幅させる香。 ただの小道具で使っていいはずのない二つが、至近距離からオブシディウスに襲い掛かる。 脳内で、危険な化学反応が起きていた。 雄牛の体が震え始める。全身の筋肉が、意志とは無関係に収縮と弛緩を繰り返す。 (ぐっ……何だよ、これは……) 思考が霞んでいく。理性が溶けていく。代わりに湧き上がってくるのは、原始的な衝動。獣のような本能だ。 マスクの奥の赤い光が、より一層強く輝き始めた。 ――― 再起動したケダモノは、沸き上がる不快感を苛立ちまぎれ、目の前の人影を力任せに殴りつけた。 ロープにぶつかり、人形のように跳ね返ったそれを、改めて視界に収める。 映ったのは、マットに倒れたニンゲンの姿だった。汗に濡れた褐色の肌。鍛え上げられた肉体。ショートタイツに包まれた下半身。 アングルのことを、敵とも、仲間とも認識できなくなっている。ただそこに在るのは、雌だった。己の子を産ませるべき、孕み袋。 「……グルルルル」 雄牛の喉から、獣のような唸り声が漏れた。天に向かって吠える。抑圧された衝動を、咆哮として響かせた。纏うエプロンも、ハーネスも、邪魔だと言わんばかりに引き千切る。 会場の観客たちは、それを演技だと思っていた。怪人レスラーの凄みを出すためのパフォーマンスだと。 だが次の瞬間、彼らの認識は覆された。 ビリィィィッ! 雄牛のリングコスチュームが、内側から弾け飛ぶ。 ずるり、と重い音を立てて、規格外の巨根が飛び出した。まだ本気で勃起していない。それなのに、想像を遥かに超える太さと長さを観客に見せつけていた。 雄牛は、倒れ伏した雌の頭をつかみ上げる。チャンピオンの顔に雄牛の肉棒が寄せられた。既にチャンピオン顔を超えてふてぶてしくぶら下がる肉竿に、ズクン!ズクン!と音を立てて芯が入っていく。 「ゥガアアアァァァ!!!!!」 獣の咆哮が、会場を満たす。 露わになったのは、規格外の巨砲だった。 黒曜石の肌と同じ色をした肉の塔が、天を衝かんばかりに屹立していた。その長さは優に鳩尾を超え、雄牛の胸板を叩いている。成人男性の太腿ほどもある表面に、は太い血管が縄のように絡みつき、鐘のような亀頭は既に透明な液体で濡れそぼっていた。 「な……」 アングルは朦朧とした意識の中で、その光景を見上げた。 リミッターの外れた膂力で殴られて脳震盪を起こしている。視界がぐらぐらと揺れ、思考がまとまらない。だが本能的な恐怖だけは、明確に感じ取っていた。 「お、おい……何だよ、これ……」 立ち上がろうとした。だが体が言うことを聞かない。耳障りな重低音と、目の前の雄から漏れる甘い匂い。 雄牛がゆっくりと近づいてくる。その巨大な男根が、チャンピオンの顔に影を落とした。 べちゃり 先端から零れ落ちた先走りが、アングルの額に垂れた。 その瞬間、アングルの頭の中で何かが弾けた。 「あ……ああ……」 眼の前で仁王立ちする男のマスクから漏れ出た紫煙、点滅するライト。催淫成分は、その粘液にも含まれていた。皮膚から浸透したそれは、瞬く間にチャンピオンの脳を侵していく。 価値観が塗り替えられていく。これまで積み上げてきた全てが、上書きされていく感覚。 「やめ……やめてくれ……」 声が震えた。涙が頬を伝った。だが体は言うことを聞かなかった。 膝が勝手に折れた。気がつけば、雄牛の足元に跪いていた。 「くそ……くそっ……」 アングルは自分の手が、雄牛の巨砲に伸びていくのを見た。まるで他人の手のようだった。俯瞰で自分を見ているような感覚。屈辱と、止められない衝動。 その手が、熱い肉の柱に触れた。 文字通り、雌雄はすでに決していた。 リングの上で、支配と被虐、絶対的な雄と雌の関係が、誰の目にも明らかになっていく。 今となっては、この会場にいるすべての者の意志が、ひとつの方向に向かっている気がした。このアルファ雄牛に奉仕することこそが、自然の摂理であり、プロレスラーとしての責務なのだと。 ――― リングアナウンサーのマイクが、会場に響き渡った。 『お、おおっと! これは一体どういうことだ! チャンピオン・アングルが、ブラック・ブルの前に跪いている!』 解説席の男も叫んだ。 『信じられません。 あの誇り高きチャンピオンが、まるで……まるで雌犬のようです』 観客席からは、戸惑いの声と、下卑た笑い声が入り混じって聞こえてきた。 「チャンピオン、何やってんだよ!」 「おいおい、これはプロレスか? それとも……」 「見ろよ、あの顔……完全にイッてやがる……」 アングルの顔は、既に理性を失っていた。瞳孔は開き、口元からは涎が垂れ、両手は懸命に雄牛の巨砲を扱いていた。 だが届かない。あまりにも巨大すぎて、両手で握っても余る。 「っ……はぁ……はぁ……」 アングルの息が荒くなる。手の動きだけでは満足できない。本能が、もっと深い奉仕を求めていた。 舌が伸びた。 くちゅ……くちゅ…… 亀頭を舐め上げる音が、静まり返った会場に響いた。 「おおおっ!」 観客が沸いた。これが演技なのか本気なのか、もはや誰にも分からなかった。だが確実に、会場の空気は変質していた。淫靡な熱気が、人々の理性を蝕んでいた。 「チャンピオンが……王者が……」 「舐めてる……本当に舐めてやがる……」 「淫売……チャンピオンベルトを持った淫売だ……」 罵声と歓声が入り混じる。チャンピオンの耳にもそれは届いていたが、もはや羞恥心は機能していなかった。 ただひたすらに、目の前の雄を崇拝したい。この圧倒的な男性器に奉仕したい。その衝動だけが、彼を支配していた。 雄牛は無言で立っていた。マスクの奥の赤い光が、アングルを見下ろしている。その巨体は微動だにせず、まるで神託を下す石像のようだった。 「もっと……もっとくれ……」 チャンピオンの懇願が漏れる。舌だけでは足りない。喉の奥まで、この雄の肉を感じたい。 口を大きく開いた。顎が外れそうなほどに。 亀頭が唇を割って入ってきた。 「んぐっ……!」 あまりの太さに、喉が悲鳴を上げる。だがチャンピオンは止まらなかった。必死に喉を開き、少しずつ、少しずつ飲み込んでいく。 ずぷ……ずぷ…… リングに響く淫らな音。観客の視線が、その光景に釘付けになっていた。 「すげえ……」 「喉が……あんなに膨らんで……」 チャンピオンの首が、雄牛のペニスの形に沿って膨れ上がっていた。まるで蛇が獲物を丸呑みにしているかのような光景だった。 「ふぐっ……んぐっ……ごぼっ……」 嗚咽の音が漏れる。涙と涎が顎を伝い、マットに滴り落ちる。だがチャンピオンは止まらなかった。止められなかった。 やがて、アングルの鼻が雄牛の陰毛に触れた。全長を呑み込んだのだ。 「マジかよ……」 「全部入った……あのバケモンチンポが、全部……」 ブラック・ブルの体が微かに震えた。 「……グルルル……」 獣のような唸り声とともに、挑戦者の手がチャンピオンの頭を掴んだ。そしてゆっくりと、腰を動かし始める。 ずちゅっ……ずちゅっ…… 最初はゆっくりと。だが次第にペースが上がっていく。 ずちゅずちゅずちゅずちゅ! チャンピオンの頭が、雄牛の腰の動きに合わせて前後に揺れた。目は白目を剥き、体は痙攣している。だがその表情には、屈辱ではなく恍惚が浮かんでいた。 喉に咥え込んだ肉棒に比べて、あまりにもささやかな勃起が精を放つ。チャンピオンの戦装束が粘液に濡れていった。 「イッてる……チャンピオン、イッてるぞ……」 「喉マンコでイクなんて……本物の変態だな……」 観客の罵声が、会場に響き渡った。だがその声にも、淫靡な熱を帯びている。 ――― 雄牛の動きが止まった。 生贄の口から巨砲を引き抜く。大量の涎と先走りが糸を引いた。 「はぁっ……はぁっ……」 チャンピオンは荒い息をつきながら、呆然と雄牛を見上げた。喉を犯され、呼吸を奪われた余韻で、思考はまばらだ。 だが次の瞬間、アングルは自分が仰向けに倒されたことに気づいた。 「あ……」 視界いっぱいに、雄牛の巨体が映った。その股間には、己の唾液で濡れた巨砲が天を向いている。 「ま……待ってくれ……」 チャンピオンは恐怖に駆られて後ずさろうとした。だが体が動かない。淫毒に侵された神経が、命令を受け付けない。 雄牛がアングルのショートタイツに手をかける。 ビリィィッ! 布が引き裂かれた。鍛え上げられた下半身が露わになった。 「おおおっ!」 観客から歓声が上がった。 アングルの尻は、プロレスラーとして鍛え上げられた芸術品だった。引き締まった筋肉と、適度な脂肪が織りなす曲線。その割れ目の奥に、小さな窄まりが見えた。 雄牛の指が、その排泄孔に触れた。 「ひっ……!」 アングルの体が跳ねた。未知の感覚。だが不思議と、嫌悪感はなかった。むしろ…… 「あ……あぁ……」 指が一本、ゆっくりと沈んでいった。 会場は息を呑んで見守っていた。リングの上で繰り広げられる光景は、もはやプロレスではない。だが誰も止めようとはしなかった。止められなかった。 「い……いい……もっと……」 チャンピオンの呻き声がマイクに拾われる。二本目の指が加わる。三本目。その度に、彼の体は悦びに震えた。 「フーッ!!!ガグォォォ!!!!」 マスクの中で、言葉にならない獣の咆哮が響く。その声の意味するところはひとつ。 生贄の足が大きく開かれた。巨砲が、その入り口に押し当てられる。 「あ……ああ……」 アングルの目から涙が溢れた。恐怖か、期待か、本人にも分からなかった。 ただ一つ確かなのは、自分がこの圧倒的な雄に征服されることを、心で望んでいるということだった。 「……挿れてくれ」 ずぷっ…… 亀頭がアングルの中に沈んだ。 「あぁぁぁっ!」 悲鳴とも嬌声ともつかない声が、会場に響き渡った。 あまりにも太い。あまりにも大きい。内臓が押し上げられるような感覚。だがその痛みの奥に、言葉にできない快感が潜んでいた。 雄牛はゆっくりと、だが確実に生贄の中へ腰を進めていった。 ずぷずぷずぷ…… アングルの腹が、雄牛のペニスを包んで膨れ上がっていく。まるで妊婦のように。 「すげえ……腹が……」 「形が見えてる……チンポの形が……」 観客の声が遠くに聞こえた。チャンピオンの意識は、快楽の渦に呑み込まれていた。 やがて、雄牛の下腹がアングルの尻に密着する。根元まで、全てが入ったのだ。 「ぁ……ぁぁ……」 チャンピオンの口から、壊れたような声が漏れた。目は完全に焦点を失い、舌が口からだらりと垂れ下がっている。 雄牛が腰を引く。そして、突いた。 ズンッ! 「ひぎぃっ!」 アングルの体が跳ね上がった。 そこからは、暴力的な交尾だった。雄牛の腰が、ピストンのように前後に動く。 ずちゅずちゅずちゅずちゅ! パンパンパンパン! 肉と肉がぶつかり合う音が、会場に響き渡る。元チャンピオンの体は、獣の動きに合わせて人形のように揺れた。 「あっ! あっ! あっ! あぁぁぁっ!」 アングルの喘ぎ声が、マイクを通して会場に響く。 『す……凄まじい! これがブラック・ブルの真の力だ! チャンピオン・アングルが、まるで雌のように犯されています!』 解説者も叫んだ。 『これぞ下剋上! 無名の新人が、王者を完全に支配しています!!』 観客の声援が、下品なコールに変わり始めた。 「犯せ! 犯せ!」 「種付け! 種付けだ!」 「孕ませろ! 孕ませろ!」 会場全体が、一つの意志を持ったかのように叫んでいた。 雄牛の動きが、さらに激しくなった。全身の筋肉が膨張し、血管が浮き上がる。汗が飛沫のように舞い、スポットライトに照らされて輝く。 「っ……!」 雄牛の体が大きく震えた。 そして―― ビュルルルルッ! 大量の精液が、チャンピオンの中に注ぎ込まれた。 「ひぎぃぃぃぃっ!」 アングルの全身が痙攣した。ペニスに触れてもいないのに、彼自身の性器からも白濁液が噴き出した。 「イッた……チャンピオンがイッた……」 「中出しされて……孕まされて……」 観客の声も、恍惚とした響きを帯びていた。 雄牛の射精は、長く続いた。チャンピオンの腹が、注ぎ込まれた精液でさらに膨れ上がっていく。接合部からは、収まりきらない白濁液が溢れ出し、マットに水溜りを作っていた。 やがて、雄牛の動きが止まる。 ゆっくりとペニスが引き抜かれていく。 ずるるるるっ…… 犠牲者の穴から、大量の精液が滝のように流れ出す。 「あ……ぁぁ……」 アングルは完全に壊れていた。白目を剥き、口から涎を垂らし、時折痙攣しながらマットに横たわっている。その姿は、もはやチャンピオンの面影などなかった。 オブシディウスが両腕を広げた。 その瞬間、会場が爆発した。 「ブラック・ブル! ブラック・ブル!」 観客の声援が、天井を揺らす。 ――― だが、ブラック・ブルの征服はまだ終わっていなかった。あれだけの射精をもってしても、収まりのつかない本能。 壊れたアングルを引きずり起こし、再び自分の上に跨がらせる。 「立て」 その声に、アングルの体が反応した。ほとんど意識はないはずなのに、体だけが命令に従っている。 「あ……ぁ……」 アングルの足が、ブルの腰の両側に置かれた。がに股の姿勢。その股間の下には、未だに硬さを失わない雄牛の巨砲がある。 「下ろせ」 ずぷっ…… アングルの体が、自らの重みで巨砲を呑み込んでいった。 「ひぃ……っ!」 再び貫かれた衝撃で、アングルの意識が一瞬だけ戻った。だがすぐにまた、快楽の渦に呑まれていく。 「スクワットだ」 ブルの命令が響いた。 アングルの体が、ぎこちなく上下し始めた。 ずちゅっ……ずちゅっ…… まるでスクワットをするように、腰を上げては下ろす。その度に、オブシディウスの長大なペニスが、性器と化したチャンピオンの肛門を出入りする。 「いーち!」 観客の声が響いた。 「にー!」 カウントが始まった。 「さーん!」 アングルの動きは、子鹿のようにぎこちなかった。脚が震え、バランスが取れない。だが止まることは許されなかった。 「よーん!」 「遅い!」 「もっと腰を落とせ!」 観客からの罵声が飛ぶ。 「ごー!」 アングルの動きが少しだけ早くなった。だがすぐに限界が来た。脚が痙攣し、腰が落ちきったところで止まってしまった。 「あ……っ!」 アングルの体が小刻みに震えた。完全に根元まで呑み込んだ状態で、彼はまた達していた。 「馬鹿にしてんのか!」 観客から怒号が飛んだ。 「チンポケースの分際で!」 「もう一回だ! 最初からやり直し!」 アングルの体が再び動き始めた。 ずちゅっ……ずちゅっ…… 「いーち!」 「にー!」 「さーん!」 今度は少しだけ長く続いた。だがやはり、途中で達してしまう。 「やり直せー!」 「チンポスクワット百回!」 会場のボルテージは最高潮に達していた。 オブシディウスはただ黙って、アングルの尻を支えていた。マスクの奥の赤い光は、どこか満足げに輝いているようにも見えた。 ――― 最終的に、アングルが百回のスクワットを達成するまでに、二時間を要した。 その間に彼が達した回数は、数え切れない。 その後も、コーナーポストに貼りつけて。ロープに絡ませて。エプロンに逆さにして。マットに串刺しにして。あらゆる体位で生贄の体を貪る雄牛。散らされた粘膜がめくれ上がり、雄牛の白濁が丹念に塗り込まれた。 試合の――いや、もはや試合とは呼べないが――終わりは、オブシディウスの射精で幕を閉じた。 ビュルルルルッ! 膨大な量の精液が、再びアングルの中に注ぎ込まれた。敗者の腹は妊婦のように膨れ上がり、接合部からは白濁液が間欠泉のように溢れ出していた。 「お……おおおおっ!」 観客の歓声も既に言葉はなかった。 ブラック・ブルは得物を抱えたまま、ゆっくりとリングを降りる。繋がったまま、花道を歩いていく。 アングルは完全に意識を失っていた。時折痙攣しながら、オブシディウスの腕の中で揺れている。その表情には、屈辱ではなく至福が浮かんでいた。 「ブラック・ブル! ブラック・ブル!」 観客のコールが、花道を進む黒牛に降り注いだ。 ――― 翌日、GPEの控室。 オブシディウスは椅子に座り、黙ってマスクを見つめていた。催淫の作用は完全に抜けている。 「……済まなかった」 その声は、昨夜の獣とは思えないほど穏やかだった。 「いや、あれは俺の責任だ」 ハーストが声をかけた。 「それを言うなら、俺もだな」 アングルは隣で全身に包帯を巻き、車椅子に座っていた。だがその表情には、意外にも笑みが浮かんでいる。 「責任?」 「ああ。あの音楽やらマスクやらに細工がしてあったことは、俺も知ってた。あんなことになるとは思わなかったけどな」 オブシディウスは黙って頷いた。 「だがな」 アングルは車椅子を動かし、オブシディウスの前に来た。 「昨夜の興行は、GPE史上最高の収益を記録した。ライブ映像の権利だけで、孤児院を建て直せるくらいの金が入ってくる」 「……何だと?」 「それにな」 アングルの目が、好色な光を帯びる。 「俺は……悪くなかった」 オブシディウスは言葉を失った。 「いや、最初は恐怖だったぜ。あんなデカチンポ嵌められて、リングでイかされまくるなんてな……今でも夢じゃないかって。だがな」 アングルは自分の腹に手を当てた。 「途中から、薬のせいじゃない何かを感じたんだ。あんたの……あの圧倒的な力に呑み込まれていく感覚。それが……嫌じゃなかった」 沈黙が流れた。 「だから」 アングルが手を伸ばした。 「これからも、俺と戦ってくれないか。プロレスラーとして。……それ以外のことも、含めて」 オブシディウスはその手を見つめた。そして、ゆっくりと自分の手を伸ばした。 二つの手が、固く握り合った。 ――― 噂は広まっていった。 寂れたインディー団体に現れる救世主。『特別興行』に現れては頂点に君臨するアルファ雄牛。 ブラック・ブルに敗れた者は、例外なく彼の『雌』になる。その巨大な肉砲で征服され、精神まで作り変えられる。そしてその快楽を知った者は、二度と元には戻れない。 だがそれは、決して強制ではなかった。 彼の『雌』となった者たちは、不思議と誇らしげだった。最強の雄に選ばれた、という栄誉。その快楽を知っている、という優越感。 「ブラック・ブル! ブラック・ブル!」 その声が、今夜も会場を揺らしている。 花道に、黒い巨体が現れた。 「我らがアルファ雄牛! 銀河最強の怪人レスラー! その名も……ブラァァァック・ブルーーーッ!」 そして今夜も、新たな雌が生まれる。 それは征服ではない。選ばれし者への祝福だ。 オブシディウスはリングに上がり、両腕を広げた。 観客の声援が、彼を包み込んだ。 黒牛の凱旋は、まだ始まったばかりだった。 オブおじって各星系に女(男)いるに違いねぇはーなんてエロい雄牛ブヒ!って好きキャラ✕好きシチュでシコシコ書いてたけどこれオブおじである意味無いよなって供養ブヒ