自然、彼女が上から見下ろす格好となった――両者の身長差を考えれば当然である。 地球人種の雌としては相当に高く、だが長いという言葉の合うでもない、めりはりのある身体。 それに対して、時間によって小さく押し込められ、曲げられた彼の身体は、 仮にぴんと背筋を伸ばしたとしても、とてもそれに届くはずもない。 二人が並べば、親と子ほどの差がそこには現れてくるのであった――しかしこと年齢において、 その差は逆転し、さらに倍加する――祖父と孫娘、といったところであろう。 肌の張りも、年齢の壁を如実に示しているかのように対照的であった。 柔らかく、指に吸い付いてくる、白く滑らかな肌――そこに、節くれ立って皺が重なり、 色素が沈着して黒ずんだ手が乗るのは、虫か何かの這う光景を思わせるのである。 彼女自身、自分の肌に彼の触れることを喜びはしなかった――が、そうせねばならなかった。 二人のいるのは、ある市街地の――隅にある、街の塵芥の掃き捨てられていく場所。 そこには彼と同じく塵のように方々を追い立てられていった成れの果てがいくらもいたし、 塵の山を掻き分けて作った隙間に、鼠のように薄汚れた連中が身を寄せ合っていた。 そんなところに、彼女は根本的に不釣り合いである。掃き溜めに鶴、とさえ形容できない。 若く整った美貌。長く艶のある金髪。澄んだ碧い瞳に、白く滑らかな肌―― そこに子供の一抱えもある乳房二つ、丸みのある尻とくびれた腰があるとなれば、 死にゆく者たちの、女体に対する未練が生み出した幻とでも解釈する方が妥当であろう。 しかし現実に彼女はそこにいた。そして裸体をある男の前に晒さねばならなかった。 彼の持つ人脈と情報とが、彼女のこなさなければならない任務に不可欠であったからだ。 銀河最強の賞金稼ぎと謳われてはおれど、戦闘力だけで全てを解決することはできない。 まして標的は、ここのような穴蔵のどこかに身を潜めて成り行きを伺っているに違いないのだ。 対価が代価で済まぬ場合、男たちの求めるものはおおよそ決まっていた。 そしてそれで支払うことに、彼女自身不慣れであったわけもない。 もとより危険な賞金稼ぎの仕事柄、貞操を守り続けるのは容易なことではなかったからである。 一夜の不愉快な思い出一つで目的を達成できるなら、それに越したこともあるまい。 ただ、線引きだけはしっかりとしていた――望まぬ生命の宿らぬように。 身体だけを求めるような男、いつ死ぬかもわからぬような女を両親に持つ子供が、 どれだけ不幸な生涯を送ることになるか。そう考えればなおのこと。 薄汚れた路地の一角、空き瓶とごみ袋の重ねられた空間には無数の蠅が舞っている。 それごと吹き散らすように乱暴に引き伸ばされた、茶色がかった敷布団――の外側だけ。 その上に大人二人が寝転べば、ぴんと張っているのはほんの一瞬、あっという間に皺だらけ。 だが女は健気にも、両手でしっかりと布団の端を掴んで、身体ごと生地を反らせている。 そうでもしなければ、抽挿の衝撃がまったく吸収されず、まともに受けていたことであろう。 老人は彼女の懸命な心遣いを無にするがのごとくに、腰を激しく叩きつける。 その様は、彼の重ねてきた年齢を一向に感じさせない、きれのあるものだった。 片脚を引きずりながら、ゆらゆらと左右に上半身を揺らしてゆっくり歩く姿と、 今こうして、若い雌の身体を貪る肉食獣めいた姿とは、とても同じと思えない。 体格だけでなく――膂力にも、あるいは体力そのものにおいても上回る若き暴れ馬を、 枯れ木のような四肢の老人が、性器と性器の接合部だけを軸として、乗りこなして、いる。 己の体重そのものを巧みに操り――突き込まれてびくん、と跳ね上がるばねのある女体を、 易々と組み伏せてしまっているのである。船を漕ぐように緩やかな円を描いて前後する腰、 その一突きごとに、女は心にもない甘い声を上げさせられてしまっている―― とっくに、弱点は彼によって見抜かれてしまっていたのだった。 そこを的確に突き、かと思えば力を抜いて焦らし、全身の力を分散させ、ほぐしてくる。 左右の手で布地を握っているのも、そうして何かに力を込めていなければ、 彼の腰使いの前に、あっさり支配されてしまうと感じていたからであった。 だがその程度の抵抗など、老人にとってはほとんど無意味なことである。 かつては幾人もの内縁の妻を泣かせ、その十倍二十倍の女を喰ってきたような彼は、 若く、気の強い女の堕とし方など心得ている。衰えた体力に合わせた調節の仕方も。 あと何突きで完全に屈服するかを密かに数えながら――偶然を装って、女の手を蹴る。 きゅっきゅっと、膣襞がひくついて、ちょうど力の抜けた瞬間とぴったり重なるように。 依拠する先を唐突に失った手は、無重力に放り出されて反射的に目の前のものにしがみつく。 ほとんど彼女自身自覚のないうちに、両手が老人の背中に回されていて、 乳房で彼の体重を受け止める格好に誘導されていたのである。 そしてその密着感を活かしながら、彼は丹念に女の弱点を突き回し、掘り穿つ。 両脚もまた、何かに絡めずにはおれない。当然それも、彼の背中や腰に甘える。 抽挿は浅くなり――最も弱い箇所を軸に、ねちっこい攻めが、延々と、続く。 息継ぎのために開いた口に、蛞蝓のような舌がぬるりと入り込み――呼吸さえ、支配される。 男の吹き込む臭い息が、女の肺腑を通って脳の血管を巡っていく。 密着した顔――醜く、年老いて、歪んだ、歯抜けの顔――それに対する、不可避の、愛着。 それを無理やりに、脳内に刷り込まれていく。酸素への渇望を利用されて。 無論その最中も、容赦なく突き回される性器は快楽のあまりに蕩けきって、 何度も雌臭い潮を垂れ流し、薄汚れた布地はますます生臭さを増していくのであった。 膣内射精をしておきながら、悪びれもせず陰唇に触れてくる彼に、流石に彼女も怒りを見せる。 だが抗えない。怒気が結実するその瞬間を見抜かれて、指が的確に絶頂を引き起こす。 全身に巡る倦怠感。なぜ怒っているのかもわからなくなっていく。 そしてそもそもなぜ、自分はこんな男相手に身体を開かされているのであったか――? その思考もまた、答えを導き出すより先に、再び挿入された性器によって掻き潰される。 逝き癖の付いた身体で、この男に勝てるものか。また、何度も何度も絶頂させられ―― 二度、三度と胎内に熱を撒き散らされては、再び弄ばれるのである。 老人による“教育”は、彼女が性交以外のことを考えられなくなるまで、ひたすら続いた。 自ら、彼の性器にしゃぶりつき――寵愛をねだる都合のいい女になるまで。 若い身体に連日精を受けていれば、その結果は見えていよう。 ここには都合よく、身重の女の着るような服など置いてはいない。 必然的に彼女は、端切れを無理やりに結び合わせたような襤褸を身に纏うほかなかった。 だがそれでも大して問題はない――ほとんど常時、“夫”に性的奉仕をしているのだから。 彼一人によってすっかり使い込まれ、屈してしまった身体は常に疼き、火照る。 それを治められるのは、彼の指と、舌と、性器だけなのである。 日夜ねちっこく開発された乳腺は、母乳を昼夜問わずに垂れ流している。 それが、握力の衰えた老人の指に触れるだけで、噴水のようにしゃばしゃばと噴き出て、 二人が身を落ち着けているごみ溜めの一角に、白い飛沫を撒き散らすのであった。 そして当然、彼は新たな妻の肉体を――臨月であろうと、堪能する。 妊婦産婦がどう攻められれば弱いのかも、彼にはお見通しなのだから。 予定日だろうとお構いなしに女の膣内に年に見合わぬ濃い精を垂れ流したし、 いざ産気付けば、てきぱきと準備を整え――産みたくない、という言葉を吐かせない。 陣痛によって微かに戻った理性を巧みに壊し、溶かし、忘れさせ――忘我のうちに発露させ。 痛みなのか快楽なのかもわからぬままに、女の膣口は赤子を吐き出した。 その顔は父に似て――酷く不格好なものであった。ただ頭髪の金と、まだ開かぬ瞳の碧が、 何より赤黒く脈動する肉の紐が、彼女の子であることを何より雄弁に語っていた。 ぽん、とその泣き喚く肉塊を胸元に投げられて――女の口は無意識に歪んだ。 一人産まされてしまえば、その世話と処理とが脚を引っ張って、抜け出しにくくなる。 まして老人は一層巧みに彼女の心身を支配した――時には赤子の泣き声まで利用して。 そしてあっさりと二人目が胎に宿ったかと思えば、ますます身体は都合よくほぐされていて、 まだ後産も済んでいないうちから、三人目をこしらえるための種を撒かれ続けているうちに、 すっかり彼女は自分を見失い――逃げなければ、という想いをも忘れていた。 彼によってその雌性を貪られ、年老いた男の子をひり出すためだけに子宮を支配され、 卵子が同数の醜い赤子へと変換されていくことを――心より幸せだと感じさせられていた。 引き締まっていた腹筋は何度も妊娠と出産を繰り返させられたことで失われ、 その腹の皮を手綱めいて彼に掴まれることに、喜びこそすれ怒りはしなかった。 自分の身体は――彼のためにあると、これまでの何人もの女と同じく、信じ込んでいた。 ただ先輩たちと違ったのは――彼女が、この男の最後の女になった、ということである。 老衰による、性交中の虚血性心疾患――平たく言えば腹上死。 人生最後の種を、空いたばかりの胎に撒きながら冷たくなっていく彼の顔を見て、 既に十では済まない数を産まされていた彼女は、ようやく人心地つく思いがした。 周囲には、父の死も理解せぬ嬰児がいくらも転がっている――そしてまた、胎にも一つ。 彼によって押し留められていた彼女の時間は、もう取り返すことはできない。 すっかりくたびれさせられた、女としての肉体も――母としての機能さえも。 無邪気に母に甘える赤子たちの愛らしい顔に、女は憎しみさえ感じるのだった。