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08/20 21:06
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GM「」
澄み渡った夜空の下、街の中心部に悠然と聳え立つ白亜の城砦───白煌城ミルザ。 魔動機文明時代の高度な建築技術と美意識が惜しみなく注がれたその城は、蒼い月光を反射して佇んでいる。
08/20 21:06
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GM「」
昼間の賑わいが嘘のように静まり返った街を見下ろす城内。時折、見張り兵の規則正しい足音だけが遠く廊下に響き、やがてそれも夜の静寂へと溶けて消えていく。
08/20 21:06
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GM「」
───その一角、領主執務室。
08/20 21:06
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GM「」
魔動灯の静かな灯りが、室内を温かく照らしていた。
08/20 21:06
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GM「」
パタン、と最後の書類を閉じると、ジュリウスは椅子の背もたれに深く体を預けた。 長身を大きく伸ばし、凝り固まった首を軽く回す。
08/20 21:07
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「……ふぅ、これで今日の分の書類は終わりだな」
08/20 21:07
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ツェリア・セラティエ
「お疲れ様でございます。では明日のご予定ですが」
08/20 21:07
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「待て待て、もう明日の話か」
08/20 21:08
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ツェリア・セラティエ
「…………? ええ、はい」
08/20 21:08
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ツェリア・セラティエ
「5:30に私どもがお目覚めのご催促に参らせていただきます。前日の急報があればその席にて伝えさせていただきます」
08/20 21:09
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ツェリア・セラティエ
「6:00に朝食。書記官から前日の出来事と本日の予定の再確認がございます」
08/20 21:09
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ツェリア・セラティエ
「6:30より書類仕事です。当然ですがあくる朝には山のようになっておりますので、領内の税収、商業許可、土地の売買、裁判記録など署名をお願い致します」
08/20 21:10
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ツェリア・セラティエ
「8:00からは家臣団と会議がございます。城代、財務官、騎士団長、司祭などから………」
08/20 21:10
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ツェリア・セラティエ
つらつら、つらつら。1日のスケジュールがこの時点で全てびっちり埋まっている。
08/20 21:10
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「わかったわかった、もういい」
08/20 21:11
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「さすがは我が優秀なメイド長だ。予定の把握に抜かりがないな……はぁ」
08/20 21:11
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ツェリア・セラティエ
「無論でございます。明日だけではなく、明後日、明々後日、1週間後、そのまた先も全て予定は埋まっております」
08/20 21:12
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ツェリア・セラティエ
「閣下におかれましては体調をお崩しになることなく粛々とおこなしくださいませ」
08/20 21:13
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「それはツェリアもな、いつも仕事仕事で大変だろう」
08/20 21:13
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ツェリア・セラティエ
「私はこのミルザ城の|家具《メイド》でございますので、仕事は常にございます」
08/20 21:14
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ツェリア・セラティエ
「ねぎらっていただけるのは大変に恐縮ですが、それが我々の務めでございますれば」
08/20 21:14
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ツェリア・セラティエ
そう言って瀟洒にスカートの端をつまんで一礼する。
08/20 21:15
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「いつもその返事だな。たまにはゆっくりする時間があってもいいんじゃないか」
08/20 21:16
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ジュリウス・リーゼンフェルト
頬杖をつきながら、呆れたような目でツェリアを見る。よくこれで体調を崩さないものだ
08/20 21:16
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ツェリア・セラティエ
「いえ。閣下はこのあと後就寝なさいますが、私にはこのあと調度品の管理、物品の目録作り、明日の仕事の割り振りについてメイドたちと協議、城へいらっしゃるご来賓の方々に関する情報収集と勉強、その他諸々ございます」
08/20 21:17
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ツェリア・セラティエ
「ゆっくりと過ごす時間は1日に10分あれば十分でございますよ」
08/20 21:17
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ツェリア・セラティエ
にこりと微笑みながら口にする。そこに一切の疲れや不満は感じさせない。
08/20 21:17
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「10分……?」
08/20 21:17
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ツェリア・セラティエ
「はい」
08/20 21:18
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ジュリウス・リーゼンフェルト
思わず天を仰ぎ、続いて苦笑いを漏らした
08/20 21:18
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「まったく、相変わらず自分に厳しすぎる。ツェリアの労働意欲は異常な領域だ」
08/20 21:18
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ツェリア・セラティエ
「いえ、他のメイドも似たようなものです」
08/20 21:18
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ツェリア・セラティエ
「スフバールはミルザが侯爵家に務めるというのはそういうことです」
08/20 21:19
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「俺の知らぬうちに労働環境が悪化していないか? 知っているぞ、ブラックというんだそれは」
08/20 21:20
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ツェリア・セラティエ
「ブラック………?」
08/20 21:20
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ツェリア・セラティエ
言っている意味がよくわからない、というふうに首を傾げる。
08/20 21:20
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ツェリア・セラティエ
「閣下、恐れ多くも申し上げますが………」
08/20 21:21
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ツェリア・セラティエ
「ミルザに限らず、相応の城に務める使用人となったからにはそれは人間ではありません。家具です」
08/20 21:22
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ツェリア・セラティエ
「家具は城のために尽くすことが第一義であり、休むことも務めの内です。やつれた顔で城の主人や来賓の方の前には立てませんから」
08/20 21:22
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「……これは不正役人をどうこうする前に、労働環境の改善と意識改革が必要なのでは?」
08/20 21:22
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ツェリア・セラティエ
「同時に、自由な時間も存在しません」
08/20 21:23
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「それは違うぞ、ツェリア」
08/20 21:23
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ツェリア・セラティエ
「と、申されましても」
08/20 21:23
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ツェリア・セラティエ
「少なくとも100年前からここではこうでございますよ、閣下」
08/20 21:24
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「家具は壊れたら買い替えれば済むが、有能で忠実な使用人たちはそうはいかない。特に君のような代わりのいない人材はね」
08/20 21:24
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「過酷な労働で疲弊した人間は、どれほど教育が行き届いていてもいずれ致命的なミスを冒すだろう」
08/20 21:25
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「それに、領民や配下の幸せを守るのが領主の務めなんだよ。俺の城で働く者たちが自分たちは家具だなんて思い詰めながら擦り切れていくのを、俺が容認するとでも思っているのか?」
08/20 21:25
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ツェリア・セラティエ
「思い詰め………? ………閣下は何か思い違いをなさっておいでのようですね」
08/20 21:25
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ツェリア・セラティエ
本当におっしゃっていることが分からない、とばかりにきょとんと首を傾げていた。
08/20 21:26
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ツェリア・セラティエ
「閣下、我々がいやいやそう振る舞っているとお思いで?」
08/20 21:26
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「ツェリアはそうではなさそうだがなぁ……」
08/20 21:27
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ツェリア・セラティエ
「他の者も皆そうでございますよ。自分たちがミルザという美しい城の使用人という家具であることを誇りに思っております」
08/20 21:27
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「俺は日々の楽しい暮らしを奪ってまで働かせたいとは思っていないぞ」
08/20 21:28
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ツェリア・セラティエ
「城務めにごく普通の楽しい暮らし、というものは存在しえませんよ、閣下」
08/20 21:29
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ツェリア・セラティエ
「城と城の外は別の世界でございます。ミルザという城内の世界を保つために、我々は日々邁進しております」
08/20 21:29
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ツェリア・セラティエ
「それは我々にとっての充実であり、我々が閣下の暮らしをお支えしているという喜びです」
08/20 21:30
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「長い時を生きるエルフであるツェリアに言われると重みが違うが……」
08/20 21:30
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ツェリア・セラティエ
「それに、少なくとも|使用人《メイド》に関しましては私が管理しておりますので」
08/20 21:31
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ツェリア・セラティエ
「閣下の前に疲れ果てた青白い顔のメイドを立たせることは決してございません」
08/20 21:31
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「俺の前でなくとも青白い顔はさせないで欲しいのだが」
08/20 21:31
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「……明日から、使用人たちのシフトを見直して適切な休養を取らせなさい。これは領主としての正式な命だ」
08/20 21:32
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ツェリア・セラティエ
「それでしたら既に遂行しておりますよ、閣下。私が管理している、と申し上げたでしょう?」
08/20 21:32
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「基準が怪しい……と言ったら悪いかな」
08/20 21:33
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ツェリア・セラティエ
「おや。お疑いなさると」
08/20 21:33
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ジュリウス・リーゼンフェルト
このメイドに任せておくと、とんでもないドブラック環境が醸成されていきそうだ。
08/20 21:34
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「まあ、な。少なくとも俺は、週に一度は自由に出かけたり休める程度の余暇を与えてやりたいが」
08/20 21:35
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ツェリア・セラティエ
「左様でしょうか」
08/20 21:36
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ツェリア・セラティエ
「私だけでなく、例えばカノー卿も城の使用人が頻繁に城を出入りすることを閣下がお認めになると聞けば眉間に皺をお寄せになると思いますが」
08/20 21:36
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ツェリア・セラティエ
いつでもぴしりと折り目正しいツェリアだったが────ここにきて、急に真剣な態度を強めた。
08/20 21:38
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「街にくらい自由に行かせてやれ。貴族・役人は毎日街へ帰っているではないか」
08/20 21:38
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ツェリア・セラティエ
「はい」
08/20 21:39
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ツェリア・セラティエ
「ですから城に出入りする彼らは常に検めております。表向きにも、裏向きにも」
08/20 21:39
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ツェリア・セラティエ
「どこと通じているか。誰と関係を持っているか。誰と出会うのか」
08/20 21:42
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「……なるほどな。それほどまでに手綱を緩めない理由の一端は理解できた」
08/20 21:42
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「俺のあずかり知らぬところで、ツェリアたちがどれほど裏の泥を被り、城の防諜に心を砕いてくれているかもな」
08/20 21:42
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ツェリア・セラティエ
「恐れ入ります」
08/20 21:42
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ジュリウス・リーゼンフェルト
深く腰掛け直すと、肘をついて真剣な眼差しをツェリアへと向けた
08/20 21:43
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「とはいえ、だ……セキュリティと労働環境の両立。それができないほど、俺は無能な領主のつもりはない。爺とも折を見て協議することとしよう」
08/20 21:44
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ツェリア・セラティエ
「ええ、カノー卿もお喜びになることでしょう」
08/20 21:45
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「それでだ。それほどまでに神経を尖らせて城を守ってくれているツェリアにも、息抜きの時間が必要ではないか?」
08/20 21:46
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ツェリア・セラティエ
「はぁ。いえ、特には」
08/20 21:46
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ツェリア・セラティエ
「こうして日々、城や侯爵家の方々のために尽くす日々は100年の間変わらず充実しております」
08/20 21:47
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ツェリア・セラティエ
「特に何もない余暇といいますと………申し訳ございません、覚えがございませんわね」
08/20 21:47
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ツェリア・セラティエ
まあ、私にとっても必要のないものでございますので、と。
08/20 21:47
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「……まったく、どこまでも隙がないな」
08/20 21:48
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ジュリウス・リーゼンフェルト
ゆったりと椅子から立ち上がるとデスクを回り込み、完璧な姿勢で佇むツェリアの目の前へと歩み寄る
08/20 21:49
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「だが、俺が必要なんだ。一日中、気を張った後の俺には、ツェリアという息抜きがね」
08/20 21:49
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ツェリア・セラティエ
圧されることもない。執務机から適切な距離の感覚を開けたところで立ち、長身の主人を見上げている。
08/20 21:50
メインタブ
ツェリア・セラティエ
「左様でございますか。お茶でもお淹れしましょう」
08/20 21:51
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
「頼もうか。ツェリアも一緒にな」
08/20 21:51
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ジュリウス・リーゼンフェルト
そうして備え付けのソファに身を沈める
08/20 21:52
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ツェリア・セラティエ
「失礼致します」と一礼すると部屋を下がっていった。少し経ってから、微かに湯気をくゆらすポットを盆に乗せて運んでくる。
08/20 21:53
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ツェリア・セラティエ
「入眠に適したハーブを用いたものでございます。お寛ぎくださいませ」 完璧な所作でポットを取り扱い、ティーカップに注いでソファに座る主人の前に差し出す。
08/20 21:53
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ジュリウス・リーゼンフェルト
ソファの深い背もたれにゆったりと体を預け、ジュリウスは足を組んでツェリアが茶を準備する所作を静かに見つめた
08/20 21:54
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「……座ってくれ、ツェリア。二人でお茶を飲もう」 ジュリウスは隣の空いているスペースをぽんと軽く叩いた
08/20 21:55
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ツェリア・セラティエ
当然ながら自分の分は主人へ出し終えた後だ。美しい手際で自分の分を淹れると、失礼がないよう主人の目の前ではなく斜め隣の席に……。
08/20 21:55
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ツェリア・セラティエ
「……………。閣下がそうおっしゃるのであれば、失礼致します」
08/20 21:55
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ツェリア・セラティエ
隣へと静々と腰掛けた。
08/20 21:56
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ジュリウス・リーゼンフェルト
碧の瞳に浮かんだどこか寂しげな色が喜びに変わった
08/20 21:56
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「そうやって隣に座ってくれるだけで、なんだか心が軽くなるよ」
08/20 21:56
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ツェリア・セラティエ
────ジュリウスが幼かったあの頃のように、もう当然のように隣に腰掛けてはくれない。
08/20 21:57
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ツェリア・セラティエ
5年前、剣を執ったあの日から決して。
08/20 21:57
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ジュリウス・リーゼンフェルト
差し出されたカップを手に取り、ハーブティーの柔らかな湯気と香りを胸いっぱいに吸い込んでから一口含む
08/20 21:57
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ツェリア・セラティエ
「左様でございますか。そう仰っていただければ恐悦至極に存じます」
08/20 21:57
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「……良い香りだ。ツェリアの淹れるお茶は、いつだって俺を落ち着かせてくれる」
08/20 21:58
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ツェリア・セラティエ
「私にはもったいのない、過分なお言葉でございます」
08/20 21:59
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ツェリア・セラティエ
そう言って自分もティーカップに口をつける。ほんの一口だけ啜ってソーサーに置いた。
08/20 22:00
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「……過分か」
08/20 22:00
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「知っての通り、俺にはもう血の繋がった肉親はいない。……だから、俺にとってツェリアは、ただのメイドじゃないんだ」
08/20 22:01
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ジュリウス・リーゼンフェルト
彼女の膝の上で折り目正しく重ねられた小さな手に、自身の大きな手を重ねた
08/20 22:02
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「どれほど立場が変わろうと、俺にとってツェリアがかけがえのない存在であることに変わりはない」
08/20 22:04
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ツェリア・セラティエ
「────先ほど、私どもは家具である、と申し上げましたね」
08/20 22:04
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ツェリア・セラティエ
重ねられた手をじっと見つめながらメイドが言う。身じろぎもしない。
08/20 22:05
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ツェリア・セラティエ
「では、失礼ながら閣下は何だと言えるのでしょう。このミルザにとって」
08/20 22:05
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「俺か?」
08/20 22:05
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ツェリア・セラティエ
「ええ」
08/20 22:06
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ジュリウス・リーゼンフェルト
彼女の問いに、自嘲気味な笑みを一瞬だけ口元に浮かべた。彼女の手を包み込む自身の手に少しだけ力を込め、その温もりを確かめるように碧の瞳を細める。
08/20 22:07
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「俺も似たようなものだ。このミルザという巨大な仕組みを動かし、領民を守るための……柱か、あるいは器」
08/20 22:07
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ツェリア・セラティエ
「その通りでございます」
08/20 22:07
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ツェリア・セラティエ
「閣下はミルザそのものです」
08/20 22:07
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ツェリア・セラティエ
「5年前、|あの日《・・・》からそのようになりました」
08/20 22:08
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「わかっているさ。昔の様にはいられないことくらい」
08/20 22:09
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「だがな、柱とて一本では城を支えきれない。冷たい器であり続ければ、いつかは割れるだろう」
08/20 22:10
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ジュリウス・リーゼンフェルト
ツェリアの手を優しく握りながら
08/20 22:10
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「今くらいは、ただのジュリウスとツェリアとして、温もりに救われたっていいはずだ」
08/20 22:11
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「俺を一人にしないでくれ、ツェリア」
08/20 22:12
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ツェリア・セラティエ
「…………ツェリアは閣下のそのようなお姿を拝見するたび、心配になります」
08/20 22:12
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ツェリア・セラティエ
握られた手を、しかし握り返しはしなかった。ただじっとその大きな手を見つめている。
08/20 22:13
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ツェリア・セラティエ
「あの日のジュリウスお坊ちゃんは、ミルザを背負うということが|そういうこと《・・・・・・》とも知らず剣を握ったのだと」
08/20 22:14
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ツェリア・セラティエ
「個人の救済が存在するという優しい甘えを残したまま、剣を振るったのだと」
08/20 22:15
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ジュリウス・リーゼンフェルト
彼女の静かな指摘に胸を突かれたように吐息を漏らし、自嘲気味に目を伏せた
08/20 22:16
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ツェリア・セラティエ
「────閣下。御身が周囲の有力な貴族の方々からどのように見られているか、想像したことはございますか」
08/20 22:16
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ジュリウス・リーゼンフェルト
握りしめた彼女手は決して握り返してはくれない。拒絶のようでいて、突き放しもしない温度が、痛いほど愛おしい
08/20 22:16
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「それは想像するまでもない」
08/20 22:17
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「よく言われるよ、“血塗れの簒奪者”。奴らが俺をどう値踏みし、どう警戒しているかくらい、痛いほど理解している」
08/20 22:18
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ツェリア・セラティエ
「はい。しかしその二つ名はともかく、脅威については彼らは正確に認識しております」
08/20 22:19
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ツェリア・セラティエ
「ミルザというスフバールにおいても富裕な都市。意図的に数は抑えていても精強を隠しきれない騎士団」
08/20 22:19
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ツェリア・セラティエ
「────そして、天より天賦の才を授かってしまった、人族の至宝たる大勇士の閣下」
08/20 22:21
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「……至宝、か。ずいぶんと大層な持ち上げられようだな」 こことは別の場所でも、そのように持ち上げられた記憶がよみがえる
08/20 22:21
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ツェリア・セラティエ
「事実でございます。閣下と戦って無事で済む騎士がこのスフバールにおりますか?」
08/20 22:22
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ツェリア・セラティエ
「魔神とて閣下のお名前を聞けば震え上がるでしょう。あなた様は────あまりにも強すぎる」
08/20 22:22
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「どれほど才能を讃えられようと、どれほど恐れられようと、俺の肉体は一つしかなく、心だってただの人間だ」
08/20 22:23
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ツェリア・セラティエ
「はい。しかし、周囲はそう見てはくれません」
08/20 22:23
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「わかっている……」
08/20 22:23
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ツェリア・セラティエ
「その気になれば公都を攻め落とし、単騎で軍勢の中を駆け、リジヤ・アルゲエーヴァ女公王の首をいとも容易く刎ね、スフバールを手中に収めるのも容易い、と」
08/20 22:24
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ツェリア・セラティエ
「そしてその刃が自分たちに向けられればひとたまりもないと」
08/20 22:24
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「……それはガブリルを見くびり過ぎだな」
08/20 22:25
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ジュリウス・リーゼンフェルト
スフバール聖鉄鎖公国最強の騎士と呼ばれる彼なら、あるいは……
08/20 22:25
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ツェリア・セラティエ
「そうかもしれません。しかし、権力持つ者の恐れは際限なく膨れ上がるものです」
08/20 22:25
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ジュリウス・リーゼンフェルト
だが、言いたいのはそういう事ではないのだろう
08/20 22:26
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ジュリウス・リーゼンフェルト
「権力者たちが俺を恐れ、策略を巡らせる……それが領主としての俺が置かれた現実なのだろう」
08/20 22:27
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ツェリア・セラティエ
「はい。閣下がどれだけ穏やかに外交を努めようとしても、彼らにとっては気まぐれで簡単に自らを縊り殺してくる獅子に見えることでしょう」
08/20 22:28
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ツェリア・セラティエ
「閣下は本当に────才に恵まれすぎました」
08/20 22:28
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ツェリア・セラティエ
「────望んだわけでもないのに」
08/20 22:28
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
「……それを、言ってくれるのは君だけだ」
08/20 22:29
メインタブ
ツェリア・セラティエ
やはり、重ねた手を握り返すとか、自分の手も重ねてくるとか、そういうことは全くしなかった。見つめる眼差しには何が映っているのだろうか。
08/20 22:29
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
包み込んでいた彼女の手に、ゆっくりと力を込める
08/20 22:29
メインタブ
ツェリア・セラティエ
「ええ。ですから、閣下」
08/20 22:30
メインタブ
ツェリア・セラティエ
「あの日、この国をあなた様は去ることもできました。御身には全てを捨てても生きていく力があらん限りおありになる」
08/20 22:31
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
「確かに当時の俺なら、それもできたかもしれないな」
08/20 22:31
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
自嘲気味に吐息を漏らし、握りしめた彼女の小さな手を逃がさないよう、優しく包み直した
08/20 22:31
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
「すべてを投げ打ち、冒険者として世界を旅する道もあっただろう」
08/20 22:32
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
「俺がそれをしなかった理由を、本当に君は知らないのか?」
08/20 22:32
メインタブ
ツェリア・セラティエ
「いいえ。承知しております」
08/20 22:32
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
「だったら……」
08/20 22:32
メインタブ
ツェリア・セラティエ
「ですから閣下。私は剣を握ったあなた様へこう申し上げる他ありません」
08/20 22:33
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
決して握り返してはくれない彼女の指先を、逃がさないようにすっと引き寄せ、自分の胸元、鼓動が脈打つ場所へと押し当てた
08/20 22:33
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
「……なんだ」
08/20 22:34
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
低く抑えた声で問いかけながら、自身の胸元に引き寄せた彼女の指先に、より一層の熱を込めた
08/20 22:34
メインタブ
ツェリア・セラティエ
「私のことをかけがえのない従者として扱ってくださることはありがたき幸せですが、私のことはあくまでひとりのメイドとして遇してくださいませ」
08/20 22:34
メインタブ
ツェリア・セラティエ
「剣を執ってミルザそのものへおなりになった以上、あなた様もミルザというシステムの一部であり頂点となったのですから」
08/20 22:35
メインタブ
ツェリア・セラティエ
引き寄せられた手は拒まない。引き寄せられるままに胸元に押し当てられている。言葉だけがそれに反比例するように冷然としていた。
08/20 22:36
メインタブ
ツェリア・セラティエ
「これから先、閣下にはお世継ぎも必要になります」
08/20 22:36
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
「……わかっている。それをツェリアに無理強いする気はない」
08/20 22:37
メインタブ
ツェリア・セラティエ
「はい。ご結婚相手を見定めることになるのも近々となるでしょう。早ければ早いほどよい」
08/20 22:38
メインタブ
ツェリア・セラティエ
「それまでの間にメイドへうつつを抜かしている、と噂が立てばどのように値踏みされるとも知れません」
08/20 22:39
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
「今更そんな悪評……」
08/20 22:39
メインタブ
ツェリア・セラティエ
「私は侯爵家のおそばに仕えるメイドでございますが、それよりも先んじてミルザ城のメイドでございます」
08/20 22:39
メインタブ
ツェリア・セラティエ
「閣下」
08/20 22:39
メインタブ
ツェリア・セラティエ
今更、などと甘えたことを言うジュリウスをツェリアが静かな表情で見つめている。
08/20 22:40
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
「……公的な婚姻や義務で、俺の心が埋まるわけがないことも分かっているはずだ」
08/20 22:41
メインタブ
ツェリア・セラティエ
「万民の上に立つということは、その喪失を受け入れることでございます」
08/20 22:41
メインタブ
ツェリア・セラティエ
「ご先代も、ご先々代も、そのまた先代の閣下も。皆そうでございました」
08/20 22:42
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
「務めは果たそう。だがなツェリア」
08/20 22:44
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
「主人が目の前でこれほど孤独に苛まれ、助けを求めている。それを放っておくのが、メイド長の仕事か?」
08/20 22:44
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
「この城で、君の前にいる時くらいはジュリウスとしていさせてくれ」
08/20 22:45
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
「俺を理解してくれるツェリアが傍にいてくれるなら……俺はそれだけ過酷な道であろうと、何としてでも背負ってみせる」
08/20 22:48
メインタブ
ツェリア・セラティエ
「────メイドとしての業務を盾にされては致し方ございませんね」
08/20 22:48
メインタブ
ツェリア・セラティエ
主人の手のひらの中から自分の手を引き抜いた。腰掛けていたソファに座り直し、スカートの生地をならす。
08/20 22:49
メインタブ
ツェリア・セラティエ
「膝ならば空いておりますよ、ジュリウス坊っちゃん」
08/20 22:50
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
「坊っちゃんか。久しぶりに聞い……てもないか」
08/20 22:50
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ジュリウス・リーゼンフェルト
引き抜かれた手のひらに残る微かな温もりを確かめるように、ジュリウスは愛おしそうに目を細めた
08/20 22:51
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
ソファに座り直し、綺麗にスカートをならしたツェリアの腿の上へ───ゆっくりと自分の頭を預ける
08/20 22:52
メインタブ
ツェリア・セラティエ
するとそっとその黄金色の髪に白い手袋が触れた。
08/20 22:52
メインタブ
ツェリア・セラティエ
まるで子供をあやすように、そっとその髪を撫でつけるように撫でる。
08/20 22:53
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
見上げれば、ツェリアの美しい顔立ちと、自分を優しく見下ろす澄んだ瞳があった
08/20 22:53
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
ジュリウスはゆっくりと腕を伸ばし、膝枕をしてくれている彼女の細い腰元へとそっと腕を回した
08/20 22:54
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
ただそこに彼女がいてくれることを確かめるように、愛おしそうに抱き寄せる
08/20 22:54
メインタブ
ツェリア・セラティエ
穏やかに微笑んでいる。昔日と一緒────とはいかなかった。やはりそこにはどうしようもなく過去の記憶のそれと隔絶する透明な板があり、そしてそれはもう一生消えることはないだろう。
08/20 22:55
メインタブ
ツェリア・セラティエ
ジュリウスがミルザの侯爵であり城主である限り。
08/20 22:55
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
「……ツェリア。こうして2人きりの時だけでいい。2人の時だけは、俺を領主ではなく、ただのジュリウスでいさせてくれ」
08/20 22:58
メインタブ
ツェリア・セラティエ
「私の口から構わぬとは申せません。奥方がいらっしゃるようになれば、こうしたところを余人に知られることが不和のもととなり、ミルザの大害となります。丈夫な堤も蟻のひと噛みから崩れ去るものです」
08/20 22:59
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ツェリア・セラティエ
「私に気を持ったままでいらっしゃることを奥方に悟られればきっとよい気持ちはなさらないでしょう。ミルザに嫁いでこられるお方もまた、郷里を離れ御身に全てを捧げる所存でいらっしゃるのですから」
08/20 23:00
メインタブ
ツェリア・セラティエ
「ですから、私の口からどうぞとは申し上げられません。────私の口からは」
08/20 23:01
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ツェリア・セラティエ
最後の一言を告げる時、くすりと微笑んだ。その一瞬だけ、往日の面影が宿っていたような気がした。
08/20 23:04
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
「……ズルいな、ツェリア」
08/20 23:05
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
彼女の唇に浮かんだ微かな微笑みを目にした瞬間、ジュリウスの瞳が大きく揺れる
08/20 23:05
メインタブ
ツェリア・セラティエ
「私も立場というものがございます」
08/20 23:05
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
「なら……言わなくていい」
08/20 23:06
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
「約束するよ。将来どんな相手を迎えることになろうと……ツェリアに迷惑がかかるようなヘマは絶対にしない」
08/20 23:06
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
彼女の腰を優しく抱いたまま、髪を撫で続ける白い手袋の指先へと、すっと自分の手を重ねる
08/20 23:06
メインタブ
ツェリア・セラティエ
「……………。きっと快い方ですよ。ミルザに嫁いでこられる方も」
08/20 23:07
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
「だと、いいがな」
08/20 23:07
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ツェリア・セラティエ
ツェリアにしてはいささか希望的で曖昧なことを口にした。手を重ねられるも……やはり応じはせず、頭を撫で続ける。振り払いもしなかったが。
08/20 23:08
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
「ツェリアらしくもない、曖昧な予想だ」
08/20 23:08
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
重ねた手を通して伝わる手袋の感触を確かめながら小さく笑った
08/20 23:09
メインタブ
ツェリア・セラティエ
「ミルザに嫁いでこられるということは、私のお仕えする方ということでもございますから」
08/20 23:10
メインタブ
ツェリア・セラティエ
「主人に値をつけるなどと恐れ多いことをするわけではございませんが、|家具《メイド》としても気持ちの良い方にご利用いただきたいのが心情というものです」
08/20 23:10
メインタブ
ツェリア・セラティエ
「………明日もお早いですよ、閣下。あまり夜更かしをすると身体を咎めます」
08/20 23:10
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
「では願望か。君がそんな甘いことを口にするなんてな」
08/20 23:12
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
「身体の心配をしてくれるなら」
08/20 23:12
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
ジュリウスは膝の上からゆっくりと身を起こした
08/20 23:13
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
「今、俺のこの激しい胸の疼きも診てほしいものだな」
08/20 23:13
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
「明日のことは、今夜ばかりは忘れてくれ。……俺を一人にしないでくれ、ツェリア」
08/20 23:13
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
彼女の手を固く握り締め、もう片方の手で彼女の頬を優しく包み込む
08/20 23:14
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
呼吸が触れ合うほどの至近距離で掠れた声を漏らす
08/20 23:15
メインタブ
ツェリア・セラティエ
至近距離から見つめられてもツェリアは頬を染めもしなかった。微かな吐息は呆れだったのか、それとも。
08/20 23:15
メインタブ
ツェリア・セラティエ
「閣下は私の言ったことをすぐお忘れになります、相変わらず」
08/20 23:16
メインタブ
ツェリア・セラティエ
「ただのメイドとして遇してくださいませ、と申し上げたはずです。メイドは家具なのですから、女を口説くように伝えずとも結構です」
08/20 23:16
メインタブ
ツェリア・セラティエ
「夜伽をせよと、そうおっしゃればよろしい」
08/20 23:16
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
「………」
08/20 23:18
メインタブ
ツェリア・セラティエ
────身体を許してくれはする。けれども、主人が女性として見ることは認めない。あくまでメイドは|家具《メイド》だから。
08/20 23:18
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ジュリウス・リーゼンフェルト
彼女の頬を包む手にそっと力を込める。 主人の権限も、命令という免罪符も使う気はなかった
08/20 23:19
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ツェリア・セラティエ
でも、それはもう完全には手に入らないものなのだ。それはあの日剣を執ってしまった、あまりにも強すぎる万夫不当の少年が自ら嵌めた枷である。
08/20 23:20
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
ジュリウスが欲しいのは服従などではなく、ツェリアというひとりの存在であり、血の通った温もりなのだから
08/20 23:20
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ジュリウス・リーゼンフェルト
たとえ彼女が家具と自認しようと、自分を拒みきれないその静かな温度だけを信じるように
08/20 23:21
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ジュリウス・リーゼンフェルト
拒絶を許さぬ強さと切なさを込めて、その柔らかな唇を塞いだ
08/20 23:22
メインタブ
ジュリウス・リーゼンフェルト
あの日剣を執ったことで、手に入らないものが生まれたと理解していようとも 今、自分の腕の中にいるその温もりだけは、決して偽りではないのだと信じるように