>献身的に一途に頑張ってくれるトレーナーに対して結果を残せないモブちゃんがこのままじゃ契約解除されちゃう捨てられちゃうって不安に駆られて >そうだ私の身体で繋ぎ止めようそれなら私があの人のそばにいられる理由になるみたいな感じで押し倒すやつください >ハッピーエンドで頼みます ー※―※―※―※―※―※―※―※―※―※ー 彼はいつも真面目だった。 三年前、私に声をかけてくれたときの第一印象からしてそうだった。 情熱的な勧誘に押され、担当の決まっていなかった私はあっさりとその申し出を受け入れた。 自分のためだけに走るつもりだった。 でも、何時まででも練習に付き合ってくれる姿や私が休みの日でも欠かさず勉強と研究に勤しむ彼を見て、 私にも目標ができた。彼に勝利を届けたい。 メイクデビューで勝利できたあの日は今でも覚えている。年甲斐もなくはしゃいで抱きしめるトレーナーに、 私は思わず赤面した。慌てて彼は離れたけど、私は全然嫌じゃなかった。 彼がぎゅうっと抱きしめた感触を抱いて、私はその日眠りについた。 しかしその後は苦難の連続だった。二勝目があまりに遠く、三勝目はさらに遠かった。 何度もレースに出てファンを集めた。トレーナーは止めたけど、私自身の意志でそうした。 彼を笑顔にしたい、なんて言っておきながら、結局私は彼の笑顔を奪っていた。 でもそれ以外にできることがわからなくて、私は今日もテーピングだらけの疼く脚をかばうように眠る。 三年目の秋になった。これまでの戦績は25戦4勝。何もかもが足りなかった。 脚は既に限界を迎え、毎日が痛みとの戦いだった。そんな中、私たちはラストランを決めた。 初めてのG2出走…条件ギリギリで出走枠に滑り込んだ。ほとんど強迫観念にかられて、私は走った。 最終直線で私はスパートをかける。かけたはずなのに、脚がまた疼いた。前までが遠かった。 私はブービーだった。胸元に縋り付いてすすり泣く私を、彼は何も言わず抱きしめた。 そして今、私は彼の部屋にいる。日々の激務で疲労しているのだろう、私が入り込んだ物音にも気づかず寝ている。 その寝顔が愛おしくて、私はゆっくりと床に膝をつき、唇にキスをした。上にのしかかる。ベッドのスプリングが軋む。 ほのかに体重をかけ、服を脱がしながら身体に触れる。私を抱きしめた腕、受け止めた胸。彼がうめき声をあげる。 「んん…○○○○○○…?何してるんだ…?」 トレーナーさん。起こしてごめんなさい。大事な話があるの。 「……何だい?言ってみて」 私…トレーナーさんのことが…好きです。 「…○○○○○○……」 こんな私に一生懸命になってくれて、誰よりも一緒に喜んでくれて、とても嬉しかった。 最後までダメな私でごめんなさい。でももう…あなたと離れたくないんです。 「そうか…ありがとう」 彼の手が髪を撫でる。優しい手つき。私は罪悪感で死にそうになった。 私は最低だ。私がしているのは愛の告白なんて可愛げのあるものじゃない。罪悪感の鎖で彼を縛ることだ。 私には彼の弱みがわかる。三年も一緒にいたのだ。どう言えばいいか、痛いほどよくわかっている。 でも多分、と私は思う。 「君はすごいよ…君はいい子だ…だから泣かないで」 彼はわかっている。私の卑怯な考えに気付いている。その上で、私を受け止めようとしている。 ごめんなさい。ごめんなさい。私本当は…いい子なんかじゃなくて。 「僕も君が好きだ」 優しい人。真面目な人。 ごめんなさい。 朝日が差すまでの間、私たちはただ交わっていた。愛した証拠を残すように。 これで私達…夫婦ですね。私はまだ脈打つ腹をさする。彼が手を添えた。 「一生君を幸せにする」 それだけで私は、いつまでも生きていける気がした。