夜に溶ける蜜月 〜外伝:夢魔の矜持と少年の熱情〜 【完全版リメイク】 ================================================================================ 【序幕:冷え込む硝子戸と、罪深き回想】  十二月の朝の空気は、砥石で研ぎ澄まされた刃のように鋭く冷たい。  薄いカーテンの隙間から差し込む淡い冬の陽光が、六畳一間の安アパートの床に細長い四角形を描き出していた。結露したアルミサッシの窓ガラスにはびっしりと水滴がつき、外の寒々しい街並みを滲んだ水彩画のように歪めている。  台所の小さな一口コンロの前で、僕——ヒナタは、沸騰し始めたアルミヤカンの笛吹き口を見つめながら、数日前の出来事を思い出してひとり激しく耳朶を焦がしていた。 (……僕は何を考えていたんだろう。本当に、どうかしていた……)  消火ボタンを押し、コンロの青い火が消える。静まり返った部屋に、湯気の上る微かな音だけが響く。  僕の首筋や背中には、まだ消え切っていない淡い爪痕がいくつか残っていた。  僕がこの街の片隅で身を寄せ合って暮らしている相手——ラピスは、人間ではない。夜の闇を統べ、人の夢枕に忍び寄ってその情念を糧とする魔界の住人、いわゆる夢魔——サキュバスの少女だ。  頭の両脇からちょこんと覗く愛らしい山羊の角、背中で慎ましく折りたたまれた小振りの漆黒の翼、そして先端が小悪魔のシンボルたるハート型を象った、意思を持つかのようにしなやかに動く細い尻尾。  偶然の巡り合わせから奇妙な同居生活が始まり、やがて惹かれ合い、今ではかけがえのない恋人同士として同じ屋根の下で暮らしている。  サキュバスという種族にとって、人間の情熱や体温、そして魂を重ね合わせる交歓の瞬間にほとばしる濃密な生気は、文字通りの『食事』であり、存在をこの世界に繋ぎ止めるための魔力の源だ。  最初の頃、僕は自分のような平凡で内気な男の子が、高貴な夢魔の糧として相応しいのだろうかと悩み、触れ合うことすらおっかなびっくりだった。けれど、ラピスが向けてくれる無垢でひたむきな愛情に触れるうち、彼女を慈しみたいという想いは日に日に深くなり——そして先日の休日、僕の中で何かが決定的に暴走してしまったのだ。  いつも通り、彼女の身体に触れていたはずだった。  だが、ラピスが甘やかな吐息とともに僕の首に腕を回し、潤んだ瞳で僕の名を呼んだ瞬間、僕の頭の中でパチンと音を立てて理性の箍が外れてしまった。  自分でも知らない底知れぬ衝動に突き動かされ、彼女が「もう……お腹がいっぱいです……!」「これ以上は、魔力器官が……っ」と泣き声を上げて懇願するまで、夢中でその細い身体を抱きしめ続けてしまったのだ。  翌朝、ラピスは指先一本すら持ち上げられないほど全身の芯を抜かれ、ベッドの上にぐったりと沈み込んでいた。  普通の人間として穏やかに生きてきた僕にとって、愛する女の子をそこまで消耗させてしまったという事実は、耐え難いほどの罪悪感となって胸に重くのしかかっていた。 (今日は……絶対にラピスを休ませなきゃ。僕が温かい朝ごはんを作って、お部屋を掃除して、一日中ラピスを労わるんだ)  固い決意を胸に、冷蔵庫から卵を取り出そうと手を伸ばした、その時だった。 「——だーめです! そのフライパンを速やかに置きなさい、ヒナタ!」 「わっ……!?」  ふわりと、甘い百合と熟した果実が混ざり合ったような蠱惑的な芳香が鼻腔をくすぐった。  次の瞬間、背後から滑り込んできた柔らかな温もりが、僕の背中へとぴったりと密着する。  薄手の部屋着を隔ててなお鮮烈に伝わってくる、少女特有のしなやかな丸み。胸元の豊かな弾力が僕の背骨を優しく押し包み、首筋には細い尻尾がするすると、まるで蛇のように愛らしく巻きついてきた。 「ら、ラピス……!? 起きて大丈夫なの? まだ腰が痛いんじゃ……」 「へっちゃらの平気です! 注ぎ込まれた生気はとっくに体内魔力へ変換され、体力も気力も百パーセント充填完了ですからね!」  慌てて振り返った僕は、彼女の装いを目にして思わず息を呑み、言葉を失った。  ラピスはパジャマを脱ぎ去り、どこで見つけてきたのか、淡いピンク色のフリルがあしらわれたエプロンを誇らしげに身に着けていた。  ……ただし、その下に着ているのは、透けそうなほど薄いシルクのキャミソール一枚だけだ。  滑らかな白い肩、華奢な鎖骨、そしてエプロンの脇から覗くすんなりとした太ももが、冬の冷気の中に無防備に晒されている。  心臓が不規則な早鐘を打ち始め、視線のやり場に困って僕の視界が定まらなくなる。 「ヒナタはですね、すぐにそうやって保護者みたいに心配して、ひとりで責任を背負い込もうとするんですから。……いつもわたしがご飯を作ってもらって、お世話されて、夜になればヒナタの熱い情熱に一方的に押し流されて……そんなの、魔界のサキュバス養成学校を首席で修めたわたしの矜持が許しません!」 「え、きょうじ……?」 「そうです! 誇りです! 今日のわたしは一味違いますよ。日頃の感謝とお返しの意味を込めて、ヒナタを極上の甘やかしと魔界の秘術で蕩けさせ、骨抜きにしてあげる計画なんですから!」  ラピスは小さな胸を張り、真紅の瞳を勝ち誇ったように輝かせた。  背中の黒い翼がパタパタと小刻みに揺れ、先端のハートが僕の腰骨をトントンとリズミカルに叩いている。  人間を惑わす恐るべき夢魔のはずなのに、僕を喜ばせようと必死に背伸びをしているその姿は、あまりにも純粋で、愛おしさに胸が締め付けられるほどだった。 「さあ、ヒナタは大人しくコタツに入っていてください。サキュバス特製の至福の朝食、運んであげますからね!」  小さな掌でぐいぐいと背中を押され、僕はなす術もなく居間のコタツへと押し込められてしまった。  天板の下に足を滑り込ませながら、僕は心の中で小さく息を呑んだ。  胸の奥で、甘やかな戸惑いと、これから何かが始まってしまうという抗いがたい予感が、静かに渦を巻き始めていた。 -------------------------------------------------------------------------------- 【第一章:甘露の給仕と、忍び寄る蠱惑の術】  コタツの温もりに包まれて数分と経たないうちに、香ばしいバターとバニラの甘い匂いが漂ってきた。  パタパタと軽やかな足音とともに戻ってきたラピスは、木製のトレイを大事そうに抱えている。  コタツの天板の上に置かれた皿には、黄金色に焼き上げられた極厚のフレンチトーストが美しく鎮座していた。表面には粉糖が粉雪のように薄く降り積もり、真っ赤なイチゴと大粒のブルーベリーが彩りを添え、黄金色のメープルシロップが艶やかな光沢を放っている。  そして隣の陶器のカップからは、立ち上る湯気とともに、どこか清涼感とスパイシーさを併せ持った不思議なハーブの香りが立ち込めていた。 「お待たせしました、ヒナタ。ラピス特製のフレンチトーストモーニングです!」 「わあ……すごいよラピス。まるでお洒落なカフェのメニューみたいだ。ありがとう、いただきます」 「あ、待ってください。手を伸ばしちゃダメです!」  フォークを取ろうとした僕の手を、ラピスが慌てて両手で制した。  彼女はコタツの向かい側ではなく、僕の真横へと回り込んで膝をつくと、悪戯っぽく唇を尖らせた。 「今日のテーマは『至れり尽くせりの甘やかし』ですからね。ヒナタは指一本動かしちゃいけません。……はい、あーんです」  小さく切り分けられ、シロップをたっぷりと吸い込んだパンの一片が、フォークの先で僕の唇の前に差し出される。  間近で見つめてくるラピスの瞳は、澄み切ったルビーのように瑞々しい。  男の子として、同年代の女の子から口元まで食事を運ばれ、「あーん」とおねだりされるようなシチュエーション。想像しただけで顔面がカッと熱を帯び、首筋まで真っ赤に染まっていくのが自分でも分かった。 「ほ、本当に自分で食べられるよ……! すごく恥ずかしいし……」 「恥ずかしがる必要なんてどこにもありません! 恋人同士なんですから当然の権利です! ……それとも、フォークじゃなくて、わたしの口移しがいいですか?」 「っ……! た、食べます、食べますから!」  本気でやりかねない熱を帯びた瞳に気圧され、僕は観念して小さく口を開けた。  そっと唇の間に差し入れられたそれを、一口で迎え入れる。  噛み締めた瞬間、じゅわりと温かな甘みが口内いっぱいに弾け飛んだ。  卵とミルクがパンの芯まで完全に染み込んでおり、まるで温かいカスタードプリンを口に含んだかのように、舌の上でとろりと融解していく。 「……っ、美味しい……本当に美味しいよ」 「えへへ、やったぁ! 昨日からじっくり漬け込んでおいたんですから! さあ、お茶もどうぞ。火傷しないようにゆっくり飲んでくださいね」  ラピスはマグカップの取っ手を握り、僕の唇へとそっと傾けてくれた。  琥珀色の液体が喉を通っていく。  柑橘類の爽やかな酸味の奥に、ピリリとした心地よい刺激と、とろけるような深い甘みがあった。  飲み干した瞬間、胃の腑のあたりからぽっと小さな火が灯ったかのように、身体の芯が急速に温まり始めるのを感じた。 「……ん? なんだかこのお茶、すごく身体がポカポカしてくるね……」 「ふふ、お気づきになりましたか? 魔界の奥深くに咲く『白露草(はくろそう)』の花蜜をほんの少しブレンドしてあるんです。滋養強壮にとても良くて、全身の血の巡りを滑らかにして、感覚を心地よく解きほぐしてくれるんですよ」  ラピスの言葉通り、トーストを食べ進め、ハーブティーを飲み干す頃には、僕の手足の先まで心地よい微熱が満ちていた。  皮膚の表面が普段よりもずっと過敏になり、服の布地が擦れるだけで、かすかな痺れのような感覚が背筋を走る。  空になった食器を手早く片付けたラピスは、静かに寝室のカーテンを少しだけ引き、部屋を淡い薄明かりで満たした。  そして、小さな硝子瓶を手に携えて、コタツの中の僕へと戻ってくる。 「ヒナタ、お腹は満たされましたか?」 「うん……すごく満たされたよ。ごちそうさま」 「よろしい。それでは作戦フェーズ二——サキュバス直伝、極上リラクゼーション・アロマ施術へと移行します!」 「えっ、アロマ……?」  ラピスが掲げた小瓶の中には、粘度の高い無色透明のオイルが揺れていた。  キャップを開けた瞬間、甘い花の香りと、どこか人の理性を惑わせる麝香のような濃厚な薫香が立ち込める。 「ヒナタはいつも真面目で、無意識に全身を強張らせていますからね。わたしの手で、日頃の疲れも心の凝りも、ぜーんぶトロトロに溶かして差し上げます。さあ、上着を脱いで、ベッドの上でうつ伏せになってください」 「ま、待って、僕の部屋着まで脱ぐの……?」 「オイルがついてしまいますから当然です! ほら、恥ずかしがらないの!」  抗う間もなく、僕のスウェットの上着はラピスの滑らかな手によって脱がされ、僕は上半身裸のまま、ダブルベッドの毛布の上へと促された。  シーツに胸を預け、うつ伏せになる。  直後、ベッドのスプリングがふわりと沈み込み、僕の腰のあたりにラピスの柔らかな身体が跨がってきた。 「ひゃ……っ」 「ふふ、力を抜いてくださいね。……いきますよ」  ラピスが手のひらにオイルを垂らし、体温で温めるように両手を擦り合わせた。  そして、ぬめりを帯びた彼女の両手が、僕の剥き出しの背中へとそっと滑り落ちる。 「っ……あ……っ」  思わず声が漏れた。  オイルの熱さと、ラピスの掌の吸い付くような柔らかさ。  ただ筋肉を揉みほぐすだけの手技ではない。肩甲骨のキワ、背骨のくぼみ、腰のくびれへと指先が滑るたび、触れられた皮膚の奥からジリジリとした甘い痺れが湧き上がり、血管を通って全身へと広がっていく。  サキュバスが獲物の警戒心を解き、情欲の海へと沈めるために用いる魔術的な愛撫。 「んぅ……ラピス、これ……なんだか、背中がすごくゾクゾクする……」 「凝っている証拠ですよ。ここも……ほら、首筋の付け根も……」  ラピスが前傾姿勢になり、僕のうなじへと顔を近づけてきた。  吐き出される甘い息が直接肌を吹き抜ける。それと同時に、彼女の胸元の柔らかな双丘が、僕の背中にむにゅりと押し当てられた。  さらには、背中から伸びる彼女の黒い尻尾が、服の裾をめくって僕の腰回りを這い回り、内腿の柔らかな肉をまるで筆の先のようにサワサワと撫で上げてくる。 「っ……! ら、ラピス、尻尾……当たってる……!」 「あら、いけませんね。ヒナタの体温があまりにも心地いいので、尻尾が勝手に懐いてしまっているみたいです」  くすくすと耳元で囁きながら、ラピスの指先は僕の腰骨のラインをなぞり、スウェットのウエストのゴムへと潜り込んできた。  布地を少しだけ押し下げ、無防備になった臀部の肉を、オイルまみれの手でリズミカルに揉みほぐす。 「あっ……! そ、そこは……ダメだよ……っ!」 「ダメじゃありませんよ〜。腰の奥のツボをほぐすと、全身の力が抜けてとっても気持ちいいんですから。ほら、ぎゅーっと……」 「ひゃあ゛っ……!?」  ビクンッ、と僕の背筋が大きく跳ね上がった。  ツボを的確に圧迫された快感の激痛のような痺れが下腹部に直撃し、僕の股間に眠っていたモノが、ドクンと凄まじい脈動を打って立ち上がり始めたのだ。  朝のハーブティーの滋養と、ラピスの蠱惑的な愛撫。  薄い布地を押し上げ、僕の熱い幹が急速に硬度を増し、シーツを押し潰すほどの質量となって昂ぶっていく。 「ふふ……ヒナタの身体、すっかり柔らかくなって、こんなに熱くなってきましたね」 「ラ、ラピス……もう……やめ……っ」 「やめませんよ。ここからが、本当の『おもてなし』なんですから」  ラピスは満足げに喉を鳴らすと、僕の背中から降り、ベッドの上で僕の身体を仰向けへと反転させた。 -------------------------------------------------------------------------------- 【第二章:優位の甘夢と、外された理性の鍵】  仰向けになった僕の視界に、薄暗い部屋の天井と、その中央で艶然と微笑むラピスの姿が飛び込んできた。  僕のスウェットの股間は、もはや隠しようもないほど鋭く天を突いていた。  布地越しにも脈打つ血管の拍動が伝わってくるほどの怒張。  ラピスは一瞬だけ真紅の瞳を丸くし、ゴクリと喉を鳴らしたが、すぐに挑戦的な笑みを浮かべて僕の両手首をシーツの上へと押し留めた。 「ふふふ……ヒナタ。いつもはあなたがわたしをめちゃくちゃにしてくれますけれど、今日は立場が逆です。わたしがヒナタを徹底的に攻め立てて、『ラピス、もう許して……!』って泣いてすがるまで、たっぷりと悦ばせてあげますからね」 「ラ、ラピス……そんなの、無理だよ……っ」 「無理じゃありません。サキュバスの技の真髄、とくと味わいなさい!」  ラピスは僕のスウェットと下着のゴムを掴むと、一気に両足の先まで引き下ろした。  冬の冷気に触れた瞬間、解放された僕の剛直が、ボロンと音を立てて跳ね起きる。  先端の鈴口からは、すでに透明な先走りがトロリと溢れ出し、桜色の皮膚を濡らしていた。 「ひゃ……っ、相変わらず、人間離れした大きさです……」  息を呑むラピスだったが、彼女は覚悟を決めたように自らのキャミソールを脱ぎ捨てた。  現れたのは、乳白色の滑らかな肌と、手のひらに収まりきらないほど豊かに実った愛らしい乳房。  ラピスは僕の太ももの間に膝立ちになると、小さな両手で僕の熱い幹を根元から包み込んだ。 「あっ……!」  オイルのぬめりを帯びた、吸い付くような柔らかい掌。  ラピスは両手を交互に上下させ、しっとりとした摩擦音を立てながらストロークを刻み始める。  亀頭の段差を親指の腹で丹念に転がし、敏感な裏筋を指先で弾くように刺激する。  サキュバス養成学校の知識を総動員しているのだろう、触れられる場所のすべてが、僕の快感の琴線を狂ったように掻き鳴らした。 「く……っ、あ……ラピス……手が、すごく……っ」 「ふふ、声が漏れてますよ、ヒナタ。……でも、手だけじゃありませんからね」  ラピスは腰を屈め、その愛らしい顔を僕の先端へと近づけた。  吐息が鈴口を熱く撫でたかと思うと、ちろりと小さな舌先が割れ目を割り広げるように潜り込んできた。 「んむ……ちゅぷ……じゅる……」 「あ゛っ……!?」  あまりの熱さと湿り気に、僕の腰が反射的にビクンと浮き上がった。  ラピスの舌は、まるで生き物のように裏筋の溝を這い上がり、雁首の周囲を丹念に舐め清めていく。  それだけでは終わらない。ラピスは小さな唇を限界まで大きく開くと、太く硬い先端をすっぽりと口腔の中へと迎え入れた。 「んぐ……っ、じゅるる……ちゅぷ……っ、んむ……!」 「ら、ラピス……っ! そんな……口全部で……っ!」  狭い口腔の内壁が、容赦のない圧力で僕の亀頭を締め付ける。  温かな唾液の海の中で、彼女の舌が激しくうごめき、喉の奥がキュウキュウと規則正しく吸い付いてくる。  ラピスは真紅の瞳で僕を下から見上げながら、頭を前後に揺らし、空いた両手で僕の太ももの付け根や陰嚢を優しく愛撫し続けた。  全身の血液が、頭の先から股間へと一気に逆流していくような錯覚。  快楽の激流に呑まれ、僕の視界が白く明滅し始める。 「んむっ……じゅぷ、ずずず……っ、ぷはっ!」  息継ぎのために口を離したラピスは、唇から白濁の混ざった銀色の唾液の糸を引かせながら、艶然と微笑んだ。 「どうですか、ヒナタ? すっごく気持ちいいでしょう? もう頭が真っ白になっていませんか? ほら、『ラピス様、降参です』って言ってごらんなさい?」  完全に勝者となったつもりで、得意満面に僕を見下ろすラピス。  濡れた瞳、紅潮した頬、唾液で光る艶やかな唇、そして僕を骨抜きにしようと必死に背伸びをしているそのいじらしくも扇情的な姿。  ……その瞬間だった。  僕の頭の奥深く、理性を繋ぎ止めていた最後の防波堤が、音を立てて粉々に決壊した。 (……ああ、もう……ダメだ)  カチリ、と。  冷たい静寂の中で、僕の中の何かが完全に裏返った。  優しい恋人としての遠慮も、相手を傷つけまいとする臆病な配慮も、すべてが焼き尽くされた。  目の前にいる愛しい夢魔を、一滴残らず自分の色に染め上げ、骨の髄まで愛し尽くしたいという、雄としての根源的な独占欲が、黒々とした焔となって僕の胸を支配していた。 「……ヒナタ? どうして黙って……きゃっ!?」 -------------------------------------------------------------------------------- 【第三章:逆転の潮騒と、深奥の狂乱】  次の刹那、ラピスの華奢な身体は宙を舞っていた。  僕が彼女の細い両手首を咄嗟に掴み、渾身の力で引き倒したのだ。  ドサリと鈍い音を立てて、ラピスは背中からベッドの中央へと押し倒された。  目まぐるしい視界の変化に追いつけず、彼女の瞳が驚愕に見開かれる。  覆いかぶさるようにして彼女を組み敷いた僕は、真上から冷徹なまでの熱情を込めて見下ろした。 「えっ……!? ヒ、ヒナタ……!? なんで……わたしが上だったはずじゃ……」 「ラピスが悪いんだよ」 「ふぇ……?」 「あんな顔をして、あんなことまでして……僕が最後まで大人しく我慢できるとでも思ったの?」  自分の喉から絞り出されたとは思えないほど、低く、掠れた声音だった。  ラピスは僕の瞳の奥に宿る剥き出しの情欲に気圧されたように、ヒッと小さく息を呑んで身を竦めた。  白い肌が、恐怖と恥じらい、そしてサキュバスの本能が呼び覚まされた歓喜によって、瞬く間に林檎のような赤に染まり上がっていく。 「ヒナタの目……いつもと、全然違う……っ」 「ラピス、僕の精気が欲しいんでしょう? サキュバスなんだから……僕の全部を受け止めてよ」 「ひゃぅっ……!」  僕は彼女の言い訳を塞ぐように、その愛らしい唇に乱暴に口づけた。  唾液を絡め取り、舌を深く差し入れて口腔の奥まで蹂躙する。  同時に、僕の手は彼女の太ももの間へと滑り込んでいた。  すでにそこは、自らが施した奉仕の興奮と、僕の放つ雄の気配に当てられて、トロトロと熱い蜜を滴らせていた。  指先を浅く沈めると、じゅぷりと卑猥な水音が立ち、内壁の柔らかな襞が吸い付くように僕の指を締め上げてくる。 「あ゛っ……! んんっ……ヒナタ、指……奥まで、入っ……!」 「ラピスの中、すごく熱いよ。……もう、こんなに濡れて僕を呼んでる」 「そ、そんな……っ! わたしは、ヒナタを骨抜きに……ひゃああ゛ッ!?」  指を引き抜いた僕は、彼女の細い両足を左右へと大きく押し開いた。  露わになった秘裂の入口に、限界まで怒張した僕の亀頭をあてがう。  溢れ出た愛液と先走りが混ざり合い、ぬめりを帯びた道筋を作り出していた。 「いくよ、ラピス」 「まっ……待って、ヒナタ! 今日のは……いつもより、ずっと硬くて太い……っ! 全部なんて、入らな——っ!」  ずぷり……ずずずずんッ……! 「あ゛ああ゛ッ……!!!!」  ラピスの口から、引き裂かれたような甲高い絶叫が夜気ならぬ冬の部屋に木霊した。  躊躇のない、一気呵成の沈下。  狭い肉の門を容赦なくこじ開け、みっちりと詰まった太い幹が、内壁の襞を残らず押し広げながら胎内へと侵入していく。  小柄な彼女の身体の中央を、灼熱の鉄杭が貫いていくかのような圧倒的な質量感。  ずぶ、ずずんッ! と恥骨と恥骨が激突する最深部まで、根元まで余すところなく呑み込まされた。 「っ……あぁ……っ、ラピスの中……すごい熱と、締め付けだ……っ!」 「んぐぅっ……! お、奥……子宮口(おく)まで……っ! 芯のところ、突き刺さってま゛すっ……!」  ラピスの平らな下腹部に目を落とすと、薄い皮膚の下に、僕の先端の形がポコッと異様に隆起していた。  サキュバスである彼女の身体に備わった魔力吸収器官——人の生気を啜るための深奥の扉を、僕の亀頭がダイレクトに押し潰しているのだ。  僕はその盛り上がりに大きな手のひらを添え、円を描くように撫で回しながら、狂おしいピストンを開始した。  ずぷん! ずぷん! ずずずんッ!!  ダブルベッドの上質なスプリングが、ぎしぎしと軋み声を上げる。  肉と肉がぶつかり合う重厚な炸裂音と、結合部から飛び散る愛液の激しい水音が部屋に響き渡る。 「あ゛っ、あ゛ぁっ……! ヒナタっ、激し……っ、あたま真っ白になっちゃう゛ぅっ……!」 「ラピス……っ、僕を骨抜きにするんじゃなかったの……っ?」 「ひゃ゛ぁっ……! む、無理ですぅ……っ! 骨抜きにされてるの、わたしのほう゛ぅっ……!!」  ラピスの手足が快感の過負荷に痙攣し、ベッドのシーツを爪先で引き裂かんばかりに掻きむしる。  背中の翼がバタバタと激しく羽ばたき、ハートの尻尾が僕の太ももに必死にしがみついてくる。  彼女の体内にある魔力器官が、僕から放たれる濃密な生気を感じ取って狂ったように蠢き、男根を一滴の隙間もなくギューギューと締め上げてきた。  サキュバスとしての本能が、僕の熱情を貪り食おうと必死に吸い付いてくるのだ。  その凶悪な締め付けが、僕の理性をさらに激しく焼き尽くしていく。 「ラピス……っ、出る……っ! 全部、君の中に注ぎ込むよ……っ!」 「きてぇ゛っ! ヒナタのぜんぶ……奥に、ぶちまけてぇ゛ぇっ……!!」  ずぷんッッ!!!  最深部で腰を完全に密着させたその瞬間、僕の身体の奥底から、灼熱の奔流が解き放たれた。 「っ……あぁぁぁっ……!!」 「ひゃ゛ああ゛あ゛ッ……!!!!」  ドクン! ドクン! と凄まじい脈動とともに、濃厚な白濁がラピスの子宮口の奥深くへと直接叩き込まれていく。  一度の波では終わらない。  僕が溜め込んでいた愛と情熱のすべてが、生命の質量となって彼女の胎内を満たしていく。  ラピスの魔力器官が必死に生気を変換しようとするが、注ぎ込まれる熱量の前には焼け石に水で、あっという間に許容量をオーバーフローしていく。  白濁を受け止めるたびに、彼女の下腹部は目に見えて丸みを帯び、ぽっこりと膨らみきっていった。 「あ゛……っ、ん゛ぐぅっ……! お腹……ヒナタの熱いので……パンパンになっちゃう゛ぅ……っ!」  激しい絶頂の余波で、ラピスの白目がちになった瞳から涙が零れ落ち、やがて力なくベッドへと倒れ伏した。 -------------------------------------------------------------------------------- 【第四章:逃げ場なき蜜月の螺旋】 「はぁ……はぁ……ヒ、ヒナタ……すごかった……です……」  ラピスはシーツの上にぐったりと顔を埋め、途切れ途切れの吐息を漏らした。  これで終わり、ようやく休める——そう安堵したであろう彼女の胎内で、僕の男根は抜かれることなく、再びドクンと硬度を取り戻した。  体内に注ぎ込まれたばかりの熱い白濁を押し分けるようにして、先ほどよりも太く、熱く膨張していく。 「え……? う、そ……抜かないんですか……?」 「抜くわけないじゃないか。……ラピス、自分で言ったよね? 『泣いて許してくださいって言うまで攻め立てる』って」 「ひっ……!?」 「今度はラピスの番だよ。『ヒナタ、もう許してください』って言えるまで、絶対に離さないから」  僕はラピスの細い腰を抱き起こすと、彼女を四つん這いの姿勢へと変えさせた。  繋がったまま体勢を変えられたことで、男根が膣内でグリリと捻じれ、ラピスの口から「あ゛ぐっ……!」と悲鳴が漏れる。  背後から覆いかぶさった僕は、彼女の華奢な腰骨を両手でガッチリと固定した。 「後ろから、もっと奥まで突いてあげるね」 「やっ……待っ……後ろは、深すぎ……ひゃああ゛ッ!!」  ずぶりんッ!! と鋭角に突き上げられた瞬間、ラピスの上半身がベッドへとへたり込んだ。  四つん這いの体勢を保つことすらできず、顔をシーツに突っ伏したまま、お尻だけを高く突き出される淫らな格好。  僕のピストンは、先ほどよりもさらに重く、容赦のない激しさを帯びていた。  ずっぷん! ずっぷん! ずずずんッ!!  打ち付けられるたび、ラピスの下腹部が内側からポコッ、ポコッと異様な隆起を繰り返す。  僕は彼女の膨らんだお腹の下に手を回し、内側から突き出される感触を外側からぎゅっと握り締めた。 「ほら見て、ラピス。ここ、僕の形でボコボコになってるよ」 「あ゛っ、あ゛ぁっ……! お腹、触らないでぇ゛っ……! 頭おかしくなっちゃう、壊れちゃう゛ぅっ……!」 「壊れていいよ。僕の愛で、全部ぐちゃぐちゃになっちゃえばいい」 「ひにゃぁ゛っ……! もう……許してぇ゛っ! ごめんなさい、わたしが悪かったですぅ゛っ! 許してぇ゛ぇっ……!!」 「……うん、よく言えました。ご褒美に、全部あげるね!」  ずぷんッッッ!!!  最深部で二度目の大爆発が起きた。  ドクドク! ドクドク! と、一度目を遥かに上回る量の熱い白濁が、ラピスの子宮へと雪崩れ込んでいく。  注ぎ込まれるたびに、彼女の下腹部は限界を超えてさらに丸く、重く膨らんでいった。  しかし、その狂宴はそこでは終わらなかった。  横向きに抱き合って三度目、再び正常位に戻って四度目——。  冬の短い昼下がりの光が夕暮れの茜色へと移ろい、やがて部屋が深い夜の帳に包まれるまで、僕たちはベッドの上で何度も何度も魂をぶつけ合い、熱い生命の交歓を重ね続けたのだった。 -------------------------------------------------------------------------------- 【終幕:冬晴れの朝と、ベッドの上の微睡み】  翌朝、午前十時。  冬晴れの澄み渡った陽光が、カーテンの隙間から差し込み、散らかり放題の寝室を穏やかに照らし出していた。  台所でコトコトと煮込んでいた昆布出汁の卵粥の火を止め、僕は恐る恐る寝室のドアを押し開けた。 「……ラピス? 起きてる……?」  返事はない。  ベッドの上に視線を向けた瞬間、僕はその光景に思わず言葉を失った。  ラピスはダブルベッドの真ん中で、うつ伏せの姿勢のまま、ぺったりとシーツの上に沈み込んでいた。  両手も両足も完全に脱力して左右へと投げ出され、指先ひとつ動かす気配すらない。  まるで、激しい夕立が過ぎ去ったあとのアスファルトの上で、手足を投げ出して平たくへばりついている小さな雨蛙のように、見事なまでに全身の芯が抜けきっていた。  頭の小さな山羊の角はシーツに埋まり、背中の漆黒の翼は力なくへにゃりと折れ曲がり、先端がハートの尻尾はベッドの端から床へとだらしなく垂れ下がっている。  そして、その華奢で平らだったはずの下腹部だけが、昨夜僕が何回にもわたって注ぎ込み続けた膨大な精気を受け止めて、まるで柔らかな果実のように、ぽっこりと丸く、愛らしく膨らんだままだった。 (……や、やっぱりやりすぎちゃった……!!)  青ざめた僕は、お盆をお盆立てに置き、慌ててベッドの脇へと駆け寄った。 「ラピス! 大丈夫!? ごめん、僕、本当に我慢できなくなっちゃって……!」  僕がおずおずと彼女の後頭部を撫でると、ラピスは重たそうに首をわずかに横へと巡らせ、涙で潤んだ真紅の瞳で僕を見上げてきた。  その小さく開いた唇から、掠れた声が微かに漏れ出る。 「……ヒナタ……ひどいです……」 「ごめんね……本当にごめん……!」 「骨抜きにしてあげるはずだったのに……完全に、わたしの骨が全部溶かされちゃいました……。指一本……起き上がることすらできません……」 「うぅ……本当に反省してるよ……」  平謝りする僕の姿を見て、ラピスはふっとその表情を蕩けるように緩めた。  そして、動かない右手をほんの数センチだけ持ち上げ、僕の指先へとそっと絡めてきた。 「……でも、魔力器官が……ヒナタの愛で、はちきれそうなくらい満たされてます。……すっごく、あったかくて……幸せです……」 「ラピス……」 「ふふ……今回のリベンジマッチは、わたしの完全敗北ですね……」  悔しそうに口元を尖らせながらも、その瞳には溢れんばかりの甘やかな愛情が湛えられていた。  僕は安堵の息を吐き出しながら、彼女のぽっこりと膨らんだ下腹部に両手をそっと添えた。  温かい皮膚の奥で、僕が注ぎ込んだ熱い命の残滓が、トクトクと穏やかなリズムで息づいているのが伝わってくる。 「お腹に優しい、温かい卵粥を作ってきたんだ。僕がスプーンで食べさせてあげるからね」 「……はい。動けませんので、心ゆくまで甘えさせてもらいます……」  スプーンでお粥をすくい、フーフーと息を吹きかけて冷ましてから口元へ運ぶと、ラピスは小さく口を開けて「はむっ」と美味しそうに頬張ってくれた。  幸せそうに目を細める彼女の横顔を見つめながら、僕は心の中で静かに誓いを立てた。  サキュバスの少女と、人間の男の子。  どんなに情熱に呑まれ、理性を失って激しく求め合ってしまっても、この腕の中にいる愛しい存在を、僕は一生をかけて愛し、慈しみ、守り抜いていくのだと。  冷え込む冬の朝の小さな部屋で、ふたりの甘く蕩けるような蜜月の時間は、これからも穏やかに、そしてどこまでも深く続いていくのだった。 ================================================================================ (完)