『箱騎士』と呼ばれる者達が居る 国民の全員が呪いに苛まれるサイラントの誇り高い兵士たちである。 ……、しかし、どれだけの誇りを胸にたたえたところで。腹は減るし、時には呪いを外に漏らさないための重厚な鎧を脱ぎたい時だってある。 「アンタねぇっ!さっきから、音立ててスープすすらないでよっ!」 兵舎の食堂の一角で、赤毛を短くまとめた、いかにも気の強い女が語気荒い注意を響かせる  女の勢いとは裏腹。当の注意を受けた対面に座る白けた肌の痩身の男は僅かに顔をしかめるだけしか反応を返さない。 ──女の声は勢いを増す 「さっきからアンタがジュルジュル~…って、スープすする音がアタシの食事にも入ってるのよっ!」 女が指で示したサラダの上には確かに「ジュルジュル」という文字が。浮かんでいる。男は生まれつき周囲のあらゆる「音」全てが「文字」に変わる「呪い」を受けて生まれたのだ 『大丈夫だ、俺の擬音は食べられるし、ちょっとすれば消える。ホラ、口開けろ』 そう言うと男はサラダと文字の一片をフォークに突き刺すと、女の前に突き出す 「─ンム、モグ……。そういう問題じゃないのよっ、アタシが言いたいのは…こう、見栄えとか気持ちの話なんだからっ!」 突き出された食事をさも自然に口に入れ、咀嚼し。飲み込む。 それでも、怒りの収まらない女が反論と共に机を叩くとクッキリとした手形がテーブルに残った。 『わかった、わかったから落ち着け、また兵舎の備品を壊す気か』 赤毛の女の手はあらゆる物から「固さ」を奪ってしまう。その呪いから、食事につけ、入浴ににつけ。日常のあらゆるを周囲に介助してもらわねばならない。 大なり小なり。呪いの渦中にいる彼らがそうした支え会いの中で生きている。 「まぁまぁ、二人とも。あんまり大きな声出しちゃダメだよ。」 釘を刺したのは一人だけ重力の逆転した青年だ。 喧嘩を続ける二人は先輩である男の言葉でようやく落ち着きを取り戻す 「…そこまで聞こえちゃってましたか?ごめんなさい。」『すいませんでした。』 二人が声と文字で謝罪を天井を投げ出した丁度その時。休憩時間の終了を告げる「ゴーン」と言う重々しい音が数度、鳴り響いた。 「ご馳走様、じゃあ。アタシ今日は体力訓練場だから、バイバイ。あとヨロシク!」 『ああ、頑張ってこいよ………。俺は陣形の座学ですけど、先輩は?』 「ボクは最近ヴァリトヒロイから来た軍事用ハチロクの乗車メンバーだからさ精々酔わないようにするさ、ハハハ」 『了解です、じゃ、また晩飯の時に。』「そうだね、お互い頑張ろう。」 食器の持てない彼女は片づけを無音の男に任せ走り去っていく。任された男は「カチャカチャ」と擬音を周囲に巻き散らかしながらも手早く使い終わった食器をカウンターに下げると、「カツ カツ」と靴音を溢しながら足早に食堂を後にした。 重力に見捨てられた男はそんな様子を見届けたのち。器用に窓枠を伝ったりしながら傍らに置いた自らの箱…鎧の中に体を滑り込ませると。その体は重さを取り戻し周囲と同じ地面を歩き始めた。 一時間も経つ頃には、男は当然のように声を発話して周囲との連携を確認する 同じころ、女は皆と並んで固い槍を掴み素振りに勤しんでいるだろう。 幾つものハチロクの運転席に座る、それぞれの箱騎士たちをわざわざ見分けようなどと誰も思いはしない。 いずれ彼、彼女らが歩いた後に残る足跡の差異など、他人にはせいぜいが足甲のサイズの違い程度に収まる事だろう。 それでも、画一的な鎧の中で、それぞれの呪いと人生を抱えて「箱騎士」たちは今日も戦うのだ。 呪いを受けたわが身が、当たり前に生きて当たり前に死ぬ平等な人生を送る手助けをしてくれる戦友たちに報いるために。 「ご馳走様、じゃあ。アタシ今日は体力訓練場だから、バイバイ。あとヨロシク!」 『ああ、頑張ってこいよ………。俺は陣形の座学ですけど、先輩は?』 「ボクは最近ヴァリトヒロイから来た軍事用ハチロクの乗車メンバーだからさ精々酔わないようにするさ、ハハハ」 『了解です、じゃ、また晩飯の時に。』「そうだね、お互い頑張ろう。」 食器の持てない彼女は片づけを無音の男に任せ走り去っていく。任された男は「カチャカチャ」と擬音を周囲に巻き散らかしながらも手早く使い終わった食器をカウンターに下げると、「カツ カツ」と靴音を溢しながら足早に食堂を後にした。 重力に見捨てられた男はそんな様子を見届けたのち。器用に窓枠を伝ったりしながら傍らに置いた自らの箱…鎧の中に体を滑り込ませると。その体は重さを取り戻し周囲と同じ地面を歩き始めた。 一時間も経つ頃には、男は当然のように声を発話して周囲との連携を確認する 同じころ、女は皆と並んで固い槍を掴み素振りに勤しんでいるだろう。 幾つものハチロクの運転席に座る、それぞれの箱騎士たちをわざわざ見分けようなどと誰も思いはしない。 いずれ彼、彼女らが歩いた後に残る足跡の差異など、他人にはせいぜいが足甲のサイズの違い程度に収まる事だろう。 それでも、画一的な鎧の中で、それぞれの呪いと人生を抱えて「箱騎士」たちは今日も戦うのだ。 呪いを受けたわが身が、当たり前に生きて当たり前に死ぬ平等な人生を送る手助けをしてくれる戦友たちに報いるために。