日が短くなって、夜の空気が一層ひんやりしてきた頃、ギデオンと教主はキャンプをしていました。
苦手な太陽の光よりも優しくて、柔らかな焚き火にあたりながら、二人は夜空に輝く遠くの星を眺めています。
教主が持ってきた、少しごわごわする、しっかりとしたラグに寝転がりながら、心地よく薪が爆ぜる音を楽しんでいると、少し強い風が吹いて、橙色の炎を揺らしました。
その時です、ギデオンの耳の奥で何か こそこそ、と音が聞こえてきたのです。
さっきの風で、髪の毛が耳の中に入ってしまったようで、ギデオンは気になって、星に集中出来ません。
そんな姿を見た教主は、エチケットセットから耳掻きを取り出し、膝を叩いてギデオンを呼びました。
教主の膝に頭を預け、くすぐったい感触に、小さく笑いながら、ギデオンは夜空を眺めます。
右耳も、左耳も、綺麗にお掃除して貰った頃には、なんだか うとうとしてしまって、教主の膝を枕にして、星と一緒に眠ってしまいました。




教団の私室にある、誰も入ることの出来ない場所で、教主は机の上で作業を始めていた。
強い粘性を持つ液体を、四角い容器に半ばまで注ぎ込む。最も重要なのは、丁寧さだと言わんばかりに、ゆっくりと、気泡が混じらぬように注いでいる。
マスクの奥で、小さく息を吐いて、次の作業に取りかかる。少し黄色味を帯びた「コレクション」をピンセットでつまみ、透明樹脂の上へそっと浮かべる。
ギデオンのものは、少し乾燥気味なのだなと静かに分析し、笑みを浮かべた。
この「コレクション」は、言わば時間の痕跡なのだ。そんな素晴らしい物を「永遠」にするための、神聖な儀式を行っているのだ。
妖しい紫の光で以て、樹脂を硬化させた教主の手元には、朝焼けに輝く金光の雲海の如くが、永遠を伴って、そこに存在していた。
