春のやわらかな風が、遠くからそっと届く、ある日のこと。
ギデオンは、教主に手を引かれて、教会へやってきました。
扉の向こうでは、いろんな姿のもちほっぺたちが、
ぺたぺた、ぺたぺたと、粘土の板を踏んでいます。
「なにをしているんだろう…？」
ギデオンが小さくつぶやくと、
教主は目を細めて、にっこり笑いました。
「未来にね、きみたちの足あとを残すんだよ」
みんなの足のかたちを、そっと写しとって、
大切に飾るのだといいます。
その瞳は、どこか遠くを眺めているようでした。
「さあ、やってごらん？」
優しくうながされたギデオンは、そっと足を乗せてみます。
にゅるり、と柔らかい粘土が、足の指の間を通り抜けます。
くすぐったくて、なんだか楽しくて、ギデオンは思わず、くすくすと笑ってしまいました。



聖杯があるとするなら、それは厳かな姿をしていない。
どこにでも転がっている、ありふれた器に紛れている。
価値を決めるのは形ではなく
それを“そうだ”と信じる者の、偏った信仰だ。
教主は降りしきる雨の中、周囲に目を走らせ、誰も居ないことを確認する。
手にした粘土板の中央には、小さな足跡。端には、丁寧に刻まれた名前。
ただの記念。そう言い訳できるはずの代物。
だが教主は、それをそう扱ってはいなかった。
「ああ、ギデオン……」
雨脚が強まる。音が、余計な気配をかき消してくれる。
教主は粘土板を掲げる。
それは祈りなどではなく、ひどく個人的な、歪んだ儀式だ。
排水口のような音を響かせながら、溜まった雨水を、躊躇いなく啜ったのだった。
トリッカル・もちもちほっペ大作戦
ハーフアニバーサリーおめでとうございます。