太陽がさんさんと、空からふりそそぐ ある日のことです。
ひんやりした洞窟に、いつも居るギデオンが、今日は教主のおうちにお呼ばれしました。
可愛らしいおでこにくっつく、じっとりした前がみを、柔らかくてちいさな指で ぴん、と はね除けながら、ギデオンは歩きます。
おうちに着いたら 「すごい汗だね」と、教主が優しく声をかけてくれました。
「よかったらサウナに入って、シャワーもあびてごらん。 とても気持ちがいいよ。」
すこし迷ってから、ギデオンは こくんと頷きます。
サウナは、木でできた静かな小部屋でした。
しーん、とした中で、もくもくと柔らかくて暖かな湯気がのぼります。
汗がつーっとつたって、ギデオンのぷにぷにとしたほっぺを濡らしました。
シャワーを浴びると、まるで心地よい雨にうたれているみたいです。
さっぱりして、いつのまにか綺麗になった服を着て、教主のところへ戻ると
教主は、冷たいレモンティーを淹れていました。
窓から入る光をうけて、琥珀色のレモンティーがカップの中で揺れて踊るのを、夜空のような瞳で見つめながら
ギデオンは「こんな日も、わるくないなあ」とおもいました。



夕日が沈む頃、ギデオンは背を向けて帰路に着く。
優しい笑顔のまま、その後ろ姿を見送ったあと、教主は静かに──いや、急かされるようにサウナへ向かった。
目的はただ一つ、排水溝に仕掛けた小瓶の回収だ。
中に入っているのは他でもない、ギデオンの汗── それも、極限の疲労と精神の弛緩がもたらした、特別な代物。
教主は瓶を慎重に取り出し、仰々しく胸元に抱えた。まるで、祈りを捧げる狂信者の姿だった。
私室へ戻ると、瓶の内容物を静かに、ビーカーへと移す。
アルコールランプに火を灯して、炎の揺らめきに目を細めた。
教主の体が小刻みに揺れる。期待か、あるいは中毒症状か。
時間だけが過ぎていく。焦燥と欲望が、理性を醜く腐らせるようだ。
やがて、ビーカーの底に沈殿した結晶をピンセットで取り出し、乳鉢で粉末状になるまで砕く。
念入りに整形された白い粉は、乱れのない一本の線を描いていた。
教主はそれをストローで吸い上げる。躊躇いなどない。
「ギデオン……」 昼間に回収した、まだ彼女の香りが残る衣服に、顔を埋めて呟く。
恍惚に満ちた声が、虚しく響いた。