太陽が輝いて、雲が浮かぶ青空の下、ギデオンは教団へ向かっています。お手伝いを頼まれていたのです。
木陰を歩きながら「ボクじゃなくても良いんじゃ…」とギデオンは少し思いました。でも、友達の教主に頼られたことが、心を嬉しくさせてくれました。
教団に着くと、にこにこ笑顔の教主が迎えてくれます。
「ごめんね、ギデオン。急にエルフィンが、暑いから涼みたいって言い出して…」
教主の手には、浮き輪やサンダル、水鉄砲がありました。それらが壊れていないか確認するのが今日のお手伝いみたい。
まずは水鉄砲。ギデオンは水を入れて、漏れがないか確認します。「うん、これなら大丈夫そう」
次にサンダル。「破れていないし、鼻緒もちゃんとしてるね」ギデオンと教主はてきぱき確認していきます。
そして、沢山の浮き輪。全部に空気を入れるのは大変そうです。
ギデオンはぷーっと息を吹き込み、浮き輪をパンパンに膨らませます。教主は穴がないか確認してくれました。
全部終わる頃には、ギデオンは少しくらくら。でも、教主が頭を優しくなでて「よく頑張ったね、お疲れさま」と言ってくれました。
ギデオンは親指を立て、満足そうに笑いました。



「ありがとう、ギデオン……」
ギデオンが帰宅し、静まり返った教団で、教主はひとり呟いた。 残された微かな香りを手のひらに感じながら、その手を口元に添え、深く吸い込む。
このまま、ギデオンの香りに溺れていたいが、それよりもすべき事がある……そう考えながら、壁際に転がる浮き輪へと視線を向けた。
脳裏に焼き付いているのは、顔を赤くして、必死に浮き輪を膨らませていたギデオンの姿。あれは忠誠か、あるいは無垢な信頼か……
教主はふらふらと歩み寄り、ひとつの浮き輪を抱き上げた。
熱とも狂気ともつかぬ光を宿した瞳のまま、バルブに口をつけ、躊躇いなく空気を吸い込む。
それはまるで、我が子を食らうサトゥルヌスの如き姿だった。
──いくつもの浮き輪からギデオンの「痕跡」を奪い、快感の余韻に浸る教主に、突然 神が囁いた。
「これを、料理にすればいい」
ギデオン味の空気カツ……誰にも真似できない特別な味を、あの子の吐息で作るのだ。
天啓に胸を踊らせながら、教主は浮き輪を抱えてキッチンへ向かうのだった。
