「それで、ガヴィアにダンスを教わって…」
ひんやりした洞窟に、ギデオンの声がひそひそと響きます。今日はとても暑い日。
だからギデオンは教主をおうちに招いていました。
なにせギデオンの家は洞窟なので、とても涼しくて快適なのです。
話が一段落すると、ギデオンは水をごくごく。そのとき、教主がつやつやの紙に包まれた丸いものを取り出しました。
「特別なキャンディだよ。中にカプセルが入っていて、プレゼントがあるんだ」
ギデオンは目を輝かせて包みを開けます。ざらざらした丸いキャンディが出てきました。
手のひらにのせて、ぱくっと口へ。すっぱくて、どこかで食べたことのある味…。あの黄色い粉だ！　宴会場で教主にもらった、すっぱくて不思議な粉です。
よだれが出るけどおいしくて、ついつい舐めてしまいます。
少ししてギデオンはゴリゴリとかじり、カプセルを取り出しました。
教主がハンカチを差し出したので、ポトリとカプセルを落とします。プレゼントの中身は緑に光るお星さまのシールでした。
「これなら雨の夜でもお星さまが見られるね」
教主の言葉に、ギデオンは嬉しそうに小さく頷きました。




カチリと乾いたクリック音が、暗い部屋の中に響く。
ディスプレイの淡い光だけが、教主の顔を照らしていた。生気の無いその瞳は、画面上に並んだ無数の音声ファイルに釘付けになっている。
教主は深く息を吐いた。ノイズ除去、周波数調整、複数パートへの分割…いずれも手間のかかる作業だったが、報われるだけの価値はあった。
録音装置は高価だったが、性能は申し分ない。いや、それ以上だっただろう。
特筆すべきはその小ささだ。ギデオンの警戒心をすり抜けるには、あれしかなかったのだ。
カプセルの中に巧妙に仕込まれたその装置は、ギデオンの口内で確実に収録を続けていた。
教主は真空パックから白い布を取り出す。ギデオンの唾液が染み込んだハンカチだ。 鼻先に寄せると、かすかな香りが心臓を昂らせる。
興奮、陶酔…あるいは狂気か。教主は震えを抑えるように手を握りしめ、イヤホンを装着した。
再生ボタンを押す。
ノイズのない、湿り気を帯びた音が鼓膜へ直接響く。舌の動き、唇の震え、喉の奥の吐息…そして、頭蓋を砕くような咀嚼音。そのどれもが鮮明だった。
「ギデオンの口内ASMR」教主にとって、神聖な儀式のような時間が始まる。