洞窟の奥で、ちいさな光が灯っています。
「これ…どうかな？」ギデオンは、遠慮がちに石をさし出しました。
教主はにっこりと笑ってお礼を言い、荷車にそっとのせます。
ギデオンはほっとして、また石を探して歩きました。
教団に池をつくることになったものですから、石が沢山必要なのです。
「…大きいのもあったら、かっこいいかも」ギデオンはそう思って、いつも腰かけている石を指さしました。
「それを貰っても良いの？」と教主がちょっと驚きます。ギデオンは小さくうなずきました。
大きな石をギデオンが荷車に乗せて、ふぅ と一呼吸。
「ありがとうね。庭もよろこぶよ」教主が柔らかな声でそう言って、ギデオンの頭を優しく撫でます。
大きな手で撫でられて、なんだかギデオンは誇らしくなりました。




軋む荷車の音が、喉を絞めるように低く唸る。 まるで狂信者が呟く呪詛の声のようだ。
教主は、荷車を停めて振り返った。 石をじっと睨みつける瞳は、暗く鈍い。
嫉妬が胸の奥で捻れ、黒曜石の鏃の如く喰い込む。 自身が誰よりもギデオンと心を通わせたと思っていたのだ。
だがこの石は、無言でギデオンの身体を支えていた。教主の届かぬ距離を、簡単に越えていた。
「私でさえ、まだ膝に乗って貰えていないのに！お前は！」
叫びたい衝動を、目の前の対抗馬を壊してしまいたい感情を、必死に押し殺す。
侵してはならぬ。なぜなら、この石は「聖域」なのだ。
堪えようのない悔しさが、鈍く胸を締めつける。しかし、怒りに震える手を見つめ、教主は気付いた。
「お前は…お前達は私と同じなのか…？」ギデオンの側に侍りながらも、抱擁一つ交わすことが出来ないのだ。
己の狭量を恥じ、憐憫と共感で以て、教主は顔を歪める。そして、敵対者であったものを抱き締めた。
石達は皆、沈黙している。 涙を流せぬ同志の悲しみに寄り添うように、教主は慟哭をあげた。
