Separated to a Sky 「いいよ!めっちゃいいよ!そら!もっと物憂げに!!そうそうそうそうそれそれそれそれ!!!」  ある夏の夕暮れ。私は川べりでアンニュイな表情を浮かべながら中腰で踏ん張っていた。  いい感じの自然光、揺れる提灯、背後の行き交う祭りの人混みすらも画になるマジックアワー。欄干に寄りかかって飲みかけのラムネ瓶を片手に「まだ終わらないで、夏──」というようなモノローグが似合うポーズをとる(ようにオーダーされた)私を、親友がこれでもかと激写する。さっきからずっとシャッターを切る音が途切れない。いったい今日のお昼から何ギガ分の写真を撮ってもらったんだろう。 「ふくらはぎ攣りそう」 「あと一枚!違う表情ちょうだい!」 「鬼かよ」  今日一日のどのショットよりも長い連写の音が途切れた時、ようやくそいつは手にしたゴッツいデジカメから顔を離し、天を仰いで一筋の涙を流したのだった。同時に、ぷるぷると悲鳴を上げ続けていた私の足の筋肉たちが限界を迎え、たまらずしゃがみ込む。  別にそんな必要はなかったのに止めていた呼吸も再開した。もちろん表情にはいっさい出していない。なんせこれでもプロの自覚はあるからだ。白鳥さんは優雅に水面に浮いているように見えて、必死に足をばたつかせているものなのだ。 「ありがとう……すべてのものに、ありがとう……」 「泣くほどぉ!?」  この子とは中学の頃からの仲だ。高校も一緒のとこを受けたし、ずーっと一緒の大親友。ズッ友ってやつ。アイドル好きが高じていつの間にかカメラが趣味になり、気がつけばすっかり私専属のカメラマンみたいになっている。撮ってもらった写真はSNSにあげても遜色ないほどの腕前で、今日の個人撮影会もなんとなしに「浴衣着て花火見に行くから写真撮って」とRAINを送ったら爆速で返事が返ってきたものだから、ありがたいし頼りにしてるんだけどたまに怖いのも事実ではある。 「それじゃ、厳選と加工は任せて。一週間で納品してみせるわ」  そう豪語する姿はもはや職人だ。軽いチェックを終えて大事そうにカメラをケースに仕舞い込む姿を川沿いに敷かれた遊歩道のベンチに腰掛けて眺める。少し見せてもらったけれど、今回も仕上がりが楽しみだった。 「そらはもうすぐ時間でしょ。遅れないようにしなね」 「一緒に来ればいいのに」  つい、そう口走ってしまった。  私はこれからグループのメンバーと合流して花火の打ち上げを観覧する予定だった。なので、この子とはそろそろ別行動だ。  ライブの後の関係者挨拶で何度も顔自体は合わせてるんだから、別に向こうもきっと嫌な顔なんてしないだろうに。けれど彼女はそのあたりの線引きはしっかりとできていた。 「何度も言ってるけど、アイドルちゃんとお近づきになりたくてあんたの友達やってるわけじゃないからね」  あの黒い封筒が私のもとに届いたときに、唯一相談したのが彼女だった。偶然(だったのかは今では知りようもないが)22/7というグループについてよく知っていて、ファンであると公言していたものだから、最適だと思ったからだ。  一歩を踏み出すことを迷っていた私に、彼女の後押しと熱烈な「いかに22/7が素晴らしいか」というプレゼンもあって、今も私はグループに身を置いている。言わば恩人でもある。 「ごめんて」  無理に引き合わせたいわけじゃない。ただうっかりとそう思ってしまっただけだ。私の大親友と私の仲間たち。その二つの大切なものが仲よくしてくれたなら、それはそれは幸せなことだろうなって。  けれど、人と人の立場というのはそう簡単に混ぜ合わせられるものではなく、いつだって細切れでまるで水と油のように溶け合ってはくれない。  隔てるものなんてなければいいのになんて考えは、夢物語で絵空事。そんな事は理解できてはいるはずなのに、心はどうにも納得してくれなかった。  またねと手を振り合って祭囃子が聞こえる方へと歩き出す。からんころんと下駄を鳴らせればまだ風情も出たのだけれど、一日中歩き回ることも考慮して今日はサンダルを選んだ。  そんなところも思うようにはいかないなと、一人苦笑を漏らした。 ◆ 「叶愛ちゃん、ま、待って……足早い……」  名前を呼ばれて振り向くと、連れ達といつの間にか少し距離ができてしまっていた。立ち並ぶ屋台に気を取られてふらふらと、祭りでごった返す人の流れから逸脱しかけていたらしい。 「ごめんごめん」 「すごい人だねぇ。迷子になりそう」 「現に今一人迷子になりかけてたし」 「いっそ手でも繋いどく?」  めでたくオーディションに合格してグループ活動を始めて早半年ほど。新しい環境にもようやく慣れてきて、こうしてメンバーと遊びに出かけることも増えてきた。好きなコンテンツが一緒の子がいたり、日々のレッスンも楽しく思えている。  活動は順調と言えるんだろうか。まだわからない。少なくとも今のところはのびのびやらせてもらっているし、前にいた場所よりはいくらか制約が少ないなとは感じている。不意に、あの崩れかけの壁のことが脳裏にまたたいた。 「どしたん、叶愛」 「んーん、なんでも」  ここはイチから立ち上げた場所だ。かといって、全員が素人からの出発でもない。私を含めた何人かはいわゆる前世があったし、集まった理由もさまざまだ。今はここにいるとしても、ふと前にいた場所のことを思い出してしまうことは罪ではないだろう。 「花火何時からだっけ」 「えっと、19時くらい?あと30分もないかも……」 「この感じじゃ並んで座れる場所、確保できなさそう」  がやがやとした喧騒に紛れて、メンバーたちの会話が少し遠くに聞こえた気がした。  今まさに目の前にいる人たちの笑顔が、誰か他の人のそれにだぶって見える。小さくかぶりを振ってその面影をどこかへ追いやった。 「あっ」  持っていた団扇がすれ違う人に当たって手から離れていった。幸い歩く人たちも気付いて避けてくれたから踏んづけられたりすることはなかったけれど、わざわざ立ち止まってまで拾って手渡してくれる人はだれもいない。  しゃがんでそれを自分で拾う。  立ち上がってふと周りを見渡すと、ついさっきまでそこにいたはずのメンバーたちはいつの間にか影も形も見当たらなくなっていた。  あちゃあ、とこめかみを少し搔いてスマホを開く。RAINで連絡を取ろうとしたけれど、何を打ち込んでも送信中のアイコンが表示されるだけで、一向に送信が完了してくれない。 「嘘ぉん……」 ◆ 『屋台並んでるとこまで来たよ。今どこ?』 『こっちは揃ってるよ。駅で合流して向かってる』  RAINの二期生グループ会話に現況を投げると、ほどなくしてみず姫ちゃんが向こうの様子を伝えてくれた。さっきまで近辺で写真を撮ってもらっていたのだから当たり前といえば当たり前だけど、どうやら私の方が早く現着していたらしい。  マップで周辺を確認して落ち合えそうな場所を見繕う。私が今いる現在地あたりなんかは混雑エリアの表示が出ていて、そりゃそうだとばかりに周りを眺め回した。日も傾き始めて花火の打ち上げ時間が迫る中、盛土の堤防から見下ろした河川敷は東京じゅうの人が集まって来てるんじゃないかと思うくらいの賑わいを見せている。この感じではどこで待ち合わせたとしてもすんなり合流できるとは到底思えなかった。  直接向かわずに私も駅に向かうべきだったか。やらかしたなと思いつつもダメ元で橋のたもとを指定した文面を打ち込んで送信ボタンを押す。 「……んん?」  けれど、どれだけ待てど暮らせど送信が終了する気配がなかった。嫌な予感がして慌てて他のSNSのタイムラインの更新を試みるも、どれも全滅。画面の右上に表示された電波状況は良好と表示されているにも関わらず、だ。  要するに、河川敷と同じように回線も混雑しているらしい。ライブの開演直前なんかでもよく見られるパケ詰まりだ。よく耳を澄ませばネットに繋がらない旨の声があちこちから上がっている。  現代人にとってネットに繋がれないというのは死活問題だ。混雑時にこういうことが起きるというのは経験的に知っていたはずなのに、いつもそれが起こってから慌てる。それだけネットが身近どころか無くてはならない、あって当たり前な手足の延長みたいに感じてしまっているのかもしれなかった。  血の気が引いた。他の日ならまだしも、どうして、今日に限って。  焦る気持ちもあいまって解決策が思い浮かばない。どうにか連絡をとる手段は?いっそ最寄り駅まで逆走して万が一会えることに賭けるべきだろうか。いや、そんな移動をしている時間はもう残されていない。あと30分もしないうちに打ち上げが始まってしまうだろう。こんなことなら指定席を取っておけばよかったとも思ったけれど、どちらにせよ予定が決まった時点ではもう指定席は完売していた。為す術なしだ。  スマホを両手で持ったまま立ちつくす。今年の今日は今日しかないっていうのに。準備を怠った私のせいだ。どうしよう、泣きそうだ。 「すいません、すいません!ちょっと通っていいですかー!」  そんな時だった。私の立つ場所にほど近いところに敷設された階段をそいつが駆け上がってきたのは。 ◆ 「すいません、すいません!ちょっと通っていいですかー!」  階段に座って陣取っている人たちを掻き分けて少しでも高い位置まで駆け上がる。めっちゃ嫌な顔をされたけど、ここは通路なんだから警備員さんに見つかって怒られてしまえばいい。  階段を昇りきってぐるりと河川敷を見渡す。当然だけれどそんなことをしても、薄暗くなってきて人でいっぱいの会場からメンバーたちを見つけることなんてできるはずもなく、がっくりと肩を落とす。  いや、まだギリギリ時間はある。いっそのこと私がここにいることを大声で叫んでやろうかと、口元に両手を当てて大きく息を吸い込んだ時だった。 「待て待て待て、何やらかす気なの!」  声帯を震わせる、まさにすんでのところで、すぐ脇からすかさず止めが入った。そりゃあそうか、こんな天下の往来で一瞬とはいえ大声なんて出そうもんなら、すぐに会場スタッフが飛んできてお縄に決まっている。ありがとうどこかの誰か。よくぞ血迷った私のことを止めてくれた、とその人の方を見ると、綺麗な空色の瞳が印象的な女の子が── 「あれ、そらちゃん?」  ちょっと不機嫌そうな顔をしたそらちゃんが私の腕を掴んでいた。春の終わりのライブに招待してもらって以来だから二ヶ月ちょっとぶりだろうか。 「なんでこんなとこに?」 「花火見に来たに決まってるじゃない」  それもそうである。有料自由席エリアの近くで、花柄の浴衣もばっちり着こなしておいて通りすがりですだなんて答えられた日には、関西出身でもないのになんでやねんとツッコミを入れていたところだ。  見た感じでは一人きりのようだった。常に誰かに構ってもらわないと死んでしまうと自ら言って回っていたそらちゃんにしては珍しい。 「もしかして、そらちゃんも迷子?」  お互いに手にしたスマホを見るに、どちらも八方手を尽くした形跡が見て取れる。 「うぐ……って、"も"ってことは叶愛ちゃんも?」  明言はせずに目を逸らしたとき、打ち上げ直前のために着座を促すアナウンスがあたりに響き渡った。 ◆  一縷の望みをかけて足を踏み入れたエリアにみんなが座っていないかとじっと目を凝らしてみるも、無駄なあがきに終わってしまった。仕方なく叶愛ちゃんと並んで土手の空いている場所に腰を下ろす。 「はぐれたメンバーには悪いけど、偶然そらちゃんと会えてラッキーだったな。迷子になった上に一人で見る羽目にならなくて済んだよ」 「それはそうかもしれないけど」  ものは考えようというか、考え方がポジティブというか。けれどそれは確かにその通りだった。もし一人で見ていたら、自他ともに認める超がつくほどの寂しがりやの私は下手をすれば迷子センターのお世話になっていたかもしれない。  ため息をついて往生際悪く、依然として未送信のメッセージたちを眺める。 「あとで塔子たちに謝っておかないと」 「やっぱり後輩メンバーで見る予定だったんだ。あ、今は二期生ってことになってるんだっけ」  その呼び方も気づけば懐かしい。まさか後輩ができるとは思ってもいなかったし、みかみさん達三人の存在もあって期生という概念があやふやだったおかげで、長らく先輩後輩としてしか区別されていなかったからだ。 「いいなぁ、先輩。こっちはまだ始まったばっかりだからそんな予定なんて当分ないし」 「会えたらちゃんと先輩って呼んでもらえるかもしんないよ。SNSで現役も卒業生も関係なく誕生日お祝いしてくれてる子とかいるし」 「見た見た!あれはもう絡んでもいいサインってことでいいよね」 「先輩に噛み付きまくってたどこかの誰かとは大違い」  思っていたより会話のキャッチボールが途切れない。そりゃあライブ後に顔を出しに来てくれた時はみんなもいることだし喋れたけど、一対一だとどうなってしまうのかは想像がつかなかったから、いっそ拍子抜けだった。 「なんか、ちょっと安心したかも。前みたいに話せて」  叶愛ちゃんがそう言って遠くを見るみたいに少しだけ目を細める。  返答に困って、手持ち無沙汰に膝を抱いて背中を丸めた。そんなことを言われてしまうとコメントがしづらい。 「んー……」  家の都合とかで大変というのは聞いていたけれど、なにせ彼女の活動終了はあまりに突然だったものだから心構えも何もあったもんじゃなかった。忘れたふりをしていても、今みたいにふとした瞬間に思い出してしまったなら、いくらおしゃべりで名を馳せた私といえども言い淀んでしまう。 「なーんでそういうこと言っちゃうかなぁ」 「思っちゃったんだからしょうがないじゃん」 「そっかぁ」  会場のスピーカーから誰だか知らない偉い人の開会のあいさつを聞き流しながら、あり得なかった「もしも」ばかりを夢想してしまった。今ではお互いに別々の道を歩いているなんて、あの頃は想像すらしていなかった。  あのときどう思っていたかとか。  あのとき何を考えていたのとか。  聞けなかったことがあった。  言いたかったことがあった。  それらすべてがぐるぐると頭の中で渦をまく。 「はじまる」  叶愛ちゃんの言葉に、顔を上げる。アナウンスの音頭に合わせて会場全体からカウントダウンの声が上がった。倣って一緒に声を張り上げる。近くのどこかで、同期のみんなも同じように空を見上げて声を合わせているんだろうか。  カウントゼロと同時に一発目の花火が上がる。ぱっと光って、一瞬遅れて炸裂音が届いて肌と鼓膜に振動を感じた。 「うおー、きれー!」 「ねー」  最初っから興奮気味の叶愛ちゃんとは対照的に、私はいろいろな心残りばかりに支配されてしまっていた。  今からでもこのあたり一帯を探し回れば間に合うだろうか。一瞬視線を落としたスマホの画面には、相変わらず新しい通知はひとつも表示されていなかった。 「やっぱり、みんなと見たかった?」  歓声と炸裂音に紛れて聞き逃しそうな声に視線を遣ると、目が合った。反射的に逸らしてまた空を見上げる。 「まぁね。なんせ今年は、と──」  言いかけて、ぎりぎり踏み止まれた。 「と?」 「──くべつにお休み貰えたから、時間合わせられたってのに」  聞いた話では、叶愛ちゃんと塔子は同じ学校に入学したんだとか。  それなら、もう知らせているんだろうか。相談とかしたんだろうか。もしそれがまだだとしたら、私の失言でそれを知ってしまうのはあんまりにもあんまりだ。 「エンタメ業やってると土日のお休み貴重だよね、わかるわ〜」  なんとか誤魔化せたようでほっと胸をなで下ろす。  安心ついでにふと、また隣を盗み見た。  赤。青。黄。緑。白。  目まぐるしく変わる色を受けて、叶愛ちゃんは花火の上がる空と同じ色に染まっていた。 「……色」 「え、なに?」  気づけば、ひとりでに口が動いていた。 「色。っていうのは光の波の長さなんだって。波長ってやつ」 「うん」  どかん、とひときわ大きい花火が破裂した。 「いま、二人とも同じ色してない?」 「……うん、そうだね」  花火が終わればまた別々の色に戻ってしまうけれど、今だけはたぶん、きっとみんな同じ色をしてる。 ◆    規制退場のあと、結局最後まで一緒に見ていたそらちゃんと別れてから指定された場所に来てみたけれど、それらしい人たちは見当たらなかった。  打ち上げ中に観客の意識が花火に向いたとき、ほんの一瞬だけネットに繋がって送られてきたのだ。けれど急いで打ち返した返信は未送信のままで、まだもうしばらくは不通が続きそうだった。 「帰ろっかな」  ぽつりとこぼして上を見上げる。  さっきまであんなに明るかったことが嘘みたいに、真っ黒な夜空が広がっていて月も見えやしない。  キッチンカーもいっぱい出てたけど結局何も食べなかった。お腹もすいたし帰りに買い食いするメニューをぼんやりと考えながら踵を返そうとしたとき、 「あ!叶愛ちゃん!よかった〜……」 「ほらぁ!やっぱ手繋いどいた方が良かったじゃん!」  息を切らせて肩を上下させながら、汗だくのメンバーたちが夜闇の向こうから駆け寄ってきた。  まさか探し回ってくれていたとは思ってなかったから、思わず目を白黒させてしまう。 「はー、もう。心配させないでよね」 「……心配してくれてたんだ」  役割とかはまだ明確には決まっていないけど、最年長のまとめ役みたいなポジションの子が露骨に渋い表情を浮かべる。 「当たり前でしょ。叶愛はうちの大事な暫定センターなんだから、夜道にほったらかして傷物にでもなられたりしたら困る」 「グループまだ始まったばっかりだもんね」 「そうそう。売れてBIGになりたいし」  そう言われて、再認識した。  私の居場所はもうここなんだと。なんだか少し寂しいけれど、寂しくはなかった。不思議な感覚。 「うん、ごめん。次からは気をつける」  たとえひとりでも、信じた道を進むよ。だって今も昔も、となりには仲間がいてくれたから。  だから、待っててよ。  必ず追いつくからさ。 ◆ 「塔子!みんな!」  なんとか連絡がついて合流を果たせた瞬間、塔子に抱きついた。 「うわー!?そらっちってばだいたーん!」 「ほんとごめん、せっかく一緒に見に行ける最後のチャンスだったのに」  ようやくみんなの顔を見られた安堵と、やらかしで一人だけはぐれた心細さのあまり、ぽろぽろと涙が溢れて止まらない。ついさっきまで前みたいにあんなに笑えていたっていうのに、一度たがが緩んでしまったらもうおしまいだ。  よくお仕事先の人に「しっかりしてる」だとか「頼りになる」なんて言われたりするけれど、メンバー、とくに同期の前での私はどうしようもなくバブちゃんなのである。 「ちょこっとだけ離れてたかもしんないけどさ、塔子たち、ちゃんと同じ場所で同じものが見れたでしょ?」 「うんうん。誘ってくれてありがとね、そらちゃん」  塔子が背中をさすってくれて、ほのちゃんも優しく髪を撫でてくれた。  あぁ、どんどんと私の陽だまりが翳っていく。  ずっと照らし続けてくれる太陽なんてありはしないって頭では理解できてるはずなのに、ここはあたたかすぎるからいつまでも続いていくのかもしれないって勘違いしてしまうのだ。  もうとっくに手遅れだったけれど、涙を堪えるようにして上を見上げた。さっきまであんなに色とりどりだったことが嘘みたいに、空は真っ暗で月さえも姿を見せてはくれない。  そうして、私とあの子は違う色になった。  それでも、たとえそうだとしても。  私は私の大好きなものを全部残さず抱きしめ続けていたいのだ。 了