「都市の一人として生まれ、」人生の記録 タサオカ · N社 · 49歳 (負傷) 職業: 3級フィクサー シード: 3819932197 ── 0歳 ── [春] 14区、N社の管轄。値切る声が絶えない通りの、上の階の部屋だった。両親はどうにか食べていける程度の暮らしだった。 ── 3歳 ── [秋] 区全体が停電した。暗闇の中で大人たちは口数を減らし、誰かの手が子どもの手をぎゅっと握った。こんなとき、都市は本当に息を潜める。 ── 4歳 ── [夏] 一晩中熱が下がらない。額に載せた濡れ布巾はすぐにぬるくなる。 ▸ 水と布団で耐える 三日後に熱が下がった。体がひと回り小さくなったようだった。 ── 5歳 ── [秋] 都市の真ん中には「頭」がいるという。すべての翼の上に座り、都市を見下ろす人々。ある晴れた日、遠い塔の先の灯りがやけにくっきりと見えた。 ── 6歳 ── [春] 翼の創立記念日で、区じゅうに花火が上がった。人々は一日くらい空を見上げて笑った。翌日、通りには火薬の匂いだけが残った。 [冬] 同じ路地で育つ子と、いつの間にか二人でつるむようになった。名前よりあだ名を先に知った仲だ。 ── 7歳 ── [夏] 入学試験の日だ。同じクラスになる子どもたちがずらりと並んでいる。 ▸ 最後まで集中して解く 手が震えたが、最後まで解いた。結果は真ん中より少し上だった。 [秋] 学校の裏庭で子どもたちがひそひそ話している。誰それのお父さんが夜に怪物になって、フィクサーに連れていかれたんだって。その子は一週間、学校に来ていない。 ── 8歳 ── [夏] 市場の真ん中を、スーツ姿の男が通り過ぎた。腰には古びた剣、袖には小さな徽章。人々は自ずと道を空ける。「あれがフィクサーだよ」 ▸ こっそり後をつける 道に迷い、日が暮れてから家に帰った。こっぴどく叱られた。 [冬] 道の真ん中で、二つの事務所のフィクサーたちが刃を交えている。野次馬たちは輪を描いて下がった。刃のぶつかる音が歌のようだ。 ▸ 最後まで見届ける 勝負は一瞬だった。負けた方は起き上がり、笑って負けを認めた。その夜はずっと、あの動きを真似てみた。 ── 10歳 ── [夏] 区の端の塀の向こうで、外郭の子どもたちが手を振っている。あちらにはないものを、こちらは握っている。こちらにないものも、あちらにはあるという。 ▸ 物々交換をする 大人たちが怒鳴りながら駆けてきて、みんな散り散りになった。半分は手ぶらだった。 [冬] マントをまとった人が道をふさぐ。人差し指の代行者だ。彼は紙を広げて読み上げる。「今日三番目に出会った者の左の靴を持ってくること」あなたが三番目だ。 ▸ 靴を脱いで渡す 代行者は靴を受け取り、頭を下げた。裸足で家まで歩いた。それで終わりだった。 ── 13歳 ── [夏] 学校を終える時期が近づいている。上級課程に進むには時間と金がかかる。働き始めれば、目先の暮らしは楽になる。 ▸ 上級課程に進学する 机に向かった時間は長かったが、選択肢は広がった。 ── 14歳 ── [秋] 放課後の時間を仕事に注ぎ始めた。配達、掃除、倉庫の整理。手が先に荒れた。 ── 15歳 ── [夏] 幼い頃に見たスーツ姿のフィクサーに似た人が、路地の事務所の前で人を募っているという。給料ははした金、仕事は使い走り。だが扉は開いている。 ▸ 事務所の扉を叩く 門前払いされた。「子どもの来るところじゃない」 ── 17歳 ── [春] パンの値段がまた上がった。店主は翼の原材料価格のせいだと言った。客は誰も文句を言わなかった。文句を言う先がないことを、みんな知っている。 [冬] 名の知れた特色のひとりが依頼の最中に死んだという知らせが流れた。その日、都市の酒場は妙に静かだった。翌朝には、何事もなかったかのようだった。 ── 18歳 ── [春] 都市のあちこちで、人が怪物へと変わる「ねじれ」が報告されている。電光掲示板のニュースは「落ち着いて屋内にとどまってください」と繰り返すばかりだ。誰も原因を知らない。 [秋] 近ごろ妙なものが見える。壁の染みが人の顔に見え、耳の奥で聞き慣れない囁きが聞こえる。都市ではよくある話だ。その行き着く先も。 ▸ 誰にも言わずに耐える 囁きはある日、静まった。 ── 19歳 ── [春] 同じクラスの子が、ある日から口数が減った。最後の授業で、その子は黒板を延々と同じ文字で埋め尽くした。翌日、その席は空いていた。 [秋] 赤いコートに中折れ帽の行列が通りを行く。親指だ。通りの人々は皆立ち止まって頭を下げる。顔を上げているのはあなただけだ。 ▸ 急いで頭を下げる 行列は何事もなく通り過ぎた。首筋を冷や汗が流れた。 [冬] 路地で肩がぶつかった。相手の腕には名前がびっしり刻まれている。中指だ。「兄貴たちに聞いてみるか? これがいくらになるか」 ▸ 財布を開いて謝る ずいぶん高くつく肩だった。相手は金を数えて消えた。 ── 20歳 ── [秋] 仕事のない日が長引いた。この都市で仕事がないということは、明日がないということだ。区の掲示板の前で、求人広告を一枚ずつ読んでいく。 ▸ フィクサー免許の試験を受ける ハナ協会の9級免許が下りた。今日からフィクサーだ。 (フィクサー) ── 21歳 ── [夏] 隣人がそっと集まりに誘ってくる。「あの方」がいらっしゃれば苦しみは終わるのだと。集会所の壁には、人のものではない手形がびっしりついている。 ▸ 丁重に断る 隣人は笑って「いつか来ることになりますよ」と言った。 [秋] [あらぬ噂] 単純業務依頼 · 借金の取り立て代行。三か月利子を払っていない債務者の住所が書かれた紙切れを受け取った。依頼人は「静かに」とだけ言った。 ▸ 正面から片付ける 静かに片付けた。依頼人は満足した。 ── 22歳 ── [春] 白い服を着た人が近づいてきて、丁寧に尋ねる。「あなたの顔、とてもいいですね。次の作品のモデルになっていただけませんか? お礼はたっぷりしますよ」薬指の芸術家だ。 ▸ 丁重に断る 彼は残念そうに、指であなたの顔を描くしぐさをして去っていった。 [冬] 一度の不運が借金につながった。債権者の手下が、毎月同じ日にやって来る。 ▸ 切り詰めて返す 何年もかかった。体の方が先に参った。 ── 23歳 ── [秋] 同じ事務所で長く背中を預けてきた仲間が、依頼の最中に死んだ。事務所は彼の武器を壁に掛けた。犯人はまだこの区にいる。 ▸ 復讐する 見つけ出し、片を付けた。気分は晴れなかった。壁の武器の隣に、自分の武器をしばらく掛けておいた。 ── 24歳 ── [春] ひと月の間、依頼がひとつも来なかった。武器を三度手入れし、事務所の床を二度磨いた。静かな月は、フィクサーにとってありがたくも不安なものだ。 ▸ ゆっくり休む 久しぶりに朝まで眠った。体がそれを覚えていたことに驚いた。 [秋] [あらぬ噂] 単純業務依頼 · 裏路地で「ネズミ」と呼ばれるこそ泥の一味が、商店街の倉庫を荒らしている。追い払ってほしいという依頼。錆びたパイプを持った子どもがほとんどだ。 ▸ 正面から片付ける 一味は散り散りになった。店の主人が温かい飯を出してくれた。 ── 25歳 ── [春] [あらぬ噂] 護衛依頼 · 夜の間に資材が消える工事現場を見張ってほしいという依頼。現場監督は、犯人が「人間であってほしい」と言った。 ▸ 正面から片付ける 犯人は人間だった。それも作業員のひとりだった。監督が自分で始末をつけると言った。 [夏] 大家が家賃を上げた。区の再編のせいだというが、説明する者はいない。 ▸ 受け入れて仕事を増やす 残業が増えた。部屋は変わらない。 [冬] 区の掲示板が行方不明者のチラシで埋め尽くされている。古いチラシの上に新しいチラシが貼られ、その上にまた新しいチラシが貼られる。いちばん下のチラシの顔を、もう誰も覚えていない。 ── 26歳 ── [春] [都市伝説] 護衛依頼 · 組織の幹部の葬儀の護衛。故人の仇たちが弔問に来るのは目に見えている。遺族は「葬儀だけは静かに済ませたい」と言った。 ▸ 正面から片付ける 遺族のひとりがけがをした。葬儀は二度行うことになった。 [夏] 裏路地の情報屋が、次の依頼の標的についての情報を買えと持ちかけてくる。値段は依頼料の三分の一。情報屋の売る情報は半分正しく、その半分が生死を分ける。 ▸ 自分の足で調べる 三日かかった。その代わり、誰もあなたの動きを知らなかった。 [秋] 誰かにつけられている感覚が、ひと月消えない。証拠はない。証拠がないことこそが、彼らのやり方だ。 [冬] 工房から新しい装備の見積書を受け取った。良い武器はフィクサーの命の値段だ。問題は、その命の値段が年収より高いことだ。 ▸ 借金してでも最高級の装備をあつらえる 手に吸いつく感覚からして違った。次の依頼で、その値打ちを発揮した。 ── 27歳 ── [春] 裏路地の勢力図が塗り替わったという噂が流れている。どの路地の主が替わったかは、壁の落書きの色で分かるという。 [夏] [都市怪談] 単純業務依頼 · 封筒をひとつ、区の反対側の事務所まで運ぶ。中身は知る必要がないと言われた。封筒は思ったより重い。 ▸ 正面から片付ける 道に迷って期限を過ぎた。報酬は半分ももらえなかった。 [秋] 依頼中に負った傷は思ったより深かった。しばらく剣を握れない。治療費と休業が一度にのしかかった。 [冬] ハナ協会から昇級審査の通知が届いた。審査は実戦評価だ。実力が足りなければ、等級が上がる代わりに体に傷が残る。 ▸ 正面から受ける 審査官の剣を受け止めた。新しい徽章が肩についた。 (9級 → 8級) ── 28歳 ── [夏] [都市伝説] 幻想体討伐依頼 · 穀物倉庫に「罰鳥」と思われるものが居着いた。穀物は減らないのに、倉庫の作業員がひとり、またひとりと辞めていく。辞めた者たちは、同じ夢を見るという。 ▸ 正面から片付ける 倉庫で一晩過ごした後、あなたも同じ夢を見るようになった。 [秋] 仕事が遅くに終わった。時計を見ると午前三時が近づいている。裏路地の夜、その十分間に外にいた者は朝になっても見つからないという噂がある。 ▸ 全力で家まで走る 玄関の扉を閉めた瞬間、路地のどこかで長い息遣いのようなものが聞こえた。 ── 29歳 ── [夏] 牙狩り事務所が人を募っているという知らせが入った。ひとりで依頼を受ければ報酬は全部自分のものだが、背中を預けられる人がいない。事務所に入れば、依頼も仲間も増える。 ▸ ひとりで働く 自由は高くつくが、まだ持ちこたえられる。 [秋] [都市怪談] 単純業務依頼 · 借金を抱えた人の代わりに債権者と交渉してほしいという依頼。利子だけ払っても元金が減らない契約だ。債権者は裏路地の組織の末端だ。 ▸ 正面から片付ける 利率を半分に下げさせた。依頼人は初めて、元金が減るのを目にした。 ── 30歳 ── [春] 隣の夫婦の娘が結婚する。招待状が扉の隙間に挟まっていた。ご祝儀袋の前で、しばし財布を開いてみる。 ▸ たっぷり包んで式に行く 花嫁があなたの手をぎゅっと握った。隣人とはこういうものかと思った。 [秋] [あらぬ噂] 単純業務依頼 · 外郭の境の村へ手紙を一通届けてほしいという依頼。依頼人は老人だ。封筒には四十年前の住所が書かれている。 ▸ 正面から片付ける 返事を持って帰ってきた。老人は返事を読んで、長いこと笑っていた。 ── 31歳 ── [夏] [都市怪談] 幻想体討伐依頼 · 村の井戸に「妖精の祭典」らしきものが棲んでいるという通報。水を汲みに行った人がときどき戻らない。井戸を埋めれば、村は水を失う。 ▸ 正面から片付ける ロープが切れた。井戸の外へ這い出すのに一日かかった。 [秋] ソル事務所が人を募っているという知らせが入った。ひとりで依頼を受ければ報酬は全部自分のものだが、背中を預けられる人がいない。事務所に入れば、依頼も仲間も増える。 ▸ ひとりで働く 自由は高くつくが、まだ持ちこたえられる。 ── 32歳 ── [春] [都市怪談] 単純業務依頼 · 借金の取り立て代行。三か月利子を払っていない債務者の住所が書かれた紙切れを受け取った。依頼人は「静かに」とだけ言った。 ▸ 正面から片付ける 債務者は扉を開けるなり封筒を差し出した。前もって用意していたようだった。 [夏] 原因の分からない咳が止まらない。体が以前のようではない。 ▸ 病院に行く 初期の診断だった。高い薬が続いたが、体は回復した。 [冬] ひとつの考えが頭から離れない。失った人、逃した機会、手に入らなかったもの。この都市では、執着がときに人の形を変える。 ▸ 執着に従って最後まで行ってみる 止まれなかった。周りの人がひとり、またひとりと離れていった。 ── 33歳 ── [夏] [都市伝説] ねじれ依頼 · ねじれた画家が自分のアトリエから出てこない。アトリエの壁の絵が一日に一枚ずつ増えていく。絵の具が何なのか、誰も確かめたがらない。 ▸ 正面から片付ける 画家は最後の一筆を終えるまで待ってくれと言うように動きを止めた。待ってやった。 (8級 → 7級) ── 34歳 ── [春] 工房から新しい装備の見積書を受け取った。良い武器はフィクサーの命の値段だ。問題は、その命の値段が年収より高いことだ。 ▸ 借金してでも最高級の装備をあつらえる 手に吸いつく感覚からして違った。次の依頼で、その値打ちを発揮した。 [秋] [都市伝説] 捜索依頼 · 輸送中に消えた貨物一台分を探してほしいという依頼。送り状には「医療用品」と書かれている。依頼人は、箱を開けるなと二度言った。 ▸ 正面から片付ける 見つけはしたが、箱がひとつ割れていた。中から何かが抜け出した痕跡があった。 ── 35歳 ── [春] 裏路地の情報屋が、次の依頼の標的についての情報を買えと持ちかけてくる。値段は依頼料の三分の一。情報屋の売る情報は半分正しく、その半分が生死を分ける。 ▸ 買う 情報は正確だった。標的は情報屋の言った扉から出てきた。 [夏] 「頭」が新たな布告を出した。詳しい内容は誰も知らないが、数日後、区の看板のほとんどが変わった。 [秋] 道端に分厚い財布が落ちている。中にはかなりの金と翼の社員証が入っている。社員証の写真の顔は疲れて見える。 ▸ 社員証の住所に返しに行く 持ち主は扉を開けて、しばらく言葉が出なかった。謝礼は断ったが、温かいお茶を一杯いただいた。 [冬] [都市伝説] 単純業務依頼 · 情報収集。ある研究所の出入り記録を抜き取ってくる仕事だ。潜入は順調だったが、廊下の奥の監視装置のレンズがゆっくりとこちらを向く。 ▸ 正面から片付ける レンズが向く直前に死角へ抜けた。完璧な潜入だった。 ── 36歳 ── [春] 道端で倒れた老人を助け起こした。老人は黙って頭を下げ、名前は教えてくれなかった。その夜はよく眠れた。 [夏] 区の端の塀の隙間から、外郭の商人が近づいてくる。塀の向こうでしか手に入らない薬材と資材。翼の管轄規定には反するが、値は倍になる。 ▸ 取引する 大金ではなかったが、ひと月の暮らしをまかなえた。 [冬] [都市伝説] 幻想体討伐依頼 · 下水道に「マッチガール」と思われる幻想体が棲んでいるという通報。毎晩猫が消えるという。目撃者の話は毎回違う。 ▸ 正面から片付ける 下水道の奥でそれを見つけて始末した。その夜から猫たちが戻ってきた。 ── 37歳 ── [夏] [都市伝説] 護衛依頼 · 裏路地出身の花嫁の結婚式の護衛。花嫁の古巣の組織が祝いに来るのか、別の理由で来るのか、誰にも分からない。 ▸ 正面から片付ける 古巣の組織は本当に祝いに来た。あなたもケーキをひと切れもらった。 (7級 → 6級) ── 38歳 ── [春] ハナ協会から昇級審査の通知が届いた。審査は実戦評価だ。実力が足りなければ、等級が上がる代わりに体に傷が残る。 ▸ 正面から受ける 圧倒的な判定で、二段階を一気に駆け上がった。 (6級 → 4級) [夏] [都市悪夢] 幻想体討伐依頼 · 廃校に「肉の偶像」が居着いた。毎晩鐘が鳴り、近所の子どもたちがひとり、またひとりとその音について行くという通報だ。 ▸ 慎重に処理する 先に鐘を壊した。音を失ったそれは、思ったより弱かった。 [冬] 事務所の郵便受けに、たどたどしい字の手紙が届いている。数か月前の失踪者捜索の依頼で見つけた人の子どもからだ。「パパを連れて帰ってくれてありがとう」 ▸ 壁に貼っておく 血のついたコートの横に手紙が貼られた。仲間たちは何も言わなかったが、誰も剥がさなかった。 ── 39歳 ── [春] [都市の星] 戦争依頼 · 都市悪夢級に指定されたシンジケートの首領を排除せよという依頼。協会と翼が共同で依頼した。首領の拠点は、区ひとつまるごとだ。 ▸ 慎重に処理する 首領は別の区へ逃げおおせた。区ひとつを焼いた代償に、得たものはなかった。 [秋] 市場の路地で、幼なじみとばったり会った。顔はずいぶん変わったが、笑い方は昔のままだ。近くで麺でも一杯どうかと誘われた。 ▸ 麺をすすりながら昔話をする 麺がのびるまで話し込んだ。別れ際に連絡先を交換した。この都市では、それは小さな約束だ。 [冬] 上位等級の審査は、もはや試験ではない。ハナ協会の評価者が依頼の現場に現れ、「仕事のやり方」を見る。事故が起きても介入しない。 ▸ 自分のやり方でやり遂げる 評価者が頷いた。新しい徽章が届いた。 (4級 → 3級) ── 40歳 ── [春] [都市疾病] 幻想体討伐依頼 · 区を横切る川に「絶望の騎士」が棲んでいる。橋を渡る人の影が水面に映ると、影だけが橋を渡りきれないという。 ▸ 慎重に処理する 夜、影のできない時間に橋の下へ降りて仕留めた。 [夏] 長い付き合いの友人が、何の知らせもなく消えた。あちこち聞いて回ったが、誰もが首を横に振った。都市ではよくあることだ。 [冬] 工房から新しい装備の見積書を受け取った。良い武器はフィクサーの命の値段だ。問題は、その命の値段が年収より高いことだ。 ▸ 借金してでも最高級の装備をあつらえる 手に吸いつく感覚からして違った。次の依頼で、その値打ちを発揮した。 ── 41歳 ── [春] [都市悪夢] ねじれ依頼 · 地下の線路にねじれが現れた。列車一両がまるごとそれの体になった。翼は路線を止められないと言い、今夜中に終わらせてほしいという。 ▸ 慎重に処理する 始発の十分前に仕留めた。線路は時刻どおりに再開された。 [夏] 身近な人が三日間帰ってこない。周りに聞いても「よくあることだ」という答えばかり。残された手段はフィクサー事務所だけだ。 ▸ 自ら探しに出る(フィクサーとして) 見つけたが、遅かった。その人をそうした者たちの名前は突き止めた。 [秋] 同じ依頼をめぐって、別の事務所のフィクサーと鉢合わせた。互いに鞘に手をかけたまま目を合わせる。依頼人は遠くから見守っている。 ▸ 依頼を譲る 相手は意外そうな顔で頷いた。依頼料はふいになったが、次の縁が生まれた。 [冬] 都市のあちこちで、人が怪物へと変わる「ねじれ」が報告されている。電光掲示板のニュースは「落ち着いて屋内にとどまってください」と繰り返すばかりだ。誰も原因を知らない。 ── 42歳 ── [春] [都市悪夢] 幻想体討伐依頼 · 裏路地の夜に、掃除屋たちが一区画をまるごと「掃除」しようとしているという情報。その区画に住む人々が金を出し合って依頼してきた。十分だけ持ちこたえてほしいと。 ▸ 正面から片付ける 十分を耐え抜いた。三時十分、掃除屋たちが退いていった。区画の人々は、朝まであなたの名前を呼び続けた。 [秋] ウーフィ協会から人が訪ねてきた。あなたの実績を見たと言い、協会所属のフィクサーとして入らないかという誘いだ。協会は事務所より大きな依頼を受ける。それだけ帰ってこない者も多い。 ▸ 今の場所に残る 協会の人間は「いつでもまた来る」と言って名刺を置いていった。 ── 43歳 ── [春] [都市の星] 幻想体討伐依頼 · 「審判鳥」の生け捕りの依頼。殺さずに生きたまま引き渡せという条件だ。依頼人は名を明かさなかったが、書類の紙質は翼のものだ。 ▸ 慎重に処理する 生け捕りにはしたが、チームの半分がけがをした。 [秋] 思いがけない収入があった。長く連絡の途絶えていた親族の遺産だった。この都市で幸運というものは、ときどきこうして静かにやって来る。 [冬] 上位等級の審査は、もはや試験ではない。ハナ協会の評価者が依頼の現場に現れ、「仕事のやり方」を見る。事故が起きても介入しない。 ▸ 自分のやり方でやり遂げる 最後に呼吸が乱れた。評価者は何も言わずに背を向けた。 ── 44歳 ── [春] [都市の星] 討伐依頼 · 外郭から下りてきた巨大な何かが、区ひとつを踏み荒らしている。三つの翼が共同で懸賞金をかけた。フィクサーの名簿には、すでに特色ふたりの名前が載っている。 ▸ 正面から片付ける 生き延びたが、名簿の半分に線が引かれた。 [冬] 依頼中に負った傷は思ったより深かった。しばらく剣を握れない。治療費と休業が一度にのしかかった。 ── 45歳 ── [夏] ありふれた配達の依頼だった。だが約束の場所に着くと、依頼人の代わりに別の事務所のフィクサーが五人待ち構えている。誰かがあなたの首に懸賞金をかけたのだ。 ▸ 事務所の仲間に合図を送る 仲間たちは遅れた。それでも来てくれた。 [冬] [都市悪夢] 捜索依頼 · 翼の研究所から実験体がひとつ脱走した。依頼書には外見の代わりに番号だけが書かれている。「生け捕り優先。不可能な場合は残骸を回収すること」 ▸ 正面から片付ける 実験体は別の翼の区へ渡ってしまった。その瞬間、依頼は機密に変わった。 ── 46歳 ── [夏] [都市の星] 幻想体討伐依頼 · 都市の星に指定された幻想体「憎しみの女王」の討伐。三つの翼と二つの協会が共同で依頼した。参加フィクサーの名簿に、特色の名がいくつか見える。 ▸ 正面から片付ける とどめを刺したのはあなただった。その日、都市の電光掲示板にあなたの名前が掲げられた。 [秋] 事務所の郵便受けに、たどたどしい字の手紙が届いている。数か月前の失踪者捜索の依頼で見つけた人の子どもからだ。「パパを連れて帰ってくれてありがとう」 ▸ 壁に貼っておく 血のついたコートの横に手紙が貼られた。仲間たちは何も言わなかったが、誰も剥がさなかった。 ── 47歳 ── [春] 同じ事務所で長く背中を預けてきた仲間が、依頼の最中に死んだ。事務所は彼の武器を壁に掛けた。犯人はまだこの区にいる。 ▸ 協会に正式に依頼を出す 数か月後、犯人が捕まったという通知が来た。紙切れ一枚だった。 [冬] [都市悪夢] 組織掃討依頼 · 地下闘技場を閉鎖してほしいという依頼。借金を抱えた者たちが命懸けで戦い、観客席には翼のバッジをつけた者たちの姿も見える。 ▸ 正面から片付ける 闘技場を潰した。檻から出てきた人々が、初めて日の光を見た。 ── 48歳 ── [春] 上位等級の審査は、もはや試験ではない。ハナ協会の評価者が依頼の現場に現れ、「仕事のやり方」を見る。事故が起きても介入しない。 ▸ 自分のやり方でやり遂げる 最後に呼吸が乱れた。評価者は何も言わずに背を向けた。 [秋] 工房から新しい装備の見積書を受け取った。良い武器はフィクサーの命の値段だ。問題は、その命の値段が年収より高いことだ。 ▸ 借金してでも最高級の装備をあつらえる 手に吸いつく感覚からして違った。次の依頼で、その値打ちを発揮した。 [冬] [都市疾病] ねじれ依頼 · ねじれたばかりの人の処理の依頼。もとは区の市場の麺屋の主人だったという。依頼書のいちばん下に、彼の娘がたどたどしい字で書き添えていた。「パパを痛くしないでください」 ▸ 正面から片付ける 最後の瞬間、それがほんの一瞬止まった。剣を収めてから、手が震えた。 ── 49歳 ── [春] 視線事務所が人を募っているという知らせが入った。ひとりで依頼を受ければ報酬は全部自分のものだが、背中を預けられる人がいない。事務所に入れば、依頼も仲間も増える。 ▸ ひとりで働く 自由は高くつくが、まだ持ちこたえられる。 [夏] 同じ依頼をめぐって、別の事務所のフィクサーと鉢合わせた。互いに鞘に手をかけたまま目を合わせる。依頼人は遠くから見守っている。 ▸ 依頼を譲る 相手は意外そうな顔で頷いた。依頼料はふいになったが、次の縁が生まれた。 [秋] 電光掲示板に、ふたつの翼の合併のニュースが流れた。区の看板は一週間で新しいロゴに変わった。変わらなかったのは家賃だけだった。 [冬] [都市の星] 討伐依頼 · 頭が人間と認めない何かを排除せよという依頼が、差出人なしで届いた。断る方法は書かれていない。 ▸ 正面から片付ける それは人間ではなかったが、あなたより強かった。 [冬] 最後の戦いの傷は、ついに癒えなかった。武器は手の届くところに置かれていた。