プールサイドに設置されたソファベッドに体を預けると柔らかなクッションが深く沈み込んで、爽やかで少しベタついた海風が頬を撫でていく。 デッキから見えるサファイアブルーの海は太陽の光を反射し、キラキラと輝いていた。 「ん〜っ…!気持ちいいなぁツカサ…!」 そう言いながら横で伸びているのは、俺のパートナーのメルヴァモン。 彼女は水着を着て、パラソルの影の外で全身に日光を浴びている。 俺たちは今、洋上をゆったりと航行するクルーズ船にいた。 件の怪しい招待状でここに転送されてから一週間。 最初こそは警戒していたものの、飯は美味い、酒も好きに呑める(メルヴァモンが)、遊ぶにも困らない上に部屋は広くてルームサービスも充実と、あまりにも快適が過ぎると流石に気も抜けてくる。 「お前、飽きないのか?」 最初こそは毎日違った娯楽を楽しんだが、長くいるとだんだんとやることが同じになっていく。 メルヴァモンはこんな感じで、ここ数日は日光浴ばかりしている。 「いや〜、やっぱり熱帯の太陽は違うなーって!」 彼女はいつもよりもかなり調子が良さそうな様子で答えた。 「そんな違う?」 確かに日本にいる時よりも日差しが強い気はするが、そんなに差のあるものだろうか? 「うーん…なんて言うか…当たってるとエネルギーが満たされていくって感じがするんだ。多分、アタシが爬虫類系のデータ持ってるからだな」 「あー…モデルの影響をある程度受けたりするってのは聞いたことあるな」 捕食者のデータを持って生まれたデジモンが余剰殺戮を起こしたり、恐竜系のデジモンがインセキモンや隕石系の技を扱うデジモンを過剰に恐れることがあるなんて話を神月教授がしていたが、こう言うパターンもあるのか。 …というか、エネルギーが満たされていると言うのは多分事実だ。ここ数日メルヴァモンがやたらと強い上に積極的で、押し倒されたらいつもと違って全く抵抗できない。 「ツカサはしないのか?日光浴。」 「日焼けすると痛いからな…」 「日焼けかぁ…アタシはしないからな〜」 言われてみれば、メルヴァモンはこれだけ日に当たっていても焼ける様子はない。 「デジモンだから?」 「うん。テクスチャを変えれば日焼けっぽくなるけどな。」 そう言ってから、彼女は付け加える様に耳元で囁く。 「そっちの方がツカサの好みなら、変えてもいいぞ?」 彼女の細い瞳孔が、いつもよりも広がっている。興奮している時、戦う時に彼女の眼はこうなるのだ。 小麦色に焼けたメルヴァモンの姿を思い浮かべてみると、これはこれで魅力的…。 どう答えようかと考えたその時、船が大きく揺れると共に、なにか軋む様な音が響く。 「ようやく敵か」 この事態に、それほどは驚かなかった。 どうせこんな怪しい招待だ、裏があるに決まっている。 「日光浴ばっかりじゃ体が鈍るって思ってたところだ!」 俺たちは最初からこのつもりでここに来ていた。 「海中と空の敵が多そうだな…サンドリモン、船内の様子は?」 『使い魔たちによれば…内部の敵はそれほど多くなさそうだね。むしろ船内は混乱の方が重大だよ。』 「わかった、お前は使い魔を回収次第クロスローダーへ戻れ。」 『二人はどうするのかな?』 「もちろん戦うさ。ね、ツカサ?」 「ああ。ラプターメルヴァモンにデジクロスだ!」 俺たちは船の外へと飛び立つ。戦いを求めて。