星皇アインス=ドナーの左腕から稲光が奔流のように流れ出、霹靂魔王ゲヴィッターヴォルケに向って進む。 ゲヴィッターヴォルケはそれを受け止めると背中のコイル状のパーツからアーク放電してそれを大気へと流す。 対してゲヴィッターヴォルケは人差し指を立てた右手を天に掲げると、アインスに向けて降り下ろす。すると頭上に渦巻く暗雲から稲妻が落ちてくる。 アインスは電撃で生み出した磁場を用いてバリヤーを作りそれを受け流す…。 その光景はまさに雷神と雷神の争い。ドクトル・パンドラは星骸炉の陰で聖魔法由来の防御障壁の中で怯えながら見ている。 自分のちゃちな障壁などこの雷撃が流れ弾となれば一たまりもないだろう。 神よ救いあれ…、捨てたはずの信仰にすがることしか今の自分にはできないのだ。 膠着状態にしびれを切らしたのかアインスの脳内にラーヴァが話しかけてくる。 「(あなたさぁ、自分が得意だからってのは解るけど、同じ属性のやつに電撃仕掛けても大して効かないって思いつかない?)」 「そうか…そういえば全ての属性を使えるんだったな。つい自分の手癖で電撃をやってしまう…」 アインスが左腕を構えると炎の渦がゲヴィッターヴォルケに向って吐き出される。 さらにつむじ風が熱を逃がさぬよう彼の周囲を囲って巻き込み、高炉のように効率的にその金属製と思わしきボディを溶かしに行く。 ドロドロに溶け落ちたゲヴィッターヴォルケが膝を落して崩れ落ちる。殺ったか…、アインスが安堵の息をついた瞬間の事であった。 上空の暗雲から一条の雷光がゲヴィッターヴォルケに流れ落ちる。 すると溶け落ちた金属製の体がまるで液体のような流体へと変わり、それらは元通りに体を再構築したのだった。 『なかなか良い攻撃でしたよ。さぁどんどんお見舞いしなさい。星皇よ、あなたの全力を私が測ってあげましょう。バルロスの種火に足るかどうかのね…』 「ならば次はこいつだ!」 アインスは左腕を掲げるとその掌に光が収束する。凝縮されたまばゆい光は矢となって敵の胴体を撃ち抜く。 ゲヴィッターヴォルケは穴だらけになり仰向けに倒れ込む、すると暗雲から再び雷光が落ちると体が再構築されていく。 一体こいつには何が効くんだ…? 突破口の見えない堂々巡りにアインスは焦りを感じ始めるのだった…。    *   *   *   *   * 「にょっわ~☆ スヮリ~んラリアット!」 スヮリゲーターの左腕が牛型獣人の喉元を捉えて吹き飛ばす。 首の骨がへし折れたようだが、合成獣人特有の高い回復力で復元される。 1対10というハンデ戦の状況のため、レスラーの真骨頂であるはずの投げ技や極め技が出しにくく。 病み上がりのためなのか、打撃技も的確にヒットはしているが致命傷まで与えるにはまだ足りない。 すると3体の合成獣人が示し合わせたかのようにスヮリゲーターへとのしかかる。 一体がタックルをしたのを皮切りにもう2体は両腕を捕らえ拘束しようとする。 その状況を見て指揮役の立場にあるカイモス=カルディウス准尉が、傍らにいた豹型獣人にメトリとフリッツ博士の始末を命じる。 メトリは右腕をマシンガンに変形させ迎撃するもストッピングパワーは足りず、豹型獣人は手の届く距離へと近づいてくる。 右腕を振るい上げその爪でメトリを引き裂こうとした瞬間であった、飛んできた包帯のような細長い布が獣人の腕に絡みつく。 その布切れを引き剝がそうとする左腕そして顔面にも同様に別の細長い布が絡みつくと、完全に獣人の動きを封じた。 動きの封じられた豹型獣人がもがこうとした時、獣人の胴体が左肩から右腰にかけて袈裟切りで両断される。 直立したまま残る獣人の下半身の向こうに二人の人間の姿が見える。一人は包帯のような布で獣人を拘束させた棺桶を担ぐ仏頂面の男。 もう一人はこの場に似合わないメイドの制服を身に纏った目つきの悪い少女である。外見に似合わぬ無骨な大鎌を振るい獣人を両断したのは彼女であった。 突然の乱入者に戸惑いで敵味方問わず一瞬フリーズされる。 戦い慣れているスヮリゲーターはその隙を見計らい3体の拘束を振り切ると、自身の腰にしがみつく一体を抱えてパワーボムを決める。 そのまま両腕を伸ばし体を回転させダブルラリアットで両サイドの二体を弾き飛ばすと、その内の一体をフロントネックロックに捕らえ垂直落下式のDDTで脳天をかち割る。 さらに逃げ出そうとした最後の一体はごん太の尻尾を振り回す得意技“ドラゴンテールボンバー”で後頭部を砕いたのだった。 スヮリゲーターは一気に3体を仕留めると体が温まったのか、合成獣人たちの群れに突入しちぎっては投げちぎっては投げの大立ち回りを見せる。 するとメイド姿の少女も負けじと大鎌を振るい獣人の首を刈る。 その10分程後、敵合成獣人は全て沈黙。こそこそと逃げ出そうとしたカイモスは仏頂面の男の破魔布によって絡め取られ、そのまま捕虜となった。 「遅かったなお前ら」 いつものように沈着冷静な態度のメトリではあったが、口調の端々に若干のイラつきが見える。 「何よ、ピンチの場面に間に合ったからいいじゃない」 メイド姿の少女ハナコが悪びれず返す。 「すまない遅れたのは俺のせいだ。ボーリャックの奴を見かけたという情報が入って来てな、探すのについ深入りしちまった…」 仏頂面の男サーヴァイン=ヴァーズギルトが面目無さそうに頭を下げる。 「ほらね、ギルのやつがさぁ…」 ハナコがそう話を切り上げようとした時、メトリが会話を遮って口を挟む。 「私はお前に言ってるんだよアズライール…」 「私は言ったよな…、火急のピンチだからとにかく早く来いと。ギルには私の方から連絡をつけておくと。なのにお前は何故ギルと一緒に来る? せめてお前だけでも前日までに来ていれば、こんな風に襲われずに済んだんだよ…」 クールなメトリから発せられる思わぬ圧にハナコは目を反らす。 すると彼女の視界にさきほどまで一緒に戦っていた巨体の獣人の姿が入る。この場をとにかく逃れようとハナコはスヮリゲーターに声をかけた。 「あっ、あ~アナタ凄く強いのね~。メトリと一緒に戦ってくれたんだってぇ~、ありがとぉ~」 「にょわ☆そんなことないにぃ☆ メトリちゃんもお爺ちゃんもスヮリのだ~いじな仲間だから無事でいてはっぴはっぴだにぃ☆」 見た目からは予想できない朗らかな人柄にハナコの表情もつい緩む。 「アナタ普段はどこで何をやっているの?よかったらうちの国に来ない。レンハート王家メイド隊は獣人も魔族もモンスターも大歓迎よ!」 「にょわ☆?」 メトリは轟音と雷音が鳴り響くグラウンド666方向を見ている。彼女に向ってハナコが問いかける。 「あそこで一体何が起ってるの? それにスナイプの奴はどこ行ったの?」 メトリはグラウンド666方向に指を差しながら言う。 「スナイプの奴はあそこにいる。そこでは今世界が終わるかもしれない戦いが行われている。もちろん奴一人ではない、命知らずの大バカどもが体を張って阻止しようとしている」 「アズライールにギル、お前ら二人英雄になり損ねたかもしれんぞ…」    *   *   *   *   * 「これで条件は互角だね!さぁ沢山殺し合おうじゃないか! 君の血を!力を!全て吸い取って僕はもっと強くなるよ!」 人造勇者拾弐號ツヴォルフ=ドラシーナの血と能力を吸収して、自らを巨竜の姿へと変貌させた人造勇者陸號ザット上等兵。 翼を羽ばたかせ上空にいる白い巨竜のがーすけと距離を取って対峙する。 『身の程知らずがもう一匹現れたか…良かろう…』 相手になってやるとがーすけが啖呵を切ろうとした時に、脳内でライトが待ったをかける。 「(奴とは真っ正面から相手してはダメだ、どんなに傷つこうとも真っ先に君へと突っ込んでくるつもりだ。あの親指に生えている形の違う爪は恐らく試作聖剣だと思う。奴の狙いは君の血だ、とにかく一滴でもいいから剣に吸わせれば君の力をモノにできる…)」 『距離を取ってブレスと斬撃を飛ばすという手もあるが、我が友には何か策はあるのか?』 「(まずは人間サイズに小さくなる。後はスピードで攪乱する。もちろん倒す方法もちゃんと考えてはある…)」 『なるほど、飛び回る小さな羽虫を捕らえるのは難しいというやつか。良かろう任せたぞ我が友よ』 がーすけはそう言い残すと姿が人間に戻る。その様子を見て陸號は拍子抜けした言葉遣いとなる。 「はぁ?!せっかくの大怪獣バトル楽しみにしてたのにさぁ。弱っちい人間に戻っちゃうの?やっぱ君、空気読めないって言われるでしょ。つまらないから秒で終わらせてあげるよ…」 陸號の挑発もライトは気にも留めず流すように答える。 「君みたいな他人の力頼りの三下が、僕の友達の力を奪おうだなんて100万光年早いんだよ。宣言するよ!君はこの小さくて弱っちい人間にこれから敗北する」 「(もっとも他人の力頼りってのは、僕も人の事言えないけどね…)」 (続く)