「ちょっ……ファヨンさ……」 「背中、流してあげようかなって」 自分が居るにも関わらず、さも当然のようにバスタオル一枚で浴室へとズカズカと入ってきたファヨンに、勇太は動揺と何も画していない恥ずかしさからすぐバスチェアから立ち上がろうとするも、ファヨンに想像以上に強い力で肩を抑えられる。 浴室の温かなものとは違う火で直接焼かれるような熱が起き、全身を駆け巡る。視線を後ろのファヨンへ向けないよう顔を俯けると、後ろから首へと回った手が視界に入り、訳があって今は世話になっている女性が後ろに居るという事実を再認識すると、脳から足先に至る全てに、熱が慌ただしく巡り始めたのを感じた。 「ピョナゲ イッソ」 ファヨンが高くイタズラな声音で話すと、タオルにボディソープを染み込ませ、勇太の背に触れる。 少し硬く刺激のあるナイロンであろう感触。家や銭湯で毎日感じた、デジタルワールドに来てからは久方の感触に微かに熱を堪えようと強張らせた体が、微かに緩んだ。 「……動き回るしかなかったうちに、自然とこうなった。って感じの体かな。 アタシが思ったよりずっと逞しいね、勇太君」 「えっ、あ……ありが……うわっ!!」 先程のイタズラなものとは違う少し低くしたファヨンの声に、勇太は驚きと不意に浮き出た嬉しさから声を漏らすと同時に自然と振り向きかけ、慌てて目線を床に落とし直す。 「君一人の力じゃなくても、身体がこうなるまで動いてきたのは、自信を持っていいと思うの」 優しく自分を褒める言葉と背中にあたる掌の感触に、体の強張りがまた一つ緩んだ勇太は頭を上げ、気恥ずかしいまま口を開こうとした。 「あの、そう、言ってくれて嬉しいんですが、やっぱりこういうの……」 「あれ、嫌いだった?」 言葉が終わる前にファヨンが触れていた手をスッと離すと、消えた感触から急に梯子を外されたように呆然とした勇太は、生まれてしまったほんの微かな未練に、続けるはずの拒絶の言葉を吐き出せず、また俯いた。 「……そうじゃ、ないんです。でも」 「なら今日だけちょっとだけいいことがあった日にしちゃいなよ。 アタシ、そんなに悪い見た目じゃないでしょ?」 歯切れ悪く話す勇太にファヨンは早口で返し、肩に手を置く。 その手の感触が、勇太にまた浮かれた熱を起こし思考に割り込む。それから返す言葉に悩み沈黙した勇太の背にまたナイロンの感触が戻り、丸めていた背がピンと張った。 「ミアーン……黙ってるから良いと思っちゃった」 ファヨンは苦笑と共に、彼女からたまに聞く……恐らく謝罪であろう言葉に、勇太は出かけた声を喉奥に押し込めた。 「本当にイヤなら、手を振り払っていいからね」 「……あの、それ、なら」 「いいよ勿論。手を払い除けられても、お姉ちゃんは勇太君のこと、嫌いにならないから」 勇太がこの家に来た初日、過去のトラウマで刃物を持てずに固まり、何とか刃物を離してもらおうとファヨンに掛けたものと同じ言葉。まるで舗装された逃げ道を目の前に敷かれたかのように、勇太は張り詰めた緊張が緩みだす。 温かな浴室、背中の擦れる心地よさ、かけられる褒め言葉。そして敷かれた逃げ道。湯気にすら甘みがあるかのような密室で、勇太は熱が巡り続ける自分の男の性を抑えようと意識を保ちながら、命に関わるものとは違う微かな畏れを感じた。 何が危なく怖いかも、脳から男の性にまで激しく巡る熱に阻まれ言葉に出来ない。それでも手を払うのではなく言わねばと思い、息を吸った勇太は自分から背を伸ばした。 「えっと、ファヨンさ……ん……?」 その瞬間、背に柔らかな感触が押し付けられた。 「はぁ!?ファヨンさん!?何してます!?」 「え?どうしたの?」 素に声のファヨンに。勇太は彼女のどうも抜けた所を思い出し、この家に自分を招かざるを得なかった初日、自分がいることを忘れブラジャーごと脱ぎ捨てたことを思い出し、記憶から掻き消したはずの彼女の型の良い胸を続けて思い出す。 まだ背中に続く感触から生み出された熱に、思考が乱れそうになる。いつの間にか視界の片隅に入った肌の色と暗い緑の髪に、勇太は視線がファヨンの居る背後へ向きかけたことに気づき、急いで立ち上がろうと決心し、足に力を入れようとした。 「ねぇ、勇太君」 それからファヨンは間髪入れずに、荒めの吐息と共に耳元で囁いた。 「さっきからから俯いてるけど、具合が悪いわけじゃないでしょ?」 妙に甘く、見透かしたような囁き。だがその声には仄暗く、有無を言わせない何かが貼り付いているようだった。 背中の、ファヨンの乳房の感触が動く。勇太はその瞬間に顔が熱を持ち、男の性がはっきりと浮き出されそうになる。 陰茎に、熱を感じた。それでも理性がはっきりと言語化出来ない恐れに力任せに警鐘を鳴らし、勇太はそれに従って急いで立ち上がろうとした。 「あの、俺もう「ヤダ」 拒絶の言葉を即座に遮り、ファヨンは勇太に体を密着させ、背中から胸に腕を回した。 「それなら一緒に出ようよ」 それから柔らかな感触が、背中で滑るように上下し始めた。 「気持ちいいでしょ?アタシ、そこまでスタイルも悪くないし」 ファヨンの甘い声と泡で滑らかに動く乳房の柔らかな気持ちよさに、勇太は声も出せず、浴室の温かさと湿度からくるものとは違う汗が滲む。 足に力が入らない。やめてくださいの一言が出ない。理性の警鐘は、背から伝わる心地よさから芽生えた本能にか少しずつかき消され、はっきりと陰茎が隆起したのを感じた。 熱を堪え切れなかった羞恥が皮膚と臓器を包み込む。それでも勇太は押し殺し切れない高い声を漏らしながら、股へと手を伸ばし隠そうとした。 「いいよ。隠さなくて」 再び聞こえた、甘い声。そして後ろから自分を抱き寄せていた手がそれを阻み、もう片手が陰茎へと伸びていく。 「や、め……そこ、は……」 「大丈夫よ。お姉ちゃんはそのくらいで君を嫌いにならないから。 むしろ反応してくれるの、嬉しいくらい」 そしてファヨンの指が、勇太の陰茎に軽く触れ。それからすぐ未熟ながらも雄を示してしまった陰茎はその指で抓まれた。 指が上下する度に包皮が降り亀頭が見え、根本から先端へと心地よいものが詰まりながら登っていく。隆起は更に強まり硬くなると勇太は思わず声が漏れかけたのを歯を噛み、背にも未だに続く快楽を体を振るって振り払おうとするも、回された手がそれを阻む。 「っ……やっぱり逞しいね、素敵だよ勇太君」 ファヨンの蕩けた声と共に、陰茎は軽く手で包まれる。未だに続く背への柔らかな感触と陰茎に込み上げる気持ちよさが浴室に強い湿気を纏わせる。 彼女の行為から発された粘性の甘みが、勇太の脳へと掌で直接触れられるように微かに理性と恐怖心を残すように、塗り潰していく。 そして理性だけでは堪えられない性の反応により、陰茎の根本に何かが押し寄せる。このままそれに、任せてはいけない。それだけを思った勇太は、涙目となったまま必死に声を振り絞った。   「やめっ……出……」 「そっか。やめるね」 振り絞った勇太の声に対し、ファヨンはいきなり感情の薄い声であっさりと手を止める。 あまりにも唐突な心地よさからの開放に、勇太はそれまでの甘みが苦味へと変わり、安心感よりも突き落とされたような喪失感で言葉も出せずに動揺で口を半開きにしたまま、自制心すら忘れてゆっくりと後ろに振り向いた。 「あ。勇太君やっと顔見せてくれた。 ごめん、意地悪したくなっちゃった」 バスタオルを外し、胸と体に幾らかの泡をつけた一糸纏わず笑うファヨンの姿に、陰茎の隆起はまだ収まらず、ファヨンの視線が、そこに落ちた。 勇太は再び目覚めた気恥ずかしさからそれを手で隠すと、彼女は風呂桶で湯をすくい、勇太に掛けた。 「まぁ、でも。ここであれ以上続けたら、身体冷やしちゃうもんね」 「……あの、俺はもう上がります」 湯の暖かさが理性を引き戻し、再び警鐘を鳴らす。だが今度は、この心地よさの先を勇太は想起するとすぐに許されない期待と断じさせ、シャワーに手を伸ばす。 後はもう出ていって、夢にでもしてしまえ。それで終わりだ。そう続けて考えた瞬間に「だからさ」とファヨン耳元で囁くと、勇太は再び抱いてしまった期待に、身体を硬直させた。 「この続きは温まったら、ね?」 全身を巡っていた甘い熱は身体を打ち破る勢いで脳天まで突き抜けると、それに当てられた血が煮えたぎりながら勇太の陰茎に雪崩込み、一際強く隆起させた。