けして彼女は小柄な方ではなかったが、その身体はやすやすと宙に浮いた。 そして大股開きの体勢で尻を地面に向け、体重を後ろに預けるようにもたれかかっている。 幼子が大人に用を足すのを手伝ってもらうときのような、いっそ恥ずかしい様子―― けれどその剥き出しになった股間には、出るどころか逆に突き立てられている。 地球人種の成年に達した雌としては長身の彼女を、なお子供扱いできるような巨躯のものを。 女は自分を軽々と抱えるその肩に、気遣うようにそっと手を回した。 そしてもう一方の手をまた同じように回そうとしたが、そちらは手首を優しく掴まれている。 視線は不安げに、みっちりと埋められている――咥え込んでいる己の性器に注がれていた。 それはちょうど、恋人同士が初夜を迎えたときの、自分のものは変ではないだろうか、 そんな視線に似ているのだった。緊張によって心拍はゆるゆると上がり、 酸素を取り込むために、胸郭が盛り上がるのにつれて、大きな乳房もたぷん、たぷんと揺れる。 その乳首もまた、後ろから回った手によって硬さをほぐすためにころころと転がされ、 乳房もお手玉のように、掌の中に弄ばれている。時折、びくりと小さく震えるのは、 持ち主自身がほとんど育てて来なかったそれらの性感が、刺激によって目覚めたためであった。 反射的に息をついた唇をなぞるように、顔の横――顎側から、指がすっと伸びる。 その気遣いに、視線をずっと下げていた彼女は、顔を少し上げるのだった。 身体の強張りはゆっくりと解けていく。するとその隙間に、性器はずぶずぶ沈んでいく。 生娘に男を教える手管としては悪くない――そこまで無垢な女ではないとはいえ。 身体ごと上下にゆさゆさと揺さぶられ、全身を刺激されていくうちに、 女の喉からは自然と、普段の彼女からは想像夜できない甘い声が漏れるのである。 艶めいた、熱の籠もった声は――銀河中を探しても、たった一人にしか聞くことはできまい。 薄っすらと目端に涙の浮いた、その色気ときたら。賞金稼ぎ、という仕事柄、 恨みを買い――憎まれこそすれ、生まれつきの美貌が十全に活用できた日はまだない。 ずっと鎧の内側に閉じ込めてきた女としての部分を、彼女は自分の意思で差し出していた。 伸ばされた舌に自ら唇を尖らせて甘え、口中に差し込まれた赤い蛞蝓に己の蛞蝓を絡めた。 ねちゃねちゃと、粘り気のある水の音は――次第に、両方の口から聞こえるようになった。 彼女は与えられる刺激を甘受しさえすればよかった。それで全てが満たされていた。 女として、求められ――乳房を、性器を、唇を用いて相手を悦ばせること。 それが次第に、自分の存在意義そのものであるかのようにも感じ始めていた。 そして最後には、己の最も神聖なる箇所――子を生すための箇所へと、 彼を導き、受け入れることこそが、使命であるとも思い始めていた。 それまでの、銀河の平和や安定のための小さな仕事など――取るに足らないことである、と。 持ち上げられたままの彼女は、自ら地に足をつくこともなく、奥へ奥へと運ばれていく。 しぃんと静まりきった四方の冷たい壁は、場所の感覚さえもゆっくりと剥ぎ取ってしまう。 どこに連れていかれるのだろう――と、理性が再び頭をもたげようとすると、 乳房を少しく強めに揉まれたり、性器を強く擦り上げられたり、舌を吸われたりする。 そのたびに頭がぼうっとして、そっちに意識を向けなければいけないような気がして、 いろんなことが面倒になって、結局、また頭がぼうっとするのに任せる。 もはや彼女は、自ら脱ぎ捨てた鎧――鳥人族から託された英雄の証のことも、 その内側に纏っていた青い肌着も、護身用の銃も、遥か後方に放り出し、忘れてしまっている。 透き通るような白い肌、流れるような金色の髪、吸い込まれそうな碧い瞳―― それらだけを持って、ただこの先の、どことも知れぬ愛の巣へと連れ去られていくのだ。 “彼”に出会った途端――彼女は自分が何のためにこの惑星に降りて、探索を始めたかを忘れた。 否、彼、という表現も、脚と脚の間から突き出る一本の突起の存在により推定されるだけだ。 大枠では、人型と言ってよかろう。だがその輪郭は常に忙しなく歪んでいる。 剥き出しになった筋肉や、それを包む病的に白い皮が、ごちゃごちゃと絡み合った触手の塊。 それらが人の形を取り、何本もの“腕”を形成してはいるものの、それは酷く冒涜的であった。 宇宙船の中で、繰り返し見た夢。蠢く影の前にひれ伏し、身体を貪られる悪夢。 単なる疲労、向けられる下衆な視線への不快感が生んだ幻想――そう考えるには、 不定の肉塊は、常に同じような姿だった。そこに、かつての友人、上司、仲間―― そんな男たちの顔がちらついて見えるのが、不愉快であり不可解だった。 地球人種に限らず――男、というものへの嫌悪感がその夢を紡いでいるのであろうか。 あるいは深層心理に、そのようなものへの恐怖が刻まれ――湧き上がってきているだけなのか。 夢の中の光景は、いつも似たような人気のない廃墟、あちこちの瓦礫の崩れた神殿。 そこから、“それ”は手招きしている――そんな風に、彼女は思い始めた。 見たくもない夢は、目覚めを悪くする。身体がじんわりと重く、苛立ちが募る。 どうにかして、その夢の根源を探らねぱならぬと思った――人が聞けば笑うだろうか? それでも彼女は銀河最強とまで言われた賞金稼ぎとしての伝手を辿って、そこに着いた。 夢の中と同じ光景の、夢の中と同じ、醜く歪んだ、肉と皮の塊のような人型―― だが夢と違うのは、彼女が“彼”に出会った瞬間、自らその武装を解除したことである。 成人女性を持ち上げるのは当然、片手では不可能なこと。それと同時に手首を掴み、 顎に手を伸ばし、両乳房を揉むなど――二本しか腕のない地球人種には到底不可能である。 なのに彼女は、同種の、気心の知れた異性にそうするように身体を擦り付けて甘え、 自分というものを、彼に差し出すことに何の抵抗も覚えなかった。 自分は彼の妻となるためにここに来て――いや、そのために生まれてきたのだ。 ならば当然、彼の子を宿さねばならぬ。それはどれだけの幸福をもたらすことだろう。 彼というこの星の最後の一人の血を絶やさぬために――自分にできることを、したい。 きゅん、きゅん、と役目を自覚した子宮が疼く。とろとろと、雌臭い蜜が垂れて止まらぬ。 乳腺もじんわりと張るように熱く、気の早すぎる乳汁の巡るのが感じられる。 急速に、彼への思慕が心のあらゆるところを埋めていく――残った箇所は、我が子に向けて。 好き――と、自然に口からこぼれる。名前も知らぬ種族、名前も知らぬ星の生き残りへ。 自分の心身が、彼からの暗示によって塗り潰されていっていることを理解する判断力を失い、 繁殖のための肉穴に見初められた彼女は、全身全霊で孕み、産みにいこうとする。 膣襞はひくつき、咥え込んだ彼を離さない――一滴をも、無駄にすまいと。 どぽり、と跳ね上がった熱の塊――それは、彼女の魂を融かす。 ちょうど着いた彼の寝室――おあつらえ向きに二人分の幅のある寝具の上に、 花嫁はぽん、と放り投げられた。自然、離れあった結合部からは粘っこい精が垂れ落ちる。 彼の性器が引き抜かれるのを、口惜しそうに目で追おうとして彼女が起き上がろうとすると、 それをまた寝床に押し倒すようにして、巨躯は尻たぶをがっちり握り込み――両手首を掴んで、 本気の種付けのための――子を孕ませるための抽挿を始めるのであった。 すっかり色素の沈着しきった陰唇を押し広げながら、何十番目かの赤子が這い出てくる。 先に産まれた三つ子のうち二人は、既にその三対の腕を使って母の身体をよじ登り、 やはり真っ黒になって――多くの兄姉を肥え太らせてきた乳首から母乳を啜っていた。 遅れた三人目には、無論与えられる乳房はない――じたばたと、産声と共に喚き散らす。 その声を聞くと、完全に母体として最適化された彼女の身体は、母乳の生産量を引き上げて、 あわや赤子を溺れさせんばかりに噴き出し――ようやっと、先客の腹を満たしてやる。 自分の番が来た三つ子の三人目、雌の個体は――母親譲りのつん、とした鼻を乳房に向け、 吸われ残した分の母乳を吸い始める。その分を出しても、まだ、止まりはしない。 父親のように、肉の塊のような細長い何本もの腕を生やしながら、胴は母親譲り、 顔も地球人種の面影を残し――金色の頭髪と、碧い虹彩を持った、混血の個体たちは、 十歳を数えずして、既にこの廃墟から巣立ち始めているものまでいた。 同じように主を失って放置された他の遺跡を探索し、そこの新たな主として、 父が母をそうして連れてきたように、外宇宙に向けて念波を飛ばし、暗示を刷り込むのである。 灯に引き寄せられる虫めいて――ふらふらと、宇宙中から雌雄が集まってくる。 そしてその異形の中の美しさに囚われて、己の身体を差し出し――血を混ぜる。 四半世紀のうちには、彼らの個体数は百には収まらぬ数にまでなっていた。 外の遺伝子を受け入れたとして――滅び、消えていくよりはずっとましだ。 その判断をした偉大な王は、伴侶と共に、再興の祖として名を語られていくのであった。