とんとん　とんとん
調理場には野菜を切る音が響くし…
私はこの音が結構好きだし…料理はまったく別の食材を組み合わせる芸術と言っていいし…
玉ねぎは薄切りに、にんじんは千切りに、ピーマンは種を取ってから千切りにするし…
ちょっとだけにんじんを一掴みして味見をするし…甘いし…
そして別の場所で水浴びさせているチビたちを取り出すし…自分から身を綺麗にしてくれるんだから楽なもんだし…

「ほら、チビたち…ここに入ってお野菜でも食べるし…」
「ｷｭｰ？ｷｭｰｷｭｰ♪」
「ﾀﾇｰ♪…ｷﾞｭｴ…」

ボウルに切った野菜とチビを入れておくし…
ムフフ…ちびたちは小さいお口で野菜を食べようと悪戦苦闘だし…
元々食べる力が弱いチビには硬い野菜や苦い野菜は食べづらいし…
にんじんがギリギリぐらいなもので玉ねぎやピーマンは苦すぎてキューキュー鳴いてるし…
好き嫌いしてたら大きくなれないし…まぁここから大きくなることもないんだけどなし…
チビに入ったボウルに薄力粉をまぶして別のボウルで作った衣となる片栗粉の液体を混ぜていくし…

「ｷｭｰ？ｷﾞｭｰｷﾞｭｰ！」
「ｺﾞﾎﾞｫ…ｷﾞｭｰ……」
「ﾀﾞﾇｰ！」

一丁前にチビたちは文句言ってるし…
まぁ野菜食ってる最中に空からべとべとする液体落ちたらそりゃ言うだろうし…尻尾も濡れたし…
そんだけ生きのいいチビならさぞかし良い味を出してくれるはずだし…
そのまま野菜とチビたちをお玉で救い上げて油で揚げていくし…数匹纏めての大きなサイズだし…

「ｷﾞｭﾎﾞｱｧｱｱ！！！ｷﾞｭｰ！！ｷﾞｭｰｰ！！！」
「ｷﾞｭﾋﾞｨｨ！！！ﾀﾞﾇｰ！ｷﾞｭﾎﾞｱﾎﾞｱｱ！！！」
「ﾋﾞｨｨ！！ｷﾞｭｳｩｩｩｱｱｱ！！！ﾀﾞﾇｰ！！ﾀﾞﾇｰﾀﾞﾇｰ！！」

ジタバタする事もできない高温で揚げられてるから声を出すしかないし…
チビの断末魔をアクセントにサッと揚げたら子たぬきのかき揚げの完成だし…
しかしここで更にひと手間加えるし…炊き立ての白米を用意して丼ぶりに白米とさっきのかき揚げを乗せて更に特製タレでトッピング…
子たぬきかき揚げ丼の完成だし…！

「ムフ…！これは…美味しいし…！サクサクの衣の中にチビのモチモチ感があってハマるし…！」
「ｷﾞｭ……ﾀﾞﾇｯ！？………」

揚げた程度じゃチビも中々死なないから噛んだ時の食感に少しチビが動くのが良いアクセントだし…
揚げたてのかき揚げと白米も合わさって気づけばすぐに食べ終えてしまったし…
ごちそうさまだし……

「ふぅ……これは売れるし…」

実はさっきのかき揚げはコンビニTANUKIの新発売になるかき揚げ丼だし…
子たぬき揚げから子たぬきを使った揚げ物需要が増えてるし…揚げ物は大概美味しくなるからハズレがないし…
しかし食べ終えたらいい加減に次の新商品開発を考えないといけないし…
でもこれどうするか凄い頭悩ますし…

「たぬきの蛹…どうしろとし…」

食材の一角にドンと置かれた虫の蛹のようなものがいくつもあるし…
たぬきは幼体から大人になるのは色々とあるし…
私は至って普通に成長して大人になれたたぬきだし…営業の同僚は脱皮を繰り返して大きくなったたぬきだし…
でも中には複数のチビが重なって蛹になるのもあるし…
チビがチビだけで野生の世界でも生き残れるようにあえて複数のチビが一つになって大人になるわけだし…
だから都会だとそんなに見かけないし…なんかビクンビクン動いてキモいし…

「上も無理言うし…こんなのどう扱っても食おうとしないし…」

料理を食べるならその材料となったモノを知ろうとする人は少ないし…
いくら肉料理が好きでもわざわざ屠殺場を知ろうとしないし知っても食えなくなるリスクがあるからだし…
ましてや虫料理だって虫ってだけでダメな人も多いし…
仮にこの蛹で美味しい料理を作れたとしても蛹という情報だけでアウトな人もいるはずだし…

「とりあえず…焼くのと煮るのを試してみるし…」

まぁ案外食べてみると美味しければ掌返しするのも人だし…
手始めにフライパンと鍋を用意してオードソックスに焼くのと煮るのを試してみるし…
ビクンビクンと激しすぎてやっぱキモいし…見た目の絵面が最悪すぎるし…
これがチビのまんまならジタバタするだけでまだ可愛げがあるし…

「むっ…ギュエ……にっがいし…」

まずは蛹の皮の部分を食べるとさっき食べたかき揚げ丼を吐き出しそうになる苦さだったし…
見た目がたぬきではなく蛹になることで人からももどきからも…それこそ野生の動物からも逃れるための防衛機能は伊達じゃないし…
見た目もさることながら味も食べるのに適さない苦さだったし…

「中身は…うーん…」

焼いてるほうは悪くはないし…ちびを複数固めて焼いたような感じだし…
煮てるほうは中身はドロドロとしてスープみたいなもんだし…
ただどっちもわざわざ蛹として食う必要性を感じないし…味だけならそのままチビを食ったほうが早いし…

「ん…？そういえばこの蛹もチビと同じ味を引き継いでるし…？」

一応蛹の元になったチビの出生ごとの記録はあるはずだし…
さっき焼いた蛹の中身はカレー粉のチビだったようだし…確かにほんのりカレー味を感じるし…
ただ蛹から大人になってる最中だからか出生元の味も弱くなってるし…つまりこれ自体は味付けみたいなもんだし…

「そうだし…中身のドロドロ自体を繋ぎに使うし…」

使うのはさっき焼いたカレー粉産まれの別の蛹と果実生まれの蛹だし…
それぞれ中身を取り出して別々のボウルに入れると卵と牛乳も少し足してひたすらかき混ぜるし…
ダマが少し残る程度でかき混ぜたらそれぞれ別の熱したフライパンに投入するし…
あとは弱火で3分、裏返して更に2分を弱火で焼いて火を通すし…
ムフフ…この裏返しの技術はたぬきでも中々できるのがいない自慢の技だし…
そして焼いていて気付いたし…
中身がドロドロになってもフライパンの熱から逃げるようにピクピクと動いていたし…
この卵と牛乳に混ぜられた状態でももがいて生きようとする、生きている姿に思わず感動したし…

そんなこんなでふわふわのホットケーキの完成だし…
さっそく味見をしてみると…これは凄いし…！
ホットケーキを食べた時の後味にかすかに残ったカレーを感じるし…
甘いのにスパイスを感じさせてそれが違和感のない最高の繋ぎの食材…これがたぬきの蛹の真骨頂と見たし…！
たぬき果実のほうもフルーツを乗せてないのにホットケーキ単体で果実の爽やかさを感じるし…
クリームを乗せてもいいかもしれないし…乗せる前にパクパクしちゃったのは失策だし…

「さっそく上に報告するし…料理は凄いし…！」

こうしてたぬきの蛹は食材として使用可能という報告も済ませてコンビニTANUKIに新商品が産まれたし…
一つは『子たぬきかき揚げ丼』だし…ガッツリ系商品として今後の定番メニューになりそうな気がするし…
そしてもう一つは『たぬき屋さんのホットーケーキ』だし…
上も分かっているのか蛹の名称を出さずにそれらを隠した状態でただのホットケーキとして出すようだし…
一応食材欄には子たぬきを使っているけど製造法は機密にするし…大人の事情って奴だし…
ホットケーキにはションボリ顔のたぬきを焼印してるし…ムフフ…これは可愛いもんだし…

次々と新商品を産んでは売り出す日々だし…
さて次はいったい何を…電話だし…
はいし…はいし…えっ…廃棄予定の蛹の殻を廃棄しない形の利用をし…？いやでもあれ食えたものじゃないって説明をし…もしもし…もしもーし？
いい加減上の無茶ぶりにやめたくなるし…
レストランTANUKIに転職しようかなし……