たぬきのほとんどは野良で生きている
山で、川の近くで、人の近くで、ションボリが集まる場所にはたぬきがいる
ションボリ顔ながらも懸命に生きていく彼らは時に自然の猛威に振るわれて多くの犠牲が出てもリポップすることですぐに数が元通りとなる
しかしリポップしたところで記憶や経験も受け継がれるわけではなく、たまたま生き残った老たぬきの知恵が無ければ同じことを繰り返して無駄なことをするたぬきも少なからず存在する

自分のような辛くて悲しい思いや生き方をしないで少しでも未来あるたぬ生を送ってほしい

そんな願いからいつからかたぬきは大人になると小さい子たぬきを拾って自分の子として育成するようになった
山奥に住まう40cmはあろうかとする一回り大きなたぬきもそんな一匹なのか
何処からか拾ってきた子たぬき五匹を大事そうに抱いている

「そんなに鳴かなくて大丈夫だし…ママが育ててやるし…」

抱かれてキューキューと鳴いていた子たぬきたちはそんな言葉と親たぬきの暖かさに安心したのか
最初は触れられてジタバタしていた子たぬきもだんだんと落ち着いて眠っていく
互いの暖かさでじんわりとしてくるのはきっと体だけじゃなく、心もぽかぽかしてくるものなのだろう


たぬきが親となって子たぬきを育成するやり方はたぬきごとに違ってくる
まめにお世話するような甲斐甲斐しい親もいれば、適当に餌を与えて適当に遊んでやる放任な親だっている
前者はともかく後者は親としてどうなのかと思うかもしれないが産まれたばかりのたぬきであってもそれなりに頑丈なのだから意外とそれできっちり育つのである
つまるところ育成の仕方は親たぬきの好みによるものなのだ

山奥のたぬきは適当気味の親だったのか、与える餌の量もバラバラだった
一匹に三匹分の餌を与えるときもあれば忘れて何もない時がある
別にそれで子たぬきも死ぬわけでもないため精々癇癪気味にジタバタする程度でそれも親がモチモチすれば落ち着くのだから楽なもんである

「ヴッフ…言葉も喋れないうちは可愛いもんだし…ジタバタする悪い子はこうだし…！」
「ｷｭｰ♪ｷｭｰｷｭｰ♪」

例えご飯を食べれなくても親たぬきからモチモチしてもらえると子たぬきはすっかりご機嫌だ
親も肌触りの良い子たぬきのモチモチにご機嫌なのか育児疲れのようなものはなかったようだった


「ﾏ、ﾏ……ｷｭｰ…」
「！…もう言葉が喋れるようになったし…？」

親たぬきが子たぬきを拾っていくらかの日が流れる
子たぬきたちも親と住処に完全に慣れているのか親たぬきの尻尾を枕代わりに寝ていたり子たぬき同士がモチモチと遊んでいたりする
その中の一匹が言葉を喋った
親たぬきの知識からすれば最初から言葉を喋れる子たぬきを除けば異例の速さと分かった

「フフ…こいつは天才かもしれないし…」
「ﾀﾇｰ♪ﾏﾏ…ﾏﾏ…♪」

優秀な子にションボリした顔から少しニッコリ顔になり、親たぬきは優秀な子を抱き上げた
子たぬきは嬉しそうに声を出す。まるで親の喜びは子の喜びだと言わんばかりに
そんな光景を見てから他の子たぬきも自分も自分もと声を出すが、親たぬきは言葉を喋れる子以外は目を向ける事がなかった


たぬきが野良の生活で食べれるのは限られている
大半が木の実の類であり、それもたぬきの力や道具で割れる事も必要だ
中には虫も大事な食糧なのだがキチン質の殻を持つ虫はたぬきでも中々食いきれるものではなく、その場合は柔らかい木の実と混ぜて食べる事も多い
そんな中で柔らかい木の実だけを贅沢に食べているのは言葉を喋れる子たぬきだけであった
本来であれば子たぬきは柔らかいものを優先して食べるべきなので当たり前の光景ではある
しかし他の子たぬきは固い木の実や虫を食べており、口に運んで噛むたびにタヌーと力弱い鳴き声が響いていた

「まま…もうおなかいっぱいだし…ほかのこにもわけてほしいし…」
「チビは良い子だし…でもこれはチビだけの食べ物だし…遠慮はしなくていいし…」

親たぬきからの寵愛を受けながらも共に産まれた兄弟が冷遇されているのを子たぬきは幼いながらも理解していた
そして自分が優遇されているのも喋れるだけの知能があるからだ
しかしそのことに優越感を持たない子たぬきは自分一匹では多すぎるぐらいの食糧を兄弟にも分けるべきだと親に言っても聞き届かない
自分の食糧を兄弟に渡そうにも親はそれを静止してくる上にお前は優秀な子なんだからこれぐらいが丁度良いと説得される
優しかった…今でも不気味なぐらいに優しいはずの親に子たぬきが違和感を抱き始めるのも当然だった


兄弟の一匹が何処かに消えた

食事による優遇冷遇の違いはあれども子たぬきの成長早く、二足歩行で少し走れるぐらいに大きくなった
今までずっと親の住処にいたのだが家族でのお出かけに思わず踊りたくなる喜びに満ちていた

「ｷｭｰｷｭｰ♪」
「ｷｭｩｩ♪」

山奥とはいえ木々から差し込まれる日差しと解放感のある外は子たぬきに一種の万能感と世界の広がりを見せた
追いかけっこを始めるのもいれば日差しを受けながらたぬき玉を作っているのもいる
現に親たぬきも日差しで尻尾を乾かしている
いつも子たぬきの枕代わりにされながらも毎日ふわふわなのはこうした日ごろのケアが大事なのだろう
子たぬきもそう理解しながら日差しの中にいるその心地よさについ眠ってしまった

「チビ…チビ…起きるし…」

親たぬきに揺さられて子たぬきは目覚め始める
気づけば日差しも弱くなり、少し暗くなっているようだった
そろそろ住処に帰るのだろう。子たぬきはそう理解したが周りを見渡すと何か違和感があった

「…あれ？たりないし…」

もちもちのたぬき玉を形成して眠ったはずなのに、五匹から自分含めて四匹に減っている
親にそう尋ねても自分が起きた時からそうだったと言われてそこから何も言えなかった

「チビ…野良の世界でたぬきがふっと消えるのは珍しくないし…あまり悲しむこともせずに自分が生きてることだけを考えればいいし…」

親たぬきの保護下にありながらも子たぬきが生存できるのは決して簡単なことではない
五十匹の子たぬきがいきなり野生の世界に放り込まれても一匹が成体になればいいほうだろう
それだけの過酷だからこその別れは唐突にあることなのだと子たぬき達は教えられる
その日の晩の食事は少しばかり豪勢で、食感の良い初めて食べるお肉だった


そして平穏と思われた毎日は少しずつおかしくなっていった
食料の優遇冷遇は更に酷くなっていき、言葉が喋れる子たぬきは掌サイズまで育ってきたが兄弟たちはまだそれより一回り以上小さかった
親からのモチモチも尻尾で眠るのも掌たぬきだけになっており、他の子たぬきは決してさせるようなことをしない
そうなれば兄弟たぬきたちは互いをモチモチしてたぬき玉を作るほかにないのだが信頼していた親から一切のモチモチがないのは多大なストレスとなっていった
ジタバタによる癇癪も多くなり、それでも親たぬきは一貫して触れることもない
そして掌たぬきがそれに手を差し伸べようとも親たぬきの静止が入るのだから掌たぬきと兄弟の間に溝が出来つつあった

「まま…どうしていじわるをするんだし…」
「いじめじゃないし…お前だけが優秀なんだから当然のことだし……いずれお前にも分かるし…」

親たぬきは外に出ている間も兄弟との関わりをさせないためか、外出時には掌たぬきを連れ出すようになった
無論ただ外出させるためだけではない
山奥で生きていくのに必要な知識を時間が許す限り教えていくためだ
餌となる木の実の場所、食べてはいけないもの、危険な天敵の住処と縄張り
これらこそリポップして全てを忘れてしまうたぬきが野良で生きていく上で必須の知識ばかりである

「…ほら見てみるし…これは蛇に丸吞みされてそのまま糞になったチビだし…」
「…？！…ｷﾞｭｴ…」
「吐くなし…しっかり見てるし…これが野良の怖さだし…」

中には同族らしきグロテクスなものまで見せられた
しかし知識だけ知ってるのと実物を知ってるのでは大きな違いがある
それが野良の世界で生きていくなら猶更だ
山に住まう生き物の糞には見覚えのある緑色の切れ端や糞の一部が少しばかり動いたように思える嫌悪感に吐き気を覚えつつも掌たぬきは親の教えを受け継いでいった

そしてその間にも一匹、また一匹と兄弟が消えていく
その日の食事はまた柔らかく食べやすいお肉だった


その時ふと目覚めたのは親たぬきの尻尾の感触がなかったことに気づいたからだった
たぬきは一度眠ると寝付きの良さで自分から目覚めにくいのだが、度重なる兄弟の消失にストレスの溜まった掌たぬきは夜中に目を覚ましてしまった
近くに親がいないこと、そして更に最後の一匹になってしまった兄弟もいないことに気づく
まさか、親と最後の兄弟まで消えたのか
突然一匹になってしまう恐怖にジタバタとしそうになるがたぬきの耳が敏感に音を拾った

住処の奥に、何かいる
もしやたぬきの天敵と教えられたたぬきもどきか何かなのか
ならなぜ自分は手出しされなかったのか。そうした考えが浮かびながらもゆっくりと奥地へと足を踏み入れる

「ｷﾞｭｰ！ｷﾞｭｰｷﾞｭｷﾞｭｰ！」
「はぁ…こいつも煩いチビのままだったし…つまらんチビだし…」

信じたくない光景が掌たぬきの目に入った
住処の奥ではいつの間にか消えていた親たぬきが、最後の兄弟を掴んで地面に押し付けている
いくら柔らかく耐久性もあり、そして成体になってもそこまで力のないたぬきであってもあれを続けられたら子たぬきも長くは持たない

「ｷﾞｭｩ"ｩ"！」
「たまたま拾われただけでお前は別に私のチビではないし…精々私とチビのお肉になるか囮にでもなれし…」
「ﾀﾞﾇｰｩｩｩ！」

信じたくない光景でも不思議と腑に落ちたのは掌たぬきが賢い部類なのもあるだろう
今まで兄弟がどんどん消えていったのは全て親たぬきの仕業だったのだ

「ﾀﾞ…ﾇ……ﾏ……」
「ん？お前…」
「ﾏ、ﾏ…ﾔﾒ…ﾃ…ｼ………」
「なんだ…喋れるようになったかし…遅いし…」
「ｷﾞｭﾌﾞｩｩ…………ﾀﾇｰ…ﾀﾇｰ………」

グチャリと嫌な音が響き、瀬戸際に喋ることができた兄弟はあっさりとその命を終わらした
持ち上げればその首は力なく垂れ下がり、親たぬきは少しずつその頭を齧って捕食していく
そんな悪夢のような光景を掌たぬきは呆然と見続けていた

「ふぅし…これで肉も食い納めだし…またチビを適当に拾えればいいんだけど最近は中々だし…」

その言葉に全てを察した
今まで食べてきたお肉は兄弟だったのだ
吐き気で全てを吐き出したいのにここで吐いては気づかれてしまう
もし気づかれたら自分も何をされるかわかったものではない
嫌悪感と恐怖で後ずさり、何事もなかったように寝床まで戻っていく
震えながら自分の尻尾を抱いて眠っていく。せめてこれが悪夢であることを祈って
そして次の日の朝のご飯は柔らかい美味しいお肉であった
最後の兄弟は何処かに消え、親は何も言わなかった

最後の子たぬきとなってからも親への寵愛は終わらなかった
育つにつれて食べる量も増えても何不自由とせず、硬い木の実や虫の食べ方も習ってそろそろ独り立ちをしても良いぐらいになってきている
あまりにも不気味極まりない親への不信と兄弟たちを殺していく理解の出来なさ、そしてあの夜で最後に聞いた呟きから今まで同じたぬきを食い続けたような言葉
これらが合わさって子たぬきの中に産まれたのは復讐心だった
無論、これまで育ててくれた恩義もあれども大きくなればなるほどたぬきとして理解できない親たぬきの異常性に恐怖する
なぜ兄弟が殺されなければならなかったのか
なぜ自分だけ生かしたのか
そしてなぜ殺した兄弟の肉を食わせたのか
恐怖と怒りがない交ぜになりながらも今その復讐を実行することはできない
自分よりも倍以上大きな親たぬき相手に反抗してもすぐに取り押さえられて無力化されるだろう
せめて成体の大きさになるまで待たねばならない…


子たぬきとして拾われて半年が経とうとする
人の指より少し大きい程度だったのも30cmを超える立派な成体たぬきへと大きくなった
親たぬきも感慨深いようで一回り小さな我が子の背中を押していく

「もう立派なたぬきだし…チビも卒業して一匹で生きていくし…」
「ママ…お世話になったし…この恩は絶対に忘れないし…」

別れのモチモチを済ませてかつての子たぬきは巣立っていく
これだけ見れば感動的なたぬきの親子の別れに見えるだろう
しかしたぬきは巣立つと同時にすぐさま己の新しい住処に向かう
元々独り立ちの準備自体は済ませている中でたぬきは己の兄弟を殺している親たぬきへの復讐を忘れていなかった
そのための準備として木の棒を石で尖らせ続けた武器を用意してある
長い時間をかけて尖らせた切っ先は例えたぬきの肌でも容易に刺せるだろう

「終わりにするし…親であっても…あんなたぬきはいてはいけないし…」

あの夜から成体になるまでの間に親としての世話になったのは事実だ
しかし成長すればするほど親から子への愛がないことに薄々気づき始めたのだ
まるで自分を子供ではなく作品か何かを作り上げているような、そんな違和感がある
そして定期的に柔らかい肉を食べさせられ、そのことから何処からか子たぬきを拾ってきては殺していたのだろう
このまま親たぬきを好きにしては不幸のたぬきを次々と増やしてしまう

子が狂った親を止める義務感とも言えるのに目覚めてたぬきは夜になってから親たぬきへの住処へと向かっていく
恐らく子たぬきのいない一匹の時間を久々に得られて警戒も無しにゆっくり寝ている可能性が高い
そうした考えもあってか住処に辿り着いて中に入れば予想通りだった
親たぬきが仰向けになりながら無防備に寝ている
この状態で槍を突き刺せば一瞬で終わるぐらいに無防備だ

「やる…し……しーー！」

例え狂っていても親たぬき、それも同族に手をかける
そこに躊躇いが生じながらも自分がやらなければ誰がやるのかと奮い立たせて思いっきり胸元に突き刺した
長年着ていたのだろう親たぬきの勝負服を容易に貫いてそこから肌を傷つけ中身に肉を貫通していく
その嫌になるような感覚はモチモチの手に伝わってたぬきのションボリ顔は更に暗く染まってしまう

「ギャッ！！？…ギィィ！！お、おまえ…！チビか、し……！？」

出来れば一撃で、痛みを感じる暇もなく親たぬきを仕留めたかった
それがたぬきなりの親に対する恩義であったが、同族殺しを初めて行うたぬきにとってそんな技術はさすがに皆無であった

「ヴッ！ヴッフフフ！ヴフハ！げほっ！よ、良くやったし…！さすが、最高の…私のチビだし…！」

よくもやったな、育てた恩を忘れたのか
そのような罵倒を覚悟の上でやったにも関わらず、親たぬきはまさかの賞賛をたぬきに送った
これにはさすがのたぬきも想定外がすぎて槍を手放して一歩引いてしまう

「わかって、し…！お前が、賢いお前なら…！私みたいな…頭のおかしいたぬきを…許せないはずだと…！」

すでに致命傷にも関わらずその言葉は止まらない
槍が胸元に突き刺さったままではいつ死んでもおかしくないにも関わらず、ションボリ顔である親たぬきの目は不気味な色をしながら輝いていた

「グゥギュ…！……お前も…気づくし…これが……これがたぬきの最善に、生き方で……お前も…お前も繰り返す……し………」

まるで何かを吐き捨てるように送られたその言葉は呪いのようにたぬきを縛っていく
気づく？何に？生き方？たぬきの？繰り返す？
ぐるぐるとわけのわからない言葉を咀嚼し、それはそのまま親たぬきの教えを受けていたゆえに理解してしまう

この自然の宝庫と言える山奥はたぬきに決して優しくない
食料も木の実こそ豊富だが自然の動物たちもまた豊富に暮らしている
そうなれば動物の中で脆弱に分類されるたぬきは生きていくだけでも不利でしかない
無論たぬきの知能の高さでは不自由無く生きていくのも不可能ではないが、それでも多くのたぬきはその知能を得られるまでの成長過程で命を落とすだろう
加えていくら親たぬきが子たぬきを保護して育てようともポップするたびに個々の差は生じてしまうものだ
そうした差は生存能力に著しく影響し、最悪は一家揃って巻き添えの全滅だってありえるかもしれない

親たぬきのしてきたのは優れた子たぬきの選別と間引きだったのだ
それも最後は狂った親を自らの手で殺すことで同族殺しに手を染めさせるため
一度同族を殺めれば、次を殺める時に躊躇いは無くなるはずという考えなのだろう

「う……あああぁあああ！？」

それに気づいてしまったたぬきは親たぬきの住処から逃げ出すように走り出した
山奥を無防備に走ればそれだけ危険性が増してしまう
しかし親たぬきの教育を一身に受けていたたぬきはもはや無意識のように山の中で安全な走りを見せている
これでは滅多なことでは野生動物に見つかることだってないだろう

賢いたぬきは気づいた。気づいてしまった
繰り返すというあの言葉
きっと親たぬきは、その親も、更にその親も、延々と同じ育児をし続けていたのだ
それこそが山奥という自然で暮らしていく事の最善であり、そして自分たちの知識を継がせていく事でよりその教育は確かなものとなり、歪んでいく
その歪んだ教育の中心にいる自分に恐怖する
なぜなら親たぬきの教育は山で生きる上でどうしようもないぐらいに正しくて、そこから外れたらどう生きればいいのかわからないのだから

走り疲れてトボトボと歩いて向かう先は新しい住処
その道中で珍しいのを見た

「ｷｭ…ｷｭｷｭ…」
「ﾀﾇｰ……」
「ｷｭｩｩﾝ……」

まだポップしたばかりであろう子たぬきであった
産まれたばかりであってももぞもぞと動いて生きようとするその命にたぬきは目を奪われて、自然と手を差し伸べる
突然知らない何かに触れられて子たぬきも小さくジタバタするが、同族の温かさに気付いたのか段々と落ち着いてくる

「ならないし…たぬきは……繰り返さないし……チビたちを大事に育ててやるし……！」

子たぬきたちを抱き抱えてたぬきは次の親たぬきになることを決意する
頭に浮かぶのは自分を育ててきた親たぬきの教え
しかしそうはならない
今いるチビたちを立派な大人にして、自分のような歪んだ育児の犠牲者は最後にする
少しでも未来あるたぬ生を送ってほしい
たぬきが親となるための最初に志すものを胸に秘めながら、山奥のたぬきはひっそりと姿が見えてなくなっていった



たぬき余談話

親たぬきは自分の親の、そのまた親の、更にその親の……延々と選別と間引きを繰り返して優秀な子に知識を残していく一族
なので今回の話の育児は相当特殊な例
それはそれとしてお気に入りのチビは溺愛してそうではないのは餌にすること自体はたぬきの過酷な野良生活だと無くはない

子たぬきから新しい親たぬき
親たぬきのようにならないと強い志を持っていたが、それはたぬきの親も、そのまた親も、更にその親も同じように持ったモノである
繰り返さないかどうかはわからない