蚊も見なければ蝉も滅多に鳴くことは無い近年の夏し…
このクソ暑い日が続く夏の季節におでんを売るし…
店長も本部も正気とは思えないし…
たぶんみんな暑さで頭が狂ってるし…
いくらコンビニが冷房効いてるからってグツグツと煮えたおでんを目の前にションボリの一つは付きたくなるし…
これを買うヒトがいるならそれはあえて冷房ガンガン効かせた部屋で熱いものを食いたい傾奇者ぐらいだし…

「シシシ…元気にやってるかし…」
「ｷｭｰｷｭｰ」

まだお客さんも来ない時間に顔見知りのたぬきがやってきたし…
森に住まう野良たぬきだし…
チビを拾っては大きくなるまで育てる育て屋たぬきだし…

「見ての通りだし…チビも大きくなったんじゃないかし…」
「まだ拾って三日目だし…すぐ育つわけないし…」
「フフ…冗談だし…」

親愛を込めてのもちもちを済ませてからやることもないし軽く雑談をしてるし…
ヒトと混ざって仕事してるたぬきもいればあまり関わらずに野良で生きるたぬきもいるし…
それでもたまに出会って近況報告するぐらいの仲は維持していきたいもんだし…

「…あれ？チビ何処に行ったし…？」

雑談に夢中になりすぎて育成たぬきの連れてきたチビを見失ったし…
まずいし…好奇心旺盛で小さいチビが広くないと言ってもコンビニでうろうろされると見失うし…

「ｷｭｰ…？ｷｭｷｭｰ♪」
「あっ！駄目だし！そこでじっとしているし！！」

ぐつぐつと煮えているおでんコーナーにチビがいたし…
育て屋の大きな声でびっくりしたのかチビがジタバタするとそのままスルリとおでぽちゃしちゃったし…

「ｷﾞｭｩ"ｩｩ"ｲ"ｨ"ｨ"！？ｷﾞｭｷﾞｭｷﾞｭｨｷﾞｶﾞｱ"！！」
「あ～あ～だし…」

常に煮えているおでん汁はヒトでも下手したら火傷するし…
チビがその熱さから逃れるように沈まないようにジタバタバチャバチャをしてるし…
スープが飛び散ってるけど幸いチビのジタバタだからそこまで広まることがないし…

「なんだか…ごめんだし…弁償するし…」
「いや…私もチビを見てなかったのもあるし…」

知らない仲でもないし互いの不注意もあるし…
育て屋も拾って三日のチビにはそこまで愛着もないようだし…
とりあえず汁の中でしぶとくジタバタしてるチビを掬い上げの網で救出するし…

「ｷﾞｭ…ｷﾞｭｰ…ﾀﾞﾇｰ……」

ちょっともちもちお肌が赤く火傷してるけど命には別条はないし…
ほっとけばそのうち元気になるし…
たぬきはつよいこげんきなこだし…

「おでん駄目にしちゃったし…？」
「駄目になってもこんな暑い夏に食うヒトもたぬきもいるわけ…んん？」

なんだかおでんがいつもより香ばしく感じるし…
どういうことだし…？
小皿を急いで持ってきてチビの落ちたスープを飲んでみるし…

「これは…おでんに奥深さが出てるし…？！どういうことだし…？」
「ちょっと私にも飲ませてほしいし…これはおでんとはちょっと違うし…？」

間違いなくチビが汁に落ちた影響だし…
それにこのコクは飲んだ事のある風味があるし…

「育て屋…このチビはどこ出身のチビなんだし…？」
「確か…安売りされてたオイスターソースの中から産まれたチビだし…」

そういうことかし…
恐らくチビにはオイスターソースもとい魚介類のコクを産み出せるんだし…
これは商機を感じるし…！
チビを煮込むだけでバランスの良いだしとなって勝手に整うわけだし…
この風味を無理なくおでんに入るなら…行けるし！

「ｷｭ…？」

そこからの動きは早かったし…
オイスターソースから産まれるチビを優先的に回してくれるように育て屋に頼んでさっそくおでんのだしにしていくし…
最初はジタバタ防止のために手足を縛っていたけどスープ内でジタバタしてくれたほうが全体に風味も増すし…

「ｷﾞｭｩ"ｩ"！ｷﾞｭﾎﾞｧ"！ﾎﾞﾎﾞｷﾞｨﾎﾞﾎﾞ！！」

本当は沈め続けたほうが良いけどそうするとすぐに窒息死しかねないから上げ下げする吊り糸で釣らしていくし…
こうして定期的にスープに沈めるのとスープから出すのを繰り返させて少しでも長持ちさせるし…
オイスターソースのチビは定期補充が出来ないから大事にしないといけないし…

「じゃがいも一つとこんにゃく二つに卵一つ…あとはんぺん二つちくわ三つ…子たぬき揚げも三つください」
「まいどですし…合計して税込み1155円ですし…TANUTANUの支払いですし…？どうぞですし…ありありしー」

夏におでんを売る馬鹿げた所業も思いの外行けたし…
コンビニで売ってるおでんがいつもより風味が出ていると評判になってるし…
最初は珍しいもの目当てのお客さんもいたけどリピーターも増えてきたからこれは行けるし…

「ｷﾞｭ…ｷﾞｭﾎﾞﾎﾟｷﾞｨｹﾞｪｧ…ﾀﾞﾇ"ｰ…ｷﾞｭ…ﾀ"ﾇ"ｰ…」

おっとこの発見を見つけ出した初代チビもそろそろ限界だし…
たくさんのおでんエキスを半月は吸ったこのチビも後で育て屋と食べる事にするし…
命は無駄にしないし…お前のションボリはまた別のションボリに受け継がれていくし…
フフ…今年の夏の勲章は貰ったも同然だし…