ガシャンガシャンと器具の音を立てながら何十キロもするバーベルでトレーニングする筋肉モリモリマッチョマンの男が一人
日夜トレーニングを重ねて膨張したその肉体は眠れない日々もあっただろう努力の結晶であり、男の誉れであり、そして六つに割れたお腹は美しいまでの造形をしている
汗を拭いながらも今日の日課を終えたのか男が向かうのはトレーニング後のプロテインだ
すでに粉をシェイカーに詰めているはずのをそれを手に取ると重量の差に怪訝な顔をする

「…？」

シェイカーには粉があったはずなのに、そこには小さな小さな産まれたての子たぬきが何匹もいた
恐らくプロテインを元にポップしたのか少しばかり栗色ではない白色の髪をしたたぬきがたぬき玉を作ってすやすやと寝ている
その可愛らしい姿を見れば大半の人はほっこりするだろうが、生憎と筋トレ趣味の男にはたぬきの可愛さなどさっぱりわからない

なので男が行うのはシェイカーに水を入れる事だった
たぬきはポップする対象によってその性質を変え、プロテインから産まれたたぬきはプロテインの成分を持つ
そのようなことを聞いた覚えのある男はプロテインと変わらないなら問題はないだろうという行動だ

「ｷｭ…？ｷｭﾎﾞﾎﾞｫｫ！？」
「ｷﾞｭｩｩﾎﾞｧｧｧ！！」

安らかの眠りから覚めた途端に子たぬきに襲い掛かる水流
それは感じたことのない冷たさと相まって完全に混乱状態となる
水に溺れ、尻尾が濡れ、ションボリの極みと言わんばかりに声を出そうにも口から水が入って音は奏でない
男がしっかりとシェイカーの蓋を締めて次に行うのはひたすらシェイカーの中身を混ぜる行為だ
その丸太ような腕に恥じない力強さから生み出される振りの速さは目には追えぬ残像となってかき乱される

「……！？……！！！………！！」
「………！！！！ﾀ………！？！？」

そして中にいる子たぬきも溜まったものではない
経験したことのない冷たい水に晒され、飲まれ、そして上も下かも分からぬ激流の如き振り回されっぷりはジタバタする隙すら与えられない
狭いシェイカーの中でここまで振り回されると当然子たぬき同士とシェイカーの壁に全力でぶつかりまくる
こうなれば産まれたばかりの子たぬきのモチモチ肌は何も役に立たない
ただでさえ水も浸透したそれは衝撃を吸収することもなくただ純粋な痛みだけを子たぬきに味合わせ続ける
子たぬきと言えども無駄に生命力のあることを恨みしか他ないだろう

「……」

ほんの十数秒
されど子たぬきからすれば永遠に感じるシェイカーの経験が終わる
蓋を開けて匂いを嗅いでみれば男も驚いた顔をしている
事前にシェイカーに入れておいたプロテインの味は基本のミルク味なのだが、子たぬきプロテインも同じようなミルク風味の匂いがするのだ
男はぷかぷかと浮かんで身動きすらしない子たぬきを丁寧に掴み取ると蓋の上に乗せていく
触った際に少しばかり動いているのでどうやらまだ生きてるようだった

「……！！」

そして飲んでみるといつもよりまろやかに決まっていた
恐らく子たぬきプロテインはその重量が粉のプロテインより重い分、振った際に水と混ざりやすかったのだろう
新しい発見に男の大胸筋もムキムキと喜んでいる

「ｷﾞｭ……ﾀﾞﾇ……」

ピクピクと虫の息と言っていい子たぬきたち
こうして新しい発見をしてくれた子たぬきをそのままにしておくのもマッチョの精神に恥じるというものだ
あとでティッシュに包んで捨てるかと考えていた男は子たぬきたちを掴み取り、それを纏めて口の中に放り込んだ

「ｷﾞｭﾌﾞｯ！？」
「ﾀﾞﾇｯ！」
「ﾍﾞｷﾞｭ！」

グチャリと音を奏でながらもしっかりと噛んで飲み込んでいく
柔らかいハンペンのような食感とプロテインミルクのフレーバーに男もしっかり頷く
産まれたばかりで勝負服も着てないから食べやすかったのも僥倖だ
プロテインから産まれた以上はプロテインとしてしっかり食べて己の糧にする
それが筋肉をその身に宿す男なりの哲学なのである
とはいえ、好きにプロテインから産まれたわけじゃない子たぬきからすれば良い迷惑ではあるが…
次のポップ先がまたプロテインであれば同じ道を辿るだろう