その子たぬきは産まれながらに勝負服を身に着けていた特別なたぬきだった
たぬきと言えば緑色の服ではあるが、実のところかなり謎が多い
ポップという形で産まれてくるたぬきは多くが全裸で産まれてくる上に、気づいたら服を身に着けているのでいつ服を着るようになったのかも本たぬも覚えていない
なのでポップと同時に勝負服を着ている子たぬきはエリートの証のようなものと自覚し、この子たぬきもまたそれに恥じないように努力している
例え服持ちであっても驕らず、慢心せず、次代のたぬきに恥じぬ行動を
そのおかげかまだ言葉が喋れないながら親たぬきからも周囲のたぬきからも信頼を得られている
野良でありながらも順風満帆と言わんばかりのたぬ生にこれからの未来は明るいと言えよう

「おっ、こいつ生意気にも服着てるチビじゃん。剥いたろ」
「ｷﾞｭｰ！？」

偶然人間の子供に捕まり、その人間は特に悪意も無しに子たぬきの服を剥ぎ取り、バラバラに引き裂いた
人間にとってたぬきが最初から服を着ようが着まいがたぬきはたぬきでしかない
哀れにも服をダメにされたが逆に言えばそれだけで済んだ
すぐに手放されて地面にポテンポテンと落ちるがモチモチ肌であれば傷一つ付かない
ただし心は大きく傷ついた
産まれた時から共にあった服が目の前でバラバラにされ、もう直ることはないのだ

「なんだしこのチビ…あっち行けし…」
「汚いチビだし…親は何やってるんだし…？」
「ｷｭ…ｷｭｰ…」

そうして服を失った子たぬきはあっさりと親に捨てられてボロボロの薄汚い何処にでもいるような野良のチビとなった
こんなはずではなかったと、子たぬきであるにも関わらず成体に劣らないションボリ顔をしつつ彷徨っていく
野良たぬきは成体になっても少なからず全裸である
つまり服を着ていなくても生きてはいけるが…果たして最初から服を生まれ持ったたぬきはその落差に耐えれるのか
それはたぬきの神のみ知ることである



たぬき余談話
親たぬきが子たぬきを拾って育てたのは最初から勝負服を着ている珍しい子だったから
それを失って落差の中で無事に生き残れるか、自分たちの生活に響くかを考えて捨てる決断をした
いくら珍しい子たぬきでも何処でも拾えるチビの一匹でしかないゆえにである
ちなみに勝負服子たぬき本たぬもそこまで優れた能力があるわけではないただの子たぬき