今思い返すと子供の頃は無意味な事を一生懸命やっていた気がする
スコップを手に取れば土を掘る
ただ掘り進める事に面白さを見出して、ただひたすら掘って掘って大きな穴を作ろうとする

友人と一緒にひたすら掘り進めて約30cmほどの大穴が完成する
公園の一角とはいえこんな大穴を掘っているのを大人に見つかれば普通に怒られていただろう
しかし奇妙な満足感があったのも事実だった
汗を流し、無意味に掘り続け、大きな穴を作るという達成感があった

しかし掘った後にさすがにそのままにするとは言えずに埋め直す
そう考えた矢先にグッドアイデアが浮かんだ

この穴にたぬきをひたすら詰めてから埋めてやろう

これもまた今思えばたぬきを命と思わぬ所業だ
とはいえ当時は小学一年生かそこら
人の言葉を喋る成体のたぬきならまだしも、キューキューと鳴くだけの子たぬきは虫と同じ程度の玩具でしかなかった
そうと決まれば動きも早い
子供たちはすぐさま誰が一番子たぬきを拾ってこれるかという遊びも兼ねて分散した

公園内、公園の外、家の庭
少し探せばたぬきはいくらでもいる
一匹か二匹程度しか拾えなかった友人もいれば、手にわちゃわちゃと気持ち悪いぐらいに拾ってきたのもいた
多すぎて手から漏れてしまうのもいたが、その後のことを考えればマシだろう
まぁ、親元から引き離されて子たぬきだけのアレが生き残れるとも思わないが

何はともわれ子たぬきを大穴にひたすら落としていく
モチモチ肌がポトポト落とされても多少硬い土の穴に落とされたところで傷はつかない
少し出っ張った石に当たって痛むぐらいだろう
数で言えば20匹いたかどうか…少なくとも大穴の底を子たぬきで埋め尽くす程度の数はいたはずだ

あとは積まれた土を埋め直すだけだった
実は掘るよりこっちのほうが大変だったと記憶している
掘っているうちは楽しさで疲れが出ないのだが、埋め直すとなると労力と面倒さが勝って疲れやすいのだ

しかしこの時ばかりは違っていた
なにせ子たぬきが埋まっている状態なのだ
土をかぶされ、段々と埋められている事に気付いた子たぬきは更に声を甲高く上げる
キューキューと
タヌータヌーと
それが妙に面白くて埋めるスピードが速まったものだ
中には大穴から抜け出そうとする子たぬきもいたが無駄だった
人間の子供ですら足一つ分は入る長い穴なのだ。精々人の親指から掌程度の子たぬきが抜け出せるようなものではない

半分ほど埋め直していくとさすがに声も小さくなっていく
しかしそれでも声がすることに興奮してどんどん土を直していく
全ての土を埋め直し、スコップでポンポンと固めて一連の作業は終了した

埋められた土に耳を当ててたぬきの声がしてくるかを試したが私には何も聞こえなかった
友人曰く聞こえたそうだが…今となってもその真偽はわからないままだ

今も昔も子供は一見すると無意味なことを全力で楽しめる
たまたま公園を散歩をしていれば付近に住む子供たちは、かつて自分が子供だった頃のように地面を掘ってその穴にたぬきを埋めていた
本来であれば大穴を開けるような行為に大人として叱るべきなのだろうが…
子供たちの楽しむ顔を見てしまい、何も言えなくなった私は悪い大人なのだろう