たぬきが人と混ざって仕事をするように数十年
人の世の業務に携わるたぬきは貴重であり、たぬきの身であることが些かもったいないと感じるほどの能力がほとんどだ
モチモチとした体に可愛らしい外形ながらも中身は精々小学生ほどの知能
小さい体であるために少しばかり頑丈なだけでちょっとした自然災害でよく死んでいるのを見かける生命力
コンビニ、医療、商品開発等々の業務に就くたぬきが如何に凄まじいかがわかるだろう

しかし業務に携われないたぬきは人間でも簡単なお仕事しかありつけない
というよりたぬきのほとんどがそれに属している
主に人の手の届きにくい、見逃しやすい場所でのゴミ拾いや清掃を担っている
特に広い場所でのゴミ拾いはその数の多さを生かしての人海戦術こそがたぬきの真骨頂だ
小ささもこの場合は利点となり、見逃しやすいゴミもちゃんと拾ってくれる

それ以外となると飲食店での看板扱いが意外と役立った
なにせたぬきは人以外に言葉を使える生物だ
客呼びのためにたぬきは一日中使っても安く扱える存在だったのだ

飲食によってはいつもの緑色の勝負服ではなく、様々な服装になっているので雇っている店長のセンスも伺うことになる
例えば寿司屋であれば白衣の半被に寿司米のような帽子を被っている
例えば世界一有名なジャンクフードなお店だとピエロのような恰好してハンバーガーの食品サンプル片手に売り込みをしている
例えば世界一有名なチキン屋なお店だと白衣のスーツに白髭を付けたたぬきが看板をやっている

「ぶーぶーし…ぶーぶーし…美味しいとんかついかがですかしー…」

そして街中の様々な飲食店が立ち並ぶ中でとんかつ屋を経営しているこのお店
ここではたぬきが看板しているようだが、そのたぬきもまた雇われた飲食に合った格好をされていた
白色の半被に頭巾までは店内で働いている人と同じ格好だ
しかし鼻には豚鼻を付けてブーブーと鳴いている
たぬきなのに豚の恰好をして豚の鳴き声で接客をする。それがこのたぬきのお仕事だった

「ブタだ！ブータブータ！」
「もっと鳴いてよブター！」

そしてそんな滑稽な恰好に笑いものにするのはいつだって人の子供だった
もちろん親らしき人にコラ！と怒られるがそれだけだ。別にたぬきに謝罪することもない

「ﾌﾟｯ…あいつ豚の恰好してるし…」
「笑っちゃダメだし…お仕事してるんだからし…ﾌﾟｯ」

そして同族のたぬきにすら笑われた
野良ならまだしも別の店で看板やっているたぬきすら目を逸らされるのだから相当なものだろう
仕事自体を続けているがこうも笑いものにされる対応は中々心に来るものがある

「……たぬきは…ぶたじゃないし…ぶーぶーし…」

涙を浮かべ、ションボリが段々と溜まってくる
そろそろ別のお仕事を探すべきなのだろうか？
そう考えてしまうのも無理はなかった

「おーい！たぬき！そろそろ飯の時間だからまかないのとんかつ出すぞ！」
「わーい！たぬきは豚でいいですし！とんかつ大好きですし！」

一瞬でションボリが晴れて豚たぬきはあっさりと店の中で駆け込んだ
たぬきのお仕事は小さなたぬきにとって辛いものが多い
ではなぜお仕事に携わるかと言うと、野良では決して届かないものが手に入る
現金な話だがそれだけでもションボリを晴らすぐらいには価値のあるものなのである

「パクパクし！とんかつ美味しいし！午後もがんばるし～！」