「えーーんし！えーーーんし！」
「よく見ずに走り回るからこけるんだし…よしよし…」

公園で昼休憩中、俺はたぬきの親子を見かけた
子供らしい小さなたぬきは元気にトボトボと走っていたのがすってんころりんとお手本のようなこけ方をした
ズササーと音が出そうな転び方の割には怪我一つ付いていないのだが、転んだ痛みでビービーと泣いている
そんな子供をあやしている親たぬきの姿を見ればそこは人もたぬきも変わらないんだなと思う部分はあった

「ほら、チビ…痛いの痛いのとんでけー…し…」
「ひぃんし…ひぃんし…」

まだぐずっている子供たぬきに痛みを紛らわすお約束のおまじない
懐かしいなぁと思っているとふと悪戯心が芽生えてしまう
幸い公園には自分とたぬき親子以外にいない。やるなら今しかないだろう

「ぐっ！ぐああああああ！痛みが！ここまで、飛んで…！！」
「し！？」
「ｷｭ！？」

迫真の演技と言わんばかりに足を抑えて痛みに堪える振りをする
子供たぬきの痛みがさも近くにいた人間に飛んできたと思わせる悪戯だ
人間相手なら子供でも通じないものだが、たぬきならどう反応してくれるか

「えっ…えっ…わ、私が悪いのかし…？チビの痛みが飛んじゃったし…？」
「おじさんいたそうだし…わるいことしちゃったし…」

見事に騙されてくれてるのだがおじさんではない。まだぎりぎり20代のお兄さんだ
しかしたぬきたちはこっちに来るとモチモチとした手で痛みを抑えている足(という演技)をモチモチしてくる

「ごめんし…チビの痛み飛ばしちゃったし…」
「いたいのいたいのとんでけー…し…おじさんのいたいいたいとんでけー…し…」

…なんだか少し恥ずかしくなってきたな
痛みが治まったことにしてたぬき親子の頭を撫でながら公園を立ち去る
後日、公園付近のたぬきたちの間で痛みを飛ばしてその痛みでジタバタする遊びが流行ってるそうだが…
果たしてそれは演技なのか本当なのか…たぬきならありえそうだなとぼんやりと考えていた