「ぬああああああああああああああ！！！！」
「ダヌ"ゥ"ゥ"ウ"！！ダヌ"ゥ"ゥ"！！ダヌ"ゥ"ゥ"ウ"ゥ"ゥ"ゥ"ゥ"！！！？」

深夜の時間
橋のかかる川の土手の下で人間の男とたぬきの大合唱が響いていた
男は回っていた。くるくると回っていた
たぬきは髪の毛を掴まれてくるくると回されていた。くるくると回っていた
ぶちぶちと音がしながらにも関わらずただひたすらに男は大回転を決める
たぬきはそのあまりの回転速度に恐怖し、しかし髪がぶちぶちと切れる音に苦痛を感じて顔を歪めていた

「うおおおおおおおぉおお！！！」
「ダァ"ァ"ア"ヌ"ゥ""ウ"ウ"！？！…グボゴブァ！？」

そしてついに均衡は崩れた
捕まれてぶちぶちと鳴っていた髪の毛はついに限界を迎え、男の手から離れたのだ
しかしその回転から産まれた遠心力は凄まじく、遠く遠く飛んで橋を支えるコンクリートの壁に激突する
ずるずるとへばり落ちてピクンピクンと動くたぬきはジタバタすら起こせない
髪も無惨なこととなり、まるで落ち武者のように禿げ頭と化していた

「はぁ…はぁ…」

男はふらふらと歩きだす
歩き出した先には段ボール箱があった
たぬきはこの橋の下で暮らす野良たぬきだったのだ

「ｷｭｰ…ｷｭｰ……」
「ﾀﾇｰ…」
「ｷﾞｭｩｩ！ｷｭｰｷｭｰ！！」

そして段ボールの中には全裸の子たぬきが入っていた
肌寒くなる夜の気温に子たぬきの体温…それも勝負服すら着ていない裸たぬきでは耐えれるわけもない
なのでたぬき玉になって体温を高めてやり過ごすのだが、親たぬきの体温を失った子たぬきは親を呼び求めるように鳴いている

「うぐ……おげえええあああ！ぐぼ！げろぐああああああ！」
「ｷﾞｭｩｩｩ！！？！？」
「ﾀﾞﾇｧｱｱﾎﾞﾎﾞｱｱ！！」
「ｷﾞｭﾋﾞｶﾞｱｱ！！」

そんな段ボール箱目掛けて男は吐いた
盛大に吐いた。虹色がかかるほどに吐いた
食べてきたもの、お酒、胃酸、その全てを吐き出した
ぐるぐると回り続けてただでさえ気持ち悪くなったところに限界を迎えてのゲロは段ボール箱と子たぬきに降り注いだ
臭いしゲロに飲まれるし尻尾も汚物塗れになるしと子たぬきは騒ぐ暇もジタバタもできずにゲロ塗れと化していく
そのあまりの突然の悪臭の前にすぐに気絶したが、このまま目覚めなければゲロに飲まれたまま窒息死することになるだろう

「はぁぁああ……なんかスッキリしたな…」

男は盛大に吐き戻してからスッキリした顔立ちで帰っていく
この男、居酒屋で飲みまくってべろんべろんになっただけでこれまでの記憶が一切残していなかった
後に残るのはいまだにピクピクとして動かない顔も潰れた親たぬきとゲロ塗れの汚物
野良たぬきにとっては良い迷惑だが、同時にいつも通りの光景だった



たぬき余談話

酔った男
お酒大好きで飲んだ後に記憶が残らないタイプ
なので相当な野良たぬきを無自覚に酷い目に合わせているが酷い目に合うのは野良たぬきだけなので特に何も言われない

親たぬき
あの後奇跡的に生きていた
顔が潰れて落ち武者ヘアスタイルと化した
歯のほとんども失ったのでろくに生きる事もできずに生き残れたのにあっさりと死んだ

ゲロ子たぬき
ゴミ