成体になったたぬきは幼体のたぬきを拾って育てる
これはたぬきを知る者なら誰もが知っていることだ
しかしどうやって育てているのかと問われると意外と答えられない
普通に生きてたら野生に生きる動物がどう生きてるのかもよく分かっていないのだから子育ても同様のことだろう

基本的に住処を構えた親たぬきが子たぬきを拾ってそこに満足に動けない子たぬきを置いて餌を取ってくるなりとして育てる事が多い
なにせ犬やカラスに見つかれば逃げ切る前に襲われてボロボロになるか死んでしまうのだ
そうなれば子たぬきを抱えて更に満足に動けないのは格好の餌でしかない

しかし今いるたぬきはまだポップして間もない子たぬきを抱えたままトボトボを歩いている
小さいビニール袋にはいくつかの木の実や草が入っており、どうやら餌取りの帰りだったようだ
そしてよく見れば親たぬきは子たぬきを手で抱えてはいない
勝負服のお腹にポケットのようなものが付いており、そこに子たぬきを収容しているのだ
これなら手も自由に使える上に動きも縛られないだろう。何より住処に我が子を置かずに済むので安心感も得られる

しかしなぜ勝負服にポケットがあるのか
たぬきの中には野良でも裁縫が出来る者もおり、そうしたたぬきが全裸の子たぬきに勝負服を作ったりもするものだ
疑問に思った一匹のたぬきがポケット親たぬきに質問したようだったが要領を得ない答えが戻ってきた

「知らんし…気づいたらあったし…」

ションボリが満ちてポップするというふざけた生態のたぬきである
どうやらポケットも気づいたら付いていたようで、親たぬきも利用できるモノは利用すると言った感じに特に気にしていないようだった

ポケットの中も温かいのか子たぬきの顔はションボリ顔ながらも落ち着いた様子だった
子たぬきは生存の低さとして全裸であることが挙げられる
何せ服がないのだから体温を得る手段が仲間とのモチモチか、自前の尻尾で暖まるか、たぬき玉を作るか存在しないからだ
そして自前の尻尾で暖まろうにも背中を始めとした露出した肌は容赦なく冷たい風に晒され、たぬき玉も同様に外部側であれば冬だと凍死しているのも珍しくない
そうした中で全身が温まるというのは、死亡原因の一つを潰せるのだから親たぬきにとってありがたい話だろう

「ふぅ…チビ…ポケットの中に入るし…」
「ｷｭｩ…ｷｭｩ…ｷｭ！」
「ｷｭｰｷｭｰ」
「…よし！それじゃあ外に出るし…」

視点を変えると別の親たぬきもまたポケットに子たぬきを入れて立ち上がろうとしていた
しかし先ほどのようにお腹にポケットがある個体ではなく、背中にポケットがある個体だった
子たぬきを背負い込むとよろよろと立ち上がり、その後しっかりとした足取りでトボトボと歩き出す

「ｷｭｩｩ…ｷｭｰｷｭｰ」
「ﾀﾇｰｼ…ﾎﾟｺｰｼ…」
「はいはいし…チビのお陰で歩けるから感謝してるし…」

その親たぬきはたぬきとして大事な尻尾が無かった
事故で失ったのか、それとも何者かにそうされたのか
理由は定かではないにしてもたぬきの尻尾は歩行する上で大事な器官であり、尻尾のないたぬきはろくに立ち上がる事もできない
しかし子たぬきを後ろのポケットに入れる事で重心のバランスが取れ、本来であれば子たぬき共々たぬ生が終わってもおかしくない中で九死に一生を得たようだ

「……せめてチビが大きくなるまで育てたいし…ポケットは神様の贈り物だし…」

勝負服にポケットが付く理由は謎のままだ
しかしたぬきはあえてその謎を探求しようとせずに天からの贈り物だと解釈したようである
事実として子たぬきを育てやすくなったのだからそう思わずにいられないだろう
これからやってくる冬の季節
せめて自分の暖かさで春を迎えさせたいと願わずにいられない親たぬきであった