たぬきは賢い
本当にそうなのだろうか
私は公園で一匹で踊り続けているたぬきを見てふと思う

「…なんだし？見世物じゃないし…」

人のように言葉を喋り、知能はある
確かに賢いと言えば賢いだろう
しかしそれはあくまで人の言語を駆使できる賢さであって生き方の賢さに直結しない
少なくとも誰もが見られる中で踊っておいてふてぶてしくしくほざけるたぬきは長生きできないだろう
私は野球少年の忘れ物であろう…ベンチに置かれたバットを手に取ると思いっきりたぬきの頭に振り落とした
とはいえ頭が弾けるような威力ではなく、精々凹む程度には加減してある

「グボァ！？」

唐突な一撃にのたうち回り、いくら柔らかい体を持つたぬきでも致命傷だろう
とてもじゃないが知能がある動物とは思えない醜い顔とジタバタで痛みを表現しているようだった

「グブッ…ボボァ……ｵｯｵｯ……ｳｯｳｯｳｯｳｯｳｯ………」

一撃で良いものが入ったのか口から泡を吹きながらどうやら痙攣したようだ
これが手で叩く程度なら"痛いし～"と言っていただろうが、今のたぬきはただの壊れた玩具にしか見えなかった
私はそんな痙攣するたぬきをゴミ箱に入れて次なるたぬきを見つける

「……チビ…お家に入って静かにしてるし…」
「ｷｭｰ…ﾏﾏ…ﾀﾞｲｼﾞｮｳﾌﾞｼ…?」
「ｷｭｷｭｩｩﾝ…」

公園にダンボールを組み立てて住処にしているたぬき一家だ
自然にある中ではなく、住処を自らの手で作るのは確かに賢いと言えるかもしれない

「あっ…急に何を…やめてし…チビ…！大丈夫かし…？あっあっ…お家を乱暴にしないでし…ご飯を捨てないでし…あぁ…」

そんな住処を私は中にいたチビたぬきを適当に放り投げて潰しにかかる
中に入っていた新聞紙、よくわからないゴミ、恐らくは餌などと言ったものを纏めてゴミ箱に入れた
あとはダンボールを丁寧に畳んで終了だ
その間に親たぬきのほうは懇願するように私を止めようとしたのだがそれだけだ
恐らくは力の差を明確に理解しているのか力づくでどうにかしようとはしない。癇癪もしたりしない
ただ目の前の住処が無くなっていくのをチビたぬきと一緒にションボリがより深まった顔で眺めているだけだ
本当に賢いなら私を止めれたのだろうか。それとも力の差を理解して何もしないのが獣にとって賢いのだろうか

私はそんな親たぬきの頭を先ほどのたぬきのようにバットを振り落とした
威力は少し増して凹むを通り越してションボリとした顔から眼が二つが飛び出して一目で分かる致命傷だ
普通の生物なら即死ものだがそこはたぬきの生命力である
体だけは元気にジタバタしているし今際の鳴き声を発している

「ギョボォ！？…ｹﾞｯｹﾞｯｹﾞｯ……じぃぃ～じじぃぃ～～～！」
「ﾏﾏｰｰ!!ﾅﾝﾃｺﾄｽﾙﾝﾀﾞｼｰ!?」
「ｱ､ｱｱｱ……ﾏﾏ…ｼｯｶﾘｽﾙｼ…ｼﾝｼﾞｬﾔﾀﾞｼ…」

賢さとはなんだろう
許容を超えた痛みの前ではたぬきも人も賢さの象徴である言葉を失い、獣のように鳴き声を発する
壊れた親たぬきとそれに寄り添うチビたぬきを纏め、畳んだ元ダンボールハウスごとゴミ箱行きだ
バッドも元のベンチに置き、賢さの意味を考える
哲学書か…それともそれらしい著名の本でも読めば分かるのだろうか
私は静かに公園を後に、まずは図書館に向かったのだった