成体まで成長したたぬきの大きさは精々30cm
成人男性の膝元未満であり、下手すればそのまま普通に歩いてる人間の蹴りが頭に突き刺さる大きさである
しかしたまにだが大きく成長する個体もいる
ポップ先の要因か、それとも個体の特徴なのか
定かではないにしてもここ仁市のたぬきは大きく育つ個体が多かった
ポップしたばかりの子たぬきであれば大きさはいつも通りの親指サイズなのだが成体まで行けば40cmから50cmで育つようになる
更に大きい個体であれば60cmを超え、ここまで成長すると成人の股下まで辿り着く

体格の大きさは生存に置いてかなりの有利だ
何せたぬきはモチモチ肌が特徴なぐらいで30cmの大きさでは赤ん坊のハイハイと同等程度の歩行速度でしかない
大きければそれだけ歩行速度も上がり、力も増す
標準的なもどきであっても力負けもせず、人間と野生の獣に敵わないにしても生き残りやすさで言えば群を抜いていた
しかしそんなたぬきも大きいが故に標的にされるようになってしまった
前述の通りにたぬきはモチモチ肌であり、それは大きくなっても変わらない
むしろ大きい分にモチモチ肌はそのままで耐久力が上がったと言える
そんな都合の良い存在に"暴力"を試したいと思う輩が産まれるのも当然の成り行きと言えた

「オラオラ！！打つべし打つべし！！！」
「ゲブゥ!ギュボァ!ゲブゥ!」

学ランに身を包んだ少年たちが、60cmを超える大きさの全裸たぬきを殴っていた
殴られるたぬきは拘束され、頭と足を上下に吊るすことでサンドバッグとなっていた
拳を傷つけないように布で巻かれた拳は容赦なくたぬきの顔に、胴に、腹に、突き刺さり続ける

「しゃあ！灘神〇流 〇砕拳！！」
「イギャゥ！ボボァ！ｷﾞｭグ！」

いったいどれだけ殴られればそうなるのだろうか
顔も胴体も痣だらけになり、もはやモチモチとした肌の面影がない
そんな状態になっても終わることもなく、代わり替わりに少年たちは殴り続けて行く

「まっ〇のうち！まっく〇うち！」
「グギャギャギャ！！」

時には力任せに、時には漫画やアニメで見た技の再現を
少年たちの暴力はついにたぬきの命を奪い、叫び声もジタバタする動作もできずに全身をだらりとさせた
最後は思いっきり蹴りを浴びさせると同時に拘束は解け、くるくると宙を回りながら地面に激突し、ゴミのような姿になったたぬきを少年たちは笑っていた

「ﾀﾇｰﾀﾇｰ…」

「あーすっきりした！やっぱ試験の後はたぬきをサンドバッグするに限るな！」

少年たちは先ほどまでたぬきを滅多打ちしていたとは思えない爽やかな顔をしていた
タオルで汗を拭い、水分補給をしているその少年たちを見ればとてもたぬきをサンドバッグ代わりにしていたとは思えない
彼らは何処でもいるただの高校生だ
しかし学生の身であれば付いて回ってくる試験とその対策の勉強には多大なストレスが圧し掛かる
そのストレスの捌け口として、たぬきは選ばれてしまった
他の地域に比べて大きく育つことで丁度良い殴りやすさとなり、何より野良のたぬきをどれだけ駆除という名目で殴っても問題はない
とはいえ楽しんで殴りつけるという行為を見れたらまずいぐらいは分かっているので人目がない場所でやるのがマナーだ
お陰で勉強のストレスが溜まっても定期的にたぬきを殴ることで解消できた

「せっかくだから近くのスラムもついでに潰してやろうぜー！」

少年たちからすれば野良のたぬきなんてのは辛気臭い顔をして人間様の町に辛気臭く歩いている部外者でしかない
加えて妙にデカくて不気味なのだから駆除をしても問題はないという正義感と免罪符で暴力の標的にする

「チビすけは潰してデカい奴は少しずつサンドバッグしてやらねぇとな！」

大きくなることでたぬきは野良での生活は少し改善した
しかし代わりに人間への目は厳しくなり、より大きな暴力に晒されやすくなった
皮肉な話だがたぬきが暴力の被害者になればなるほど、その地域は不思議と人間同士の暴力沙汰や事件も減った
なのでどれだけたぬきが被害に合おうとも人間は見て見ぬ振りをする
どうかそのままの大きいたぬきでいてくれと無慈悲な祈りも込められて