一匹のたぬきが公園にいる
たぬきは足場を用意し、縄を鉄棒にかけていた
その顔はもはや生きる気力のないションボリ顔。元からションボリ顔だが生気すらないのは一目瞭然だ
たぬきは自殺しようとしていた
成体になるまで苦労を重ねてたのは良いものの、来る日も来る日も食うに困る苦しい日々
チビを拾って育てようにも失敗続きで失った我が子も数知れず
そして失った我が子を食料にしなければならないほどの自分の無能さについにションボリが極まり事に及ぼうとしていた

「やっと…終われるし…」

自殺したところでたぬきはションボリを集めてリポップできる存在だ
だが記憶を失い、新しい自分となれればもはや関係はない
少なくともこの苦しい思いを重ねずに済む
次の自分もまた苦労をするだろうが、それでも今の自分は生きることに疲れすぎた

「さよならし…」

大きな頭を通して縄を首にかけ、たぬきは足場から飛び降りた
せめて次のポップ先はチビを失わずに済む程度の優しい世界が良い
そんな儚い祈りを込めて次のリポップに旅立とうとしていた

「ギュ…ギェ……ｸﾞｩ…！？」

首は確かに縄で締められていた
しかし首吊り自殺というのはちゃんとした締め方をしなければ無駄に苦しみを与えるぐらいに難しいものだ
そこまで器用ではないたぬきの半端な縄の締め方では無駄に苦しむだけであり、痛みも無しに安らかに死ねるほど優しいものではなかった

「……！グゥ！」ｼﾞﾀﾊﾞﾀ

せめてあっさりと死にたかったという思いすら叶わないのか
苦しみから逃れるようにジタバタをし始め、だんだんと体が前へ前と動いていく
ここで急に話は変わるはたぬきの体積は頭の比重が大きい
ずっしりとした頭を持っているために常に猫背気味に歩く上に、バランサーとして尻尾がなければろくに立ち上がれないほどだ
そんなたぬきが雑な首吊りを行い、その上でジタバタを繰り返せば比重として頭が重力に引っ張られる形となる

「…………なんし…」

息苦しさは消えたが見事な空中犬神家を決めるたぬきが爆誕した
余計にジタバタをしてももはや固定されて身動きも取れず、スカートも全開に捲れて情けない姿を丸出しだ

「うお、なんだこのたぬき！？」

「…たすけてし……」

もはや枯れたはずの涙を流しながら偶然立ち寄った人間に助けを請うのも仕方ない話だろう



たぬき余談話

自殺たぬき
この後親切な人間に救出された後、なんやかんや自殺道具を揃えたりするバイタリティや九死に一生を得たことで少し前向きになった
ションボリ顔は深いままでものらりくらりと生きていける精神を得たので今後も大丈夫だろう
なお子育ては相変わらず失敗し続けている