『たぬきの木登り』


これは、とある平和な公園でのお話。
たぬきの親子がトボトボと公園をうろついていました。

彼女たちは別に落ち込んでいるわけではありません。
元からそういうションボリとした顔なのです。
なので嬉しい時には（たぬき基準で）嬉しそうな顔をします。

そして、ちょうど今がその時のようです。
子たぬきの口角が「Λ」から「へ」ぐらいまで上がりました。
たぬき曰く、これでもかなり喜んでいるらしいです。

「ちび…どうしてそんなに喜んでるんだし…？」
「ｷｭｰ…ｷｭｷｭｰﾝ…」（見てし…あれ美味しそうだし…）

子たぬきが指さした先には、美味しそうな木の実がありました。
しかし、その木の実はとても高い木に生っていたのです。

人間の子供でも登るのは少し危険な高さです。
ましてや、たぬきが登るのなんて無茶にも程があります。
そのことは親たぬきも分かっています。

ですが、親たぬきは木に登ることを決意しました。
子たぬきを喜ばせたかったのと、少し見栄を張りたかったのです。

「よし…取ってきてやるし…待ってろし…」
「ｷｭｩｰ…」（楽しみだし…）

意外にも(？)、親たぬきは勢いよく木を登っていきました。
ジタバタという効果音が似合いそうな、慌ただしい登り方です。

（やっぱり怖いからさっさと登るし…カッコ悪いとこ見せられないし…）
「ｷｭｯ…ｷｭｷｭｰ…」（ママ…ファイトだし…）

勢いのよさは恐怖心の裏返しだったようです。
よっぽど怖かったのでしょうか？
親たぬきはあっという間に木の実があるところまで登り詰めました。

「木の実は採れたけど…………どう下りればいいんだし…？」
「ｷｭｰ？」

なまじ登ることはできてしまったせいで、親たぬきは油断していました。
モチモチな代わりに指も爪も無い手、マンチカンのように短い手足、etc…
たぬきの身体は下りるのには絶望的なまでに向いていなかったのです。

「木の実を持ったままだとずり落ちもできないし…」
「ｷｭｩﾝ…」（早く戻ってきてし…）

どうしようかとあれこれ悩んでいた、その瞬間…

「あ"っ！」
「ｷｭｰ!?」（ママ!?）

親たぬきは足を滑らせて落っこちてしまいました。
しかも、不幸はそれだけでなく…

「「ダヌッ！」」

グチャ、という嫌な音とともに子たぬきは潰れてしまいました。
不運にも親たぬきが落っこちた先に子たぬきがいたのです。

たぬきの身体は多少の衝撃だったら弾くモチモチさです。
それも子たぬきなら羽二重餅もかくやとばかりの超モチモチです。

しかし潰されてしまってはひとたまりもありません。
子たぬきがいた場所を中心として赤いシミが広がっていきました。

「………………」

無事ではなかったのは親たぬきも同じでした。
落っこちた衝撃で頭がへこんでしまったのです。

外見はかわいらしいものの、中身はぐちゃぐちゃの状態です。
持ち前の生命力のおかげで生きていますが、もはや死を待つしかできません。

こうして、たぬきの親子はあっさりと死んでしまいました。

完