「おや…こんなところにたぬきが…」

「可哀想に…震えてるわ…」

「ｷｭ…ｷｭｰ…ｷｭﾜ…」

ある夫婦がたぬきを家の前で震えるちびたぬき拾った。どうやら生まれたばかりのちびたぬきのようだった。

「たぬきって何を食べるんだろう？」

「雑食と聞いたことがあるわ…でも小さいたぬきだから消化に良い物がいいと思うわ」

「ミキサーにかけたバナナとミルクを与えてみよう」

「ｷｭ…ﾓﾁﾓﾁ…ｷｭｰ♪」

ドロドロになったバナナとミルクをスプーンで流し込むと、モチモチと咀嚼してちびたぬきの口許が緩んだ。

「喜んでるみたいね」

「ｷｭｰ♪ｷｭ…ｷｭｰ………ｷｭｰ………」

「寝ちゃったわね…」

「起こさないようにしてあげよう」

夫婦は眠るちびたぬきに毛布をかけて温かく見守っていた。

…

「ｷｭｰ………ｷｭｰ………ｷｭ…ｷｭｴｴｴｴｴ…ｷｭﾜｧｧｧｧｧｧﾝ！」

「あらあらどうしちゃったの」

「すごい臭い…お漏らしみたいだ…」

夫婦がたぬきのパンツを脱がせると閉じ込められていた臭いが広がった。

「ｷｭｩｩｩｩｩｩﾝ…」

おしっことうんこに濡れた下半身に不快感を感じているようだった。

「よしよし今綺麗にしてあげるからね」

「ｷｭ…ｷｭｩｩｩﾝ…ｷｭｩｩｩﾝ…」

ウェットシートで優しく拭いてあげるとくすぐったさと気持ちよさの半々のうっとりとした表情でたぬきが鳴き声をあげた。

１週間が経った頃、ちびたぬきはよちよち歩きが出来るようになっていた。

「ｷｭｰ…ｷｭｰ…」

「いいぞーほらほらこっちだ」

ちびたぬきが辿々しくゆっくりと歩いていく。そして、差し出された両手のの中に辿り着くと優しく抱き抱えられた。

「よーしよし偉いぞー！」

夫婦とちびたぬきが出会ってから１ヶ月が過ぎた時の事だった。

「ｷｭ…ﾀﾞ…ｼ…」

「今喋ったか？」

「ええ！」

「ﾊﾟ………ﾊﾟ………ｼ………ﾏ………ﾏ………ｼ………」

「おお…！」

「私達を呼んでるわ…！」

夫婦はちびたぬきの初めての言葉に目を輝かせて喜んだ。

さらに驚くべきことにその１週間後にまだ足元は覚束無いが二足歩行が出来るようになった。

「ふっ…シ…！ほっ…シ…！見て…シ…！たぬ…き…歩け…るシ…」

「すごいぞー！」

「こっちよ！」

両ひざを付いて辿り着いた子たぬき程度に育ったたぬきを両手で抱き締めるとたぬきに頬擦りをして夫婦は多いに喜んだ。

そして、３ヶ月が経った頃、栄養を十分に与えられて育ったたぬきは身体も精神も野良たぬきとは比べ物にならないほどに成長するにつれ、遺伝子に刻み付けられた己の使命を悟りつつあった。

「パパ…ママ…たぬきは家を出ていかないといけないし…」

「どうして…！？あなたは私達の子も同然なのよ？」

「そうだ…遠慮なんかしなくて良いんだ…！ずっとここにいろ…！」

「ごめんし…！たぬきはパパとママがたぬきを拾ってくれたように道端で生まれたちびを助けに行かないと行けないんだし…」

「そんなのうちに居ても出来るじゃない！」

「ここにいちゃダメなんだし…助けを求めて鳴いているちびは遠くにもたくさんいるし…それを助けて育てるのがたぬきの使命なんだし…」

「いやよそんなの！」

「よそう…それがたぬきのやりたいことならそれを尊重してあげるのが親の役目なんだ…」

「パパ…」

夫は泣き崩れる妻を優しく抱き締めた。

「帰りたくなったらいつでも帰ってくるんだぞ…！」

「元気でね…」

「今までありがとうし…」

夫婦はたぬきの頭を優しく撫でる。

「じゃあ行くし…」

２～３歩歩いたたぬきは名残惜しそうに後ろを振り返る。再び夫婦に頭を撫でられ、ギュッと抱き締められたたぬきの目には涙が浮かんでいた。

「今度こそ行くし…」

たぬきはションボリとした表情でトボトボ歩き出した。そこへ素早く駆け寄ってきたのは、最近越してきた近所の飼いもどきだった。

「かひっ…」

もどきはたぬきの喉元に食らい付くと呆気なくその命を奪った。

「イヤアアアアアアアアアア！！！」

「アアアアアアアアアアア！！！」

夫婦はこの経験からたぬきを積極的に保護するようになり、たぬきが成長しきった後も家に留めるようになったが、本能に逆らえずに脱走して外敵の餌食になるたぬきが絶えないという。