三千里


「買ってし！買ってし！！ﾀﾇﾀﾇﾀﾇﾀﾇ…ﾀﾞﾇｰ!!!!!」
ジタバタジタバタジタバタジタバタ！！！！
大型スーパーのたぬき用玩具コーナーですさまじい勢いでダヌー癇癪をする一匹のたぬきがいた
「ダヌー！ダヌー！チビベアルフ君＆ちびたぬきストラップ欲しいしダヌー！！！」
このたぬきが欲しがっているのは今たぬきの間で大人気となっているチビベアルフ君ぬいぐるみと愛らしいちびたぬきのぬいぐるみが抱き合っているストラップだ
勲章に付けてぶら下げるのがトレンドだ

そんな癇癪を起すたぬきの傍には肩をすくめ諫める飼い主が居た
「前もちびたぬきぬいぐるみ買ってあげただろう。その次は最新のおやつ、あの時もこんな癇癪起こしてたし…」

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1か月前
丁度このたぬき玩具コーナーを通ったときたぬきがちびたぬきぬいぐるみを見つけてしまった事が発端だ
普段わがままを言わないおとなしい子だったはずなのにどうしても欲しいと言い出したのだ

「飼い主さん…私あれ欲しいですし…一人っこだから妹みたいなのが欲しいですし…」
珍しく我儘を言うなぁ…買ってあげてもいいかなと飼い主が思ったがなんと値段が150,000円と高かったのだ
本物のたぬきの毛皮と皮を使っています！という謳い文句だ
「駄目だよ…あれ高いし…」
とたぬきの我儘を却下した
お前の10倍以上の値段だよ、という言葉は飲み込んで

「うう…！ほしいしほしいしどうしても欲しいし…！！買ってし！ﾀﾇﾀﾇﾀﾞﾇﾀﾞﾇ…ダヌー！！！！」
そう癇癪を起すと地響きを起こすほどのジタバタをし始めた
グラグラと揺れる玩具ゾーン、周りの奇妙なものを見る目、店員の白い目などに晒された飼い主は観念してしまったのだ

「分かった！買うから！仕方がないな…お金降ろして買ってくるから」
「ほんとし！わーい！！」
「たまの我儘だから特別に…今回だけだよ？」
「わかりましたし♪うふふし…」

釘を刺されたが、一度自分の要求が通ってしまった快感からその後もちょくちょくダヌー癇癪を起しては欲しい物を強請っていた
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「いやだしいやだし！ちびベアルフ君もたぬきと一緒に居たいって言ってるしぃ！ちびも言ってるしいい！！！」
今回もわざとらしくジタバタをして周りの注目を集めようとしていた
周りの子だぬきも何も理解していないもののダヌー癇癪を起すたぬきが面白くてマネをし始めた
「ﾀﾇﾀﾇﾀﾇｰ!!」「ﾀﾇｰﾁ!ﾀｳｰﾁ！ｴﾍﾍﾞ-♪」
その姿を横目で見ながらにやつ着ながらジタバタするたぬき、おそらく目的の物を買うまでやめない気であろう

ハァ…と飼い主はため息をついてたぬきの口を押さえながら抱えた
「ﾀﾞﾑ!!!…ﾑｰﾑｰ!!」
「すみません、お騒がせしました」
周囲に会釈をしながら足早に去っていった


飼い主が駐車場に着くとたぬきを開放して降ろした
「うううう！！！なんで買ってくれないし！！かってしかってし！！ケチケチー！！ダヌー！！！」ｼﾞﾀﾊﾞﾀｼﾞﾀﾊﾞﾀ
暴れるたぬきの頭を片手で押さえつける
「ダム！？グムムム…」
そしてたぬきの胸についている勲章をモチりと捥ぎ取った
「ダヌダヌダヌ…あっ！私の飼いたぬき勲章が！」

【飼いたぬき勲章】
たぬきを購入、入手した飼い主が国に申請するともらえる勲章
飼いたぬきに与えられ、これを装着しているたぬきは飼われているので駆除の対象外になったりたぬきＯＫのお店に入れたりするのだ
非売品

そんな飼いたぬき勲章を外されてしまったたぬきは当然焦った
「何するし！？それがないとたぬきは」
「そうだね野良たぬきだね」
「か、返してし！」
「あんなにわがまま言う子はもううちの子じゃあっりませーん。じゃあね」
そう言い捨てると飼い主はそそくさと車に乗りエンジンをかける

「え、あ、え…待ってし！置いてかないでし！！！」ドンドンドンドン！
一生懸命車のドアを叩くも飼い主はたぬきを居ないものとして扱い車を走らせた
「あっあっあっﾀﾞﾇﾌﾞｼ!!」
ドアに捕まるもスピードに耐えられず振り落とされた
「待ってし！置いてかないで！捨てないでしぃー！！！」
無慈悲にも車はそのまま走り去ってしまった

「あ…追いかけないと！」
そうたぬきが焦っていると警備員が来た
「いたいた…おい野良たぬき！ここはたぬきの進入禁止店舗だ！さっさと出ていけ！」
警備員に思いっきり怒鳴られジタバタしてしまった
「野良じゃないしぃ！飼いたぬきだしいい！！！」
「嘘を吐くな野良が、飼いたぬき勲章のないたぬきなんて野良に決まっているだろ！さっさと出ていけ！さもないと…」
警備員はそう言いながら高出力スタンガンを取り出したぬきに向けた
「店舗への侵入たぬきの駆除は許可の必要はないからな…」
「ひ…ひぃぃぃ！！！」
たぬきは泣きながら飛ぶように逃げた


外に出たたぬきは一息ついてこれからの事を考えた
「うう…家に帰って飼い主さんに謝って許してもらわないとし………？家ってどっちだし？おうち…どこだし…？」
いつも飼い主の車で来ていたので家から大型スーパーへの道のりなど分かっていなかったのだ
景色はぼんやりと覚えていたが詳しい道のりはさっぱりだったのだ
「ど、どうしようし…でもとにかく歩くしかないし…たぶんこっちだし、この辺は車の窓からよく見たし…」

幸いにも方向はあっていた
しかし車での移動とたぬきの歩行速度では移動時間も違う
距離にして14km、たぬきの速度では一日2kmが限界であろう

そしてたぬきの過酷な冒険のようなものが始まった


ｻﾞｱｱｧｧｧｧ…
「うう…雨降ってきちゃったし…あっこの捨てられた傘で雨宿りするし…」
雨に降られ凍えたりした

バウバウ！！
「ひいい野良犬しぃいい！！！」ｼﾞｮﾎﾞﾎﾞﾎﾞﾌﾞﾘﾌﾞﾘ…
野良犬に追いかけられ失禁もした

「もしゃもしゃ…うっ！この草食べたらお腹痛くなったし…あっ」ﾌﾞﾘﾘﾘﾘﾘﾘ…
空腹のあまり雑草を食うも腹を壊し人前で脱糞もした

「あいつ服着てる野良だし…生意気だし！みんな奪ってやれし！」
「や、やめるし！やめるしぃ！！」
育ちの悪いスラムたぬきに服を奪われそうになった(実際靴下を取られた)

ｷｭｳｩﾝ♪
「ぎゃあ！もどきが出たしぃ！！」
ｶﾞﾌﾞｯ!!
「ア”ア”ア”ア”ア”！！！ダ！だぬぎの腕があ”あ”あ”！！」
もどきに腕を半分食われたりもした

「あいつ野良なのに服着てるし…馬鹿にした目でこっちを見やがってし…
　みんな！あの生意気なたぬきに抗議のおしっこをするし！っしー！！！！」ジョババババババババ！！
「ぎゃああ！汚いしぃいいい！！！傷口に染みるしぃいい！！！」
黄金の意思を持つスラムたぬきにおしっこまみれにさせられたりもした

しかしたぬきはあきらめなかった
家に帰って精いっぱい謝罪して…まじめなたぬきとしてまた飼ってもらうんだ！
この言葉を心の支えに一生懸命歩いた
そして…


「はぁ…ハァ…つ、着いたし…この横断歩道を渡れば飼い主さんのマンションだし…！」
息を切らしながら信号が変わるのを待つたぬき
「(帰ったら何してもらおうか…最初はｷﾞｭっと抱きしめてモチモチしてもらいたいし…捥げた腕に包帯を巻いてほしいし…
　美味しいご飯も食べたいし…一緒にお風呂も入りたいし…あっ、あのちびぬいぐるみを久しぶりにモフモフしたいし…
　飼い主さんに心配してもらいたいし…飼い主勲章を着けてもらっておかえりって言ってもらいたいし…グスッ)」
色々な想像をして涙を流すたぬき
そして信号が青に変わった瞬間、なんと飼い主がマンションから出てきた
やった！もう会えたし！と感動のあまり涙が止まらないたぬきだったが…次の瞬間信じられないものを見てしまった


「よーし、じゃあ散歩しようかたぬきー♪」
「わーいし♪私飼い主さんとの散歩大好きですし♥」
飼い主の後に続いて小さな子たぬきが出てきた
しかもかつて自分が付けていた飼い主勲章をつけて
しかも子たぬきの片手にはちびたぬきぬいぐるみが握られていて…勲章にはチビベアルフ君＆ちびたぬきストラップもついていた
「えへへし…ちびちゃんも一緒ですし…ぎゅー♥」
「ふふふ、たぬきもちびちゃんも可愛いね」ﾅﾃﾞﾅﾃﾞ
飼い主と知らない子たぬきはとても仲がよさそうだった


え、なんでし？そのたぬきはなんだし？わたしのことはわすれちゃったし？かわりのたぬきかし？そのちびにんぎょうはわたしのなのに？
なんであいつがわたしのかいたぬきくんしょうをつけてるし？しかもちびべあるふくんあんどちびたぬきすとらっぷもつけてるし？
わたしにはかってくれなかったのにし？わたしのときよりなかよさそうにしているあいつはなんなんし？ずるくないかし？
わたしはいっしゅうかんかけてきたのにこのしうちはなんだし？うでももげたししっぽもぬれたし？ふくもぼろぼろだし？…ナンデシ？

疑問が頭を駆け巡り…頭が沸騰した
「(あいつあいつあいつ！！私のご主人様を取ったし！！泥棒たぬきだし！！あいつのせいでこんな目に！許せないし！！殺してやるし！！！)
　…ダヌダヌダヌダヌヌヌヌウヌヌヌヌ…ダヌー！！！！！」
怒りのあまり飼い主と子たぬきの方向へはじき出されるように飛び出した
しかしたぬきは気づいていなかった
色々な疑問を浮かべている間に少しだけ時間が経過したことを、信号が変わったことを、大型バイクが猛スピードで来ていたことを

「ダヌーーーーーーー【ﾄﾞｺﾞｫ!!】ﾌﾞﾍﾞﾗｧ!!!?」
轢かれて吹き飛ばされたたぬきは顔面から落下しグキッ！と首の骨を折ってしまった
そして運が良いのか悪いのか、飼い主の子たぬきの前に落下したのだった

「あ…たぬきが轢かれちゃったし…」
「うわぁ…酷いもんだな…って…あ」
飼い主は気づいた
こいつ前に買っていたたぬきじゃんと

その様子を見たたぬきは自分に気づいてくれた！と思い一生懸命声を出そうとした
出そうとしたのだが

「ﾀﾞﾇｰ…」

情けない声、癇癪を起した癖が抜けなかったのか出てきた言葉はソレだった

「か、飼い主さん、どうしましょうかし…救急車を呼びますかし？」
「んー(…野良だし汚らしいしスラムのたぬきみたいだし…駆除業者を呼ぼうか)」
ﾋﾟｯﾎﾟｯﾊﾟと電話を鳴らし…
「もしもし……はい…ハイ…自宅のマンションの前で野良のたぬきが轢かれまして…ハイ…お願いします」ﾌﾟﾂｯ
電話を切った飼い主は子たぬきに向かい
「大丈夫だよ、直ぐに片づけてくれるって」
「…助かるし？」
「うん！大丈夫大丈夫！…ごめんね、ちょっと用事あるから先に行ってて！すぐに追いつくから」
そう告げて先に行くよう促した
ﾄﾃﾄﾃﾄﾃ…笑顔で歩く子たぬきは鼻歌交じりにゴキゲンそうだ


飼い主は汚らしい死にかけの元描いたぬきの野良たぬきの耳元でささやいた
「…直ぐに駆除業者が来るから、残念だったな」
「！！？」
その瞬間たぬきは全て理解した
自分は捨てられたのだと、助からないと、惨めに孤独に死んでいくたぬ生だと
て気づいたら涙があふれていた

「う…う…ぶみゅぅえ～～…」

たぬきとは言い難い情けない泣き声を上げた
飼い主は最後に
「俺にはもうあの子がいるから…じゃあね」
そう耳元で囁いて歩いて行った
そして二度と振り向くことはなかった

薄れゆく意識の中たぬきは去っていく飼い主の背中を見送り…絶命した



終



・飼い主
ダヌー癇癪に手を焼いたので捨てることに抵抗はなかった
新しく買った子たぬきとはとても仲が良い

・子たぬき
ダヌー癇癪は恥ずかしいと思っているので絶対やらない
成長して立派なたぬきなベビーシッタぬきになった


・野良になったやつ
リポップ先は無人島のヤシの実だった
野生生物も居ないので孤独に生きて孤独に死んだ
これを10回繰り返した
11回目でようやくスラムに生まれ落ちた
その際はやたらと甘えてくるたぬきに育ったそうな