ぼっちは洒落た飯を食いに行けねェ…雑誌やらTVに載ってた美味そうなレストランにもだ…恥ずかしいからね…だったらどうするよ？
作っちゃえば良いじゃん自分で。

田舎特有の無駄に広い庭に用意した道具は焚き火台と20Lの大きめな金バケツ、それに広めの土台が付いた金属製の缶ホルダー、逆ハの字に突き出した五徳の足めいたものが特徴的だ。クーラーボックスにいっぱいのビールも用意してある。
やぐらに組んだ炭が赤々と燃えていくのをビールをちびちび飲みながら眺めていた。

「この草うまいし…いいかおりだし…」

隣の折りたたみ椅子に座って皿に盛られた香草をもりもりと食っていく若たぬきも満足気だ。
大人たぬきというには少し小さいたぬきは、おおよそちびから大人への過渡期と言った年齢の若たぬきで、たぬきショップで先週購入されたばかりであった。
健康そのものだが、数日前からスポーツドリンクと偽ってしこたま飲まされていたモビプレップによる下痢から今朝回復したばかりだ。
買われてから何故か続いた腹痛からの快気祝いとして、まずはお腹に優しいサラダからと差し出されたものを疑いもせずに掻き込んでいる。ローズマリーとバジル、パセリなどをまぜて塩コショウしたものであった。

「弱ったお腹にハーブがスーッと効いて…ありがたいし…」

皿を舐めまわすたぬきを横目に炭火を軽く広げ、追加で何個か炭を放り込んでおく。良い頃合いなので上に網を被せた。次は調理の時間だ。

「？…何するし…？」

たぬきの襟首を掴んで持ち上げる。大型の調理ハサミを見てもキョトンとしているたぬきに構わずそのままたぬきの服を切り裂く。謎の素材だが布ほどの強度も無く、さくさく切れていった。ざっと切ってしまえば、後は玉ねぎの皮のように簡単に剥ぎ取れる。

「ひどいし！やめてほしいし…！」

全裸になったたぬきをそのまま今度は足を広げ、ハサミの刃を肛門にねじ込み、下腹部に向かって切り開く。ちょうどパペット人形の手を入れる穴を空けたような感じだ。たぬきの骨は柔らかいので、調理ハサミで十分に切断出来る。内臓を破かないように気をつけながら骨盤も割っておく。

「ぶｷｭ、ﾋﾟｷﾞｭｱｱｱｱｱｱｯｯ！、やめでっ！たぬきは゛っ！たぬきは飼われたはずだし…！ごんなのおかしいしいいいｯ！」

うまく穴を空けられたか指で広げて確かめてみる。楽に指が4本入ったので、先程半分ほど飲んで残した缶ビールをねじ込んだ。しっかりと止まるまで押し込む、半分ほど入ったところで肋骨？がぽきりといったような手応えがあったので手を離した。
ずり落ちて来ないことを確認してから、たぬきの尻から突き出したビール缶の下半分を缶ホルダーにセットする。ジタバタとうるさい手足は台座からホルダー部分に沿うように伸びた逆ハの字の突起に付いている鉤に引っ掛ける。
痛みと混乱と重傷を負ったショックで真っ赤と青のまだらにした顔はいつものしょんぼりたぬきとは思えないくらい強烈に引き攣っており、磔めいて大の字に固定された手足も含めて鳥居強右衛門のようだった。タレを塗ると赤茶けた色味になってますます似てくる。
援軍はきますぞー各々方ご安心くだされー！、などと1人で遊びつつ、磔にされたたぬきをそのまま焚き火台の上に置く。たぬきから垂れたタレが炭火に落ちて香ばしい匂いを立てた。

「ｱﾁﾞｨｨｨｨ‼︎あづいしいいい！！ｷﾞｭｱｱｱｱｱ!!!」

足先から焼かれるたぬきがのたうっても大丈夫なことを確かめ、上からそっと金バケツを被せ、さらにその上に真っ赤に熾った炭をいくつか置く。
これで360度隈なく熱が加わって、全体がきれいに焼けるらしい。ついでにたぬきの悲鳴もカット出来て近所迷惑にもならない。

30分ほど経ち、すっかり静かになったバケツを退けてみる。
ションボリとは程遠い、とんでもない面のたぬきが現れた。全身から滲んだ脂が食欲をそそる湯気を立てている。
600℃を超える炭火で全身をパリッと焼かれ、ビールの蒸気で体内はふっくら蒸しあげられているのだ。苦しまなかったはずである。
さっそく半身に切り分けて食べてみたが、パリパリの外皮とふっくらもちもち食感の肉がたまらなく美味かった。
見た目のインパクトがあり、簡単に作れて美味いというアウトドア料理としてはもってこいだろう。
あっという間に食べてしまい、残りの半身にも手をつけながら、次は何を作ろうかと早くも考えていた。
…チビを使ったアヒージョなんか良いかもしれない。