～たぬき保護公園のお約束～

たぬき保護公園は、その名の通りたぬきを保護するための自然公園です。
主に野良たぬきや捨てたぬきだったたぬき達がここで暮らしています。

この公園内でみだりにたぬきを殺傷した場合は、5万円以下の罰金に処されます。
また、たぬ木を傷つけた場合も同様に罰金が科せられます。

たぬき達は臆病なので、公園内にたぬき以外のペットを連れ込まないでください。
特にもどきを連れ込むのは絶対にやめましょう。

サッカーや野球などのボール遊びはやめましょう。
たぬきにボールが当たると、最悪の場合たぬきが死んでしまいます。

叫んだり楽器を演奏したりして大きな音を出さないでください。
たぬきは大きな音を聞くとジタバタしてしまいます。

公園の中央にある池は、人間の大人でも足が届かないほどの深さです。
ロープで囲ってあるので、囲いの中には絶対に入らないでください。


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「暇だし…何もすることないし…」
公園でたぬきがトボトボと歩いていました。

「街中と比べたら確かに安全だし…代わりに何にもないし…」
このたぬきはスラムから保護されたたぬきのようです。
どうやら少々退屈な様子。

それもそのはず、スラム時代はエサ探しに奔走していました。
しかし今では公園内にあるご飯置き場に行けば、いつでも食べることができます。
つまり、エサ探しに浪費していた時間が丸ごと自由時間になったのです。

おまけに、自然公園なので遊具が全然ありません。
そもそも「たぬきはサイズがバラバラすぎる」という理由で、たぬき専用の遊具は存在しません。
大人たぬきに限っても身長30～50cm前後と、てんでバラバラです。
「滑り台のような身長が関係ない遊具なら…」という計画がありました。
しかし、「たぬきの足が短すぎて登るのに時間がかかる」という理由で頓挫しました。


話を戻しましょう。

「うどんダンス…はもう飽きたし…」
うどんダンスは一回に15秒しかかかりません。
インターバルを5秒としても、一時間に180回も踊れる計算です。
それでなくても仲間とよく踊るのです。
そんなに踊っては、流石のたぬきでも飽きてしまうのは当然でしょう。

「いつの間にか池のすぐ近くまで歩いてたし…」
池の周りは転落防止用にロープで囲まれていました。。
しかし、ロープは人間の腰の高さほどのところに張られていたので、たぬきは素通りです。

「なんだし？どうしてこんなところに看板があるし…」
池のすぐ近く、本来なら必要ないだろう場所に看板がありました。
しかもたぬきの目線ぐらいの高さしかありません。

その看板には、こう書いてありました。
『たぬき池(いけ) ここで 死(し)ぬと 来世(つぎのリポップ)は いいところに 生(う)まれる』

「本当だし…？」
当たり前のことながら、たぬきは疑っていました。
看板の高さといい振り仮名がつけてあることといい、どう考えてもたぬきに宛てたものです。
しかもその内容が遠まわしに入水自殺を教唆しているのです。
普段通りだったら、こんな変な看板なんて無視して日向ぼっこでもするのですが、今は違います。

「どうせここにいてもずっと同じ生活だし…」ﾋﾟｮﾝ
たぬきは池に飛び込みました。
ポチャンと音を立てた後、ずんずんと沈んでいきました。


(結構沈んだし……底っぽいところに何かが見えるし…？)
たぬきは濡れることが苦手ですが、濡れても死ぬわけではありません。
無駄に有り余る生命力のおかげで水底まで意識が持ったようです。

(あれは…たぬきだし…！いっぱいいるし…)
水底にはたぬきが数十匹以上も沈んでいました。
みんなこのたぬきと同じように、絶望した時に看板を見つけて身投げしたのです。

(みんな…一緒だし……そして…次に生まれる時はどうか………………)
このたぬきの来世は誰も知る由はないでしょう。



……と言いたいところですが、この公園にはたぬ木があります。
十中八九この公園で生まれることになります。
そして同じように絶望し、同じように身投げするのです。

それこそ、この公園が無くなるまで。
ずっと…ずっと……