「ママはちょっと離れるけどここでじっとしてるし…」
「わかったし…タマルフくんといっしょにまってるし…」

道を歩いていると何処にでもいるたぬきの親子がいた
どうやら親のほうはそそくさと子供から離れたようだが向かった先は共用たぬきトイレだ
例えトイレのためにまだ小さい子供と離れるのは如何なものか
とはいえ言葉も喋れる程度に成長した子たぬきも聞き分けは良いのか何処かふらふらと行くわけでもなくじっと待っているようだ

「タマルフくん…もふもふし…」

子たぬきは抱き抱える程度の毛玉でもふもふして野良ながらもその顔は少しばかりションボリが薄いように見えた
大事に育てられてるのだろう
野良で入手の難しいぬいぐるみの代用品とはいえ毛玉が与えられてるのはその証拠だ
そんな子たぬきを興味本位で拾ってしまった
大事に育てられてるとパッと見で分かっても所詮は野良だ
薄汚れてるしそもそも野良で珍しくない服無しの個体である
手も汚れたし後で手を洗わないといけない

「タヌー！い、いきなりなんし！なんでにんげんさんがたぬきをつかむし！」

どうやらいきなり人間に掴まれてパニックを起こしてるようだ
まぁ人間だっていきなり巨人に掴まれたらパニックを起こすだろうから当然だろう
ジタバタしようにも子たぬきの力では人間に軽く掴まれた状態では身動き一つ取れない
本能とも言うべきたぬきのジタバタを封じられたら子たぬきの理性ではもはや何一つ判断ができなくなる

「タヌー！タヌー！！ﾀﾞﾇﾀﾞﾇﾀﾞﾇﾀﾞﾇﾀﾞﾇｰｰｯ！！」

つまるところやり場のない怒りと恐怖への対処。癇癪である
ダヌー癇癪でまん丸顔はちょっぴり赤色に染まって興奮気味だ
このまま癇癪を続けても子たぬきの体力が先に尽きてよりションボリとした顔で項垂れるだろう
しかしそれはちょっと面白くない。そして近くには共用たぬきトイレを囲むようなコンクリートの塀が存在する

「ﾀﾞﾇﾀﾞﾇﾀﾞﾇだぬぁ！？」

大根をおろすように、コンクリの壁で子たぬきの頭でこすった
たぬきはモチモチの体でそれなりに衝撃に強いとはいえ、ゴリゴリとしたコンクリの壁でこすれば容易に皮が傷つく
それこそ人間の肌であってもこするという行為は傷をつける
ならばたぬきであれば言うに及ばず。髪の毛ごとコンクリの壁にはこすられ削られた分の子たぬきの皮がへばり付いている
そしてその分の頭の体積を失い、ジタバタのできないストレスからくる本能の癇癪すら止めてしまう

「ﾀﾞﾇｩｩｩｩ!?じぃじじじぃ！！な"、な"！」

もはや子たぬきの語彙ではその痛みは言葉にできないのだろう
そもそも言葉を紡げる理性が残ってるかすら怪しい。しかしそれに気にも留めずにひたすらコンクリの壁で紅葉卸を続けていく
子たぬきの柔らかい頭はまるで抵抗のないバターのようにどんどんと削ぎ落とされていき、数十秒もすればすっかり頭のない子たぬきの完成だ
コンクリの壁は少しばかりたぬきの毛と皮で汚れているが雨でも降ればすぐに落とされ綺麗になるだろう
天気予報で言えば明日が雨模様だったはずだ

さて、頭の無くなった子たぬきの様子と言えば少し手を広げて子たぬきを自由にしてみる
すると癇癪の本能が体に残ったままなのか、ジタバタするように体だけが動いていた
そんな謎の生物っぷりに謎の感動を覚えつつ今度はモチモチとした手を掴んで少しずつコンクリの壁で削っていく
今度は足を、そのまま下半身を…こうして綺麗に残った胴体部分が丸い形になるように削っていけばあら不思議
ぐにぐにと動く円形状の何かが誕生した
掌でぐにぐにと動くこれは果たして生きていると言えるのか。それともこの子たぬきはすでにリポップしてしまったのか
そんなことを考えながら元居た場所に戻して丸い何かの上に毛玉も置いておく
果たして親たぬきはそれが自分の子供だと気づくのだろうか
そう考えながら近場の水道でしっかりと手を洗ってその場を去った

「ふぅし…中々出てくれないから長引いちゃったし……チビ―？…あれ…チビ―？どこだしー？」