飼っているたぬきが急に変なことを言ってきた。
「お願いがあるし…しばらく庭で生活させてほしいし…」
「正気か？ずっと甘やかされて生きてきたお前がそんなことしたら死ぬぞ？」
実際、一日三食全てスイーツということがよくあるレベルで甘やかしている。
「これには理由があるし…まずは話を聞いてほしいし…」
とりあえず弁明の余地ぐらいはあげよう。

「たぬき自身にもよくわからない話だから少しふわっとしてるけど容赦願うし…
たぬきが生きるためには食べ物からの栄養の他にションボリも必要らしいし…
それも自分から出たションボリじゃないといけないらしいし…
話が前後するけどションボリっていうのは悲しみとかそういう系の何かだし…
何が言いたいかっていうと自分は今ションボリが不足しているっぽいし…
現に最近体調が悪いし…きっと幸せ過ぎるんだし…」

民間療法にハマった奴みたいな意味不明の戯言を言い始めた。
一応こいつには愛着はあったが、こんなことを言う奴だと知らなかっただけだ。
というか言っていることが本当なら、かなりの欠陥生物じゃないか？
お望み通り庭送りにしてあげようじゃないか。
「そうだ。発泡スチロールの箱とか使うか？」
「ありがたく貰っておくし…屋根が無いと流石にヤバいし…」
しまった。ついクセで甘やかしてしまった。
まあ3日ぐらいすれば勝手に野垂れ死ぬだろう。

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外に出してから15分ぐらい経った。
たぬきは必死にベランダのガラスを叩いていた。
「寒いし…外を無礼てたし…中に入れてし…」とかいう声が聞こえてくる。
そういえばこいつには散歩をさせていなかった。
だから、今は冬で死ぬほど寒いということは知らなかったのだろう。
散歩をねだってこなかったから、半分ぐらい自業自得だと思う。
聞こえないフリをして読書を楽しむ。久しぶりに一人の時間ができて嬉しい。

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それから更に5時間後、晩ご飯の時間である。
外から「庭の草おいしくないし…食べられないし…」と聞こえてくる。
自分で蒔いた種なんだから自分で解決しろと言いたい。
外の声は聞こえていない設定なので仕方なく無視する。

さて……久しぶりに濃い味のうどんが食えるぞ！
たぬきには塩分をあまり摂取させてはいけないので、ずっと薄味で我慢していたのだ。
肉もラー油もたっぷりの超濃厚肉うどんを啜る……旨い！
あいつがこれ食ったら体調崩すんだろうな…哀れな生き物…

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そろそろ寝ようかと思ったその瞬間、庭から悲鳴が聞こえてきた。
近所迷惑になるのはアレなので急いで庭に向かう。

「あ"あ"ぁぁぁ！ご主人！助けてほしいし！もどきに食われてるし！痛いし！」
「ヴッフヴッフ♪」ﾓｸﾞﾓｸﾞ
「助けろと言われても、もう下半身が食い尽くされているから助からないと思うぞ？」
こんな状態でどうして生きているんだろうか？
「マジだし？……マジだったし…死ぬし…」
あっ死んだ。
『病は気から』のもっと凄いバージョンみたいなものなのだろうか？
随分と適当な生態してるんだなこいつら。

もどきが俺のたぬきを食い終わった。身体の大きさが同じぐらいなのによく食えるな。
「ヴフフフン♪」
なんか「ありがとう」と言われた気がした。意外と礼儀正しい。
「ヴフッ…」ﾌﾞﾘﾌﾞﾘｯ
と思いきや、いきなり糞をひり出してきた。前言撤回。
「ヴフフン♪」ｽﾀｺﾗｻｯｻ
糞を置き去りにして、もどきは何処かへ去っていった。

さて、これからどうしようか？
ペットがいなくなったのは一応悲しい。
しかし、またこんなクソみたいな事態になってほしくない。
うん、素直にネコ飼うか……